※本記事は、株式会社T&Dホールディングス の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. T&Dホールディングスってどんな会社?
太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命を傘下に持つ生命保険グループです。独自性のあるビジネスモデルで各市場に特化しています。
■(1) 会社概要
1999年に太陽生命保険と大同生命保険が業務提携し、2001年にT&Dフィナンシャル生命保険の株式を取得しました。2004年に3社による株式移転で同社を設立し上場しました。その後、2007年にT&Dアセットマネジメントを直接子会社化し、2019年には投資子会社のT&Dユナイテッドキャピタルを設立しています。
連結従業員数は20,896名、単体では160名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に資産管理を行う日本カストディ銀行が名を連ねています。第3位は金融機関のゴールドマン・サックスです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 17.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.43% |
| GOLDMAN,SACHS & CO.REG(常任代理人ゴールドマン・サックス証券) | 4.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.2%です。代表取締役社長は森山昌彦氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上原 弘久 | 代表取締役会長 | 1984年太陽生命保険相互会社入社。同社執行役員、取締役専務執行役員などを経て2018年T&Dホールディングス代表取締役社長。2024年4月より現職。 |
| 森山 昌彦 | 代表取締役社長 | 1989年大同生命保険相互会社入社。同社取締役常務執行役員、T&Dホールディングス代表取締役専務執行役員などを経て2024年4月より現職。 |
| 永井 穂高 | 取締役専務執行役員主計部管掌財務戦略部担当 | 2002年大同生命保険入社。T&Dフィナンシャル生命保険取締役専務執行役員、T&Dホールディングス取締役常務執行役員などを経て2024年4月より現職。 |
| 二見 陽子 | 取締役常務執行役員内部監査部担当 | 1991年太陽生命保険相互会社入社。同社取締役執行役員、取締役常務執行役員を経て2024年6月より現職。 |
| 副島 直樹 | 取締役 | 1981年太陽生命保険相互会社入社。同社代表取締役社長を経て2019年6月より現職。2025年4月より太陽生命保険代表取締役会長。 |
| 北原 睦朗 | 取締役 | 1982年大同生命保険相互会社入社。同社代表取締役社長を経て2021年6月より現職。 |
| 居川 孝志 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年大同生命保険相互会社入社。同社取締役常務執行役員、T&Dホールディングス専務執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 東城 孝 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年太陽生命保険相互会社入社。同社執行役員、T&Dホールディングス執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
社外取締役は、渡邊賢作(弁護士)、加藤正純(元ラッセル・インベストメント代表取締役)、夫馬賢治(ニューラル代表取締役CEO)、山田眞之助(元あずさ監査法人パートナー)、太子堂厚子(弁護士)、日戸興史(元オムロン取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「太陽生命保険」、「大同生命保険」、「T&Dフィナンシャル生命保険」、「T&Dユナイテッドキャピタル(連結)」および「その他」事業を展開しています。
■太陽生命保険
家庭市場を主なターゲットとし、死亡保障や医療・介護保障などの生命保険商品を提供しています。また、「ひまわり認知症予防保険」などの予防保険シリーズも展開し、シニア層を含む幅広い顧客を対象としています。
収益は主に契約者からの保険料収入によって得ています。運営は主に太陽生命保険が行っています。同社は対面と非対面を融合したハイブリッド型営業を推進し、顧客基盤の強化に取り組んでいます。
■大同生命保険
中小企業市場をターゲットとし、法人会や納税協会などの提携団体を通じて、経営者向けの定期保険(死亡保障・就業不能保障など)を提供しています。また、健康経営の実践を支援するサービスも展開しています。
収益は主に法人顧客からの保険料収入によって得ています。運営は主に大同生命保険が行っています。同社は中小企業の事業継続や事業承継を支援する商品・サービスを提供し、独自の市場地位を築いています。
■T&Dフィナンシャル生命保険
金融機関や保険ショップなどの乗合代理店市場を通じて、円建て・外貨建ての定額保険や変額保険などを提供しています。老後資金形成や資産承継ニーズを持つ個人顧客が主な対象です。
収益は主に契約者からの保険料収入によって得ています。運営は主にT&Dフィナンシャル生命保険が行っています。同社は代理店サポート体制の強化や独自性の高い商品開発により、企業価値の向上を図っています。
■T&Dユナイテッドキャピタル(連結)
生命保険事業と親和性の高い事業領域への投資を行っており、特にクローズドブック事業(新規引受を停止した保険契約の管理・運用事業)への投資に注力しています。
収益は投資先からの配当や投資収益等によって得ています。運営は主にT&Dユナイテッドキャピタルが行っています。持分法適用関連会社であるFGH Parent, L.P.などを通じて事業を展開しています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、グループ内の事務代行やシステム開発・運用、資産運用関連事業などを行っています。
収益はグループ会社からの業務受託手数料や資産運用報酬等によって得ています。運営は、T&Dアセットマネジメント、ペット&ファミリー損害保険、T&D情報システムなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(経常収益)や利益水準には変動が見られます。特に2023年3月期は経常損失および当期純損失を計上しましたが、その後は回復傾向にあります。当期は増収増益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も増加しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | - | - | - | - |
| 税引前利益 / 経常利益 / 営業利益 | 1,746億円 | 570億円 | -741億円 | 1,598億円 | 1,986億円 |
| 利益率(%) | - | - | - | - | - |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 393億円 | 1,268億円 | 463億円 | 1,039億円 | 794億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、営業利益は前期に比べて減少しています。また、税金等調整前当期純利益(連結)は増加しており、当期純利益(単体)は減少しています。全体として、グループ全体の利益水準は向上していますが、単体ベースの利益は変動しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 1,057億円 | 820億円 |
| 営業利益率(%) | - | - |
販売費及び一般管理費のうち、広告費が10億円(構成比17.5%)、給料手当が9億円(同15.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期のセグメント別収益を見ると、太陽生命保険は円貨建て一時払商品の販売増加等により増収となりました。大同生命保険は保険料等収入が概ね前期並みでしたが、資産運用収益の減少等により経常収益は減少しました。T&Dフィナンシャル生命保険は再保険収入の増加により増収となっています。T&Dユナイテッドキャピタルは増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 太陽生命保険 | 9,859億円 | 17,128億円 |
| 大同生命保険 | 11,816億円 | 11,473億円 |
| T&Dフィナンシャル生命保険 | 10,283億円 | 9,591億円 |
| T&Dユナイテッドキャピタル(連結) | 5億円 | 19億円 |
| その他 | 433億円 | 465億円 |
| 調整額 | -315億円 | -1,371億円 |
| 連結(合計) | 32,080億円 | 37,305億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはマイナス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスで、「事業検討型」に該当します。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に再保険料の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2,628億円 | -3,599億円 |
| 投資CF | -1,802億円 | 943億円 |
| 財務CF | -792億円 | -873億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は7.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「Try & Discover(挑戦と発見)による価値の創造を通じて、人と社会に貢献する」ことを経営理念としています。また、グループ経営ビジョンとして「保険を通じて、“ひとり”から、世の中のしあわせをつくる。ていねいに向き合い、大胆に変えるグループへ。」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「お客さま本位」を共通の価値観としています。また、経営理念にある「Try & Discover(挑戦と発見)」の精神に基づき、既存の枠組みにとらわれない挑戦を続けることで、グループ各社間の協働による事業シナジーを追求する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年度を最終年度とするグループ長期ビジョン「Try & Discover 2025」に取り組んでいます。このビジョンでは、資本効率の向上を伴った成長ストーリーの推進を全体方針としています。
* グループ修正利益:1,300億円
* 修正ROE:8.0%
* 新契約価値:2,000億円
* ROEV:7.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
コアビジネスの強化として、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命がそれぞれの特化市場での戦略を追求し、保険収益力の強化を図ります。また、事業ポートフォリオの多様化・最適化のため、クローズドブック事業などの成長事業へ経営資源を配賦します。さらに、資本マネジメントの進化やグループ一体経営の推進、SDGs経営にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「グループ人事基本方針」に基づき、高いインテグリティと柔軟性、グローバルな視野を持ち、自ら考え行動できる自律型人材の育成を目指しています。次世代経営人材の育成、女性活躍推進、グローバル人材の育成に注力するとともに、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進や健康経営などにより、従業員がいきいきと働ける環境整備を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.0歳 | 21.8年 | 11,070,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 36.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 37.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 14.8% |
※表の数値は主要事業会社である太陽生命保険のデータです。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(3.90)、障がい者雇用率(2.57%)、有給休暇平均取得日数(18.2日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生命保険事業の業績への依存等に関するリスク
同社グループは、生命保険事業を主たる事業とする生命保険会社3社の業績に大きく依存しています。そのため、これら3社の経営状況が大きく変動した場合や役割・位置付けに変更が生じた場合、グループ全体の業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 保険引受リスク
経済情勢や保険事故発生率が予測に反して変動し損失を被るリスクや、大規模災害・感染症拡大により保険金支払いが急増するリスクがあります。適切な保険料設定や引受基準の設定、再保険の活用などで管理していますが、想定を超える事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 資産運用リスク
金利、株価、為替等の変動による市場リスクや、信用供与先の財務悪化による信用リスク、不動産投資リスクなどがあります。それぞれの資産特性に応じたリスクコントロールを行っていますが、金融市場の混乱や経済環境の悪化により資産価値が減少し、損失が発生する可能性があります。
■(4) 競合リスク
国内には多数の生命保険会社が存在し、すべての契約募集・維持管理において競合関係にあります。少子高齢化による市場縮小や異業種からの参入、業界再編の進展などにより競争が激化した場合、新契約の減少や解約の増加を通じて、業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。



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