オリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オリックス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オリックスは東京証券取引所プライム市場およびニューヨーク証券取引所に上場する企業です。法人営業、不動産、事業投資、環境エネルギー、保険、銀行・クレジット、輸送機器、資産運用など多角的な金融・投資サービスをグローバルに展開しています。直近の連結業績では、金融収益や有価証券関連の損益増により増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、オリックス株式会社の有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は US GAAP です。

1. オリックスってどんな会社?


法人営業から不動産、環境エネルギー、保険まで多角的な金融・事業投資サービスをグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1964年にオリエント・リースとして設立され、1970年に大証二部、1971年に東証二部に上場し、1973年には東証・大証一部に上場しました。1989年に現在のオリックスに社名変更し、1998年にはニューヨーク証券取引所にも上場しています。その後、大京の完全子会社化やスペインの再生可能エネルギー事業会社の買収などを行い、事業を拡大しています。

従業員数は連結で37,286名、単体で3,016名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に信託業務を行う日本カストディ銀行です。第3位には外国法人が名を連ねており、多様な投資家層によって構成されていることが伺えます。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.78%
日本カストディ銀行(信託口) 7.98%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 3.16%

(2) 経営陣


同社の役員は男性27名、女性5名の計32名で構成され、女性役員比率は15.6%です。代表執行役社長 グループCEO デジタル戦略部門管掌は髙橋英丈氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役は6名(60%)を占めています。

氏名 役職 主な経歴
井上亮 取締役 代表執行役会長 1975年入社。プロジェクト開発本部長などを経て、2011年に取締役兼代表執行役社長グループCOOに就任。2014年よりグループCEOを務め、2025年より現職。
髙橋英丈 取締役 代表執行役社長グループCEOデジタル戦略部門管掌 1993年入社。環境エネルギー本部長などを経て、2024年に取締役兼専務執行役に就任。2025年より取締役兼代表執行役社長、2026年より現職。
松﨑悟 取締役 執行役副社長APAC事業部門COO 1997年入社。国内営業統括本部長などを経て、2020年に取締役兼専務執行役、オリックス自動車会長等に就任。2025年より取締役兼執行役副社長、2026年より現職。
スタン・コヤナギ 取締役 専務執行役グローバルジェネラルカウンセルリーガル・コンプライアンス部門管掌 2013年入社。グローバルジェネラルカウンセルなどを経て、2017年に取締役兼常務執行役に就任。2023年より取締役兼専務執行役、2026年より現職。


社外取締役は、渡辺博史(元財務官)、関根愛子(元日本公認会計士協会会長)、程近智(元アクセンチュア社長)、柳川範之(東京大学大学院教授)、柚木真美(元PwCあらた有限責任監査法人代表社員)、関美和(MPower Partners Fundゼネラル・パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「法人営業・メンテナンスリース」「不動産」「事業投資・コンセッション」「環境エネルギー」「保険」「銀行・クレジット」「輸送機器」「ORIX USA」「ORIX Europe」「アジア・豪州」の報告セグメントを展開しています。

法人営業・メンテナンスリース


金融・各種手数料ビジネスや、自動車、電子計測器、ICT関連機器などのリースおよびレンタルサービスを提供しています。主に国内の中小企業を顧客として事業を展開しています。

顧客からのリース料やレンタル料、各種手数料が主な収益源です。運営は主にオリックス、オリックス自動車、オリックス・レンテックなどが担っています。

不動産


不動産の開発、賃貸、管理、施設運営、および不動産のアセットマネジメントを提供しています。オフィスビルや分譲マンションを中心とした住宅、ホテル・旅館などの施設を対象としています。

顧客からの不動産売却益、賃貸料、施設利用料などが主な収益源です。運営は主にオリックス、オリックス不動産、大京などが担っています。

事業投資・コンセッション


企業投資およびコンセッション(公共インフラの運営)を行っています。企業価値の向上を目指す事業承継支援や事業再編への投資、関西3空港などのインフラ運営を手掛けています。

投資先企業の事業収益や株式売却益、コンセッション事業からの運営収益が主な収益源です。運営は主にオリックスが担っています。

環境エネルギー


国内外での再生可能エネルギー事業、電力小売、省エネルギーサービス、廃棄物処理などを提供しています。国内最大級の出力規模を誇る太陽光や風力発電施設を運営しています。

売電収入や電力小売収入、廃棄物処理に伴う手数料などが主な収益源です。運営は主にオリックス、オリックス環境などが担っています。

保険


生命保険事業を展開しており、終身保険、定期保険、医療保険などを提供しています。代理店、金融機関、通信販売など多様なチャネルを通じて個人および法人に販売しています。

契約者からの保険料収入や、預かった資金の資産運用から得られる収益が主な収益源です。運営は主にオリックス生命保険が担っています。

銀行・クレジット


銀行事業および消費性ローン事業を展開しています。投資用不動産ローンやマーチャントバンク事業のほか、強固な顧客基盤を有する企業との共同事業による個人向けの金融サービスを提供しています。

貸付金から得られる利息収入や各種手数料が主な収益源です。運営は主にオリックス銀行が担っています。

輸送機器


航空機投資・管理、船舶関連投融資・管理・仲介を行っています。自社保有機のオペレーティング・リースや、投資家向けの資産アレンジおよびアセットマネジメントサービスを提供しています。

リース料収入や投資家への機体売却益、アセットマネジメント手数料が主な収益源です。運営は主にオリックス、三徳船舶などが担っています。

ORIX USA


米国において、法人向け金融、投資、アセットマネジメント、アドバイザリーサービスを提供しています。法人向けファイナンス、債券投資、不動産ファイナンス、プライベートエクイティ投資などを展開しています。

金融収益や投資収益、アセットマネジメントに伴う手数料が主な収益源です。運営は主にORIX Corporation USAが担っています。

ORIX Europe


欧州において、グローバル株式・債券のアセットマネジメント事業を展開しています。サステナブル投資の知見を活かし、顧客から受託した資金を運用して多様な金融商品を提供しています。

顧客から受託した資産の運用残高に応じた管理手数料や成功報酬が主な収益源です。運営は主にORIX Corporation Europe N.V.が担っています。

アジア・豪州


アジアおよび豪州地域において、リース、融資、自動車リースなどの金融サービスおよび投資事業を展開しています。また、中華圏を中心としたアジア各国向けの企業投資も行っています。

金融収益やオペレーティング・リース収益、投資先からの収益が主な収益源です。運営は主にORIX Asia Limitedや各地の現地法人が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調なトップラインの拡大が確認できます。利益面では一時的な踊り場があったものの、直近では大幅な増益を達成しており、税引前利益率も20%台に回復するなど、収益性の向上が伺えます。総じて、多角的な事業展開が奏功し、安定した成長軌道を描いていると言えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 25080億円 26637億円 28144億円 28748億円 33308億円
税引前利益 5094億円 3922億円 4700億円 4805億円 6914億円
利益率(%) 20.3% 14.7% 16.7% 16.7% 20.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3174億円 2903億円 3461億円 3516億円 4473億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高が順調に拡大する中で、営業利益が大幅に伸長していることが分かります。営業利益率も大きく改善しており、トップラインの成長に伴って本業の稼ぐ力が一段と強まっている状況が読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 28748億円 33308億円
営業利益 1686億円 3322億円
営業利益率(%) 5.9% 10.0%


販売費および一般管理費のうち、従業員給与およびその他の人件費が59%を占めており、残りはシステム関連費や広告宣伝費などが占めています。

(3) セグメント収益


多くのセグメントで増収増益を達成しており、特に環境エネルギーや事業投資・コンセッションが利益の成長を牽引しています。一方で、ORIX USAは増収ながらも減益となっており、セグメントごとの収益性のばらつきが見られますが、グループ全体としては大幅な利益拡大を実現しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
法人営業・メンテナンスリース 4607億円 4878億円 903億円 1007億円 20.6%
不動産 4978億円 5309億円 705億円 785億円 14.8%
事業投資・コンセッション 3779億円 4420億円 989億円 1256億円 28.4%
環境エネルギー 1860億円 2092億円 -49億円 1158億円 55.4%
保険 5184億円 6430億円 744億円 1029億円 16.0%
銀行・クレジット 633億円 764億円 293億円 272億円 35.6%
輸送機器 1196億円 1300億円 674億円 666億円 51.2%
ORIX USA 1542億円 2722億円 399億円 10億円 0.4%
ORIX Europe 2573億円 2911億円 444億円 631億円 21.7%
アジア・豪州 2362億円 2434億円 345億円 512億円 21.1%
連結(合計) 28748億円 33308億円 4805億円 6914億円 20.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と判定されるキャッシュ・フローの状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 13002億円 13696億円
投資CF -13097億円 -11147億円
財務CF 1493億円 -1605億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も24.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ORIX Group Purpose & Culture」として、「変化に挑み、柔軟な発想と知の融合で、未来をひらくインパクトを。」を存在意義(Purpose)に掲げています。社会にインパクトをもたらし、持続可能な社会の実現に貢献する価値提供と企業価値の向上を両立させ、中長期的に社会から信頼される存在を目指しています。

(2) 企業文化


Purposeを実現するために、世界中の社員が大切にする共通の価値観として「多様性を力に変える。」「挑戦をおもしろがる。」「変化にチャンスを見出す。」という3つのCultureを掲げています。多様な人材が経験やスキルを持ち寄り、イノベーションの創出につながる知の融合を重視する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


純利益成長に加えてROEを最重要の経営指標として位置づけ、株主総利回りの向上を図っています。安定的な株主還元として「配当性向39%もしくは前期実績の高い方」の配当実施を継続する方針です。

* 2035年3月期:ROE15%、当期純利益1兆円
* 2028年3月期(中間目標):ROE11%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略「ORIX Group Growth Strategy 2035」を通じ、「事業価値創造」と「顧客課題解決」の2つのビジネスモデルを生かして事業を展開します。「テクノロジーの進化」「世界の人口増加・動態変化」「地球温暖化・限りある資源」の3つの戦略的投資領域において、各セグメントの強みを掛け合わせ、協業を強化することで規模感のある事業展開を実現します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「コアバリュー」の浸透、「コアケイパビリティ」の強化、「多様な人材が活躍できる職場づくり」を3つの柱とし、それらを三位一体で進める人的資本経営を推進しています。多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れ、柔軟な働き方の推進や自律的キャリア形成支援を通じて、イノベーションの創出と持続的な事業成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 15.8年 10,396,546円


※平均年間給与は休職者・会計年度内の途中入社および受入出向者を除いた金額です。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 34.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全社員) 64.2%
男女賃金差異(正規雇用) 63.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 78.6%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ORIX Value Score(64%)、後継者候補準備率(2.5人)、エンゲージメントスコア(67%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部環境の変動による影響


世界経済の低迷や地政学的リスクの高まり、資源価格の高騰などにより、事業環境の不確実性が高まっています。これらの変動により、顧客の業績悪化や投資価値の減少が生じ、同社グループの事業活動や財政状態に不利な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 事業拡大やM&Aに伴う不確実性


国内外で積極的に事業を拡大し、M&Aや他社との合弁を行っていますが、買収後の収益が想定を下回る場合や、投資先の事業が失敗した場合には、多額の減損処理や追加投資が必要となり、同社の経営成績に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 資産価値の変動リスク


同社は不動産、航空機、船舶など多岐にわたる資産を保有・投資しています。市場価格の変動によりこれらの資産価値が下落した場合、評価損の計上が必要になるほか、資産運用事業の受託資産残高や手数料が減少し、収益が低下する可能性があります。

(4) 資金調達と流動性リスク


同社は銀行借入や社債など多様な手段で資金を調達していますが、市場の混乱や信用格付の引き下げ等により資金調達が困難になる、あるいは調達コストが上昇するリスクがあります。これにより、適切な手元流動性の確保に支障を来す可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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