※本記事は、株式会社ケー・エフ・シー の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケー・エフ・シーってどんな会社?
建設用ファスナー(あと施工アンカー)の販売・施工を主力とし、トンネル資材や建設工事も手掛ける企業です。
■(1) 会社概要
同社は1965年に株式会社チューガイとして設立され、建設用ファスナーの販売・施工を開始しました。1986年に現社名へ変更し、1997年に大証二部へ上場しました。2007年にはカーボフォル・ジャパンを吸収合併し、事業基盤を強化しています。2025年には設立60周年を迎えました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は327名、単体では307名です。筆頭株主は鉄塔や鋼構造物の製造を行う那須電機鉄工で、第2位は防音壁等の製造を行う積水樹脂です。両社とは事業上の取引関係があります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 那須電機鉄工 | 12.35% |
| 積水樹脂 | 10.56% |
| ケー・エフ・シー取引先持株会 | 6.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役会長は髙田俊太氏、代表取締役社長は田村知幸氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙田 俊太 | 代表取締役会長 | 1992年同社入社。営業推進部長、営業企画推進部長などを経て、2012年代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。 |
| 田村 知幸 | 代表取締役社長執行役員社長 | 1994年同社入社。ファスナー事業部名古屋ファスナー部長、営業企画部部長などを歴任。2023年取締役兼執行役員ファスナー事業部長を経て、2025年4月より現職。 |
| 石田 裕宗 | 専務取締役専務執行役員営業管掌建設事業部長 | 1992年同社入社。建設事業部建設営業一部長、同副事業部長兼東京建設部長などを歴任。2020年取締役兼執行役員建設事業部長を経て、2023年4月より現職。 |
| 稲葉 朗 | 専務取締役専務執行役員コンプライアンス委員会委員長管理管掌総務部長 | 1991年同社入社。総務部長、東京管理部長などを歴任。2024年常務取締役を経て、2025年4月より現職。 |
| 石原 淳 | 取締役執行役員土木資材事業部長 | 1984年同社入社。土木資材事業部東京土木営業部長、同副事業部長などを歴任。2020年6月より現職。 |
社外取締役は、佐野裕(元株式会社ドウシシャ代表取締役副社長)、中桐万里子(株式会社WOW Holdings COO)、榎本麗美(フリーアナウンサー・一般社団法人そらビ代表理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファスナー事業」「土木資材事業」「建設事業」を展開しています。
■(1) ファスナー事業
主に「あと施工アンカー」に関連する建設資材の販売や、耐震関連工事を行っています。建築・土木分野において、構造物の耐震補強や安全対策に必要な製品と技術を提供しています。
収益は、顧客である建設会社等から、アンカー製品等の販売代金や工事代金を受け取ることで得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 土木資材事業
主にトンネル掘削資材(ロックボルト等)の販売を行っています。また、中国の子会社ではトンネル支保材の製造・販売も行っています。
収益は、建設会社等への資材販売代金から得ています。運営は同社および関連会社が行っています。
■(3) 建設事業
主にトンネル内装工事やリニューアル工事、橋梁補修工事などを行っています。得意とする専門技術を活かし、インフラの維持・補修に貢献しています。
収益は、官公庁や民間企業からの工事請負代金として受け取ります。運営は同社および子会社のアールシーアイ株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は建設需要の取り込みにより概ね堅調に推移していますが、利益面では原材料価格の高騰や販管費の増加などにより変動が見られます。直近の2025年3月期は増収となりましたが、利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 278億円 | 260億円 | 226億円 | 251億円 | 261億円 |
| 経常利益 | 34億円 | 26億円 | 14億円 | 17億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | 12.2% | 10.0% | 6.2% | 6.9% | 5.6% |
| 当期利益 | 21億円 | 17億円 | 9億円 | 11億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販管費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率は若干低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 251億円 | 261億円 |
| 売上総利益 | 29億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 12.1% |
| 営業利益 | 16億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び役員報酬が約25億円(構成比45%)、その他経費が約13億円(同24%)を占めています。人件費の増加が販管費全体の増加に寄与しています。
■(3) セグメント収益
ファスナー事業は民間耐震工事の受注増で増収、建設事業も大型工事の進捗により増収となりました。一方、土木資材事業は主力商品の販売減により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ファスナー事業 | 77億円 | 82億円 |
| 土木資材事業 | 82億円 | 76億円 |
| 建設事業 | 91億円 | 103億円 |
| 連結(合計) | 251億円 | 261億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に事業運営に必要な資金の獲得を示唆しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や長期運転資金の調達に関する活動を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や調達といった資金調達に関する活動を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0億円 | -1億円 |
| 投資CF | -3億円 | -4億円 |
| 財務CF | -4億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信用を重んじ、社会の発展と豊かな環境づくりに貢献します」という企業理念を掲げています。ファスニング分野におけるエンジニアリングの専門家集団として、技術力による新しい付加価値を提供し、活力ある国土づくりと社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「常に学ぶ姿勢を持ち、自己と企業の進歩、改善を目指します」という方針のもと、時代のニーズに対応し変貌し続ける姿勢を重視しています。また、社員相互の信頼のもと人材を育成し、希望に満ちた企業を創造することを掲げており、現場重視の精神で「オンリーワン」技術への挑戦を続けています。
■(3) 経営計画・目標
長期目標として2031年3月期に売上高300億円、経常利益21億円を掲げています。その達成に向けた中期経営計画(2025年3月期-2027年3月期)では、DX、人的資本経営、成長投資に取り組み、資本効率の向上と持続的な成長を目指しています。
- 2026年3月期目標:売上高265億円
- 2026年3月期目標:経常利益15.5億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の向上」「技術・開発力の強化」「働き方改革」「経営基盤の再構築」を基本戦略としています。具体的には、技術提案型営業の推進、新規事業の創出、DXによる業務効率化、および環境や社会的責任に配慮した組織力の強化に取り組んでいます。
- 新商品・新工法の開発強化
- 建設DXへの対応とデータ活用
- 既存事業の活性化と固定費圧縮
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業環境の変化に対応できる組織風土の醸成と人材育成を図るため、新卒・中途採用の強化やカムバック採用を行っています。また、女性管理職登用やシニア人材の活躍推進などダイバーシティを推進し、従業員が心身ともに健康で働ける職場環境の整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.6歳 | 14.0年 | 6,640,855円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。なお、女性管理職比率については、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 58.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新規雇用者の人数(31名)、有給休暇の消化率(66.4%)、女性労働者の割合(18.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設市場の動向
公共投資の削減や建設業界の動向、設備投資の動向によっては受注が減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は事業ポートフォリオの強化により対応を図っています。
■(2) 原材料等の市況変動
鉄鋼や石油製品などの原材料価格の高騰により、調達価格が上昇する可能性があります。価格転嫁が困難な場合や、工期中の著しい価格変動があった場合、利益確保が困難となり業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 労災事故災害
屋外での重機作業を含む工事現場では、他の産業に比べ重大な労災事故のリスクが高くなっています。万一、重大災害が発生した場合、社会的信用の失墜や補償費用、工期遅延等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 施工物件の瑕疵
工事における予期せぬ障害物や予見できない瑕疵によって、施工品質の悪化や期間延長が生じる可能性があります。瑕疵に伴う損害賠償請求等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。



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