コロワイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 コロワイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するコロワイドは、国内外で「牛角」や「かっぱ寿司」などの飲食店直営およびFC展開を主力事業としています。直近の業績では、国内外食事業の堅調な推移やM&A効果により売上収益と営業利益は過去最高を更新して増収増益となった一方、減損損失の計上等により当期利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社コロワイドの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. コロワイドってどんな会社?


国内外食事業、海外外食事業、給食事業を多角的に展開する大手外食企業グループです。

(1) 会社概要


1963年に飲食店営業を目的として設立され、1981年より直営による多店舗展開を開始しました。1994年にコロワイドへと社名変更を行い、1999年に株式店頭登録、2000年に東証二部、2002年に東証一部へ上場しています。その後、アトムやレインズインターナショナル、カッパ・クリエイト、大戸屋ホールディングスなどを相次いで子会社化し、積極的なM&Aで事業規模を拡大してきました。

従業員数は連結で5,907名、単体で149名です。大株主の筆頭は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は事業会社のサンクロード、第3位は創業家の蔵人良子氏となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.93%
サンクロード 5.43%
蔵人良子 3.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は蔵人金男氏、代表取締役社長は野尻公平氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
蔵人金男 代表取締役会長 1966年同社入社。1983年代表取締役社長、2007年代表取締役会長兼社長を経て、2012年より現職。
野尻公平 代表取締役社長 1993年同社入社。2001年常務取締役、2002年専務取締役、2009年代表取締役専務を経て、2012年より現職。
磯野健雄 取締役 1996年新潟ニチイ(現イオンリテール)入社。ワタミ取締役を経て、2020年コロワイドMD入社。2021年より現職。
松見大輔 取締役 1998年YKK入社。2007年レックス・ホールディングス(現レインズインターナショナル)入社。2023年より現職。
宇田猛 取締役(監査等委員) 1984年日伸食品(現カッパ・クリエイト)入社。同社取締役、常勤監査役、取締役(監査等委員)を経て、2019年より現職。


社外取締役は、杢野純子(元横河ヒューレット・パッカード)、福田守雄(元警察庁)、福崎真也(弁護士)、樋口一成(元富士銀行)、白石絵里子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コロワイドMD」「アトム」「レインズインターナショナル」「カッパ・クリエイト」「大戸屋ホールディングス」「Seagrass Holdco Pty Ltd.」および「その他」事業を展開しています。

コロワイドMD


グループ各社の店舗で使用される各種食料品などの商品開発、調達、製造、物流といったマーチャンダイジング全般を提供しています。自社のセントラルキッチンや食品工場を活用し、原料調達から配送まで一貫した機能を持っています。
収益源はグループ内外の飲食店等に対する食材の販売や加工食品の供給による代金であり、運営はコロワイドMDが担当しています。

アトム


「ステーキ宮」や「にぎりの徳兵衛」「カルビ大将」などのレストラン業態を展開し、一般消費者に飲食サービスを提供しています。
収益源は直営店での飲食代金やフランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入であり、運営はアトムが行っています。

レインズインターナショナル


「牛角」「しゃぶしゃぶ温野菜」「土間土間」「フレッシュネスバーガー」などのレストランおよび居酒屋業態を国内外で広く展開しています。
収益源は直営店での飲食代金、フランチャイズ加盟店からのFC加盟金やロイヤルティ、および食材の販売代金であり、運営はレインズインターナショナルが行っています。

カッパ・クリエイト


「かっぱ寿司」などのレストラン業態の直営飲食店運営、ならびに寿司や調理パンなどのデリカ事業を国内外で展開しています。
収益源は店舗での飲食代金やデリカ商品の販売による収入であり、運営はカッパ・クリエイトが担当しています。

大戸屋ホールディングス


「大戸屋ごはん処」などのレストラン業態を日本国内および海外において展開し、定食を中心とした食事を提供しています。
収益源は直営店での飲食代金やフランチャイズ加盟店からのFC加盟金、ロイヤルティ、食材の販売代金であり、運営は大戸屋ホールディングスが行っています。

Seagrass Holdco Pty Ltd.


オセアニア地域等において、「The Meat & Wine Co」などのプレミアムステーキレストランチェーンを展開し、高品質な飲食サービスを提供しています。
収益源は店舗での飲食代金による収入であり、運営はオーストラリアを拠点とするSeagrass Holdco Pty Ltd.が行っています。

その他


ITシステムの企画・運用やコールセンター業務、洋菓子の製造販売、ヘルスケア施設向けの給食受託事業などを展開しています。
収益源はシステム利用料や菓子販売代金、給食業務の受託収入など多岐にわたり、運営はワールドピーコムやN Baton Company、ニフス等の子会社がそれぞれ行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間で売上収益は右肩上がりの成長を続け、3,000億円を突破しています。税引前利益は一時期大幅な赤字を計上しましたが、その後は事業環境の回復やM&Aの効果もあり、黒字基調を維持して堅調に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 1,756億円 2,208億円 2,413億円 2,692億円 3,001億円
税引前利益 21億円 -84億円 65億円 48億円 65億円
利益率(%) 1.2% -3.8% 2.7% 1.8% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 -68億円 29億円 12億円 22億円

(2) 損益計算書


売上収益の拡大に伴い、売上総利益および営業利益も順調に増加しています。各ブランドでの付加価値向上や効率化の取り組みが奏功し、営業利益率も改善傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2,692億円 3,001億円
売上総利益 1,568億円 1,787億円
売上総利益率(%) 58.2% 59.6%
営業利益 77億円 94億円
営業利益率(%) 2.9% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が870億円(構成比52%)、減価償却費及び償却費が260億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のレインズインターナショナルが安定した収益基盤となっているほか、新規連結されたSeagrass Holdco Pty Ltd.が高い利益率を記録し、グループ全体の収益拡大に大きく貢献しています。一方、アトムやカッパ・クリエイトは減損損失等の影響で利益面で苦戦しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
コロワイドMD 961億円 1,013億円 42億円 52億円 5.1%
アトム 355億円 304億円 17億円 -8億円 -2.7%
レインズインターナショナル 924億円 926億円 43億円 35億円 3.8%
カッパ・クリエイト 732億円 732億円 13億円 -3億円 -0.4%
大戸屋ホールディングス 314億円 370億円 12億円 17億円 4.6%
Seagrass Holdco Pty Ltd. -億円 200億円 -億円 26億円 13.0%
その他 425億円 471億円 -7億円 22億円 4.7%
調整額 -1,019億円 -1,016億円 -43億円 -46億円 -%
連結(合計) 2,692億円 3,001億円 77億円 94億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 288億円 287億円
投資CF -216億円 -308億円
財務CF 180億円 -68億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「すべては、お客さまと社員のために」を企業理念として掲げています。顧客に「楽しかった、美味しかった」と喜ばれるよう、社名に込めた4つのファクター(勇気、愛、知恵、決断)を社員一人ひとりが心に刻み、社会の持続可能な発展と中長期的な企業価値の向上を図ることを方針としています。

(2) 企業文化


食のインフラの担い手として、社会課題の解決に取り組む姿勢を重視しています。5つのマテリアリティ(重要課題)の一つに「働く仲間の成長と多様性の尊重」を掲げ、従業員があらゆるライフステージで安心して勤務でき、それぞれの成長を目指せる職場環境を提供することを文化としています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「COLOWIDE Vision 2030」に基づき、国内外食事業を基盤としつつ、市場拡大が見込まれる海外外食事業と給食事業の成長を通じて、事業規模の飛躍的な拡大を目標としています。

・2030年3月期 連結売上収益 5,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


国内外食事業では、レストラン業態の新規出店やカフェ業態の拡大、既存店舗の改装を進めるとともに、調達・製造・物流の効率化と付加価値向上を図ります。海外外食事業では「牛角」や「かっぱ寿司」などの出店を加速させ、給食事業ではヘルスケア施設を中心とした需要拡大を背景に事業基盤の強化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


一人ひとりが働きがいを感じて成長することが企業価値の向上につながると考え、すべての従業員が自律的に成長できる機会を提供しています。また、多様な人材がライフステージに合わせて働き方を選択できる制度を取り入れ、働きやすく働きがいのある職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.1歳 14.2年 6,742,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.8%
男性育児休業取得率 900.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(32.0%)、国内グループ会社のScope1・2の総排出量(0.361)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性と品質管理に関するリスク

各店舗や工場において食中毒や食品事故が発生した場合、損害賠償による損失の発生や一定期間の営業停止処分を受ける可能性があり、グループの社会的信用および経営成績に多大な影響を与えるリスクがあります。

(2) 人材確保と労働コスト上昇に関するリスク

少子高齢化に伴う労働力人口の減少や採用環境の悪化により、店舗運営に必要な優秀な人材を確保できない場合や、人件費が想定以上に上昇した場合、十分な店舗運営ができず収益性の悪化を招く可能性があります。

(3) 積極的なM&Aに伴うのれんの減損リスク

成長戦略の柱としてM&Aを実行してきた結果、多額ののれんが計上されています。対象企業の収益力が低下し、資産の評価額が帳簿価額を著しく下回った場合には、多額の減損損失が発生して財務状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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