双日 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

双日 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

双日は東京証券取引所プライム市場に上場する総合商社です。自動車、航空・社会インフラ、エネルギー・ヘルスケアなど多角的に事業を展開しています。直近の業績は、売上収益が2兆5,097億円、税引前利益が1,353億円となり、前期比で増収増益を達成しています。


※本記事は、双日株式会社 の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 双日ってどんな会社?


双日は、自動車やインフラ、エネルギーなど幅広い分野でグローバルに事業を展開する総合商社です。

(1) 会社概要


同社は、2003年4月にニチメンと日商岩井が株式移転により持株会社を設立して発足しました。2004年4月に合併して商号を双日とし、2005年10月には子会社の旧双日を合併しました。2022年4月には東京証券取引所の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結25,118名、単体2,049名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は証券金融会社であり、特定の事業会社による支配色は薄く、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.70%
日本カストディ銀行(信託口) 7.33%
日本証券金融 2.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表者は代表取締役社長CEOの植村幸祐氏です。社外取締役比率は過半数を超えています。

氏名 役職 主な経歴
植村 幸祐 代表取締役社長CEО 1993年日商岩井入社。双日米国会社、化学本部長、経営企画担当本部長などを経て、2024年4月社長COO、同年6月代表取締役社長COOに就任。2025年4月より現職。
藤本 昌義 代表取締役会長 1981年日商岩井入社。自動車第三部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2017年6月代表取締役社長CEOに就任。2024年4月より現職。
渋谷 誠 代表取締役専務執行役員CFO兼コーポレート管掌 1994年日商岩井入社。経営企画部長、執行役員経営企画担当本部長などを経て、2023年4月常務執行役員CFO。2024年6月より現職。
荒川 朋美 取締役専務執行役員CDO 兼 CIOデジタル推進担当本部長 1985年日本アイ・ビー・エム入社。同社取締役兼チーフ・デジタル・オフィサーなどを経て、2021年10月双日顧問。2024年6月より現職。
真鍋 佳樹 取締役監査等委員 1986年日商岩井入社。米州CFO&CAO、常務執行役員主計・財務・IR担当本部長、代表取締役専務執行役員コーポレート管掌などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、齋木尚子(元外務省経済局長)、山本員裕(元帝人代表取締役副社長)、小久江晴子(元三井化学理事)、鈴木智子(公認会計士)、朱殷卿(元JPモルガン証券)、亀岡剛(元昭和シェル石油社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車」「航空・社会インフラ」「エネルギー・ヘルスケア」「金属・資源・リサイクル」「化学」「生活産業・アグリビジネス」「リテール・コンシューマーサービス」および「その他」事業を展開しています。

自動車


完成車のトレーディングや組立製造・卸売、小売事業、品質検査、販売金融などを手掛けています。また、デジタル技術を取り入れた販売・サービス事業も展開しており、世界各地の市場で自動車関連ビジネスを行っています。

主な収益源は、完成車や部品の販売収益、および関連サービスの提供対価です。運営は、双日および双日オートグループジャパンなどの連結子会社が行っています。また、Sojitz de Puerto Rico Corporationなどの海外現地法人も事業を担っています。

航空・社会インフラ


民間機や防衛関連機器の代理店販売、ビジネスジェット、航空機の中古機販売などを手掛ける航空事業と、交通プロジェクトや空港・港湾などのインフラ事業を展開しています。また、工業団地やデータセンターなどの産業・都市インフラ、船舶事業も行っています。

主な収益源は、航空機や船舶の販売・リース料、インフラプロジェクトからの収益などです。運営は、双日および双日エアロスペースなどの連結子会社が行っています。

エネルギー・ヘルスケア


再生可能エネルギーやガス火力発電などのインフラ投資、電力小売、エネルギー資源(石油・ガス・LNG)事業を行っています。また、病院PPPなどのヘルスケア事業や通信タワーなどのICTインフラ、産業機械や軸受などの機械事業も手掛けています。

主な収益源は、電力やエネルギー資源の販売収益、医療・インフラサービスの提供対価、機械設備の販売収益などです。運営は、双日および双日マシナリー、双日ミライパワーなどの連結子会社が行っています。

金属・資源・リサイクル


石炭、鉄鉱石、合金鉄、非鉄金属(銅、アルミ等)、貴金属などの資源や素材を取り扱っています。また、鉄鋼関連事業や資源リサイクル事業も展開しており、資源の安定供給と循環型社会への貢献を目指しています。

主な収益源は、石炭や金属資源、素材の販売収益です。運営は、双日および双日ジェクトなどの連結子会社が行っています。また、持分法適用会社のメタルワンなども事業に関与しています。

化学


有機・無機化学品、機能性樹脂、包装資材、電子材料などを取り扱っています。環境対応樹脂やメタノール製造事業なども展開し、幅広い化学品・素材のトレーディングと事業投資を行っています。

主な収益源は、化学品や合成樹脂製品の販売収益です。運営は、双日および双日プラネット、プラマテルズなどの連結子会社が行っています。

生活産業・アグリビジネス


穀物、肥料、木材製品、製紙、バイオマスなどを取り扱っています。東南アジア等での肥料製造・販売や、ベトナムでの製紙事業、森林資源の開発・加工など、生活に密着した産業分野で事業を展開しています。

主な収益源は、食料原料、肥料、建材、紙製品などの販売収益です。運営は、双日および双日建材、Thai Central Chemical Public Co., Ltd.などの連結子会社が行っています。

リテール・コンシューマーサービス


食品・消費財の流通、コンビニエンスストアや外食事業、商業施設運営、不動産開発などを手掛けています。また、水産品の加工・販売や繊維製品の取り扱いなど、消費者に近い領域での多様な事業を行っています。

主な収益源は、食品・消費財の販売収益、店舗運営収益、不動産賃貸・販売収益などです。運営は、双日および双日食料、双日ファッション、双日ロイヤルインフライトケイタリングなどの連結子会社が行っています。

その他


職能サービス、国内地域法人、物流サービス、保険サービス、ネットワークサービス、クラウドサービスなどを展開しています。

主な収益源は、各種サービスの提供対価や手数料です。運営は、双日九州、双日テックイノベーション、双日ロジスティクスなどの連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は2021年3月期から増加傾向にあり、2025年3月期には2兆5,000億円を超えています。利益面でも、税引前利益と当期利益は2021年3月期を底に大きく回復・成長しており、特に2023年3月期以降は高い水準を維持しています。全体として業績は拡大基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 16,025億円 21,008億円 24,798億円 24,146億円 25,097億円
税引前利益 374億円 1,173億円 1,550億円 1,255億円 1,353億円
利益率(%) 2.3% 5.6% 6.3% 5.2% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 270億円 823億円 1,112億円 1,008億円 1,106億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上収益は前期比で増加し、売上総利益も増加しています。売上総利益率は13%台後半で推移しており、収益性は安定的に向上しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果により利益を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 24,146億円 25,097億円
売上総利益 3,260億円 3,468億円
売上総利益率(%) 13.5% 13.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,430億円(構成比53.0%)、業務委託費が201億円(同7.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別では、化学や金属・資源・リサイクル、自動車、リテール・コンシューマーサービスなどが大きな売上規模を占めています。利益面では、金属・資源・リサイクルやエネルギー・ヘルスケアが大きく貢献しています。当期は多くのセグメントで増収となりましたが、金属・資源・リサイクルは減収減益となりました。一方、航空・社会インフラやエネルギー・ヘルスケアは大幅な増益を達成しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
自動車 4,037億円 4,336億円 23億円 16億円 0.4%
航空・社会インフラ 522億円 743億円 61億円 123億円 16.6%
エネルギー・ヘルスケア 1,632億円 2,023億円 140億円 224億円 11.1%
金属・資源・リサイクル 4,842億円 4,795億円 435億円 292億円 6.1%
化学 5,599億円 5,872億円 148億円 200億円 3.4%
生活産業・アグリビジネス 2,678億円 2,643億円 75億円 64億円 2.4%
リテール・コンシューマーサービス 4,286億円 4,189億円 131億円 114億円 2.7%
その他 2,360億円 495億円 101億円 10億円 2.0%
調整額 549億円 -億円 -5億円 62億円 -
連結(合計) 24,146億円 25,097億円 1,008億円 1,106億円 4.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業は赤字ですが、将来成長のために借入で投資を継続している「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1,122億円 -167億円
投資CF 124億円 -941億円
財務CF -1,865億円 1,064億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「双日グループは、誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します」という企業理念を掲げています。この理念のもと、事業基盤の拡充や持続的成長といった「双日が得る価値」と、地域経済の発展や環境配慮といった「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、「New way, New value」というスローガンを掲げ、常に新しい発想を持ち、スピード感あるビジネスを展開することを重視しています。人材を最も重要な経営資源「人財」と捉え、多様なスキル・経験を持つ自立した個の確立や、個の力を最大化する組織・カルチャーの組成を目指しています。また、「双日らしいカルチャー」として、挑戦や思考の柔軟さを深める風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げ、Next Stageとして当期利益2,000億円、時価総額2兆円を目指しています。その実現に向けた「中期経営計画2026」では、以下の定量目標を設定しています。

* 3ヶ年で6,000億円の投資
* ROE 12%超
* 当期利益 1,200億円超(3ヶ年平均)
* 基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2026」では、同社独自の強みを活かした「双日らしい成長ストーリー」の実現を目指し、成長基盤と人的資本の強化に取り組んでいます。既存事業の磨き上げと新規投資の拡大を進め、事業と収益の「カタマリ」を構築します。また、全社横断的に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」を強化し、デジタル技術の活用や脱炭素社会実現に向けた事業創出を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「事業や人材を創造し続ける総合商社」の実現に向け、「事業創出力」と「事業経営力」の強化を掲げています。多様な人材の獲得・育成とミドルマネジメントの強化を進め、機動的な人材配置により持続的に事業創出と経営ができる人材を育成します。また、「双日らしいカルチャー」や「Digital-in-All」を土台に、挑戦や柔軟な思考を促進する風土を醸成しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 15.0年 12,742,594円


※平均年間給与額には、賞与、超過勤務手当、基準外給与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 96.1%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規雇用) 59.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 54.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境の変化によるリスク


同社グループはグローバルにビジネスを展開しており、世界経済や各国・地域の政治経済状況の影響を受けます。景気後退や経済動向の悪化は、グループの経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に特定の地域における経済の低迷は、当該地域での事業活動に直接的な打撃を与える恐れがあります。

(2) カントリーリスク


取引先所在国や事業展開国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化により、計画通りの事業活動が困難になるリスクがあります。同社は国ごとの格付けやエクスポージャー管理を行い、貿易保険などを活用してリスクヘッジを行っていますが、カントリーリスクによる損失発生の可能性を完全に排除することはできず、顕在化した場合は業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 地政学リスク


特定国・地域における社会的、政治的、軍事的な緊張の高まりにより、従業員や資産の安全が脅かされたり、貿易・投資活動が阻害されたりする可能性があります。同社は調査・分析や安全保障貿易管理を通じて対応に努めていますが、予期せぬ事態の発生により経営資源への影響が生じ、業績が悪化する可能性があります。

(4) 環境・気候変動リスク


気候変動に伴う自然災害(物理的リスク)や、脱炭素社会への移行に伴う規制強化(移行リスク)が事業に影響を与える可能性があります。また、環境問題への関与が疑われた場合の社会的評価の低下や訴訟リスクも存在します。同社は脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めていますが、これらのリスクが顕在化した場合、収益や資産価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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