※本記事は、株式会社ケーズホールディングスの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケーズホールディングスってどんな会社?
家庭用電気製品やパソコンなどを取り扱う家電量販店を全国展開する企業です。
■(1) 会社概要
1955年、茨城県水戸市で有限会社加藤電機商会として設立されました。1973年にカトーデンキへと組織変更し、1997年にケーズデンキに商号変更しました。その後、積極的なM&Aや株式交換を通じてギガス、関西ケーズデンキ、デンコードーなどを子会社化し、2007年に現在の社名へと変更して事業基盤を拡大してきました。
ケーズホールディングスの従業員数は連結で7,307名、単体で2,260名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には従業員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.40% |
| ケーズデンキ従業員持株会 | 7.40% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役会長執行役員は平本忠、代表取締役社長執行役員は吉原祐二が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平本 忠 | 代表取締役会長執行役員 | 1983年入社。総合企画部長、常務、専務企画・開発本部長などを経て、2018年4月に代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。 |
| 吉原 祐二 | 代表取締役社長執行役員 | 1986年入社。営業推進部長、人事部長、総務人事部長などを歴任し、管理本部長として経営に参画。2024年6月より現職。 |
| 大坂 尚登 | 取締役常務執行役員 | 1994年入社。ビッグ・エス代表取締役社長や営業本部長、サステナビリティ推進本部長などを経て、2025年10月より現職。 |
| 水谷 太郎 | 取締役常務執行役員経営企画室長 | 2005年入社。公認会計士・税理士。経営企画室部長などを歴任し、経営企画本部長を経て、2024年6月より現職。 |
| 保村 美也子 | 取締役上席執行役員管理本部長兼人材開発部長 | 1992年入社。ひたちなか店長、入間店長など各店舗の店長を歴任。2025年10月より現職。 |
| 瀬谷 和史 | 取締役上席執行役員商品本部長兼商品開発部長兼EC商品部長 | 1995年入社。AV商品部長や商品開発部長、EC商品部長を歴任し、2024年6月より現職。 |
| 岡部 誠司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年入社。営業推進部長や営業企画部長、システム室長などを歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤史子(ICMG partners Managing Director)、萩原慎二(萩原総合法律事務所代表社員)、水嶋陽子(常磐大学人間科学部教授)、谷萩寛子(トレンディ茨城常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「家庭用電気製品小売業」事業を展開しています。
■家庭用電気製品小売事業
家庭用電気製品をはじめ、パソコンやその周辺機器、携帯電話、時計、カメラなどを取り扱う家電量販店を全国に多店舗展開しています。一般消費者を主な顧客としており、地域に密着した店舗運営とオンラインショップを通じて幅広い商品と付加価値の高いサービスを提供しています。
収益源は、一般消費者への各種商品の販売代金のほか、長期無料保証などのサービス提供に伴う代金から構成されています。店舗の運営は親会社であるケーズホールディングスのほか、子会社のギガス、関西ケーズデンキ、ビッグ・エス、北越ケーズ、九州ケーズデンキ、デンコードーなどが各地域で担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一時期減少傾向にありましたが、直近2期間では連続して増収となっています。経常利益についても同様に、一時の減少から底打ちし、当期は回復基調を示しています。利益率も直近では4.0%まで改善しており、底堅い買い替え需要などに支えられて業績は堅調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7472億円 | 7373億円 | 7184億円 | 7380億円 | 7597億円 |
| 経常利益 | 465億円 | 353億円 | 229億円 | 259億円 | 306億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 4.8% | 3.2% | 3.5% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 190億円 | 124億円 | 69億円 | 82億円 | 91億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る結果となりました。売上総利益率は一定水準を維持しつつ、営業利益率は前期から改善を見せており、収益性が向上していることが伺えます。エアコンの駆け込み需要や携帯電話の好調な販売が寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7380億円 | 7597億円 |
| 売上総利益 | 2043億円 | 2102億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.7% | 27.7% |
| 営業利益 | 218億円 | 268億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が549億円(構成比30%)、地代家賃が323億円(同18%)を占めています。売上原価は5495億円であり、売上高に対する構成比は72%となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 362億円 | 375億円 |
| 投資CF | -158億円 | -112億円 |
| 財務CF | -273億円 | -248億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
『人を中心とした事業構築を図りケーズデンキグループに関わる人の幸福を図る。事業を通じて人の「わ」(和、輪)を広げ、大きな社会貢献につなげる。』を企業理念およびパーパスとして掲げています。従業員、お取引先、お客様、株主の順に大切にし、まずは従業員を大切にすることで「本当の親切」が実現すると位置づけています。
■(2) 企業文化
「がんばらない経営」という独自の方針を掲げています。これは、無理をして自分の力以上の力を出すことは短期的には可能であっても、終わりのない会社経営には適切ではなく、無理をすれば必ずその反動があるという考え方です。お客様にご満足いただくためにあるべき姿に向かって、正しいことを無理をせず、確実に実行していくことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」において、中長期的にROE10%を目指す中、中期経営計画最終年度である2027年3月期にはROE8%の実現を目指しています。また、株主還元方針として、総還元性向80%、連結配当性向40%を目標とし、年間1株当たり配当額は48円を下限と定めています。
・ROE:8%(2027年3月期)
・総還元性向:80%目標
・連結配当性向:40%目標(下限配当48円)
■(4) 成長戦略と重点施策
既存店効率の再点検および接客力強化により中長期的な成長につなげる地盤固めを図ります。具体的には、効率の再点検と改装による収益性改善、スクラップ&ビルドによるドミナント出店の推進、デジタル販促や太陽光発電システムの設置による販管費率の抑制などを掲げています。また、オンラインショップおよびアプリの利便性向上による売上拡大も推進します。
・中期経営計画期間中での累計出店:20店舗
・年間改装:30店舗
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の確保」「多様な人材の登用」「スキルアップ」「ワークエンゲージメント向上」の4つを人材戦略として取り組んでいます。従業員を一番に大切にするという創業以来の方針のもと、現場における育成やeラーニング、家電製品アドバイザー資格取得の支援などを通じて、お客様に「本当の親切」を提供できる人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 17.5年 | 5,981,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 91.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(56.7%)、離職率(2.2%)、障がい者雇用率(3.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 天候・季節的要因による売上変動
エアコンや暖房機などの季節商品は、夏や冬の気候条件に売上が強く影響を受けます。新製品の発売などメーカーの動向とは別に、気候条件は予測やコントロールが困難であり、天候の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 店舗開発の計画未達と減損リスク
空白地域や人口密集地域への積極的な店舗開発を行っていますが、顧客基盤の構築に時間を要したり初期投資が大きくなる傾向があります。新たな競合先の出店や商圏状況の著しい変化により計画との乖離が生じた場合や、固定資産の減損が必要となった場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 家電量販店およびECサイトとの競争激化
同業他社だけでなく、同様の商品を取り扱う他業態の店舗やインターネット通販企業とも競合しています。接客やアフターサービスの強化、販売チャネルの拡充など差別化を図っていますが、企業間の競争がさらに激化した場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。