※本記事は、株式会社ヤマダホールディングス の有価証券報告書(第48期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤマダホールディングスってどんな会社?
家電量販店「ヤマダデンキ」を中核に、住宅や金融、環境事業を展開し「くらしまるごと」を提案する企業グループです。
■(1) 会社概要
1973年に創業し、1983年に株式会社ヤマダ電機を設立。2000年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)を子会社化し住宅事業へ本格参入。2020年10月に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しました。2021年にはヤマダデンキへベスト電器など子会社7社を吸収合併し、事業効率化を進めています。
同グループの従業員数は連結25,676名、単体573名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は事業会社であるテックプランニング、第3位は創業者の山田昇氏です。テックプランニングは山田氏の資産管理会社として不動産取引等を行っており、同グループと密接な関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.48% |
| テックプランニング | 9.43% |
| 山田 昇 | 4.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼CEOは山田昇氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田 昇 | 代表取締役会長兼CEO | 1983年9月同社社長。2008年6月会長兼CEO。2013年社長復帰を経て、2021年9月より会長兼社長CEO、2025年4月より現職。 |
| 上野 善紀 | 代表取締役社長兼COO | 2016年4月営業戦略本部長。ヤマダデンキ社長等を経て、2024年6月同社代表取締役兼副社長執行役員。2025年4月より現職。 |
| 小暮 めぐ美 | 代表取締役兼副社長執行役員CHRO | 2012年5月秘書室長。人材開発室長、人事総務本部長等を歴任。2022年4月代表取締役兼専務執行役員。2025年4月より現職。 |
| 古谷野 賢一 | 取締役兼専務執行役員CFO兼管財本部長 | 2009年6月執行役員常務。管財本部長、ヤマダファイナンスサービス社長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 長野 毅 | 取締役兼執行役員統合経営企画室長 | SBIウエルス・パートナー社長等を経て、2020年11月同社入社。2024年4月執行役員統合経営企画室長。2024年6月より現職。 |
| 五十嵐 誠 | 取締役(常勤監査等委員) | 1999年6月取締役経理部長。CFO管財本部長等を歴任し、2014年6月常勤監査役。2024年6月より現職。 |
| 山崎 賢治 | 取締役(常勤監査等委員) | 1997年11月入社。内部監査室長、監査室長等を歴任。2021年6月ヤマダデンキ監査役。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、得平司(元販売能率増進本部指導部長)、光成美樹(FINEV代表取締役)、飯村北(弁護士)、吉永國光(元東和銀行頭取・会長)、石井裕久(元みずほ投信投資顧問副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デンキ」「住建」「金融」「環境」事業および「その他」事業を展開しています。
■デンキ事業
テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品や、パソコン、携帯電話等の情報家電の販売に加え、リフォーム、家具・インテリア等の住まいに関する商品を一般消費者に提供しています。
収益は、顧客への商品販売による代金やリフォーム工事代金等が主な源泉です。運営は主に株式会社ヤマダデンキが行っており、全国に展開する店舗網やECサイトを通じて事業を展開しています。
■住建事業
戸建て住宅を中心とした住宅販売、およびバスやキッチン等の住宅設備機器の製造・販売を行っています。
収益は、住宅の販売代金や建築請負代金、住宅設備機器の販売代金から得ています。運営は、株式会社ヤマダホームズによる住宅事業、株式会社ヒノキヤグループによる住宅・断熱材事業、株式会社ハウステックによる住宅設備機器事業などで構成されています。
■金融事業
「くらしまるごと」をコーディネートするサービスの一環として、新築・リフォームローン、資金決済(クレジットカード)、保険商品、ライフプラン提案などを提供しています。
収益は、融資に対する利息収入、クレジットカードの加盟店手数料や年会費、保険代理店手数料などです。運営は、株式会社ヤマダファイナンスサービス、株式会社ヤマダLABIカード、株式会社ハウス・デポ・パートナーズなどが担っています。
■環境事業
家電やパソコンを中心とした製品のリユース・リサイクル・再資源化事業を展開しています。使用済み製品の回収から再製品化、再販売までを一貫して行っています。
収益は、リユース製品の販売代金や廃棄物処理委託料、リサイクル料金などが源泉です。運営は、株式会社ヤマダ環境資源開発ホールディングス、インバースネット株式会社、株式会社シー・アイ・シー、東金属株式会社などが行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、フランチャイズチェーンへの商品卸売や物流サービスなどを展開しています。
収益は、加盟店への商品卸売代金や物流業務受託料などです。運営は、コスモス・ベリーズ株式会社、株式会社ヤマダテクニカルサービスなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、2021年3月期に高い利益水準を記録した後、収益認識会計基準の適用等の影響もあり売上・利益ともに調整局面を迎えましたが、直近の2025年3月期では増収増益に転じています。特に当期純利益は前期比で増加しており、回復基調が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 17,525億円 | 16,194億円 | 16,006億円 | 15,920億円 | 16,291億円 |
| 経常利益 | 989億円 | 741億円 | 501億円 | 470億円 | 480億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 4.6% | 3.1% | 3.0% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 518億円 | 506億円 | 318億円 | 241億円 | 269億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高は2.3%増加し、売上総利益も微増しました。営業利益は3.2%増加しており、コストコントロールと売上増の効果が出ています。売上総利益率は約28%台で安定的に推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 15,920億円 | 16,291億円 |
| 売上総利益 | 4,542億円 | 4,574億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.5% | 28.1% |
| 営業利益 | 415億円 | 428億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1,185億円(構成比28.6%)、賃借料が760億円(同18.3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
デンキセグメントは売上が伸長したものの、営業利益は減少しました。一方、住建セグメントは売上高・営業利益ともに大きく増加し、特に営業利益率は大幅に改善しました。金融・環境セグメントも増収増益となり、グループ全体の収益に貢献しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デンキ事業 | 12,809億円 | 12,987億円 | 326億円 | 297億円 | 2.3% |
| 住建事業 | 2,747億円 | 2,925億円 | 56億円 | 94億円 | 3.2% |
| 金融事業 | 38億円 | 39億円 | 10億円 | 13億円 | 33.8% |
| 環境事業 | 182億円 | 197億円 | 14億円 | 16億円 | 8.3% |
| その他 | 144億円 | 144億円 | 7億円 | 7億円 | 4.7% |
| 調整額 | - | - | 1億円 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 15,920億円 | 16,291億円 | 415億円 | 428億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 546億円 | 516億円 |
| 投資CF | -219億円 | -351億円 |
| 財務CF | -256億円 | -41億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「創造と挑戦」「感謝と信頼」を経営理念として掲げています。常に「お客様(市場)第一主義」の目線でこれらを実践し、企業価値を高めることを基本方針としています。社会に貢献できる「強い企業」を目指し、持続的成長を追求しています。
■(2) 企業文化
「くらしまるごと」を支えるというミッションのもと、家電流通業界のリーディングカンパニーとしてESG経営を積極的に推進する文化があります。キャッシュ・フローを重視したローコスト経営に取り組みつつ、高度化・多様化する消費者ニーズへ素早く対応する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2030年に目指すべき姿を見据えた「2026/3~2030/3 中期経営計画」を推進しており、2030年3月期の数値目標を設定しています。
* 売上高:2兆2,000億円
* 経常利益:1,000億円
* ROE:8.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
「くらしまるごと」戦略の総仕上げに向け、デンキセグメントでは「LIFE SELECT」店舗の開発やEC事業の拡大、SPA商品の開発を推進します。住建セグメントでは分譲住宅戦略や中古再販事業を強化し、金融・環境セグメントではグループシナジーを活用したサービス拡充やリサイクルシステムの構築を進め、持続的成長体制を構築します。
* 2026年3月期 売上高:1兆6,975億円
* 2026年3月期 営業利益:489億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自立型組織・自立型人材の育成教育」をテーマに、階層別研修や専門性の高い教育支援を行い、個人の能力を最大限発揮できる環境を整備しています。また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを成長戦略と位置づけ、女性活躍推進やワークライフ・バランスに配慮した職場環境の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.7歳 | 12.9年 | 5,191,101円 |
※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.2% |
| 男性育児休業取得率 | 31.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 51.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(58.1%)、健康診断受診率(95.6%)、ストレスチェック受検率(96.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 店舗展開及び店舗開発について
国内外で出店を継続していますが、好立地の確保競争や出店コスト増、市場飽和による既存店の収益低下リスクがあります。また、スクラップ&ビルドに伴う除却損や、物件確保の遅れによる計画変更、多額の資金調達の必要性が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合について
少子高齢化やネット社会化が進む中、家電量販店だけでなくEC事業者や異業種との競争が激化しています。価格競争や顧客・人材獲得競争、競合他社のM&Aによる競争環境の変化に対応できない場合や、対抗値下げによる利益率低下が業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) M&Aや提携等に伴うリスクについて
事業強化のためのM&Aや提携において、実施後に偶発債務が発生したり、想定した効果が得られず投資回収が困難になる可能性があります。これらに伴い特別損失等が発生し、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。



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