※本記事は、株式会社T&Dホールディングスの有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. T&Dホールディングスってどんな会社?
中核となる生命保険3社を中心に、各社の独自性を活かした保険商品・サービスを提供する金融グループです。
■(1) 会社概要
1999年に太陽生命保険と大同生命保険が全面的な業務提携を実施し、2004年にT&Dフィナンシャル生命保険を加えた3社が共同で株式移転を行い、同社を設立して東京証券取引所等に上場しました。その後、2007年に日本ファミリー保険企画(現ペット&ファミリー損害保険)を子会社化し、2019年には投資領域を担うT&Dユナイテッドキャピタルを設立するなど、事業領域の拡大を図っています。
同社グループの従業員数は連結で21,268名、単体で114名となっています。筆頭株主は資産管理業務などを行う信託銀行であり、第2位も同様に信託銀行、第3位には外資系金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.11% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.89% |
| GOLDMAN,SACHS & CO.REG | 5.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は森山昌彦氏が務めています。社外取締役比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森山 昌彦 | 代表取締役社長 | 1989年大同生命保険入社。同社執行役員等を経て2022年T&Dホールディングス専務執行役員に就任。同社代表取締役専務執行役員等を経て2024年より現職。 |
| 上原 弘久 | 取締役会長 | 1984年太陽生命保険入社。同社取締役専務執行役員等を経て2017年T&Dホールディングス代表取締役副社長、2018年同社社長を歴任し2026年より現職。 |
| 永井 穂高 | 取締役専務執行役員 | 2002年大同生命保険入社。T&Dフィナンシャル生命保険取締役専務執行役員等を経て2021年T&Dホールディングス常務執行役員に就任し、2024年より現職。 |
| 二見 陽子 | 取締役常務執行役員 | 1991年太陽生命保険入社。同社執行役員等を経て2024年同社取締役常務執行役員に就任。同年T&Dホールディングス取締役常務執行役員となり、現在に至る。 |
| 田村 泰朗 | 取締役 | 1987年太陽生命保険入社。同社取締役専務執行役員やT&Dホールディングス専務執行役員等を経て2025年太陽生命保険代表取締役社長に就任。同年より現職。 |
| 北原 睦朗 | 取締役 | 1982年大同生命保険入社。同社代表取締役社長やT&Dホールディングス専務執行役員等を経て2021年同社取締役に就任し、2026年より大同生命保険会長。 |
| 居川 孝志 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年大同生命保険入社。同社取締役専務執行役員等を経て2021年T&Dホールディングス専務執行役員に就任。2022年よりT&Dユナイテッドキャピタル監査役。 |
| 東城 孝 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年太陽生命保険入社。同社執行役員等を経て2021年T&Dホールディングス執行役員に就任。2022年より現職。2024年より太陽生命保険監査役。 |
社外取締役は、渡邊賢作(東啓綜合法律事務所パートナー)、加藤正純(元ラッセル・インベストメント代表取締役)、夫馬賢治(ニューラル代表取締役CEO)、山田眞之助(元有限責任あずさ監査法人パートナー)、太子堂厚子(森・濱田松本法律事務所外国法共同事業パートナー)、日戸興史(元オムロン取締役執行役員専務CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「太陽生命保険」、「大同生命保険」、「T&Dフィナンシャル生命保険」、「T&Dユナイテッドキャピタル(連結)」および「その他」事業を展開しています。
■太陽生命保険
家庭市場を主なターゲットとし、高品質の商品やサービスを通じて、顧客の一生涯に寄り添った安心を提供しています。高齢化社会の進展や単身世帯の増加といった環境変化に対応し、シニアやプレシニアマーケットに向けた商品戦略を展開しています。
個人顧客から支払われる保険料を主な収益源としています。同事業の運営は太陽生命保険が行っています。
■大同生命保険
中小企業をメインターゲットとし、法人・個人を一体としたトータルな保障を提供することで企業を守る事業を展開しています。また、健康経営の実践や社会課題の解決を支援するサービスの開発・提供にも注力しています。
中小企業やその経営者から支払われる保険料が主な収益源です。同事業の運営は大同生命保険が行っています。
■T&Dフィナンシャル生命保険
乗合代理店市場を通じて、円建て定額保険、外貨建て定額保険、変額保険といった商品を主軸に提供し、顧客の安定的な資産形成に貢献する事業を展開しています。独自性の高い商品やデジタルを活用したサービス拡充も進めています。
金融機関等の代理店経由で販売される保険契約に基づく保険料が主な収益源です。同事業の運営はT&Dフィナンシャル生命保険が行っています。
■T&Dユナイテッドキャピタル(連結)
生命保険事業と親和性の高い領域への投資を行う事業です。米国の再保険会社や欧州のクローズドブック(新規引受を停止した保有契約ブロック)事業など、新たな成長分野への戦略的投資を通じた価値創出に取り組んでいます。
投資先からの運用収益や配当、持分法による投資利益などを収益源としています。同事業の運営はT&Dユナイテッドキャピタルが行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、国内外の機関投資家や個人投資家に向けたアセット・マネジメント事業、ペット保険事業、情報システム関連の事務代行業務などを展開しています。
運用受託報酬や委託者報酬、保険料などを収益源としています。事業の運営はT&Dアセットマネジメントやペット&ファミリー損害保険などがそれぞれ行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
経常利益は2023年3月期に一時マイナスとなりましたが、その後は回復し増加傾向にあります。当期利益についても安定的に利益を計上しており、直近の2026年3月期には大幅な増益を達成し、堅調な業績推移を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 570億円 | -741億円 | 1,598億円 | 1,986億円 | 2,572億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,268億円 | 463億円 | 1,039億円 | 794億円 | 1,584億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、営業利益は倍増しています。これは各事業会社からの配当金等の営業収益が増加したことが主な要因として考えられ、グループ全体の収益力が着実に向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 820億円 | 1,621億円 |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が14億円(構成比20%)、給料手当が9億円(同13%)、広告費が8億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
太陽生命保険とT&Dフィナンシャル生命保険が減収となった一方で、大同生命保険は増収を確保しました。全体としては、再保険収入の減少等の影響によりグループ全体で減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 太陽生命保険 | 17,128億円 | 12,754億円 |
| 大同生命保険 | 11,473億円 | 12,461億円 |
| T&Dフィナンシャル生命保険 | 9,591億円 | 9,128億円 |
| T&Dユナイテッドキャピタル(連結) | 19億円 | 42億円 |
| その他 | 465億円 | 446億円 |
| 調整額 | -1,371億円 | -9億円 |
| 連結(合計) | 37,305億円 | 34,822億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動と財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」の状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -3,599億円 | 1,502億円 |
| 投資CF | 943億円 | -2,615億円 |
| 財務CF | -873億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均をわずかに下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も9.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Try & Discover(挑戦と発見)による価値の創造を通じて、人と社会に貢献する」ことを経営理念として事業運営を行っています。事業を通じて社会課題を解決することで、経済的価値と社会的価値の双方を追求する「共有価値の創造」を実践し、持続的な成長を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
グループ経営ビジョンとして「“Try & Discover”を、ひとつの力に。ひとりの安心から、社会の成長へ。」を掲げています。グループ組成以来の精神である「挑戦と発見」を大切にしながら、共有価値創造の領域を広げ、「お客さま本位」をグループ共通の価値観として、真摯で誠実な企業活動を行う文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
グループ長期ビジョン「Try & Discover 2030」のグループKPIとして、以下の数値を目標に掲げています。
- グループ修正利益:2,300億円
- 修正ROE:15.0%
- 新契約価値:2,000億円
■(4) 成長戦略と重点施策
コアビジネスである生命保険事業の収益力強化を土台とし、新たな成長分野へ成果を振り向けることで持続的な企業価値の向上を実現します。「金利のある世界」への本格回帰を見据え、順ざやの拡大に向けた営業力・資産運用力の強化を進めるとともに、規律ある運営のもとでハードルレートを上回る戦略的成長投資を実行していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ともに働く『人材』こそが最大の原動力である」と位置づけ、人材ポートフォリオの再構築と従業員の挑戦・成長意欲の醸成を両輪としています。グループ内人事ローテーションや外部派遣を通じて多様な経験を持つ人材を育成するとともに、心理的安全性の確保や柔軟な働き方を取り入れ、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.8歳 | 21.5年 | 1,115万円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 37.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 38.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 15.0% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得日数(18.5日)、障がい者雇用率(2.66%)、男性育児休業平均取得日数(28.5日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生命保険事業への業績依存と役割変更
同社グループの業績は、中核となる生命保険会社3社の経営状況に大きく依存しています。そのため、これらの中核会社の経営状況が悪化した場合や、グループ内での役割・位置付けに大きな変更が生じた場合、グループ全体の業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 保険引受に伴う損失の発生
経済情勢の変化や大規模な自然災害、感染症の拡大などにより、保険事故の発生率が予測に反して変動し、保険金や給付金の支払いが急増するリスクがあります。これらの支払いに対して準備金が不足する事態となれば、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 資産運用における市場・信用環境の変動
顧客から預かった保険料を国内外の有価証券や貸付金等で運用しているため、金利や株価、為替の変動による市場リスクや、貸付先の財務悪化に伴う信用リスクに晒されています。金融市場の混乱が生じた場合、運用収益が圧迫される可能性があります。
■(4) クローズドブック事業等の投資計画の遅延
海外のクローズドブック(新規引受を停止した保険ブロック)事業など、新たな領域への投資を進めていますが、想定通りの収益が上がらない場合や事業の効率化が予定通り進まない場合、投資先からの収益が減少し、グループ業績に影響する可能性があります。



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