アルフレッサホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルフレッサホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルフレッサ ホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、医療用医薬品等卸売事業やセルフメディケーション卸売事業、医薬品等の製造事業、調剤薬局の経営を主力とする企業です。直近の業績では、市場の伸長等により売上高が増加したものの、物流費の高騰等により営業利益は減少する増収減益となりました。


※本記事は、アルフレッサ ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルフレッサ ホールディングスってどんな会社?


医療用医薬品等の卸売や製造、調剤薬局の経営を幅広く手掛け、医薬品の安定供給を支える企業です。

(1) 会社概要


2003年9月、アズウェルと福神が株式移転により同社を設立し、東証等に上場しました。2004年に会社分割により卸売事業のアルフレッサと製造事業のアルフレッサ ファーマに再編されました。その後も積極的なM&A等を進め、2021年には調剤薬局事業をアポクリートへ統合し、現在の事業基盤を構築しました。

現在、同社グループの連結従業員数は12,525名、単体では67名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はノーザントラスト(常任代理人 香港上海銀行東京支店)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)といった金融機関や信託銀行が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.71%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC)RE SILCHESTER INTERNATIONALINVESTORS INTERNATIONALVALUE EQUITY TRUST(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 5.38%
日本カストディ銀行(信託口) 4.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は荒川隆治氏が務めており、社外取締役の比率は50.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
荒川 隆治 代表取締役社長 1987年山之内製薬入社。中薬(現アルフレッサ)取締役等を経て、2020年6月より現職。
福神 雄介 代表取締役副社長医療用医薬品等卸売事業・海外事業担当 2000年福神(現アルフレッサ)入社。同社ロジスティクス本部長等を経て、2025年4月より現職。
大橋 茂樹 取締役常務執行役員事業戦略担当(事業企画・トータルサプライチェーンサービス企画管掌) 1988年昭和薬品(現アルフレッサ ファーマ)入社。アルフレッサ医薬営業本部営業戦略部長等を経て、2025年4月より現職。
田中 敏樹 取締役常務執行役員コーポレート担当(総務・財務企画・コーポレートコミュニケーション管掌) 1986年三和銀行入行。アルフレッサ経営企画本部経営企画部長等を経て、2025年4月より現職。
島田 浩一 取締役 1982年日本商事(現アルフレッサ ファーマ)入社。アルフレッサ ファーマ代表取締役社長執行役員等を経て、2018年6月より現職。
上田 裕治 取締役(監査等委員) 1983年ダイワ薬品(現四国アルフレッサ)入社。同社執行役員等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、木下学(元日本電気執行役員副社長)、竹内淑恵(法政大学名誉教授)、國政貴美子(元ベネッセスタイルケア代表取締役社長)、伊東卓(元第二東京弁護士会会長)、木﨑博(元三菱商事連結IT企画本部長)、飯塚幸子(ラウレア代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療用医薬品等卸売事業」「セルフメディケーション卸売事業」「医薬品等製造事業」「調剤薬局等事業」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 医療用医薬品等卸売事業


医療用医薬品、医療用検査試薬、医療機器や材料などを医療機関や調剤薬局へ供給しています。地域のニーズに応じた強固な全国流通ネットワークと、高度な専門知識を持つ人材により、医薬品等の安定供給を支えています。

医薬品等の卸販売による収益を主な収入源としています。運営は主にアルフレッサや四国アルフレッサ、ティーエスアルフレッサ等の地域ごとのグループ会社が担い、各地域に根ざした事業展開を行っています。

(2) セルフメディケーション卸売事業


一般用医薬品や健康食品、ヘルスケア関連商品などを薬局やドラッグストア等の小売業者へ供給しています。生活者の健康志向の高まりに応える多様な商品の提供や、店舗づくりを支援するサービスの提案を行っています。

小売業者等への商品卸販売による収益を主な収入源としています。運営は主にアルフレッサ ヘルスケアが担い、全国のドラッグストア等を対象とした幅広いネットワークと提案力を活かして事業を展開しています。

(3) 医薬品等製造事業


医薬品や医療用検査試薬、医療機器・用具、医薬品原薬などの製造販売を行っています。中枢神経系疾患やアレルギー疾患の治療薬などの自社開発に加え、他社との共同開発や受託製造にも積極的に取り組んでいます。

医療機関等への自社製品の販売や、製薬企業等からの受託製造による収益を主な収入源としています。運営は主にアルフレッサ ファーマおよびアルフレッサ ファインケミカルが担っています。

(4) 調剤薬局等事業


地域に密着したかかりつけ薬局としての調剤薬局の経営を行っています。患者への服薬指導や在宅医療への対応を通じて、地域医療への貢献や健康寿命の延伸を支援する各種サービスの提供に取り組んでいます。

調剤報酬による収益などを主な収入源としています。運営は主にアポクリートが担っており、地域医療機関との連携強化や新たな薬局機能の拡充を進めながら全国で店舗を展開しています。

(5) その他


情報システムの運用や保守、開発事業に加え、再生医療に関連する細胞原料や特定細胞加工物等の製造、およびCRO(医薬品開発受託)などの事業を展開しています。

システム関連の受託費用や再生医療関連のサービス提供による収益などを主な収入源としています。運営はアルフレッサ システムやセルリソーシズ、ArkMSなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は着実な増加傾向が続いており、2兆5,000億円台から3兆1,000億円規模へと拡大しています。一方、経常利益は300億円台から400億円台で推移し、直近ではやや減少したものの、安定した利益水準を維持しています。当期純利益も増減を繰り返しながら堅調に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2兆5,856億円 2兆6,961億円 2兆8,585億円 2兆9,611億円 3兆1,041億円
経常利益 326億円 328億円 400億円 405億円 386億円
利益率(%) 1.3% 1.2% 1.4% 1.4% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 136億円 204億円 133億円 184億円 168億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から増加し3兆円を突破しましたが、売上総利益率は微減となりました。また、将来の成長を見据えた事業投資等の影響もあり、営業利益は減少しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2兆9,611億円 3兆1,041億円
売上総利益 2,139億円 2,179億円
売上総利益率(%) 7.2% 7.0%
営業利益 381億円 362億円
営業利益率(%) 1.3% 1.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が544億円(構成比30%)、荷造運送費が251億円(同14%)、福利厚生費が118億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


医療用医薬品等卸売事業が売上高の大部分を牽引し、市場伸長等により増収を達成しました。一方、医薬品等製造事業は薬価改定の影響などで減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
医療用医薬品等卸売事業 2兆6,211億円 2兆7,631億円
セルフメディケーション卸売事業 2,653億円 2,666億円
医薬品等製造事業 377億円 372億円
調剤薬局等事業 370億円 372億円
連結(合計) 2兆9,611億円 3兆1,041億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に分類されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 56億円 386億円
投資CF -249億円 -87億円
財務CF -235億円 -140億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「すべての人に、いきいきとした生活を創造しお届けします」という思いをグループ理念として掲げています。また、将来のめざす姿として、「健康に関するあらゆる分野の商品・サービスを提供できるヘルスケアコンソーシアム」の実現を長期目標に位置づけ、医療・ヘルスケア領域における社会課題の解決と持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、共に働く人々の共通の価値観や行動原則を「グループ人財要件」として定めています。具体的には、未知の領域に挑む「挑戦心」、環境変化に対応する「適応力」、信頼を築くための「高い倫理観」、生命を支える仕事への「強い使命感」、持続的成長を実現するための「高い専門性」の5つを重視し、事業会社ごとの特徴を尊重しつつ一体感のある企業文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2028年3月期を最終年度とする「25-27 中期経営計画 Vision2032 Stage2 ~総合力で未来を切り拓く~」を策定し、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:3兆3,000億円
* 営業利益:435億円
* ROE:7%水準(3年平均)

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、グループ全体の総合力を発揮し、「トータルサプライチェーンサービス(TSCS)」の進化・拡大に取り組んでいます。医薬品等の導入から開発、製造、物流、販売、市販後調査までを一気通貫で支援する体制を構築し、成長事業や新規事業への戦略的投資を継続するとともに、基盤事業の競争力強化とコストコントロールの徹底を両立させることで持続的な成長を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「人財こそが成長の原動力」との信念のもと、事業の成長を支える人的資本の強化に取り組んでいます。高い専門性を持つプロフェッショナル人材の育成と適正配置を進めるとともに、グループ会社間での人材交流や公募制度を通じたキャリア形成を支援しています。また、多様な人材が活躍できるDE&Iの推進や、働き方改革による社員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.6歳 14.0年 8,386,723円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 74.3%
男女賃金差異(全労働者) 77.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 85.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員意識調査対象者数(約15,500人)、eNPSスコア向上幅(4.9ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療制度改革や薬価改定の影響


同社グループが主力とする医療用医薬品業界は、健康保険制度や医療行政の影響を強く受けます。医療費抑制を目的とした自己負担の見直しや後発医薬品の普及促進策、定期的な薬価の引き下げ改定が実施された場合、同社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 医薬品等の製造事業に係るリスク


医薬品等製造事業では、新製品の開発において全ての品目が発売できるとは限らず、開発の断念や他社からの導入が困難になる場合があります。また、予期しない副作用や異物混入等による製品回収、販売中止などが発生した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 調剤薬局事業に係るリスク


調剤薬局事業において、調剤過誤や他の薬剤との相互作用による医療トラブルが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜を招く恐れがあります。また、薬剤師の必要人員数が確保できない場合には薬局の維持や新規開設に支障をきたし、事業展開に影響を与える可能性があります。

(4) システムトラブルおよびサイバーリスク


同社グループの事業活動はコンピュータネットワークシステムに大きく依拠しており、災害や事故等でシステムが停止した場合、販売物流等の営業活動に支障をきたす恐れがあります。また、サイバー攻撃による不正アクセスや情報漏洩等が発生した場合にも、業績や信用に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。