※本記事は、株式会社カワチ薬品 の有価証券報告書(第58期、自 2024年3月16日 至 2025年3月15日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カワチ薬品ってどんな会社?
関東・東北地方を中心に、広大な売場面積を持つ「メガ・ドラッグストア」を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1960年に栃木県で創業し、1967年に法人を設立しました。1996年に調剤事業を開始し、専門性と利便性を兼ね備えた店舗展開を推進。2000年に株式を公開し、2002年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ上場しました。その後も物流センターの稼働や子会社の統合を経て、現在は調剤併設型店舗の拡大に注力しています。
現在の従業員数は連結で2,733名(単体2,530名)です。大株主は、創業者の資産管理等を行う公益財団法人や創業者一族が上位を占めており、安定した株主構成となっています。筆頭株主は公益財団法人河内奨学財団、第2位は代表取締役社長の河内伸二氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人河内奨学財団 | 11.64% |
| 河内 伸二 | 10.91% |
| 河内 一真 | 10.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は河内伸二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河内 伸二 | 代表取締役社長 | 1983年入社。取締役人材開発部長、専務取締役経営企画室長などを歴任し、2002年より現職。 |
| 大久保 勝之 | 取締役店舗開発部長 | 1983年入社。商品部次長、店舗運営部長、執行役員などを経て、2019年より現職。横浜ファーマシー代表取締役社長も兼務。 |
社外取締役は、渡辺林治(リンジーアドバイス代表取締役社長)、江藤美帆(南葛SCマーケティング部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ドラッグストア事業」を展開しています。
同社グループは単一セグメントとして、医薬品、化粧品、日用雑貨、食料品等を販売するドラッグストアおよび調剤薬局を運営しています。特に売場面積400坪以上の「メガ・ドラッグストア」を主力とし、広い駐車場とバリアフリーな店内、豊富な品揃えを特徴としています。一般消費者(生活者)が主な顧客です。
収益は、来店客への商品販売および調剤薬局における処方箋調剤による対価が中心です。主力の商品は一般食品や雑貨であり、これらで売上の過半を占めています。運営は主に同社が行っており、青森県を中心とする一部地域では連結子会社の横浜ファーマシーが事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2,800億円前後で安定的に推移しており、緩やかな増加傾向にあります。利益面では、経常利益率が3%前後で推移しており、物価上昇等の環境変化の中でも一定の収益性を維持しています。当期純利益も安定的に確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,845億円 | 2,795億円 | 2,819億円 | 2,860億円 | 2,878億円 |
| 経常利益 | 116億円 | 87億円 | 77億円 | 86億円 | 83億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 3.1% | 2.7% | 3.0% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 70億円 | 49億円 | 43億円 | 47億円 | 50億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は微増し、売上総利益も増加していますが、営業利益は若干減少しました。売上総利益率は23%台前半で安定していますが、販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫する要因となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,860億円 | 2,878億円 |
| 売上総利益 | 658億円 | 667億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.0% | 23.2% |
| 営業利益 | 76億円 | 75億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 2.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が249億円(構成比42%)、賃借料が71億円(同12%)を占めています。人件費と店舗賃借料が主なコスト要因です。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、商品区分別の売上動向を見ると、主力の一般食品や雑貨が堅調に推移しています。特に化粧品は前期比で増加しており、人流回復の影響が見られます。一方、医薬品は概ね横ばいで推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 医薬品 | 523億円 | 522億円 |
| 化粧品 | 226億円 | 232億円 |
| 雑貨 | 787億円 | 794億円 |
| 一般食品 | 1,315億円 | 1,321億円 |
| 連結(合計) | 2,860億円 | 2,878億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
パターン判定:健全型
営業活動で得たキャッシュを借入金の返済や設備投資に充てており、財務体質の健全化と事業投資のバランスが取れています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 64億円 | 75億円 |
| 投資CF | -53億円 | -45億円 |
| 財務CF | -39億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%で市場平均(プライム非製造業平均)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ドラッグストア世界一へ向けて、日々革新し、向上しつづける経営をめざす」こと、および「お客様が健康で豊かな暮らしを実現するため、卓越したノウハウを生かした『普段の生活の拠点』を提供し、もって社会に貢献する」ことを経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
「Pharmacy・more(ファーマシー・モア)」、すなわち「医薬品にとどまらない、多種多様な商品を提供することによりお客様の健康で快適な生活を実現する」を基本コンセプトとしています。顧客第一主義のもと、専門性と利便性を融合させた独自の業態づくりを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
株主価値の向上を図るため、適正な営業利益の確保を重視しており、中長期的な経営目標として以下の指標を掲げています。
* ROE(自己資本当期純利益率):6%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
専門性と利便性を融合させた「メガ・ドラッグストア」に調剤薬局の併設を推進し、「最も身近なヘルスケアセンター」の実現を目指しています。また、ドミナントエリアでの基幹店舗とサテライト店舗の出店強化、物流網の整備、IT活用による効率化を進めるとともに、人材育成にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人は会社の大切な財産=人財である」という理念のもと、長期就労可能な環境づくりに努めています。能力と成果に基づく人選を基本とし、多様性の確保に向けた教育やキャリアアップセミナーを実施。また、女性管理職の増加に向けた母集団形成や、専門性を有する中途採用者の登用も積極的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.6歳 | 13.5年 | 5,572,560円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.3% |
| 男性育児休業取得率 | 56.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 91.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法的規制について
1,000㎡超の店舗出店には「大規模小売店舗立地法」の規制があり、届出や地域調整が必要です。また、医薬品医療機器等法に基づく許認可や、食品衛生法等の規制も受けています。これらの規制強化や手続きの遅延等は、出店計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 資格者の確保について
医薬品販売には薬剤師または登録販売者の配置が必須であり、調剤薬局には薬剤師が必要です。店舗拡大に伴いこれらの有資格者を十分に確保できない場合、営業時間や出店計画に支障をきたす可能性があります。同社は採用活動と社内育成に努めています。
■(3) 調剤報酬改定及び薬価改定について
調剤売上は国の定める調剤報酬や薬価に依存しています。医療費抑制策による改定で点数等が引き下げられた場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は調剤技術料や薬学管理料の算定強化等によりリスク軽減を図っています。



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