※本記事は、株式会社あおぞら銀行 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あおぞら銀行ってどんな会社?
銀行業務に加え、専門性の高いファイナンスやGMOあおぞらネット銀行によるテックバンク事業を展開する金融グループです。
■(1) 会社概要
1957年に日本不動産銀行として設立され、2001年にあおぞら銀行へ行名を変更、2006年に普通銀行へ転換しました。2018年にはGMOあおぞらネット銀行がインターネット銀行事業を開始し、新たな収益柱を育成しています。2024年には大和証券グループ本社と資本業務提携契約を締結し、協業を強化しています。
2025年3月31日時点の従業員数は連結2,477名、単体1,936名です。筆頭株主は資本業務提携先の大和証券グループ本社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大和証券グループ本社 | 23.88% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.27% |
| 野村信託銀行(信託口2052255) | 3.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO)は大見秀人氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大見 秀人 | 代表取締役社長チーフ・エグゼクティブ・オフィサー(CEO) | 1989年入行。経営企画部長、常務執行役員投資銀行本部長等を経て、2021年代表取締役副社長執行役員、2024年4月より現職。 |
| 山越 康司 | 取締役会長 | 1986年入行。スペシャルティファイナンス本部長、専務執行役員ビジネスバンキング本部長等を経て、2021年代表取締役副社長執行役員、2024年4月より現職。 |
| 小原 正好 | 代表取締役副社長 | 1988年入行。執行役員マーケット本部長、専務執行役員チーフ・リスク・オフィサー(CRO)等を歴任。2024年4月より現職。 |
| 加藤 尚 | 取締役専務執行役員 | 1989年入行。執行役員マーケット本部長、専務執行役員金融法人・地域法人営業本部長等を経て、2024年7月より現職(CFO)。 |
社外取締役は、橘・フクシマ・咲江(G&Sグローバル・アドバイザーズ社長)、髙橋秀行(元みずほFG副社長)、齋藤英明(元アクサダイレクト生命社長)、多田野宏一(タダノ会長)、川島博政(大和証券グループ本社執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「法人営業グループ」「ストラクチャードファイナンスグループ」「インターナショナルビジネスグループ」「マーケットグループ」「カスタマーリレーショングループ」「GMOあおぞらネット銀行」の各セグメントで事業を展開しています。
■(1) 法人営業グループ
事業法人を中心とした法人顧客に対し、貸出や預金、金融商品の販売を行うほか、プライベートエクイティ投資業務やM&A関連業務などを提供しています。企業の成長支援や事業承継などの課題解決に向けた金融サービスを展開しています。
収益は、顧客企業からの貸出金利息や、M&Aアドバイザリー業務等の手数料収入から得ています。運営は主にあおぞら銀行が行っているほか、ABNアドバイザーズやあおぞら企業投資などのグループ会社も関与しています。
■(2) ストラクチャードファイナンスグループ
買収ファイナンス、環境関連プロジェクトファイナンス、再生ファイナンス、不動産ファイナンスなど、専門性の高い金融業務に従事しています。不動産やプロジェクトごとの特性に応じた資金調達スキームを提供します。
収益は、融資に伴う利息収入や、アレンジメントフィーなどの手数料収入が中心です。運営は主にあおぞら銀行が行っています。
■(3) インターナショナルビジネスグループ
海外投融資業務やその他専門性の高い金融業務を展開しています。北米を中心とした海外の貸出業務や、ベトナムのOrient Commercial Joint Stock Bankとの提携を通じたビジネスなどを行っています。
収益は、海外貸出金からの利息収入等が主な柱です。運営はあおぞら銀行および海外子会社等が行っています。
■(4) マーケットグループ
顧客向けのデリバティブ商品・外国為替商品の販売業務、デリバティブ・外国為替のトレーディング業務、およびALM(資産負債の総合管理)業務に従事しています。
収益は、トレーディング収益やデリバティブ商品の販売収益などから構成されます。運営は主にあおぞら銀行が行っています。
■(5) カスタマーリレーショングループ
金融法人や公共法人を中心とした法人顧客向けの貸出・預金・金融商品販売、および個人顧客向けの預金、投資信託・保険の販売などを行っています。「BANK」アプリを通じたサービス提供にも注力しています。
収益は、貸出金利息や投資信託等の販売手数料収入などです。運営は主にあおぞら銀行およびあおぞら証券等が行っています。
■(6) GMOあおぞらネット銀行
スタートアップ企業や中小企業を中心とした法人顧客、および個人顧客向けに、インターネットを通じた銀行サービスを提供しています。BaaS(Banking as a Service)事業や組込型金融サービスの提供も行っています。
収益は、決済手数料や貸出金利息などが主な源泉です。運営は連結子会社のGMOあおぞらネット銀行が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は、円金利の正常化や国内貸出の増加に伴う資金利益の増加、M\&A活発化を背景とした非資金利益の増加、およびGMOあおぞらネット銀行の経常利益がプラスに転じたことなどが寄与し、増収増益となりました。前期は、米国オフィス向けローンの破綻懸念先残高の増加や外貨有価証券ポートフォリオにおける含み損の増加等により、大幅な減益となりましたが、当期はこれらの影響が限定的となり、収益が回復しました。過去5期においては、増減を繰り返しながらも、当期は着実に収益を回復させています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 1558 | 1347 | 1833 | 2463 | 2315 |
| 経常利益(億円) | 390 | 463 | 7 | △548 | 176 |
| 当期純利益(億円) | 290 | 350 | 9 | △499 | 205 |
■(2) 損益計算書
当期は、円金利の正常化や国内貸出の増加による資金利益の増加、およびコーポレートガバナンス改革を背景としたM\&A等の活発化による非資金利益の増加により、経常収益が増加しました。一方、経常費用は、前期に計上した特別損失の反動等により、大幅に減少しました。これにより、経常利益は大幅な経常利益がプラスに転じましたとなりました。当期純利益も同様に、大幅な増加となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 2463 | 2315 |
| 経常費用 | 3011 | 2139 |
| 経常利益 | △548 | 176 |
| 当期純利益 | △499 | 205 |
| ※単位: 億円(百万円未満四捨五入) |
■(3) 役務取引等収益の内訳
当期の役務取引等収益合計は、前期比で増加しました。この増加は、主にM\&A等の活発化を背景とした手数料収入の増加によるものです。役務取引等収益の内訳を見ると、預金・貸出業務が引き続き最大の収益源となっています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 12 | 13 |
| 預金・貸出業務 | 5 | 5 |
| 為替業務 | 3 | 3 |
| 証券関連業務 | 3 | 3 |
| 代理業務 | 1 | 1 |
| ※単位: 億円(百万円未満四捨五入) |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
あおぞら銀行は、資金調達の安定性・向上を目指し、預金、譲渡性預金、社債を主要な資金調達手段とし、これらを分散・多様化させています。
当期は、貸出金の増加等により営業活動によるキャッシュ・フローは支出に転じました。また、有価証券の取得が売却・償還を上回ったこと等から、投資活動によるキャッシュ・フローも支出となりました。一方、株式の発行による収入が配当金の支払を上回ったこと等により、財務活動によるキャッシュ・フローは収入となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1339 | △569 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 1674 | △1478 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | 2 | 47 |
| ※単位: 億円(百万円未満四捨五入) |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「あおぞらミッション(存在意義)」として、「新たな金融の付加価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことを掲げています。また、「あおぞらビジョン(目指す姿)」として、時代の変化に機動的に対応し、常に信頼され親しまれるスペシャリティー高い金融グループであり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「あおぞらアクション(行動指針)」として、ユニークで専門性の高い金融サービスの提供、迅速かつ粘り強い対応、チームワークの重視、多様性の尊重、未来志向での課題への取り組み、創意工夫による新規領域へのチャレンジ、社会のサステナブルな発展への貢献を掲げています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度を計画期間とする新中期経営計画「AOZORA2027」を策定しています。2027年度の主な数値目標は以下の通りです。
* ROE(自己資本利益率):約6.0%
* 当期純利益:300億円
* OHR(経費率):約60%
* CET1比率(普通株式等Tier1比率):9.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「AOZORA2027」では、ビジネスモデルの変革と基盤強化を推進します。具体的には、ストラクチャードファイナンス等の強みを持つ分野の深化に加え、大和証券グループとの提携を通じた法人・個人ビジネスの拡大を図ります。また、GMOあおぞらネット銀行の成長加速や、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による生産性向上にも注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本の価値向上」をマテリアリティの一つに掲げ、専門性が高くユニークな金融サービスの提供を支える人材の確保・育成を目指しています。ビジネス戦略と整合した人材配置や、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境整備、DEI(多様性・公平性・包摂性)の向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 16.5年 | 9,068,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.9% |
| 男性育児休業取得率 | 105.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業戦略の推進に伴うリスク
注力する事業分野において想定通りの業績伸長が図れない可能性や、戦略遂行に伴う経営資源配分の見直しが成功しない可能性があります。また、国内外の経済状況悪化や金融市場の変動、地政学リスクの顕在化などが、事業環境や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 事業法人取引の推進におけるリスク
投資銀行ビジネス等へのリソース配分を進めていますが、地政学リスクやインフレ等の影響により取引先の信用状態が悪化し、与信費用が増加する可能性があります。また、顧客基盤の規模や競争環境の厳しさから、新規顧客獲得や収益確保に課題が生じる可能性があります。
■(3) 個人顧客向けビジネスの拡充に伴うリスク
「BANK」アプリ等を活用した非対面取引の拡充やコンサルティング強化を進めていますが、人材確保や差別化の難しさ、競争激化により、計画通りのビジネス拡大や収益確保が実現できない可能性があります。また、ブランド確立や新規顧客獲得が想定通り進まないリスクもあります。



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