楽天銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

楽天銀行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

楽天銀行は東京証券取引所プライム市場に上場し、インターネットを活用した銀行業を展開する企業です。個人・法人向けに預金、為替、貸出等の銀行サービスを提供し、楽天エコシステムを活かした顧客基盤の拡大を推進しています。直近の業績では、口座数と預金量の増加に伴い増収増益を達成し、堅調な成長を続けています。


※本記事は、楽天銀行株式会社の有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 楽天銀行ってどんな会社?


インターネットを活用し、個人・法人向けに多様な銀行サービスを提供するネット銀行です。

(1) 会社概要


2000年1月に日本電子決済企画として設立され、2001年7月に銀行業免許を取得しイーバンク銀行として開業しました。2009年2月に楽天が親会社となり、2010年5月に楽天銀行へ商号を変更しました。2021年1月に台湾において銀行業の営業を開始し、2023年4月に東京証券取引所プライム市場へ上場を果たしました。

同社グループの連結従業員数は1,186名、単体では987名です。筆頭株主は事業会社の楽天グループで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行等です。

氏名 持株比率
楽天グループ 49.26%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.37%
JP MORGAN CHASE BANK 380634(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 2.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長最高執行役員は東林知隆が務めています。

氏名 役職 主な経歴
東林知隆 代表取締役社長最高執行役員 1988年日本長期信用銀行に入行し、みずほ銀行などを経て2006年に楽天証券に入社。楽天グループ常務執行役員などを歴任し、2025年6月より現職。
三木谷浩史 取締役会長 1988年日本興業銀行に入行。1997年エム・ディー・エム(現楽天グループ)を設立し代表取締役社長に就任。同社代表取締役会長兼社長を務め、2022年4月より現職。


社外取締役は、海老沼英次(元ミライト・ホールディングス取締役)、長門正貢(元日本郵政取締役兼代表執行役社長)、川村佳世子(元日本テラデータ執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」事業を展開しています。

(1) 個人ビジネス


個人を対象に、生活口座としての利用を促進し、決済、預金、各種ローン、外貨預金、海外送金などの多様なフィンテックサービスを提供しています。給与振込や口座振替の機能に加え、楽天エコシステムと連携した利便性の高いサービス群が特徴です。

主な収益源は、各種ローンからの利息収益や、決済・振込などに伴う受取手数料です。また、楽天グループの強固な顧客基盤を活用して効率的に新規顧客を獲得し、獲得コストを抑制しています。これらの事業は主に楽天銀行が運営しています。

(2) 法人ビジネスおよびその他の業務


法人を対象に、融資、預金、為替を含むすべての銀行サービスをテクノロジーを用いて提供しています。また、他社保有資産の証券化や台湾でのインターネット銀行業展開など、多様な運用資産の創出と事業領域の拡大を進めています。

法人向け貸出や資金運用からの利息収益、証券化アレンジによる運用収益が主な収益源です。日本国内の事業は楽天銀行、信託業務を通じた証券化支援は楽天信託、台湾での銀行業は樂天國際商業銀行股份有限公司がそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、経常収益および経常利益ともに右肩上がりで拡大しています。口座数や預金量の堅調な伸長に加え、利息収益や手数料収益の増加が寄与し、持続的な成長を実現しています。利益率も毎期改善傾向にあり、収益力の高さがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 1060億円 1204億円 1380億円 1845億円 2556億円
経常利益 279億円 387億円 484億円 715億円 1031億円
利益率(%) 26.3% 32.1% 35.1% 38.8% 40.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 200億円 277億円 344億円 508億円 731億円

(2) 損益計算書


直近2期の経常収益は大幅な増収を達成しています。日銀の政策金利引き上げに伴う資金運用利回りの上昇や、生活口座化の進展による手数料の増加が増収を牽引しました。一方、預金残高の伸長や預金利率の上昇により資金調達費用も増加しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
経常収益 1845億円 2556億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -


経常費用のうち、預金残高の伸長等に伴う資金調達費用が552億円を占めています。また、営業経費は人件費やシステム関連費用の増加により569億円となり、事業拡大に伴う運用コストの増加が見られます。

(3) セグメント収益


同社は銀行業の単一セグメントであるため、事業全体の状況を分析します。運用資産の拡大および金利上昇による資金運用収益の増加に加え、口座振替や決済関連等の役務取引等収益が堅調に推移し、全体として大幅な増収増益を達成しています。

区分 経常収益(2025年3月期) 経常収益(2026年3月期) 経常利益(2025年3月期) 経常利益(2026年3月期) 利益率
銀行業 1845億円 2556億円 715億円 1031億円 40.3%
連結(合計) 1845億円 2556億円 715億円 1031億円 40.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


健全型
なお、同社は金融関連事業を主力としているため、営業CFのプラスは顧客からの預金増加などの事業活動によるものであり、健全な資金循環を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1838億円 3543億円
投資CF -7326億円 -4576億円
財務CF -0億円 -0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は2.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」というミッションを掲げています。企業価値を高めながら社会に貢献し、多くの人々の成長を後押しすることで社会を変革し豊かにしていくことを目指しています。また、銀行業務の公共性に鑑み、信用維持と預金者保護を徹底する健全経営を経営方針の柱としています。

(2) 企業文化


役職員がいきいきと仕事のできる職場環境の整備と働き甲斐のある職場づくりを推進しています。また、インターネットや革新的なアイデアの活用により低コスト運営を徹底し、その削減分をポイント等で顧客に還元する姿勢を重視しています。安全・安心な銀行としてのコンプライアンスとリスク管理の徹底も組織に根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、店舗を持たないインターネット銀行としての営業基盤の規模を示す「口座数」および「預金量」、ならびに成長性と収益性を評価する「経常収益」および「経常利益」を重要な経営指標として位置づけています。持続的な営業基盤の拡大と事業の成長を推進し、業界におけるリーディングカンパニーを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


楽天エコシステムとのシナジーを最大限に発揮し、顧客基盤の拡充と収益力の強化を図っています。具体的には、個人の給与振込や口座振替の獲得による「生活口座化」の推進を通じて預金・為替の拡大を進めています。また、法人ビジネスの強化や運用資産の多様化による利息収益の拡大、FinTech領域での新たな収益機会の創出にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を重要な経営資本と位置づけ、金融機関経験者だけでなくIT技術者やデータサイエンティストなど多様な人材を採用しています。従業員一人ひとりの活躍を後押しするため、各種研修やオンライン学習システムを活用した能力開発の支援を行っています。また、柔軟な勤務制度や育児支援制度など職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.4歳 5.5年 7,072,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 65.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 56.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全社研修参加率(100%)、金融コンプライアンス・オフィサー2級認定率(98%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報システムに係るリスク


ハードウェアやソフトウェアの不具合、役職員の過誤等によりシステム障害が発生した場合、サービス停止や重要データの消失、機密情報の漏えいが起こる可能性があります。これが社会的信用の毀損や損害賠償請求につながるリスクがあります。

(2) サイバー攻撃に係るリスク


コンピュータウイルスやフィッシング、外部からの不正侵入などのサイバー攻撃を受けた場合、システムの停止や顧客データの盗取が発生するリスクがあります。これにより、顧客の離反や行政処分等を受ける可能性があります。

(3) 楽天グループとの関係に係るリスク


同社が楽天グループから外れた場合、「楽天」ブランドの利用や楽天ポイントなどのエコシステム連携に制限が生じる可能性があります。これにより、顧客獲得力の低下やサービス利用の低迷を招くリスクがあります。

(4) 金融犯罪・マネロン対策に係るリスク


高度化・巧妙化する金融犯罪やマネー・ローンダリングへの対策が遅れた場合、または有効に機能しなかった場合、社会的信用の毀損や行政処分を受けるリスクがあり、追加の対策費用が発生する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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