双日 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

双日 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

双日は東京証券取引所プライム市場に上場する総合商社です。自動車、航空・社会インフラ、エネルギー・ヘルスケア、金属・資源・リサイクル、化学など、幅広い分野でグローバルに多角的な事業を展開しています。直近の業績トレンドとしては、売上収益が増加傾向にある一方で、税引前利益は減益となっています。


※本記事は、双日株式会社 の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月9日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 双日ってどんな会社?


双日は国内外で物品の売買や製造・販売、各種プロジェクトの企画、投資などを展開する総合商社です。

(1) 会社概要


2003年、ニチメンと日商岩井が共同して株式移転を行い、ニチメン・日商岩井ホールディングスを設立し株式を上場しました。その後、子会社の合併などを経て、2004年に子会社が双日に商号を変更し、2005年には親会社が子会社を吸収合併して現在の双日となりました。

同社の従業員数は連結で26,789名、単体で2,094名です。主要な株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は日本カストディ銀行(信託口)、第3位は野村信託銀行(投信口)となっており、信託銀行が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.10%
日本カストディ銀行(信託口) 7.44%
野村信託銀行(投信口) 2.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役社長CEOは植村幸祐氏が務めており、社外取締役の比率は54.5%となっています。

氏名 役職 主な経歴
植村 幸祐 代表取締役社長CEO 1993年日商岩井入社。双日米国会社兼米州エネルギー・金属部門長、化学本部長などを経て2024年に代表取締役社長COO。2025年より現職。
藤本 昌義 代表取締役会長 1981年日商岩井入社。自動車第三部長、双日米国会社兼米州機械部門長等を経て2017年に代表取締役社長CEO。2024年に代表取締役会長CEOとなり2025年より現職。
渋谷 誠 代表取締役専務執行役員CFO 兼コーポレート管掌 1994年日商岩井入社。経営企画部長、経営企画、サステナビリティ推進担当本部長等を経て、2024年に専務執行役員CFO。同年より現職。
荒川 朋美 取締役専務執行役員CDO 兼 CIO 兼デジタル推進担当本部長 1985年日本アイ・ビー・エム入社。同社取締役等を経て、2021年同社顧問に就任。執行役員CDO等を経て、2024年より現職。
真鍋 佳樹 取締役常勤監査等委員 1986年日商岩井入社。エネルギー・金属部門コントローラー室長、主計、財務、IR担当本部長、専務執行役員等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、朱殷卿(元コアバリューマネジメント代表取締役)、亀岡剛(元出光興産代表取締役副会長)、定塚由美子(元厚生労働省人材開発統括官)、小久江晴子(元三井化学参事)、鈴木智子(鈴木智子公認会計士事務所代表)、武田和彦(元ソニーグループ執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車」「航空・社会インフラ」「エネルギー・ヘルスケア」「金属・資源・リサイクル」「化学」「生活産業・アグリビジネス」「リテール・コンシューマーサービス」および「その他」事業を展開しています。

自動車


完成車トレーディング、組立製造・卸売事業、小売事業、品質検査事業、販売金融、デジタル技術を取り入れた販売及びサービスなどを展開しています。グローバル市場を対象に自動車関連の幅広いニーズに応えるサービスを提供しています。

収益源は自動車の販売代金や品質検査の手数料、販売金融による利息収入などです。事業の運営は双日オートグループジャパンなどの子会社が主体となって行っており、国内外の関連会社と連携して自動車バリューチェーンを構築しています。

航空・社会インフラ


民間機や防衛関連機器の代理店販売、ビジネスジェットなどの航空事業に加え、鉄道や空港などの交通インフラ事業を展開しています。また、工業団地やスマートシティなどの産業・都市インフラ事業、新造船や中古船などの船舶事業も手がけています。

航空機や船舶、インフラ設備の販売代金や各種代理店手数料などが主な収益源です。事業の運営は双日エアロスペースやジャプコンなどの子会社が担っており、交通から産業インフラに至るまで多角的に社会基盤を支えるビジネスを推進しています。

エネルギー・ヘルスケア


再生可能エネルギーやガス火力発電などのインフラ投資事業、電力小売や省エネルギーサービスを展開しています。また、石油やガスのエネルギー事業、通信タワーなどのICTインフラ事業、病院PPPなどのヘルスケア事業や産業機械事業も行っています。

電力・ガス等の販売収入やエネルギー関連サービスの提供による手数料、ヘルスケア事業の運営収益などが主な収益源です。双日マシナリーや双日ミライパワーなどの子会社が事業を運営し、インフラ投資とサービス提供を組み合わせた事業を展開しています。

金属・資源・リサイクル


石炭や鉄鉱石、ニッケルなどの合金鉄、アルミナ、銅、貴金属などの資源や金属製品を取り扱っています。さらに、コークスや炭素製品、鉄鋼関連事業に加え、環境負荷低減に向けた資源リサイクル事業もグローバルに展開しています。

各種資源や金属製品の販売代金、並びに資源開発に伴う権益からの収益が主な収入源となります。事業の運営は双日ジェクトなどの子会社に加え、メタルワンなどの持分法適用会社が担っており、上流の資源開発から下流の製品販売まで幅広く推進しています。

化学


有機・無機化学品、機能化学品、レアアース、各種樹脂などの化学品のほか、ヘルスケアや天産品を取り扱っています。また、環境対応樹脂や食品用包装資材、液晶・プリント基板等の電子材料、産業資材用繊維原料なども提供しています。

各種化学品や包装資材、電子材料などの販売による収益が主な収入源です。事業の運営は双日プラネットやプラマテルズ、日本エイアンドエルなどの子会社が中心となって行っており、幅広い産業に向けて素材や関連製品を供給しています。

生活産業・アグリビジネス


穀物や小麦粉、飼料原料、各種食品原料などの食料分野に加え、化成肥料や農業・地域創生などのアグリビジネスを展開しています。また、建設資材や木材製品、脱炭素に向けたバイオマス事業なども手がけています。

食品原料や肥料、木材製品などの販売代金が主な収益源となっています。事業の運営は双日建材などの子会社が担っており、アジアの新興国などを中心に農業や食料供給を支えるビジネスを展開して持続的な収益基盤の構築を図っています。

リテール・コンシューマーサービス


食品や消費財の流通事業、コンビニエンスストア事業、外食事業、商業施設の運営事業を展開しています。また、不動産開発や管理運営、各種食品原料や農水産加工品、衣料製品、衛生材料などの生活に密着した幅広い商材を取り扱っています。

食品や衣料品、消費財の販売収入、商業施設や不動産の賃貸・管理による収益などが主な収入源です。双日食料やマリンフーズ、双日ファッションなどの子会社が運営を担い、消費者の多様なニーズに応える事業をグローバルに展開しています。

その他


物流サービス事業や保険サービス事業、ネットワークサービス事業などを展開しています。また、国内の地域法人を通じたビジネスや森林ファンド管理事業など、グループ全体の事業を支える多様な職能サービスも提供しています。

物流や保険の手数料収入、ITやネットワークサービスの提供による収益などが主な収入源です。双日九州や双日テックイノベーション、双日ロジスティクスなどの子会社が事業を運営しており、グループ内外に向けて付加価値の高いサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上収益は安定的な成長を続けており、全体として増加傾向にあります。一方で、税引前利益は一時的に増加した時期もありましたが、直近では販売費及び一般管理費の増加などの影響により減益となっています。利益率も低下傾向にあり、収益性の向上が今後の課題となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 21,008億円 24,798億円 24,146億円 25,097億円 27,574億円
税引前利益 1,173億円 1,550億円 1,255億円 1,353億円 1,156億円
利益率(%) 5.6% 6.3% 5.2% 5.4% 4.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 823億円 1,112億円 1,008億円 1,106億円 1,036億円

(2) 損益計算書


直近2期間の単体ベースの損益構成を見ると、売上収益は増加しているものの、売上総利益は減少傾向にあります。これに伴い、売上総利益率も低下しており、原価の増加が利益を圧迫している状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 25,097億円 27,574億円
売上総利益 651億円 613億円
売上総利益率(%) 2.6% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が192億円(構成比25%)、業務委託費が187億円(同24%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの業績を見ると、エネルギー・ヘルスケアは省エネ関連事業の新規連結などにより大幅な増収増益を達成しています。一方、金属・資源・リサイクルは豪州原料炭事業における市況下落や減損の計上が響き、減益となりました。自動車も豪州中古車事業での減損等により損失を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
自動車 4,336億円 4,227億円 16億円 -53億円 -1.3%
航空・社会インフラ 819億円 1,214億円 122億円 155億円 12.8%
エネルギー・ヘルスケア 1,948億円 3,485億円 226億円 319億円 9.2%
金属・資源・リサイクル 4,795億円 4,951億円 292億円 48億円 1.0%
化学 5,872億円 6,085億円 200億円 200億円 3.3%
生活産業・アグリビジネス 2,643億円 2,648億円 64億円 59億円 2.2%
リテール・コンシューマーサービス 4,193億円 4,428億円 114億円 142億円 3.2%
その他 498億円 541億円 10億円 106億円 19.6%
調整額 -7億円 -7億円 62億円 59億円 -
連結(合計) 25,097億円 27,574億円 1,106億円 1,036億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは積極型に分類されます。営業で獲得した資金に加え、借入等によって積極的に投資を行っている状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -167億円 168億円
投資CF -941億円 -866億円
財務CF 1,064億円 1,102億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「双日グループは、誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します。」という企業理念と、「New way, New value」というスローガンを掲げています。事業基盤拡充などの「双日が得る価値」と、地域経済の発展や環境配慮などの「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化を目指し、持続的な企業価値向上に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、人材を最も重要な経営資源である「人財」として価値創造モデルの中心に据える文化を持っています。実効性の高い戦略と充実したコーポレート・ガバナンスのもと、常に新しい発想を持ち、外部環境の目まぐるしい変化やニーズの多様化に先駆けたスピード感あるビジネスを展開する行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた「目指す姿」として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げ、Next Stageとして当期利益2,000億円と時価総額2兆円への成長をターゲットとしています。「中期経営計画2026」では、成長基盤と人材への積極投資を進める計画です。

* 財務規律を堅持した上で6,000億円の投資を実行
* 3ヶ年平均でROE12%超を確保
* 3ヶ年平均で当期利益1,200億円超を確保
* 基礎的営業キャッシュ・フローの3割程度を株主還元に充当

(4) 成長戦略と重点施策


競争優位性を追求する「KATI(カチ)モデル」を設定し、既存の強みを起点に新領域への挑戦を通じて事業と収益の「カタマリ」を構築する戦略を推進しています。また、全ての事業領域で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を全社横断的に強化し、データやAIを活用したビジネスモデル変革に取り組んでいます。さらに、多様なスキルを持つ自立した「個」の確立に向けた人的資本への投資も重点的に行っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点を人材戦略の基本方針としています。多様なバックグラウンドを持つ人材が高い自律性と成長意欲を持ち、能力を最大限に活かせるよう人事制度の整備や文化醸成を後押ししています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 14.7年 12,571,801円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 108.9%
男女賃金差異(全従業員) 59.6%
男女賃金差異(正規雇用) 59.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員持株会加入率(92.2%)、海外グループ会社CxO(現地人材)比率(48%)、挑戦指数(65%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) カントリーリスクおよび地政学リスク


グローバルに事業を展開しているため、特定国・地域における政治的、軍事的な緊張の高まりや法制度の変化により、経営資源が危険に晒されるリスクがあります。貿易保険の活用や国格付けに基づくエクスポージャーの上限設定などを行っていますが、事業活動が阻害され、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 商品価格および市場変動リスク


多岐にわたる商品を取り扱っており、相場変動による商品価格変動リスクや為替・金利変動リスクを負っています。ポジション限度額の設定や損切りルールの運用、先物為替予約や金利スワップなどのヘッジ策を講じていますが、予期せぬ市場の変動により、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 事業投資にかかるリスク


様々な事業領域で投資を行っていますが、計画通りの収益が獲得できないリスクや撤退時に損失が発生するリスクが存在します。厳格な事業投資基準を設け、ROICなどを活用して定期的に事業性を評価・モニタリングしていますが、想定通りに事業が進まず減損損失などが発生した場合、財務状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(4) イノベーションと技術革新リスク


AIの高度活用を含むDXやビジネスモデルの変革が進む中、これらに適切に対応できず提供する付加価値が低下し、成長機会を逸失するリスクがあります。デジタル人材の育成やデジタル基盤の整備を推進していますが、技術進化や法規制への対応が遅れた場合、競争力が低下し業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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