#記事タイトル:アルフレッサ ホールディングス転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社アルフレッサ ホールディングス の有価証券報告書(第22期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルフレッサ ホールディングスってどんな会社?
国内最大級の医薬品流通グループを統括する持株会社です。卸売から製造、調剤薬局まで幅広い事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は2003年、アズウェルと福神の経営統合により設立され上場しました。2004年には事業を持株会社体制へ移行し、卸売事業を行うアルフレッサと製造事業を行うアルフレッサ ファーマに再編しました。その後も多くの医薬品卸企業や調剤薬局チェーンを子会社化し、事業規模を拡大。2022年には東証プライム市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は12,452名(単体56名)です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は外国法人の資産管理を行うNORTHERN TRUST CO. (AVFC) RE SILCHESTER INTERNATIONAL INVESTORS INTERNATIONAL VALUE EQUITY TRUSTです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.79% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE SILCHESTER INTERNATIONALINVESTORS INTERNATIONALVALUE EQUITY TRUST | 5.05% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は荒川 隆治氏です。取締役16名のうち、社外取締役は25.0%(4名)を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荒川 隆治 | 代表取締役社長 | 山之内製薬(現アステラス製薬)を経て中薬(現アルフレッサ)入社。同社社長等を歴任し、2020年6月より現職。 |
| 福神 雄介 | 代表取締役副社長医療用医薬品等卸売事業・海外事業担当 | 福神(現アルフレッサ)入社。同社ロジスティクス本部長、社長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 大橋 茂樹 | 取締役常務執行役員事業戦略担当(事業企画・トータルサプライチェーンサービス企画管掌) | 昭和薬品(現アルフレッサ ファーマ)入社。アルフレッサ執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
| 田中 敏樹 | 取締役常務執行役員コーポレート担当(総務・財務企画・コーポレートコミュニケーション管掌) | 三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。アルフレッサ取締役常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
| 岸田 誠一 | 取締役 | 日本商事(現アルフレッサ ファーマ)入社。同社代表取締役副社長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 勝木 尚 | 取締役 | ピジョンを経て丹平中田(現アルフレッサ ヘルスケア)入社。同社代表取締役会長を経て、2017年6月より現職。 |
| 島田 浩一 | 取締役 | 日本商事(現アルフレッサ ファーマ)入社。同社代表取締役社長等を経て、2018年6月より現職。 |
社外取締役は、原 大(元双日取締役会長)、木下 学(元日本電気シニアオフィサー)、竹内 淑恵(法政大学名誉教授)、國政 貴美子(元ベネッセホールディングスCHO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医療用医薬品等卸売事業」「セルフメディケーション卸売事業」「医薬品等製造事業」「医療関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 医療用医薬品等卸売事業
病院、診療所、調剤薬局などの医療機関に対して、医療用医薬品、医療用検査試薬、医療機器・材料などを供給しています。グループの中核を担う事業であり、社会インフラとして医薬品の安定供給を使命としています。
主な収益源は医療機関への商品販売による対価です。運営は主にアルフレッサ、四国アルフレッサ、ティーエスアルフレッサ、明祥、琉薬、東北アルフレッサなどの地域ごとの卸売子会社が行っています。
■(2) セルフメディケーション卸売事業
ドラッグストアや薬局・薬店などに対して、一般用医薬品、健康食品、サプリメントなどのヘルスケア関連商品を販売しています。セルフメディケーションの推進を支援する役割を担っています。
収益は小売店等への商品販売によって得ています。運営は主にアルフレッサ ヘルスケアが行っており、全国規模での流通ネットワークを構築しています。
■(3) 医薬品等製造事業
医療用医薬品、医療用検査試薬、医療機器・用具、医薬品原薬などの研究開発、製造および販売を行っています。独自の創薬や診断技術の開発に加え、受託製造なども手がけています。
収益源は、医療機関や他の製薬企業等への製品販売および受託製造による対価です。運営は主にアルフレッサ ファーマ、アルフレッサ ファインケミカルなどが行っています。
■(4) 医療関連事業
地域の患者に対して、処方箋に基づく調剤業務や服薬指導、医薬品の販売などを行う調剤薬局チェーンを展開しています。在宅医療への対応や未病予防など、地域医療への貢献を目指しています。
主な収益は、患者や健康保険組合等から受け取る調剤報酬および商品販売代金です。運営は主にアポクリートが行っています。
■(5) その他事業
グループ全体の業務効率化や新規事業の開発などを担っています。情報システムの運用・保守、再生医療関連事業、CRO・PMS事業などを展開しています。
収益源は、システム利用料や業務受託費などです。運営はアルフレッサ システム、セルリソーシズ、ArkMSなどがそれぞれの専門分野を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は緩やかな増加傾向にあります。利益面では、経常利益は2024年3月期に大きく伸長しましたが、2025年3月期は微増にとどまりました。当期純利益については増減があり、直近では減益となっています。全体として安定した収益基盤を有していますが、利益率の改善が課題といえます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆6104億円 | 2兆5856億円 | 2兆6961億円 | 2兆8585億円 | 2兆9611億円 |
| 経常利益 | 319億円 | 326億円 | 328億円 | 400億円 | 405億円 |
| 利益率(%) | 1.2% | 1.3% | 1.2% | 1.4% | 1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 245億円 | 322億円 | 258億円 | 296億円 | 274億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は約3.6%増加し、売上総利益も増加しました。一方で、販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益は前期比で微減となりました。売上原価率は依然として高い水準にあり、薄利多売のビジネスモデルであることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆8585億円 | 2兆9611億円 |
| 売上総利益 | 2064億円 | 2139億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.2% | 7.2% |
| 営業利益 | 385億円 | 381億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 1.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が532億円(構成比30.3%)、荷造運送費が242億円(同13.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
医療用医薬品等卸売事業が売上の大部分を占めており、増収となりましたが、営業利益は横ばいでした。セルフメディケーション卸売事業は増収増益を達成しました。一方、医薬品等製造事業は増収ながら大幅な減益、医療関連事業も増収減益となっており、セグメントによって利益動向にばらつきが見られます。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 医療用医薬品等卸売事業 | 2兆5219億円 | 2兆6211億円 | 331億円 | 331億円 | 1.3% |
| セルフメディケーション卸売事業 | 2623億円 | 2653億円 | 27億円 | 30億円 | 1.1% |
| 医薬品等製造事業 | 376億円 | 377億円 | 19億円 | 13億円 | 3.4% |
| 医療関連事業 | 367億円 | 370億円 | 7億円 | 6億円 | 1.6% |
| その他事業(報告セグメント外) | - | - | - | - | - |
| 調整額 | △337億円 | △358億円 | 1億円 | 2億円 | - |
| 連結(合計) | 2兆8585億円 | 2兆9611億円 | 385億円 | 381億円 | 1.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アルフレッサグループは、医薬品サプライチェーンを支える社会的責任を果たすとともに、財務の健全性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元の最適バランスを追求し、企業価値向上を目指しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少や運転資本の変動等により、前期と比較して増加額が縮小しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、物流センター建設等の設備投資が増加した一方で、保有株式の売却収入も増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得支出が減少したことや、前期にあった社債・長期借入れによる収入がなくなったこと等により、減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 864億円 | 56億円 |
| 投資CF | △142億円 | △249億円 |
| 財務CF | △197億円 | △235億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けします」という思いをグループ理念として掲げています。この理念のもと、健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できる「ヘルスケアコンソーシアム」の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「誠実」「挑戦」「創造」といった価値観を重視していることがうかがえます。コンプライアンスの遵守を最優先事項としつつ、変化する医療環境に対応するための新しい価値創造や、グループの総合力を発揮する姿勢を大切にしています。また、サステナビリティ基本方針を策定し、持続可能な社会への貢献を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2028年3月期を最終年度とする「25-27 中期経営計画」を策定しています。経営目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高(連結):3兆3,000億円
* 営業利益(連結):435億円
* ROE(3年平均):7%水準
* 投資計画(累計):1,200億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「トータルサプライチェーンサービス(TSCS)」の進化拡大を掲げ、医薬品の導入・開発から製造、物流、販売、市販後調査までを一貫して提供するモデルの確立を目指しています。成長事業・新規事業への戦略的投資を行い、再生医療やスペシャリティ医薬品などの成長領域に対応する機能を強化します。
* 投資計画:3か年累計で1,200億円規模
* 累計営業利益額:1,190億円(3年間)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ヘルスケアコンソーシアム」の実現に向けて、高い専門性を備えたプロフェッショナル人財の育成と配置を重視しています。「挑戦心」「適応力」「高い倫理観」「強い使命感」を持つ人財を求め、グループ研修や合同採用を通じて育成・確保を図っています。また、DX人財の育成や女性管理職比率の向上など、多様性の推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 15.7年 | 8,048,237円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 62.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 62.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 68.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率目標(2031年3月期10.0%以上)、DXリテラシー向上研修受講者数(延べ約3,300名)、従業員エンゲージメント調査回答率(86%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造事業に係るリスク
医薬品等の開発において、全ての品目が発売できるとは限らず、開発中止のリスクがあります。また、原材料の調達遅延や製品の副作用・異物混入等による回収が発生した場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は品質管理システムの導入等により、安全性・信頼性の向上に努めています。
■(2) システムトラブルおよびサイバーリスク
事業活動がコンピュータシステムに大きく依存しており、災害や事故、サイバー攻撃等によるシステム停止や情報漏洩が発生した場合、業務に支障をきたす可能性があります。これに対し、複数拠点へのデータセンター設置や監視体制の強化、セキュリティ対策を講じています。
■(3) 事業投資に係るリスク
物流センター等のインフラ投資やベンチャー企業への出資、M&A投資を行っていますが、これらは多額の資金を要し、回収に長期間かかる傾向があります。投資の成否によっては減損リスク等が発生する可能性があります。同社は事業投資委員会等での審議を通じてリスク低減を図っています。
■(4) 気候変動リスク
気候変動による移行リスクや物理的リスクが経営に影響を与える可能性があります。特に、脱炭素社会への移行に伴う規制強化や市場変化、自然災害の激甚化などが挙げられます。同社はTCFD分科会等を設置し、リスクと機会の特定・評価および対策の推進に取り組んでいます。



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