※本記事は、株式会社カワチ薬品の有価証券報告書(第59期、自 2025年3月16日 至 2026年3月15日、2026年6月10日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. カワチ薬品ってどんな会社?
メガ・ドラッグストアを中心に展開し、調剤併設による地域医療への貢献も進める小売企業です。
■(1) 会社概要
カワチ薬品は1960年に医薬品等の小売業として創業し、1980年に現在の体制へ改組しました。1996年には調剤薬局の併設を開始して事業を広げ、2002年に東京証券取引所市場第一部へ上場、2022年にプライム市場へ移行しました。2014年には倉持薬局や横浜ファーマシーを完全子会社化しています。
従業員数は連結で2,750名、単体で2,564名です。大株主については、筆頭株主が公益財団法人河内奨学財団で、第2位および第3位には創業家とみられる河内伸二氏、河内一真氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人河内奨学財団 | 11.64% |
| 河内 伸二 | 10.92% |
| 河内 一真 | 10.24% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長の河内伸二氏が経営を牽引しています。取締役4名のうち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河内 伸二 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社、1991年取締役、1999年専務取締役、2000年専務取締役経営企画室長を経て、2002年より現職。 |
| 大久保 勝之 | 取締役(開発担当) | 1983年同社入社、2012年店舗運営部長、2015年取締役営業統括部長等を経て、横浜ファーマシー代表取締役社長を務め、2026年より現職。 |
社外取締役は、渡辺林治(リンジーアドバイス代表取締役社長)、江藤美帆(南葛SC経営企画室室長・コアゾーン代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「メガ・ドラッグストア」事業を展開しています。
売場面積400坪以上をメガ・ドラッグストアと定義し、主に車社会に対応した郊外型の大型店舗を展開しています。医薬品にとどまらず、化粧品や日用雑貨、一般食品など、健康と日常生活に欠かせない商品を幅広く豊富に取り揃え、見やすく買いやすい環境と低価格で提供し、地域生活者のニーズに応えています。
収益モデルは、一般消費者への商品販売による小売売上と、処方箋に基づく調剤売上が主な柱です。調剤薬局を併設した専門性の高い店舗づくりも推進しており、事業の運営は同社および連結子会社の横浜ファーマシーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は長らく緩やかな増加傾向を維持してきましたが、直近の2026年3月期は消費者の生活防衛意識の高まりなどから減収に転じています。利益面においても、競合各社の出店攻勢や各種商材の値上げに対する販売促進費用の増加等が影響し、経常利益および当期利益ともに減益傾向となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2795億円 | 2819億円 | 2860億円 | 2878億円 | 2845億円 |
| 経常利益 | 87億円 | 77億円 | 86億円 | 83億円 | 79億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 2.7% | 3.0% | 2.9% | 2.8% |
| 当期利益 | 49億円 | 43億円 | 47億円 | 50億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
前年から当期にかけて減収となったことで売上総利益が減少し、同時に粗利率もわずかに低下しています。また、各種費用の負担から営業利益および営業利益率も縮小する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2878億円 | 2845億円 |
| 売上総利益 | 667億円 | 653億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.2% | 23.0% |
| 営業利益 | 75億円 | 68億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が255億円(構成比44%)、賃借料が70億円(同12%)、減価償却費が44億円(同7%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFは安定してプラスを維持し、手元資金をもとに新規出店等の投資や借入金の返済を進める健全な資金繰り状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 75億円 | 89億円 |
| 投資CF | -45億円 | -52億円 |
| 財務CF | -19億円 | -23億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ドラッグストア世界一へ向けて、日々革新し、向上しつづける経営をめざす」こと、および「お客様が健康で豊かな暮らしを実現するため、卓越したノウハウを生かした『普段の生活の拠点』を提供し、もって社会に貢献する」ことを経営理念に掲げています。
■(2) 企業文化
「人は会社の大切な財産=人財である」という理念の下、社員の育成と定着を目的に長期就労できる環境づくりを重視しています。また、顧客第一主義に基づいた健康維持・増進のサポートと、多様性を尊重しステークホルダーと共に持続可能な社会実現を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
次期中期経営計画については中東情勢等の影響を鑑みて精査中ですが、サステナビリティに関する明確な数値目標を掲げています。
* CO2排出量を2030年度末までに2013年度比で50.0%削減する
* 係長級以上の女性役職者を2026年3月末までに2020年度比で2.0倍以上にする
■(4) 成長戦略と重点施策
専門性と利便性を融合させた独自業態の「メガ・ドラッグストアづくり」を軸に、高齢化社会に対応する調剤薬局の併設を推進しています。「最も身近なヘルスケアセンター」の実現を目指し、ドミナントエリアへの重点的な出店や、IT活用による店舗オペレーションの効率化、専門知識を持つ人材の育成を強化していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的成長を図る上で、国籍、性別、年齢等によらず能力と成果に基づく登用を基本方針としています。次世代育成支援に基づく行動計画の策定や、キャリアアップセミナー等の教育研修を通じて人材の活躍促進と多様性の確保を図り、働きやすい社内環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 37.0歳 | 13.8年 | 5,560,435円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 78.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 62.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 67.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 93.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、係長級以上の女性役職者の人数実績(2020年度比1.67倍)、連結子会社における課長補佐級に占める女性の割合(27.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店に関する法的規制
売場面積1,000平方メートルを超える店舗の新規出店や増床は、大規模小売店舗立地法に基づく届出と地域環境への配慮が求められ、自治体等との調整状況によっては出店計画の変更や遅延が生じる可能性があります。
■(2) 資格者の確保
医薬品の販売や調剤業務には薬剤師または登録販売者が不可欠です。店舗網の拡大や調剤薬局の併設を進める中で、これらの有資格者を十分に確保・育成できない場合、店舗の営業時間や出店計画に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 調剤報酬および薬価の改定
調剤事業の売上は国が定める調剤報酬や薬価に依存しています。医療費抑制の観点から段階的に行われる制度改定により、報酬点数や薬価が引き下げられた場合、同社の業績に直接的な影響を与える可能性があります。
■(4) 調剤過誤のリスク
同社はマニュアルの徹底や鑑査システムの導入等により調剤過誤の防止に努めていますが、万が一重大な過誤が発生した場合、顧客からの信頼喪失や損害賠償負担などにより、業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。



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