東京テアトル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京テアトル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京テアトルは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、映画興行や制作配給を行う映像関連事業、飲食店経営の飲食関連事業、中古マンション再生販売等の不動産関連事業を展開しています。当期は不動産事業の好調や固定資産売却益の計上により、増収および親会社株主に帰属する当期純利益の大幅な増益を達成しました。


※本記事は、東京テアトル株式会社 の有価証券報告書(第109期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京テアトルってどんな会社?


映像、飲食、不動産の3事業を柱に、映画館運営や「串鳥」などの飲食店、マンション再生販売を展開する企業です。

(1) 会社概要


1946年に東京興行として設立され「テアトル銀座」を開館、1949年に東証へ上場しました。1955年に現社名の東京テアトルへ商号変更し、1980年には飲食事業の主力となる「串鳥本店」を開店しました。1999年には不動産販売事業(現・中古マンション再生販売事業)を開始するなど、時代の変化に合わせて事業ポートフォリオを多角化させてきました。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は436名、単体では143名です。大株主は、筆頭株主が資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は海外銀行の常任代理人である銀行、第3位は事業会社のサッポロビールとなっています。

氏名 持株比率
三井住友信託銀行株式会社 5.06%
BANK JULIUS BAER AND CO. LTD. SG FAO KAZUTAKA HOSAKA 4.84%
サッポロビール 3.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名、計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は太田 和宏氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
太田 和宏 代表取締役社長 1989年同社入社。営業企画部長、映像事業本部長、営業本部長、事業企画室長などを歴任し、2013年6月より現職。
松岡 毅 取締役常務執行役員管理本部長 1990年同社入社。財務経理部長を経て、2014年より取締役。2016年6月より現職。
千葉 久司 取締役常務執行役員リノベーションマンション事業部長 2006年同社入社。リニューアルマンション部長、不動産販売事業部長などを経て、2022年6月より現職。
小倉 誠 取締役常務執行役員経営政策本部長 1992年同社入社。経営企画部長、営業本部長などを経て、2025年6月より現職。
山崎 淳一 取締役執行役員映像事業本部長 1999年同社入社。飲食事業部外食営業部長、経営政策本部人事労政部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、猪山 雄央(弁護士法人下山法律事務所代表社員)、小澤 直樹(ほがらか代表取締役)、馬場 清(社会保険労務士馬場清事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「映像関連事業」「飲食関連事業」「不動産関連事業」を展開しています。

(1) 映像関連事業


映画の興行(映画館運営)、映画の配給、映画・ドラマの制作、および総合広告サービスやイベント企画などのソリューション事業を行っています。映画ファンや若年層を主な顧客とし、映画館での鑑賞体験やコンテンツを提供しています。

映画館のチケット収入、配給作品の興行収入や二次利用収入、シネアド(映画館CM)等の広告料が主な収益源です。運営は主に東京テアトルおよび子会社のアクシーが行っています。

(2) 飲食関連事業


焼鳥専門店チェーン「串鳥」などの飲食店経営に加え、所有するセントラルキッチンを活用した食材の加工・販売を行っています。一般消費者を対象とした店舗運営のほか、中食・卸売ビジネスも強化しています。

飲食店での飲食代金やテイクアウト販売、冷凍食品等の卸売による売上が収益源です。運営は札幌開発、テアトルダイニング、西洋銀座が行っています。

(3) 不動産関連事業


所有不動産の賃貸事業および中古マンションの再生販売(リノベーション販売)を行っています。また、個人向けのワンストップリノベーションサービス「リノまま」ブランドも展開しています。

賃貸ビルからの賃料収入や、リノベーションした中古マンションの販売代金、リフォーム工事請負代金が収益源です。運営は主に東京テアトルおよび東京テアトルリモデリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期には184億円に達しています。利益面では、経常利益は安定して黒字を維持しており、2025年3月期は固定資産売却益の計上などにより当期純利益が大きく跳ね上がりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 133億円 131億円 163億円 171億円 184億円
経常利益 -12億円 7億円 4億円 3億円 3億円
利益率(%) -8.7% 5.4% 2.3% 1.7% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -23億円 8億円 2億円 2億円 30億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加していますが、売上総利益率は若干低下しています。営業利益は増加しており、本業の収益性は維持されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 171億円 184億円
売上総利益 46億円 50億円
売上総利益率(%) 27.2% 27.0%
営業利益 2億円 3億円
営業利益率(%) 1.5% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が24億円(構成比52%)、その他費用が12億円(同25%)を占めています。売上原価においては、具体的な内訳データはありませんが、不動産販売原価や飲食店の材料費などが含まれています。

(3) セグメント収益


映像関連事業は減収となり営業損失を計上しましたが、飲食関連事業は増収黒字を確保しました。不動産関連事業は大幅な増収増益となり、全社の利益を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
映像関連事業 36億円 34億円 -1億円 -4億円 -12.5%
飲食関連事業 54億円 58億円 1億円 1億円 2.0%
不動産関連事業 82億円 92億円 10億円 14億円 15.2%
連結(合計) 171億円 184億円 2億円 3億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 2億円
投資CF -3億円 6億円
財務CF 2億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Sound of Your Life ~あなたの人生に豊かな響きを~」を企業理念として掲げています。この理念のもと、基幹事業である映像関連事業、飲食関連事業、不動産関連事業を通じて社会に貢献していくことを経営の基本方針としています。

(2) 経営文化


「プロデュースカンパニーへの革新」を掲げ、作られたものを売る会社から、消費者が求める「売れるもの」を自ら創る会社への転換を目指しています。また、従業員の行動基準としてコンプライアンスの遵守や人権尊重を定めており、多様な人材がいきいきと活躍できる環境整備を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループを取り巻く環境の変化が激しく、特に映像関連事業の不確実性が高いことから、特定の指標を中期的な経営目標として設定していません。その代わり、中期経営方針における政策の進捗を踏まえて設定する単年度目標を着実に達成することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「ヒューマンリソース型ビジネス」を中核事業とし、人的資本の充実による収益拡大を目指しています。映像事業ではコンテンツへの積極投資とライツビジネスの強化、不動産事業では中古マンション再生販売の仕入・販売エリア拡大、飲食事業では中食・卸売ビジネスの強化を重点施策としています。また、M&Aやアライアンスも積極的に進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロデュースカンパニー」への革新に向けて、固定資産を源泉とするビジネスから人的資本を源泉とするビジネスへの転換を図っています。社員の「人財化」を重要視し、OJTに加え、役員が主催するOFF-JTやEラーニング等の学びの機会を提供しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、多様な人材の活躍を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 14.3年 7,247,777円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※表内の「-」については、公表義務の対象ではないため記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結ベースでの女性管理職比率(10.1%)、管理職における中途採用者比率(79.7%)、健康診断受診率(99.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 映像関連事業の不確実性


映画作品の興行成績は予測が難しく、作品によっては目標とする観客動員や収益を達成できない場合があります。制作配給事業においても、権利収入が想定を下回るリスクや、制作遅延・公開延期が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食品の安全に係るリスク


飲食関連事業において、食中毒などの衛生問題や誤表示による事故が発生した場合、損害賠償や営業停止、企業イメージの悪化により売上が減少する可能性があります。また、鳥インフルエンザ等の疾病発生による食材調達難も業績に影響を与えるリスク要因です。

(3) 不動産の市況に係るリスク


不動産関連税制の変更や金利上昇、法改正等は、資産価値やコストに影響を与えます。賃貸事業では賃料相場の下落や空室率の上昇、中古マンション再生販売事業では物件仕入れの難航や販売長期化、価格下落が業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 所有不動産の設備等老朽化


同社グループが所有する不動産には竣工後相当年数を経過した物件が多く含まれています。これらに突発的な大規模修繕が必要となった場合、多額の費用が発生し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。計画的な修繕に努めていますが、予期せぬトラブルのリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。