楽天銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

楽天銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 プライム市場に上場。主要事業はインターネットを活用した銀行サービスの提供。直近の業績は、口座数・預金量の増加や運用資産の拡大により、経常収益・経常利益ともに伸長し、増収増益となっています。


※本記事は、楽天銀行株式会社 の有価証券報告書(第26期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 楽天銀行ってどんな会社?


楽天グループのインターネット銀行です。店舗を持たず、スマホアプリ等で完結する利便性の高いサービスを提供しています。

(1) 会社概要


2000年1月に設立され、2001年7月にイーバンク銀行として開業しました。2010年5月に楽天銀行へ商号変更し、2019年4月に楽天カードの子会社となりました。2021年1月に台湾で銀行業を開始し、2023年4月に東京証券取引所プライム市場へ上場しました。

連結従業員数は1,076名、単体では901名です。筆頭株主は親会社の楽天グループで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行です。

氏名 持株比率
楽天グループ 49.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.36%
日本カストディ銀行(信託口) 3.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長最高執行役員は永井 啓之氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
永井 啓之 代表取締役社長最高執行役員 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。楽天(現楽天グループ)入社後、楽天KC(現楽天カード)常務取締役等を歴任。2013年同社副社長執行役員を経て、2014年6月より現職。
三木谷 浩史 取締役会長 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。1997年エム・ディー・エム(現楽天グループ)を設立し代表取締役社長就任。楽天グループ代表取締役会長兼社長等を務め、2022年4月より現職。


社外取締役は、海老沼 英次(元オリンピック社長室長)、茅野 倫生(元日本総合研究所専務)、長門 正貢(元日本郵政社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 個人ビジネス


個人顧客に対し、「生活口座」として利用されることを目指し、給与受取、口座振替、振込、資産運用等のサービスを提供しています。スマートフォンアプリを活用し、時間と場所を選ばない利便性の高い銀行サービスを展開しています。

収益は、顧客からの振込手数料やATM利用料、外貨預金の為替手数料、住宅ローンやカードローンの金利収入等から得ています。運営は同社が行っています。

(2) 法人ビジネス


法人顧客に対し、テクノロジーを活用して融資、預金、為替を含めた銀行サービスを提供しています。インターネットバンキングと対面アプローチを組み合わせ、顧客のニーズに合わせた提案を行っています。

収益は、法人顧客からの決済手数料、融資に対する利息収入等から得ています。運営は同社が行っています。

(3) 海外ビジネス


台湾において、日本で培ったインターネットバンキングのノウハウを活かし、現地の個人顧客を中心に銀行サービスを提供しています。

収益は、現地顧客からの各種手数料や金利収入等から得ています。運営は連結子会社の樂天國際商業銀行股份有限公司が行っています。

(4) 信託ビジネス


顧客から金銭、金銭債権、不動産等を受託する信託業務を行っています。また、同社が運用資産を組成する際の流動化案件において、倒産隔離機能を提供しています。

収益は、信託財産の管理・運用に対する信託報酬等から得ています。運営は連結子会社の楽天信託が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、経常収益(一般的な企業の売上高に相当)、経常利益、および親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも一貫して増加傾向にあり、高い成長性を示しています。楽天エコシステムとのシナジーや「生活口座化」の推進を背景に、口座数と預金量が順調に拡大しており、これが強固な収益基盤となっています。

特に直近の2025年3月期は、運用資産の増加に加え、日本銀行の政策金利引き上げに伴う運用利回りの上昇が大きく寄与しました。これにより、経常利益および当期純利益はともに前年比で約1.5倍となる大幅な増益を達成し、成長がさらに加速しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
連結経常収益(売上高相当) 1,034億円 1,060億円 1,204億円 1,380億円 1,845億円
連結経常利益 276億円 279億円 387億円 484億円 715億円
親会社株主に帰属する当期純利益 193億円 200億円 277億円 344億円 508億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益の内訳を比較すると、同社の力強い収益構造が浮き彫りになります。

経常収益の成長を大きく牽引しているのは「資金運用収益(貸出金利息など)」です。運用資産の増加に加え、日本銀行の政策金利引き上げに伴う運用利回りの上昇が追い風となり、前年比で約437億円と大幅に伸長しました。また、非金利収益の柱である「役務取引等収益(各種手数料など)」も、口座数の増加や「生活口座化」の進展により堅調に伸びています。

一方で、預金残高の拡大や預金金利の引き上げにより「資金調達費用(預金利息など)」も増加しています。しかし、資金運用収益の増加幅が資金調達費用や営業経費の増加幅を大きく上回っているため、結果として経常利益が大きく押し上げられ、高い収益性を実現しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期 増減
連結経常収益 1,380億円 1,845億円 +465億円
 うち 資金運用収益 845億円 1,282億円 +437億円
 うち 役務取引等収益 428億円 463億円 +35億円
連結経常費用 896億円 1,130億円 +234億円
 うち 資金調達費用 111億円 271億円 +160億円
 うち 営業経費 420億円 463億円 +43億円
連結経常利益 484億円 715億円 +231億円

(3) セグメント収益


同社は銀行業の単一セグメントですが、非金利収益の柱である「役務取引等収益」については、サービスごとの内訳が公開されています。これを見ると、同社がどのようなサービスを通じて手数料を稼ぎ出しているかがわかります。

収益の大部分を占めているのは「為替預金業務」です。生活口座化の進展や口座数の拡大を背景に、振込手数料やATM利用料などが順調に積み上がり、直近の2025年3月期には約294億円に達しています。また、「カード決済業務」も堅調に推移しており、デビットカード等の決済手数料が収益を力強く下支えしています。

一方で、totoや宝くじの販売、住宅ローンの事務手数料など、多様な周辺サービスからも着実に収益を上げており、特定のサービスに依存しない幅の広い収益基盤が構築されていることが伺えます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 412億円 428億円 463億円
 為替預金業務 251億円 270億円 294億円
 カード決済業務 108億円 111億円 122億円
 toto・宝くじ販売業務 31億円 31億円 34億円
 住宅ローン取扱業務 31億円 29億円 28億円
 その他の業務 52億円 52億円 58億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

楽天銀行は、預金や借入金の増加により営業活動で収入を得た一方、貸出や買入金銭債権の増加で支出もありました。投資活動では、有価証券の取得による支出が大きかったものの、償還による収入もありました。財務活動では、自己株式の取得は行いませんでした。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10,279億円 1,838億円
投資CF -3,011億円 -7,326億円
財務CF 133億円 -0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「安心・安全で最も便利な銀行」を実現することを目指しています。楽天グループの一員として、イノベーションを通じて人々と社会をエンパワーメントすることをミッションとし、顧客満足度の高いサービス提供と多くの人々の成長を後押しすることで、社会を変革し豊かにしていくことに寄与します。

(2) 企業文化


同社は、「お客さま第一」の考え方を徹底し、多様なニーズに応えるサービスを提供することを重視しています。また、健全経営と効率経営を確保しつつ、役職員がいきいきと仕事ができる職場環境を整備し、働き甲斐のある職場作りを進めることを方針としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、店舗を持たないインターネット銀行として、口座数および預金量を営業基盤の規模を示す重要な経営指標と位置付けています。また、経常収益および経常利益を成長性や収益性を評価する指標として重視しています。中長期的には「ゼロキャッシュ時代の到来を見据えたFinTechのリーディングカンパニー」を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「顧客基盤の拡充」「収益力の強化」「FinTech領域の成長取込み」を三位一体とした成長戦略を推進します。具体的には、楽天エコシステムを活用した顧客獲得、生活口座化の推進、法人ビジネスの拡大、BaaS(Banking as a Service)の展開等に取り組みます。

* 口座数1,683万口座(2025年3月期実績)
* 預金量11.4兆円(2025年3月期実績)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材の育成強化を図るとともに、役職員がいきいきと仕事ができる職場環境を整備し、働き甲斐のある職場作りを進めています。業務に必要な知識・スキルの研修に加え、自律的な能力開発をサポートし、性別や国籍等を問わず多様な人材が活躍できるダイバーシティを促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.8歳 5.5年 6,291,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.5%
男性育児休業取得率 133.3%
男女賃金差異(全労働者) 62.6%
男女賃金差異(正規) 66.3%
男女賃金差異(非正規) 57.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社研修参加率(100%)、金融コンプライアンス・オフィサー2級認定率(99%)、管理職(リーダー職以上)に占める女性労働者の割合(33.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム障害


ハードウェア・ソフトウェアの不具合や役職員の過誤によるシステム障害が発生し、サービス停止に至った場合、行政処分や損害賠償請求、社会的信用の毀損が生じる可能性があります。対策としてシステムの冗長化等を行っていますが、想定外の事態により事業継続に支障が出るリスクがあります。

(2) サイバー攻撃


コンピュータシステムへの不正アクセス、ウイルス、フィッシング等により、サービス停止や重要データの漏洩、盗取が発生する可能性があります。これにより、社会的信用の毀損、顧客離反、損害賠償請求等が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 楽天グループとの関係


同社は楽天グループの子会社であり、「楽天」ブランドの使用やグループ各社との連携を行っています。グループ関係の変化やブランドイメージの毀損、グループ内での連携条件の変更等が生じた場合、顧客獲得効率の低下や収益減少等、事業運営に影響が出る可能性があります。

(4) 競争環境の激化


他のインターネット銀行や既存金融機関のデジタル強化、異業種からの参入等により競争が激化しています。また、グループ内外でのキャッシュレス決済分野での競合も想定されます。サービスの競争力維持が困難になった場合、顧客基盤の拡大鈍化や収益性の低下が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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