ヤマダホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマダホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するヤマダホールディングスは、家電・情報家電の販売を行うデンキ事業を主力とし、住宅・リフォーム、金融、環境事業など「くらしまるごと」を支えるサービスを展開しています。直近の業績は、売上高が前期を上回ったものの、戦略的な在庫処分等の影響により減益となる増収減益の傾向です。


※本記事は、株式会社ヤマダホールディングスの有価証券報告書(第49期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマダホールディングスってどんな会社?


家電販売から住宅・金融・環境まで「くらしまるごと」を支える事業を展開する同社の概要を紹介します。

(1) 会社概要


同社は1973年にヤマダ電化サービスとして個人創業され、1983年にヤマダ電機が設立されて本格的なチェーン展開を開始しました。2000年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2020年には持株会社体制へ移行してヤマダホールディングスへと商号を変更しています。近年はヒノキヤグループなどの子会社化を通じて住建事業を強化し、事業領域を拡大しています。

現在の同社グループは、連結従業員数26,747名、単体従業員数561名を擁する体制です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には創業者の山田昇氏およびその近親者が直接保有する事業会社が名を連ねています。また、第3位にも資産管理を担う信託銀行が入る株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.30%
テックプランニング 9.83%
日本カストディ銀行(信託口) 4.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役会長兼CEOは山田昇氏です。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
山田 昇 代表取締役会長兼CEO 1983年同社代表取締役社長、2008年代表取締役会長兼代表執行役員CEO等を経て、2025年より現職。
上野 善紀 代表取締役社長兼COO 2016年同社取締役等を歴任し、ヤマダデンキ代表取締役社長を経て、2025年より現職。
小暮 めぐ美 代表取締役兼副社長執行役員CHRO 2012年同社秘書室長、人事総務本部長等を経て、2025年より現職。
古谷野 賢一 取締役兼専務執行役員CFO兼管財本部長 2009年同社執行役員常務、2015年管財本部長等を経て、2025年より現職。ヤマダ金融ホールディングス代表取締役社長も務める。
長野 毅 取締役兼執行役員統合経営企画室長 2015年SBIウエルス・パートナー代表取締役社長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、得平司(クロス代表取締役社長)、光成美樹(FINEV代表取締役)、飯村北(ESTパートナーズ法律事務所エグゼクティブパートナー)、吉永國光(元大蔵省・東和銀行代表取締役頭取等)、石井裕久(ハートエージェンシー特別顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デンキ」「住建」「金融」「環境」および「その他」事業を展開しています。

デンキセグメント


テレビや冷蔵庫、洗濯機などの家電製品に加え、パソコンや携帯電話といった情報家電、さらにリフォームや家具・インテリアなど住まいに関する商品を販売しています。一般消費者を主な顧客とし、全国の店舗網を通じた体験型販売を提供しています。

収益は、店頭やEコマースでの商品販売代金、無償延長保証や有償の長期保証サービス契約料などから得ています。運営は主にヤマダデンキが担っており、プライベートブランドやSPAオリジナル商品の開発、店舗網を活用したトータルサービスの提供を通じて収益化を図っています。

住建セグメント


戸建て住宅を中心とした住宅販売、分譲住宅の供給、およびバスやキッチンなどの住宅設備機器の製造・販売を行っています。環境配慮型のスマートハウスやZEHの普及促進により、住宅の購入層やリフォーム検討層を幅広く顧客としています。

収益は、注文住宅の請負工事代金や分譲住宅の販売代金、住宅設備機器の製品販売代金から得ています。運営はヤマダホームズ、ヒノキヤグループ、ハウステック、トクラスなどが担い、製造から販売・施工までをグループ内で連携して行っています。

金融セグメント


「くらしまるごと」をコーディネートするサービスの一環として、新築・リフォームに関わる各種ローン、資金決済、保険商品、ライフプラン提案などの金融サービスを提供しています。デンキ事業や住建事業の顧客に対して複合的なサービスを展開しています。

収益は、住宅ローンなどの融資実行時の手数料や利息収入、クレジットカードの決済手数料、および保険会社からの代理店手数料から得ています。運営は主にヤマダ金融ホールディングスの傘下にあるヤマダファイナンスサービスやヤマダLABIカードなどが行っています。

環境セグメント


家電やパソコンを中心とした製品の回収、リユース、リサイクル、再資源化事業を展開しています。使用済み家電の引取りから再生品の生産・販売まで、循環型社会の構築に向けた自己完結型の資源環境システムを構築しています。

収益は、産業廃棄物の処理受託に伴う手数料や、自社工場で再生したリユース家電・パソコンなどの販売代金から得ています。運営は主にヤマダ環境資源開発ホールディングス、シー・アイ・シー、インバースネットなどが担っています。

その他セグメント


フランチャイズチェーン加盟店への家電・情報家電等の卸売販売など、上記の報告セグメントに含まれない事業を展開しています。地域密着型の店舗展開を支援し、加盟店の販売活動を後押しするサービスを提供しています。

収益は、加盟店への商品卸売代金やフランチャイズ運営に関わる各種手数料などから得ています。運営は主にコスモス・ベリーズなどが担い、利益重視のビジネスモデルへと転換を図りながら事業を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は概ね1兆6,000億円台で安定して推移しており、直近の決算では前期を上回る結果となっています。一方、経常利益や利益率は市場環境の変化や戦略的な施策の影響により変動が見られ、直近では利益水準が低下する傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1兆6,194億円 1兆6,006億円 1兆5,920億円 1兆6,291億円 1兆6,918億円
経常利益 741億円 501億円 470億円 480億円 200億円
利益率(%) 4.6% 3.1% 3.0% 2.9% 1.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 389億円 429億円 362億円 49億円 316億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、売上総利益および営業利益は減少しています。これは、中期経営計画の目標達成に向けた戦略的な在庫処分の実施や、ポイント施策の強化に伴う先行的利益負担などが影響したためです。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1兆6,291億円 1兆6,918億円
売上総利益 4,574億円 4,416億円
売上総利益率(%) 28.1% 26.1%
営業利益 428億円 162億円
営業利益率(%) 2.6% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が1,249億円(構成比29.4%)、賃借料が776億円(同18.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


デンキセグメントは下期にパソコンやエアコン等の需要を取り込み増収となった一方、戦略的在庫処分の影響等で減益となりました。住建セグメントは分譲住宅事業の伸長等により増収増益を達成しました。環境セグメントもリユース家電の生産体制強化により順調に拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
デンキセグメント 1兆3,018億円 1兆3,211億円 302億円 25億円 0.2%
住建セグメント 2,925億円 3,308億円 94億円 103億円 3.1%
金融セグメント 39億円 39億円 13億円 13億円 32.0%
環境セグメント 197億円 258億円 16億円 19億円 7.3%
その他 113億円 101億円 2億円 2億円 1.8%
調整額 - - 1億円 1億円 -
連結(合計) 1兆6,291億円 1兆6,918億円 428億円 162億円 1.0%


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業の持続的成長を基本方針とし、高度化・多様化する消費者ニーズに素早く対応することを目指しています。常に「お客様(市場)第一主義」の目線で経営理念である「創造と挑戦」「感謝と信頼」を実践し、企業価値を高めることを使命としています。家電流通業界のリーディングカンパニーとしてESG経営を積極的に推進し、社会に貢献できる「強い企業」となることを掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、創業以来「くらしまるごと」を支える企業へと進化してきました。お客様一人ひとりの暮らしと人生に寄り添い、販売にとどまらず家電製品の回収やリユース・リサイクルまでを担う循環型モデルの構築を重視しています。また、事業活動を通じた社会課題の解決が持続的な成長につながるという価値観を根底に持ち、環境・社会と調和した価値創造に取り組む文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、「2026/3~2030/3 中期経営計画」を推進し、企業の持続的成長体制の構築を目指しています。「くらしまるごと」戦略の総仕上げに向けた取り組みを進め、2030年3月期の数値目標として以下を掲げています。

- 売上高2兆2,000億円
- 経常利益1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中期経営計画の目標達成に向け、グループ企業間の経営資源(ヒト・モノ・カネ・サービス・情報等)の最適化を通じた効率化を図ります。具体的には、体験型店舗を中核としたエリア店舗開発や、利益率の高いオリジナル商品の積極的開発に注力します。さらに、各事業会社の融合によるシナジーの最大化や、DX化・物流適正化を通じた全社的な構造改革を実行し、資産効率と生産性の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を重要な経営資源と位置づけ、「くらしまるごと」提案を通じた付加価値創出を図るため、専門性および横断性を備えた人材の育成を推進しています。適切な人材の確保・育成・配置を事業戦略と連動させ、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境整備やウェルビーイングの向上に取り組むことで、組織の実行力強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.9歳 14.1年 5,602,183円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 73.1%
男女賃金差異(全労働者) 63.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員一人当たりの平均研修時間(30時間/年)、正社員離職率(5.1%)、有給休暇取得率(51.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 店舗展開および競合激化のリスク


同社は全国および海外に店舗を展開しており、新規出店や既存店の改装に伴う経費増が見込まれます。また、他社との出店競争や、異業種・ECプラットフォーマーの参入による競争激化が進んでおり、これらの環境変化に適切に対応できない場合、収益性や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済動向や季節・気候変動による影響


国内市場の消費動向は、物価上昇や雇用情勢、金利の変動等に大きく左右されます。また、エアコンなどの季節家電は気候条件に依存するため、冷夏や暖冬、昨今の異常気象による需要予測の難化により、売上低迷や在庫滞留等のリスクが存在し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


同社は会員情報やクレジットカード情報など多数の顧客データを取り扱っています。ランサムウェア等のサイバー攻撃やシステム障害により、情報の漏洩や改ざん、店舗営業の停止等が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人的資本・人権に関するリスク


専門性を持つ人材の確保や定着が進まない場合、顧客満足度の低下や成長戦略の停滞につながる恐れがあります。また、サプライチェーン全体において、労働環境やハラスメント等の人権問題が顕在化した場合、ブランド価値の低下や人材流出を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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