セコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。日本初の警備保障会社として創業し、セキュリティサービスを中心に防災、メディカル、保険、地理空間情報、BPO・ICT等の事業を展開する社会システム産業を構築しています。直近の業績は、売上高および各利益段階において過去最高を更新し、増収増益となりました。


※本記事は、セコム株式会社 の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セコムってどんな会社?


日本初の警備保障会社として創業し、「安全・安心」を提供するセキュリティサービスを中心に多角的な事業を展開するパイオニア企業です。

(1) 会社概要


1962年に日本初の警備保障会社である日本警備保障として設立され、1966年には国内初のオンライン安全システム「SPアラーム」を発売しました。1974年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1983年に現社名のセコムへ変更しました。2006年には能美防災を連結子会社化するなど事業を拡大しています。

連結従業員数は64,655人、単体では15,674人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様の信託銀行です。第3位は銀行の決済営業部が常任代理人を務める外国銀行であり、国内外の機関投資家が株式を保有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 22.56%
日本カストディ銀行(信託口) 9.20%
JP MORGAN CHASE BANK 380055 4.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性2名(社外含む)の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は吉田保幸氏です。なお、取締役11名のうち社外取締役は5名で、比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
吉田 保幸 代表取締役社長 1980年同社入社。戦略企画室担当部長、セコム損害保険代表取締役社長、同社執行役員、取締役、常務取締役、専務取締役を経て、2024年4月より現職。
布施 達朗 専務取締役 1982年同社入社。セコム医療システム代表取締役社長、同社会長、同社常務執行役員、常務取締役を経て、2024年6月より現職。
山中 善紀 常務取締役 1985年同社入社。セコム北陸代表取締役社長、同社ホームマーケット営業本部長、執行役員、常務執行役員、セコム上信越代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。
長尾 誠也 常務取締役 1984年同社入社。グループ運営最適化推進室長、経営分析室長、経理部長、執行役員、セコムクレジット代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。
中田 貴士 取締役 1991年同社入社。総合企画部長、執行役員、グループ国際本部副本部長を経て、2024年6月より現職。
稲葉 誠 取締役 1987年同社入社。営業開発部長、執行役員、法人営業本部長、セノン代表取締役社長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、廣瀬篁治(モニタス代表取締役会長)、渡邊元(渡辺パイプ代表取締役会長)、原美里(税理士法人横浜弁天会計社代表税理士)、松﨑耕介(マフテックグループ代表取締役社長CEO)、鈴木ゆかり(元資生堂取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「セキュリティサービス事業」「防災事業」「メディカルサービス事業」「保険事業」「地理空間情報サービス事業」「BPO・ICT事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) セキュリティサービス事業


事業所や家庭向けに、オンライン・セキュリティシステム(セントラライズドシステム)をはじめとする各種セキュリティサービスを提供しています。また、常駐警備や現金護送サービス、安全商品の販売も行っています。

契約者から受け取る警備料金や機器販売代金等が主な収益源です。運営は、同社を中心に、セコム上信越、セコム北陸等の国内子会社や、海外子会社が行っています。また、セコム工業が機器製造を、セコムアルファが商品販売支援を行っています。

(2) 防災事業


オフィスビル、プラント、トンネル、文化財、船舶、住宅などの施設に対し、自動火災報知設備や消火設備をはじめとする各種防災システムを提供しています。研究開発から設計、製造、販売、取付工事、保守業務までを一貫して行っています。

顧客から受け取る防災システムの機器代金や工事代金、保守料金が収益源です。運営は、能美防災やニッタンが中心となって行っています。

(3) メディカルサービス事業


在宅医療サービス、電子カルテや遠隔画像診断支援サービス、シニアレジデンスの運営、医療機関向けの不動産賃貸、医療機器・医薬品の販売などを行っています。

患者や医療機関からのサービス利用料、入居者からの利用料、商品の販売代金などが収益源です。運営は、セコム医療システムを中心に、マック、セコムフォート、セコムメディファーマなどが行っています。

(4) 保険事業


セキュリティシステム導入によるリスク軽減を反映した火災保険や、がん治療費の実額を補償する保険、自動車保険など、独自の損害保険商品を提供しています。

契約者から受け取る保険料が主な収益源です。運営は、セコム損害保険が損害保険業を、セコム保険サービスが代理店業務を行っています。

(5) 地理空間情報サービス事業


航空機や人工衛星などを利用した測量・計測で地理情報を集積し、加工・処理・解析した空間情報サービスを、公共機関や民間企業、海外政府機関に提供しています。

国や地方自治体、民間企業等から受け取る測量・計測業務や情報サービスの対価が収益源です。運営は、主にパスコが行っています。

(6) BPO・ICT事業


情報セキュリティサービス、大規模災害対策サービス、クラウドサービス、データセンター事業、コンタクトセンター業務やバックオフィス業務全般のBPOサービスを提供しています。

顧客から受け取るサービス利用料や業務委託料が収益源です。運営は、セコムトラストシステムズ、アット東京、TMJなどが行っています。

(7) その他事業


不動産賃貸事業や建築設備工事事業などを行っています。具体的には、賃貸ビル・マンションの運営や、各種建築設備の設計・施工・監理、電気工事の請負などが含まれます。

テナントからの賃料や、施主からの工事代金が収益源です。運営は、荒井商店、セコムエンジニアリング、東光クリエートなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も順調に推移しており、直近の2025年3月期には売上高・各利益ともに過去最高を更新しました。当期純利益も増加基調を維持しており、安定した成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 10,359億円 10,499億円 11,013億円 11,547億円 11,999億円
経常利益 1,390億円 1,532億円 1,561億円 1,669億円 1,751億円
利益率(%) 13.4% 14.6% 14.2% 14.4% 14.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 600億円 699億円 687億円 869億円 919億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、安定した収益性を維持しています。営業利益も増加しており、増収効果が利益増に寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11,547億円 11,999億円
売上総利益 3,573億円 3,712億円
売上総利益率(%) 30.9% 30.9%
営業利益 1,407億円 1,443億円
営業利益率(%) 12.2% 12.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が817億円(構成比36.0%)、その他が553億円(同24.4%)、その他の人件費が202億円(同8.9%)を占めています。売上原価については、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


各セグメントの状況を見ると、主力であるセキュリティサービス事業、防災事業、メディカルサービス事業、保険事業が増収増益となり、全体の業績を牽引しました。一方、地理空間情報サービス事業やBPO・ICT事業は、減収やコスト増などにより減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
セキュリティサービス事業 6,141億円 6,334億円 1,127億円 1,150億円 18.2%
防災事業 1,606億円 1,771億円 154億円 201億円 11.4%
メディカルサービス事業 801億円 863億円 52億円 54億円 6.3%
保険事業 581億円 594億円 26億円 42億円 7.1%
地理空間情報サービス事業 605億円 584億円 53億円 35億円 5.9%
BPO・ICT事業 1,272億円 1,285億円 118億円 92億円 7.1%
その他事業 541億円 570億円 74億円 86億円 15.1%
調整額 -億円 -億円 -197億円 -217億円 -%
連結(合計) 11,547億円 11,999億円 1,407億円 1,443億円 12.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を投資や借入返済、株主還元に充てている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,658億円 1,678億円
投資CF -1,623億円 -1,008億円
財務CF -955億円 -852億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社業を通じて社会に貢献すること」を企業理念としています。セキュリティサービス事業を中心に、防災、メディカル、保険、地理空間情報、BPO・ICT等の事業を複合的・融合的に提供することで、「安全・安心・快適・便利」な社会を実現する「社会システム産業」の構築を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループでは、「正しさ」を追求する企業風土の醸成に取り組んでいます。社員・組織の基本的な考え方やあるべき姿・行動原理として「セコムの理念」を掲げ、これを基軸とした業務運営を行っています。また、「セコムグループ社員行動規範」に基づき、法令および法の精神の遵守を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


2017年に「セコムグループ2030年ビジョン」を策定し、社会インフラ「あんしんプラットフォーム」構想を掲げています。さらに、その実現に向けた道筋として「セコムグループ ロードマップ2027」を策定し、新サービスの提供や新事業の創出・育成、既存業務の拡充を進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


テクノロジーの進化や労働力人口の減少等の課題に対応するため、以下の取り組みを推進しています。

1. 新しい技術・ノウハウの積極的な活用による警備DXの加速
2. 国内事業におけるサービス・商品の競争力向上
3. 海外事業の強化(現地ニーズに合った事業展開やM&A)
4. 業務効率化及び業務品質の向上
5. 競争力向上のための人財確保
6. コンプライアンス・ガバナンス体制の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「会社の発展と社員の向上は一体不可分」という理念のもと、社会貢献意欲の高い人財の採用・育成を重視しています。「人権方針」に基づき、社員一人ひとりの多様なポテンシャルを引き出し、「創意」「強靭さ」「国際性」を備えた人財を育成することを目指しています。また、多様な人財が活躍できる環境整備や、自律的なキャリア形成支援にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 18.2年 6,554,102円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.1%
男性育児休業取得率 45.9%
男女賃金差異(全労働者) 76.0%
男女賃金差異(正規雇用) 69.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職者比率 (役職者全体)(11.7%)、有給休暇取得率(66.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 労働市場の逼迫


少子化の進行などに伴い、各事業に必要な人財を確保できない場合、サービス提供体制が維持できず、事業運営に支障をきたす可能性があります。同社は、人財投資や採用活動、適正配置、研修・教育体系の整備を進めるとともに、先端技術を活用した業務効率化や生産性向上に努めています。

(2) 技術環境の変化


新しい技術の急速な発展や技術環境の大きな変化により、迅速で大規模な開発・投資が必要となる可能性があります。同社は、専門組織を中心に研究・開発を推進するとともに、他社とも連携し、最先端技術を活用して常に最適なサービスやシステムの創出に努めています。

(3) 法規制の変更


警備業法をはじめとした厳格な法令や規制に従う必要があるため、これらに変更が生じた場合、速やかに対応する必要があり、大きな負担が発生する可能性があります。同社は関係当局の動向を注視し、適時適切に対応することとしています。

(4) 情報漏洩


膨大な顧客情報や機密情報を取り扱っているため、外部への漏洩が発生した場合、信用失墜や損害賠償請求などのリスクがあります。同社は、ネットワーク不正侵入対策や内部からの情報漏洩防止のため、規則・マニュアルの整備、社員教育の徹底、システム・人財両面からの対策強化を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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