※本記事は、株式会社ケーズホールディングスの有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ケーズホールディングスってどんな会社?
北関東発祥の家電量販店チェーン。「がんばらない経営」を掲げ、現金値引や長期無料保証で差別化を図ります。
■(1) 会社概要
1947年に茨城県水戸市でラジオ修理業として創業し、1973年に会社設立。2001年に東証二部、翌年に東証一部(現プライム)へ上場しました。その後、ギガス、関西ケーズデンキ、デンコードーなど各地の有力家電量販店を相次いで子会社化し、全国展開を加速。2007年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。
連結従業員数は7,232名(単体2,277名)です。大株主は、信託銀行の信託口が上位を占めるほか、従業員持株会が第2位の株主となっています。創業家出身の加藤氏も上位株主に名を連ねていますが、基本的には機関投資家や従業員が主要な保有者となる構成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.10% |
| ケーズデンキ従業員持株会 | 7.20% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性4名の計11名で構成され、女性役員比率は36.4%です。代表取締役社長執行役員は吉原祐二氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平本 忠 | 代表取締役会長執行役員 | 1983年入社。総合企画部長、専務取締役企画・開発本部長などを経て2017年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。 |
| 吉原 祐二 | 代表取締役社長執行役員 | 1986年入社。営業本部営業推進部長、管理本部長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 大坂 尚登 | 取締役常務執行役員 | 1994年入社。ビッグ・エス社長、営業本部長などを経て、2025年6月よりサステナビリティ推進本部長兼システム室長。 |
| 水谷 太郎 | 取締役常務執行役員 | 公認会計士・税理士。2005年入社。経営企画室長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 保村 美也子 | 取締役上席執行役員 | 1992年入社。ひたちなか店長、稲城若葉台店長などを経て、2022年6月より水戸本店長。 |
| 瀬谷 和史 | 取締役上席執行役員 | 1995年入社。AV商品部長などを経て、2024年6月より商品本部長兼商品開発部長兼EC商品部長。 |
| 岡部 誠司 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年入社。営業本部サービス部長、システム室長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤史子(アットストリームパートナーズ合同会社パートナー)、萩原慎二(弁護士法人萩原総合法律事務所代表社員)、水嶋陽子(常磐大学大学院人間科学部研究科長)、谷萩寛子(株式会社トレンディ茨城常務取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「家庭用電気製品小売業」事業を展開しています。
■(1) 家庭用電気製品小売業
「ケーズデンキ」の店舗名称で、家庭用電気製品、パソコン・周辺機器、携帯電話などを取り扱う家電量販店を全国に多店舗展開しています。一般消費者に対し、家電製品の販売、配送、設置工事、修理などのサービスを提供しており、地域密着型の店舗運営を特徴としています。
主な収益は、来店客およびECサイト利用者からの商品販売代金です。運営は持株会社である同社のほか、子会社のギガス、関西ケーズデンキ、ビッグ・エス、北越ケーズ、九州ケーズデンキ、デンコードーなどが各地域の店舗運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期はコロナ禍の巣ごもり需要で最高益を記録しましたが、その後の反動減や物価高による買い替えサイクルの長期化で減収減益傾向にありました。しかし、第45期(2025年3月期)は猛暑によるエアコン等の季節商品や携帯電話が好調に推移し、売上高は増収に転じました。利益面でも増益となり、回復基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7925億円 | 7472億円 | 7373億円 | 7184億円 | 7380億円 |
| 経常利益 | 567億円 | 465億円 | 353億円 | 229億円 | 259億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 6.2% | 4.8% | 3.2% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 387億円 | 285億円 | 211億円 | 74億円 | 95億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しました。一方で、積極的な賃上げによる人件費の増加等により販売費及び一般管理費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益率は改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7184億円 | 7380億円 |
| 売上総利益 | 1987億円 | 2043億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.7% | 27.7% |
| 営業利益 | 187億円 | 218億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が533億円(構成比29.2%)、その他(減価償却費等を除く諸経費)が379億円(同20.7%)、地代家賃が323億円(同17.7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、商品別販売実績を見ると、「映像・音響商品」「情報機器」「家庭電化商品」「季節商品」「その他」の全ての区分で売上構成比を持っています。特にエアコンを含む「季節商品」や携帯電話を含む「情報機器」が前期比で大きく伸長し、全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 映像・音響商品 | 949億円 | 919億円 |
| 情報機器 | 1720億円 | 1852億円 |
| 家庭電化商品 | 2809億円 | 2828億円 |
| 季節商品 | 1114億円 | 1203億円 |
| その他 | 592億円 | 579億円 |
| 連結(合計) | 7184億円 | 7380億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、利益剰余金や自己株式の減少等により、自己資本比率が若干低下しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減損損失等により、前年同期比で収入が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や有形固定資産の取得等により、支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払い等により、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 488億円 | 362億円 |
| 投資CF | -165億円 | -158億円 |
| 財務CF | -267億円 | -273億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「人を中心とした事業構築を図りケーズデンキグループに関わる人の幸福を図る。事業を通じて人の「わ」(和、輪)を広げ、大きな社会貢献につなげる。」を企業理念およびパーパスとして掲げています。お客様を大切にするためには、まず従業員を大切にしなければ「本当の親切」は実現しないと考え、従業員、お取引先、お客様、株主の順で大切にする方針をとっています。
■(2) 企業文化
「がんばらない経営」を標榜しています。これは努力をしないという意味ではなく、無理をして一時的に力を出すのではなく、正しいことを無理せず確実に実行し続けることこそが、終わりのない会社経営において適切であるという考え方です。お客様満足のためにあるべき姿に向かって、着実に歩を進める企業風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」を推進しており、最終年度である2027年3月期にはROE8%の実現を目指しています(中長期的にはROE10%目標)。また、株主還元方針として、総還元性向80%目標、連結配当性向40%目標(年間配当下限44円)を掲げています。
* 2027年3月期 ROE目標:8%
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」において、既存店効率の再点検と接客力強化による地盤固めを基本方針としています。具体的には、家電への特化による安定利益創出、DXによる業務効率化と売上拡大、資本効率向上による企業価値向上に取り組みます。また、ドミナント出店の推進や人的資本への投資、デジタル販促の活用なども重点施策として挙げています。
* 店舗展開:3年間で累計20店舗の出店、年間30店舗の改装
* EC戦略:オンラインショップ売上高倍増(2024年3月期比)
* 財務戦略:機動的な自社株買いと負債調達による資本構成の最適化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材の確保」「多様な人材の登用」「スキルアップ」「ワークエンゲージメント向上」を4つの柱としています。特に、家電製品アドバイザー資格の取得支援(取得率33%目標)や、女性管理職比率向上(30%を視野に中期計画期間中5%以上目標)、有給休暇取得率70%目標など、具体的な数値目標を設定して従業員の育成と働きやすい環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均(763万円)を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.4歳 | 17.4年 | 5,787,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | 77.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、家電製品アドバイザー資格保有者比率(32.3%)、有給休暇取得率(58.1%)、正規社員採用女性比率(30.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 季節的要因による業績変動
エアコンや暖房器具などの季節商品は、冷夏や暖冬といった気候条件の影響を強く受けます。これらの商品は販売時期が集中する傾向にあり、予測困難な天候不順が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 店舗開発および減損リスク
空白地域や人口密集地への出店を進めていますが、新たな競合店の出現や交通アクセスの変化により当初計画との乖離が生じる可能性があります。また、店舗等の固定資産について収益性が低下した場合は減損損失を計上する必要があり、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 競合環境の激化
家電量販店間だけでなく、他業種の参入やインターネット通販との競争も激化しています。同社は人材育成やオムニチャネル化で差別化を図っていますが、価格競争や顧客獲得競争がさらに激しくなった場合、収益性に影響が及ぶ可能性があります。



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