※本記事は、大和証券グループ本社の有価証券報告書(第89期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大和証券グループ本社ってどんな会社?
大和証券グループ本社は、有価証券関連業務を中核とし、グローバルに総合的な金融サービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1943年に藤本証券と日本信託銀行が合併して大和証券として設立されました。1961年に株式を上場し、1999年には持株会社体制へ移行して大和証券グループ本社へ商号変更しました。近年は2011年に大和ネクスト銀行がサービスを開始したほか、2024年にはあおぞら銀行等と資本業務提携を結んでいます。
現在の従業員数はグループ連結で14,984名、単体で624名となっています。筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務等を行う信託銀行です。また、第3位株主には太陽生命保険が名を連ねており、機関投資家や事業会社が主要な株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.74% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.63% |
| 太陽生命保険 | 2.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性15名、女性7名の計22名で構成され、女性役員比率は31.8%です。代表執行役社長最高経営責任者(CEO)は荻野明彦氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荻野明彦 | 取締役 代表執行役社長最高経営責任者(CEO) | 1989年同社入社。経営企画部長、法務担当兼企画副担当を経て、専務執行役企画担当兼法務担当兼人事管掌などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 中田誠司 | 取締役会長 | 1983年同社入社。大和証券キャピタル・マーケッツ法人営業上席担当などを経て、2017年に同社代表執行役社長最高経営責任者(CEO)に就任し、2024年4月より現職。 |
| 佐藤英二 | 取締役 代表執行役副社長最高執行責任者(COO) | 1991年同社入社。経営企画部長、執行役最高財務責任者(CFO)などを歴任し、2024年に取締役兼専務執行役に就任後、2026年4月より現職。 |
| 新妻信介 | 取締役 執行役副社長アセットマネジメント担当兼証券アセットマネジメント担当 | 1988年同社入社。大和証券名古屋支店長、最高お客様満足度責任者等を経て、2022年執行役副社長リテール担当に就任し、2026年4月より現職。 |
| 櫻井裕子 | 取締役 執行役副社長コンプライアンス担当 | 1988年同社入社。IR室長や大和証券プライベートバンキング担当などを経て、2023年専務執行役コンプライアンス担当に就任し、2026年4月より現職。 |
| 田代桂子 | 取締役 | 1986年同社入社。大和証券ダイレクト企画部長、専務執行役海外担当などを歴任し、サステナビリティ担当兼シンクタンク担当等を経て2026年4月より現職。 |
| 花岡幸子 | 取締役 | 1990年同社入社。大和総研への転籍等を経て大和証券投資情報部長を務め、2019年に同社執行役員および大和証券監査役等に就任し、2019年6月より現職。 |
社外取締役は、河合江理子(元京都大学教授)、西川克行(元検事総長)、岩本敏男(元エヌ・ティ・ティ・データ社長)、村上由美子(元OECD東京センター所長)、伊岐典子(元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)、柚木真美(公認会計士・公認会計士柚木真美事務所所長)、市川晃(住友林業代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、ウェルスマネジメント部門、アセットマネジメント部門、グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門およびその他事業を展開しています。
■(1) ウェルスマネジメント部門
個人や未上場法人の顧客に対し、資産形成から資産運用・承継に至る総合的な金融サービスを提供しています。株式、債券、投資信託、保険等の幅広い商品ラインアップを備え、質の高いコンサルティングにより中長期的な資産形成を支援しています。
顧客から受領する資産管理や運用に関する手数料、並びに預金の受入れ等による調達資金の運用から得られる利鞘収入が主な収益源です。事業の運営は大和証券および大和ネクスト銀行が行っています。
■(2) アセットマネジメント部門
幅広い資産を投資対象とする投資信託の設定や運用を行うほか、国内外の機関投資家向けに投資助言・運用サービスを提供しています。また、不動産や再生可能エネルギーなどを対象としたファンド運用や投資業務も展開しています。
投資信託等の組成・運用に伴う委託者報酬などの受入手数料や、投資先からのインカムゲイン、売却によるキャピタルゲインを主な収益源としています。事業は大和アセットマネジメントや大和企業投資などの子会社が運営しています。
■(3) グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門
機関投資家や事業法人、金融法人等の顧客に対し、株式や債券、為替等のセールスやトレーディング業務を行っています。また、有価証券の引受けやM&Aアドバイザリー業務などのインベストメント・バンキング・サービスも提供しています。
有価証券の売買に伴うトレーディング収益や顧客フロー収益、また引受けやM&A業務に基づく引受・売出し手数料やM&A手数料を収益源としています。大和証券などのグループ企業が中心となって本事業を運営しています。
■(4) その他
報告セグメントに含まれない事業として、シンクタンク機能やシステム関連業務などを手掛けています。国内外の経済見通しやサステナビリティに関する調査・分析に基づく情報発信のほか、金融機関や事業法人向けのシステムソリューションを提供しています。
システム開発やリサーチ・コンサルティング業務による収益を主な収益源としており、大和総研などの子会社がサービスを運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社の業績推移を見ると、経常利益と当期利益はともに直近で増加傾向にあります。特に直近の2期間では市場環境の好転や資産運用ニーズの拡大を背景に収益が伸び、増益基調が明確になっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | - | - | - | - | - |
| 経常利益 | 1358億円 | 869億円 | 1746億円 | 2247億円 | 2345億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 580億円 | 322億円 | 422億円 | 694億円 | 1045億円 |
■(2) 損益計算書
同社の直近2期間の営業利益を比較すると、前期間から当期間にかけて利益額が拡大しています。強固な顧客基盤を活かしたコンサルティングの推進や市場環境の好調さが寄与し、本業の収益性が高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | - |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 1667億円 | 2073億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が2,562億円(構成比49.9%)、取引関係費が1,002億円(同19.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、全ての主要セグメントで前期間から売上が増加しています。特にウェルスマネジメント部門やグローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門での増収が目立ち、全体の収益拡大を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ウェルスマネジメント部門 | 2403億円 | 2780億円 |
| アセットマネジメント部門 | 1243億円 | 1349億円 |
| グローバル・マーケッツ&インベストメント・バンキング部門 | 2323億円 | 2555億円 |
| その他 | 169億円 | 152億円 |
| 連結(合計) | 6138億円 | 6837億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態にあります。なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主にトレーディング商品や営業貸付金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。(前期マイナス分)
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4541億円 | 4390億円 |
| 投資CF | -3534億円 | -5836億円 |
| 財務CF | 1990億円 | 1994億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は4.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信頼の構築」「人材の重視」「社会への貢献」「健全な利益の確保」を企業理念に掲げています。また、グループ経営基本方針として「お客様の資産価値最大化」を揺るぎない軸に据え、顧客一人ひとりのニーズや課題を深く理解し、状況や環境に応じた最善で質の高いソリューションを提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
企業理念の一つである「人材の重視」のもと、社員が多様な価値観や専門性を活かして主体的に成長し、高いエンゲージメントをもって付加価値の創出に貢献する風土を大切にしています。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」を重要課題に位置付け、ジェンダーや年齢を問わず最大限に能力を発揮できるインクルーシブな文化の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「~“Passion for the Best” 2026~」を策定し、中長期的な企業価値の最大化に取り組んでいます。2026年度の主な数値目標として以下を定めています。
・連結経常利益:2,400億円以上
・連結ROE:10%程度
・ベース利益:1,500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「貯蓄から投資」の流れを確実にする使命のもと、外部環境に左右されにくい強固な収益構造の構築を目指しています。ウェルスマネジメントビジネスの深化やアセットマネジメントの高度化に加え、外部連携による顧客基盤の拡大を進めます。また、サステナブルファイナンスの推進やAI・デジタル技術の活用により、新たな付加価値の創出と成長投資を実行します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を競争力の源泉と位置付け、人事戦略と経営戦略を一体で推進しています。「採用」「育成」「人財ポートフォリオ」「評価・処遇」を主要施策とし、オンライン動画学習等による専門人材の育成や、ジョブサポーター制度を用いたミスマッチの少ない採用を実施しています。また、社員の健康保持・増進を図る健康経営にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.6歳 | 15.2年 | 17,934,308円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.3% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 73.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、持続可能なエンゲージメントスコア(84%)、キャリア採用比率(26.9%)、CFP・証券アナリスト資格取得者数(3,361名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済・金融市場の変動
日本銀行の金融政策の正常化や地政学リスクの高まり等により、為替や金利が急変動する可能性があります。これらの経済環境の悪化が企業業績の低迷や株価の下落を招き、有価証券関連業務における収益の減少や資産価格の調整等を通じて、同社の業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 気候変動や自然災害による影響
脱炭素社会への移行に伴うカーボンプライシング等の政策変化やエネルギー技術の転換により、投資先のコストが増加し、ファンドの運用パフォーマンスが低下するリスクがあります。また、異常気象による金融システムの障害や施設の被災が発生した場合、ビジネスの停滞や復旧費用の増加につながる可能性があります。
■(3) 銀行業に伴うビジネス・リスク
同社グループは証券ビジネスのほか、子会社の銀行を通じて貸出や有価証券投資等の銀行業を展開しています。信用リスクや市場リスク、流動性リスクなどの管理態勢を整備していますが、金利環境の変化によって期待された利鞘が確保できない場合や、貸出先の信用状態の悪化により与信費用が増加した場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。



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