※本記事は、株式会社王将フードサービスの有価証券報告書(第52期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 王将フードサービスってどんな会社?
同社は「餃子の王将」を展開し、安全で美味しい中華料理をリーズナブルに提供する企業です。
■(1) 会社概要
1967年に京都四条大宮で「王将1号店」を開店し、1974年に同社の前身となる王将チェーンを設立しました。1995年に大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に上場し、2013年に東京証券取引所市場第一部へと移行しています。2017年には海外初となる台湾1号店を出店し、2024年に連結売上高が創業以来初めて1000億円を突破するなど、順調な事業拡大を続けています。
同社グループの従業員数は連結で2501名、単体で2439名です。筆頭株主は事業提携関係にあるアサヒビールで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は継続的な商品開発などで協力関係にあるアリアケジャパンです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アサヒビール | 11.70% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.80% |
| アリアケジャパン | 6.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は渡邊直人氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邊直人 | 代表取締役社長 | 1979年同社入社。営業部次長、東京地区エリアマネージャー、常務取締役などを歴任し、2013年より現職。 |
| 門林弘 | 専務取締役執行役員西日本営業本部長等 | 1981年同社入社。営業本部長や店舗開発部長などを経て、2024年より現職。 |
| 稲垣雅弘 | 専務取締役執行役員管理本部長等 | 1981年日本債券信用銀行入行。アイディーズ専務取締役等を経て、2025年より現職。 |
| 池田勇気 | 常務取締役執行役員営業企画本部長等 | 2003年同社入社。販売促進部長、営業企画部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 今泉暢智 | 取締役執行役員製造本部・製造管理本部統括本部長 | 1987年アサヒビール入社。同社常務執行役員などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、岩本生(ナレッジウィング法律事務所代表社員)、津坂直子(TSUSAKAコンサルティング代表取締役)、柿野成美(消費者教育支援センター理事・首席主任研究員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「中華事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■中華事業
同社グループは、「餃子の王将」を中心とした中華料理主体の直営レストランチェーンの運営を行っています。また、フランチャイズ加盟店に対して、自社工場で製造した餃子や麺類などの中華食材等の販売および経営指導も実施しており、全国の幅広い顧客層に向けて食事を提供しています。
収益源は、直営店を利用するお客様からの飲食代金やテイクアウト料金、およびフランチャイズ加盟店からの食材購入代金や加盟料などです。これらの直営店舗の運営とフランチャイズ事業の展開は、主に王将フードサービスが主体となって行い、台湾における店舗運営は王將餐飲服務が、特例子会社の事業展開は王将ハートフルが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、5期連続で増収を達成しています。経常利益についても安定して100億円前後で推移しており、堅調な利益水準を確保しています。当期利益も高水準を維持しており、強固な顧客基盤と積極的な店舗展開を背景に、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 848億円 | 930億円 | 1014億円 | 1110億円 | 1168億円 |
| 経常利益 | 130億円 | 91億円 | 105億円 | 113億円 | 107億円 |
| 利益率(%) | 15.4% | 9.8% | 10.4% | 10.2% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 88億円 | 62億円 | 79億円 | 80億円 | 74億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しています。一方で、原材料価格の高止まりや人的資本への積極的な投資による人件費の上昇などの影響を受け、営業利益は微減となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1110億円 | 1168億円 |
| 売上総利益 | 756億円 | 789億円 |
| 売上総利益率(%) | 68.1% | 67.5% |
| 営業利益 | 109億円 | 104億円 |
| 営業利益率(%) | 9.8% | 8.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が331億円(構成比48%)、福利厚生費が60億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は中華事業の単一セグメントであるため、事業全体の売上高を記載します。既存店の堅調な推移やテイクアウト需要への対応強化、および新規出店などの効果により、全社売上高は前年を上回る結果となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 1110億円 | 1168億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で設備投資を行い、借入金の返済や株主還元を進める「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 112億円 | 107億円 |
| 投資CF | -46億円 | -48億円 |
| 財務CF | -48億円 | -195億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「快適な食空間、心温まる接客、そして美味しい料理は人々を『幸せ』にします。私たちは、それらを高品質で提供しながら、低価格で実現する努力を行う事によって、より多くの人に『幸せ』を感じてもらう事を使命とします」という社会的使命を掲げています。これを全うするため、「お客様から褒められる店を創ろう!」という分かりやすい言葉を経営理念に定めています。
■(2) 企業文化
経営理念を実現し、顧客ニーズに応えていくため、同社は創業当時より従業員の「考える」「発言する」「行動する」「反省する」という主体性に基づく「自奮自発の精神」を大切にしています。従業員の自己成長をサポートし、真のお客様サービスの追求と実践を行う文化が根付いており、この精神を伝承することで持続的な成長を実現しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、美味しい料理を提供してより多くの人に幸せを感じてもらいたいという社会的使命に基づき、着実な「増収」を目標としています。また、原価率の適正な水準やコスト管理を重視する方針から「売上高営業利益率」を重要な経営指標に位置づけています。
・売上高営業利益率:目標水準8%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、店舗や工場への積極投資と従業員の価値創造力の向上を成長戦略の柱としています。東日本エリアを軸に出店を加速させて1000店舗達成を目指すとともに、AIを活用したシステム開発などのDX投資を拡充し、データに基づく効率的な現場運営を実現します。また、「新極王シリーズ」の開発など商品力の向上にも注力し、体験価値の向上と収益基盤の強化を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な付加価値の創造には従業員一人ひとりの成長とワークエンゲージメントの向上が不可欠であると考えています。「採用の多様化」と「公平な登用・環境整備」を推進し、性別や年齢、国籍に関わらず多様な人材が活躍できる環境を整備しています。また、各種研修機会の提供や非正規社員向けの「ランクアップシステム」を通じて、プロ意識と誇りを持った人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.1歳 | 11.3年 | 6,620,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.6% |
| 男性育児休業取得率 | 14.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 64.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 111.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者雇用率(3.75%)、外国籍人材の活用(1000名超の雇用実績)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店戦略に関するリスク
同社グループは、東日本地域を中心に出店を推進していますが、出店にあたっては商圏や立地条件、賃借料の水準などの収益性を重視しています。条件に合う出店予定地を確保できない場合など、新規出店数が計画を下回ると、計画通りの売上や利益を確保できず、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 安全かつ安定的な食材の確保に関するリスク
自然災害や気候変動による食材の品薄や価格上昇、地政学的リスクに伴うエネルギー・資材価格の高騰などが発生した場合、食材の安定的な確保に問題が生じる可能性があります。また、疾病や残留農薬等により食材の安全性に疑義が生じた場合も、提供できる料理の制約や仕入価格の上昇により業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制等の強化に関するリスク
同社グループは食品衛生法や食品表示法のほか、フランチャイズ運営に関わる独占禁止法、環境保護に関わる食品リサイクル法など様々な法的規制を受けています。新たな法律の施行や規制強化への対応が遅れて違反が生じた場合、法的な制裁や社会的信用の低下を招き、大きな経済的損失に発展する可能性があります。
■(4) サイバーセキュリティに関するリスク
DXの推進等に伴い情報システムへの依存度が高まる中、巧妙化するサイバー攻撃を主要な経営リスクと認識しています。不正アクセス等によるデータの流出やランサムウェアによるシステム停止が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生、事業中断などにより、業績や財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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