ケー・エフ・シー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケー・エフ・シー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ケー・エフ・シーは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する、あと施工アンカーなどの建設資材や土木資材の販売、トンネル関連の建設工事を展開する企業です。直近の業績は、売上高が255億円、経常利益が12億円と減収減益となっていますが、社会インフラの維持補修需要を背景に安定した事業基盤を有しています。


※本記事は、ケー・エフ・シーの有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ケー・エフ・シーってどんな会社?


あと施工アンカーの先駆者として、建設・土木資材の販売やトンネル補修工事などを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1965年に建設用ファスナー類やコンクリートアンカーの販売・施工を目的として設立されました。同年10月に建設ファスナーへと商号を変更し、1986年に現在のケー・エフ・シーへと社名を変更しました。1997年には大阪証券取引所市場第二部(現東京証券取引所)への上場を果たしています。

現在の従業員数は連結で338名、単体で315名です。筆頭株主は事業会社である那須電機鉄工で、第2位も事業会社の積水樹脂です。また、第3位には同社の取引先持株会が名を連ねており、事業パートナーやステークホルダーとの強固な関係性を基盤とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
那須電機鉄工 14.31%
積水樹脂 10.56%
ケー・エフ・シー取引先持株会 6.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員社長は田村知幸氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
田村 知幸 代表取締役社長執行役員社長 1994年同社入社。ファスナー事業部副事業部長などを経て2023年に取締役兼執行役員ファスナー事業部長に就任。2025年より現職。
石田 裕宗 取締役副社長執行役員副社長営業管掌 1992年同社入社。建設事業部長などを経て2020年に取締役兼執行役員建設事業部長に就任。2026年より現職。
稲葉 朗 専務取締役専務執行役員コンプライアンス委員会委員長管理管掌 1991年同社入社。総務部長などを経て2020年に取締役兼執行役員総務部長に就任。2026年より現職。
石原 淳 取締役執行役員土木資材事業部長 1984年同社入社。土木資材事業部東京土木営業部長などを経て2020年に取締役兼執行役員に就任。2021年より現職。
佐竹 辰州 取締役執行役員経営企画部長DX推進部長 2009年同社入社。経営企画部長などを経て2025年に執行役員経営企画部長兼DX推進部長に就任。2026年より現職。


社外取締役は、佐野裕(元ドウシシャ代表取締役副社長)、中桐万里子(親子をつなぐ学びのスペースリレイト代表)、榎本麗美(元西日本放送・フリーアナウンサー)、嶋孝浩(T&Sソリューション代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファスナー事業」「土木資材事業」「建設事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

ファスナー事業


同社グループの主力であるファスナー事業では、主に「あと施工アンカー」をはじめとする建設資材の販売を行っています。また、民間施設の補修・補強工事や上下水道施設などの耐震関連工事といった施工サービスも提供し、独自の工法による現場対応力を強みとしています。

収益源は、建設業者や商社などに対する製品の販売代金や、インフラ事業者・民間企業などからの工事請負代金です。主に同社が事業の運営を担い、製品の開発から販売、施工まで一貫したサービス体制を構築することで、安定した収益モデルを確立しています。

土木資材事業


土木資材事業では、主に山岳トンネルの新設・維持管理に向けたロックボルトやトンネル補助工法資材、防水シートなどの土木資材の販売を行っています。顧客現場のニーズに即した新製品や新工法の提案を行い、現場の課題解決に向けた技術的なサポートも提供しています。

収益は、建設現場の施工業者やゼネコンに対する製品の販売代金が中心です。事業の運営は同社が主体となって行っているほか、非連結子会社の唐山日翔建材科技有限公司においてトンネル支保材の製造・販売を行うなど、幅広い資材供給ネットワークを構築しています。

建設事業


建設事業では、主にトンネル内装やリニューアル工事、コンクリート構造物の補修・補強などの専門的な設備工事を展開しています。社会インフラの老朽化対策としてのメンテナンス需要に特化し、高付加価値な施工サービスを提供しています。

収益は、国や地方自治体といった官公庁、またはゼネコンなどの民間企業からの工事請負代金によって構成されています。運営は同社のほか、連結子会社であるアールシーアイが橋梁関係の耐震補強工事などを担当し、グループの総合力を活かして事業を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、インフラ整備や補修需要を背景に250億円規模の売上高を安定的に維持しています。一方で、原材料価格や労務費の高騰などにより利益面は圧迫されており、利益率は緩やかな低下傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 260億円 226億円 251億円 261億円 255億円
経常利益 26億円 14億円 17億円 15億円 12億円
利益率(%) 10.0% 6.2% 6.9% 5.6% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 9億円 11億円 8億円 8億円

(2) 損益計算書


直近の業績は、売上高が微減となったことに加え、原価や販売管理費の上昇が影響し、売上総利益および営業利益ともに前年を下回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 261億円 255億円
売上総利益 32億円 27億円
売上総利益率(%) 12.1% 10.7%
営業利益 14億円 11億円
営業利益率(%) 5.2% 4.2%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が25億円(構成比45%)、福利厚生費が6億円(同11%)を占めています。売上原価は190億円で、売上原価合計に対する構成比は完成工事原価が62%、商品売上原価が38%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高は、建設事業が100億円規模で最大の規模を誇り、手持ち工事の順調な進捗により安定的に推移しています。ファスナー事業は耐震関連需要が一巡し横ばい、土木資材事業はトンネル物件数の減少などで前年を下回りました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ファスナー 82億円 81億円
土木資材 76億円 71億円
建設 103億円 103億円
連結(合計) 261億円 255億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -0.9億円 5.9億円
投資CF -4.3億円 0.8億円
財務CF -4.5億円 -1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業理念として、「私たちは信用を重んじ、社会の発展と豊かな環境づくりに貢献します」「私たちは時代のニーズに対応し、常に変貌する企業を目指します」といった方針を掲げています。社会インフラの整備や維持を担う企業として、ファスニング分野におけるエンジニアリングの専門家集団を標榜しています。

(2) 企業文化


同社は「現場重視」を原点とする文化を根付かせており、常に学ぶ姿勢を持ち、自己と企業の進歩・改善を目指すことを行動様式としています。技術力による新しい付加価値を提供し、業界に先駆けて高付加価値の製品や工法を開発する「オンリーワン」企業へと挑戦を続ける積極的な企業風土を有しています。

(3) 経営計画・目標


同社は中長期的な成長に向けて「ケー・エフ・シーグループ中期経営計画」を策定し、持続的な企業価値の向上と安定した配当の継続を目指しています。具体的には、長期的には2031年3月期に売上高300億円を目標とし、その通過点として以下の経営指標を設定しています。

* 売上高:270億円(2027年3月期)
* 売上高:265億円(2026年3月期)

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、既存事業の基盤を強化しつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)や人的資本経営、成長投資を推進しています。社会のニーズに対応した新商品・新工法の開発やオープンイノベーションを通じた新規事業の創出に挑むとともに、社内情報システムの刷新による業務効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は企業戦略を支えるのは人材であると認識し、新卒採用の強化に加え、中途採用やカムバック採用などの多様な人材確保に努めています。また、専門人材に向けた研修や各階層別教育による育成を図り、ワーク・ライフ・バランスの向上や女性・シニアの活躍機会の拡大など、従業員が能力を発揮できる環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 14.5年 6,403,066円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.8%


※同社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率については有報に記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の消化率(71.7%)、女性労働者の割合(18.9%)、新規雇用者の人数(26名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向と公共投資への依存


同社の事業は公共投資や民間設備投資の動向に大きく影響を受けます。社会全体の景気低迷や建設業界の需要減少、受注競争の激化が発生した場合、同社グループの受注量が減少し、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。対策として、複数の収益基盤の構築による事業ポートフォリオの強化を図っています。

(2) 資材価格や労務費の高騰リスク


同社は原材料として主に鉄鋼や石油製品を使用しており、これらの価格高騰による調達コストの上昇リスクがあります。また、建設工事における労務費の著しい上昇が工期中に発生した場合、適正な利益確保が困難になる恐れがあります。複数の調達先や協力業者との関係強化により、安定的な調達体制の構築に努めています。

(3) 専門的な人材の確保と育成


事業運営において、サービスの品質維持と効率化のために質の高い人材を長期的に確保することが重要です。少子高齢化等による人手不足で必要な人材が確保できない場合、業務効率の悪化が生じるリスクがあります。これに対し、採用制度の改定やワーク・ライフ・バランスの実現など、働きやすい職場づくりを推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。