スターツコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スターツコーポレーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するスターツコーポレーションは、建設事業や「ピタットハウス」での不動産仲介・管理をはじめ、出版、ホテル・レジャーなど幅広い事業を展開する企業です。直近の業績は、売上高2,519億円、経常利益382億円と増収増益を達成し、安定的な成長を続けています。


※本記事は、スターツコーポレーション株式会社の有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. スターツコーポレーションってどんな会社?


不動産の建設や仲介・管理を中核に、金融、出版、ホテルなど多様な事業を総合的に展開する企業です。

(1) 会社概要


1969年に千曲不動産として創業し、1972年に設立されました。1975年に建設事業へ進出した後、出版事業や海外での不動産事業を展開。1987年に現在のスターツコーポレーションへ商号変更し、2005年にホールディングカンパニー制を導入しました。現在は不動産領域にとどまらず、ホテルや保育支援など多彩な領域へ進出しています。

現在の従業員数は連結で4,715名、単体で155名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は資産管理等を行う豊州、第3位は創業者の村石久二氏となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 10.50%
豊州 10.46%
村石 久二 9.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表取締役社長は村石豊隆氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
村石 豊隆 取締役社長代表取締役 INAX入社後、2007年同社入社。常務、専務、副社長を経て2024年7月より現職。
磯﨑 一雄 取締役副会長代表取締役 1986年同社入社。人事部長、専務を経て2016年代表取締役社長に就任。2024年7月より現職。
齋藤 太朗男 取締役専務代表取締役 1988年同社入社。グループ各社の取締役や社長を歴任し、2024年7月より現職。
直井 秀幸 取締役専務代表取締役 1984年同社入社。グループ各社の代表取締役社長を経て、2024年7月より現職。
中松 学 常務取締役 1984年同社入社。グループ各社の役員や社長を歴任し、2015年4月より現職。
直井 保 常務取締役 1984年同社入社。広報・総務担当の執行役員等を経て、2021年7月より現職。
長谷川 隆浩 常務取締役総務・広報担当 1991年同社入社。総務・広報担当の執行役員等を経て、2024年7月より現職。
村松 久行 取締役経理担当 1989年同社入社。財務担当執行役員等を経て、2018年6月より現職。
石田 元二 取締役財務担当 吉富製薬入社後、2005年同社入社。財務担当執行役員等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、高橋尚子(一般社団法人パラスポーツ推進ネットワーク理事長)、山本美雄(元ヨネックス執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」「賃貸仲介事業及び売買仲介事業」「不動産管理事業」「分譲不動産事業」「出版事業」「ホテル・レジャー事業」「高齢者支援・保育事業」「金融・コンサルティング事業」「物販・文化事業」を展開しています。

(1) 建設事業


首都圏や各主要都市において、遊休地の土地有効活用に伴う企画提案や建設受注、設計・施工、ならびに戸建住宅建築やリフォーム工事を提供しています。個人から法人まで幅広い顧客を対象としています。

顧客からの建築請負代金が主な収益源です。運営はスターツCAM、スターツホームや各地域のスターツ子会社が行っています。

(2) 賃貸仲介事業及び売買仲介事業


首都圏および主要都市で不動産営業店舗「ピタットハウス」を展開し、賃貸物件の入居者募集、住宅販売代理、不動産の売買仲介、法人向けの社宅斡旋等を提供しています。

不動産オーナーや入居者、物件売買の顧客からの仲介手数料が主な収益源です。運営はスターツピタットハウスやスターツコーポレートサービスなどが行っています。

(3) 不動産管理事業


賃貸アパート・マンション、駐車場等の管理業務や附帯するリフォームメンテナンス、オフィスビルの施設管理、時間貸駐車場「ナビパーク」の運営などを提供しています。

不動産オーナーや施設所有者からの管理手数料や工事代金などが主な収益源です。運営はスターツアメニティーや各地域の子会社、スターツファシリティーサービスなどが行っています。

(4) 分譲不動産事業


首都圏において、戸建住宅および中高層住宅の分譲を行っています。住宅購入を検討している個人顧客を主な対象としています。

顧客への住宅等販売による販売代金が主な収益源です。運営はスターツデベロップメントが行っています。

(5) 出版事業


女性向けウェブサイト「オズモール」をはじめ、情報誌やフリーマガジン、書籍・電子書籍の出版事業を行っています。一般読者やウェブサイト利用者を対象としています。

読者からの書籍購入代金やウェブサイトの掲載施設からの送客手数料等が主な収益源です。運営はスターツ出版が行っています。

(6) ホテル・レジャー事業


「ホテル エミオン」や「ホテル ルミエール」などのホテル、温泉旅館、ゴルフ場の運営、旅行業およびレストラン経営を行っています。観光やビジネスでの利用客を対象としています。

利用客からの宿泊料、施設利用料、飲食代などが主な収益源です。運営はスターツホテル開発やスターツリゾートなどが行っています。

(7) 高齢者支援・保育事業


首都圏を中心に、グループホームなどの高齢者支援施設や保育施設の運営を行っています。高齢者や子育て世帯を対象としています。

施設利用者からの介護・保育サービス利用料が主な収益源です。運営はスターツケアサービスが行っています。

(8) 金融・コンサルティング事業


「ピタットハウス」のフランチャイズ事業推進、資産運用コンサルティング、証券・信託・保険業、人材派遣事業などを提供しています。加盟店や一般顧客、法人を対象としています。

加盟店からのロイヤリティ、金融商品の販売・運用手数料、コンサルティング料が主な収益源です。運営はピタットハウスネットワークやスターツ証券などが行っています。

(9) 物販・文化事業


カード式玄関キー等の住宅用セキュリティーシステムの企画・製造・販売のほか、美術館などの文化施設の運営・管理を行っています。

顧客からの製品販売代金や施設の入館料・運営受託料が主な収益源です。運営はスターツファシリティーサービスや相田みつを美術館などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高・利益ともに拡大傾向にあります。特に直近の事業年度では、主力事業である建設事業や不動産管理事業が好調に推移し、増収増益を達成しています。利益率も15%台へと上昇し、収益性の向上が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,966億円 2,339億円 2,334億円 2,330億円 2,519億円
経常利益 258億円 300億円 334億円 334億円 382億円
利益率(%) 13.1% 12.8% 14.3% 14.3% 15.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 121億円 132億円 161億円 161億円 232億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も着実に成長しています。原価率を安定的にコントロールしながら、効率的な営業活動を行うことで高い営業利益率を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,330億円 2,519億円
売上総利益 776億円 837億円
売上総利益率(%) 33.3% 33.2%
営業利益 326億円 363億円
営業利益率(%) 14.0% 14.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が156億円(構成比33%)、支払手数料が49億円(同10%)、広告宣伝費が42億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の不動産管理事業や建設事業が大きく売上を伸ばし、全体の成長を牽引しています。また、ホテル・レジャー事業や分譲不動産事業など、幅広いセグメントで堅調な増収が見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 714億円 762億円
賃貸仲介事業 86億円 89億円
売買仲介事業 84億円 102億円
不動産管理事業 952億円 1,026億円
分譲不動産事業 30億円 70億円
出版事業 85億円 77億円
ホテル・レジャー事業 156億円 164億円
高齢者支援・保育事業 124億円 131億円
金融・コンサルティング事業 89億円 89億円
物販・文化事業 9億円 10億円
連結(合計) 2,330億円 2,519億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 259億円 172億円
投資CF -88億円 -191億円
財務CF -153億円 -123億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.5%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人が、心が、すべて。」の理念のもと、お客様とともに永続的に発展する企業グループを目指しています。資産活用の『トータル・ソリューション・カンパニー』として、地域の人々の暮らしに密着した関連事業を総合的に展開し、一生涯お付き合いいただける『生涯顧客』の創造を掲げています。

(2) 企業文化


「人が、心が、すべて。」という企業理念を根底に、多様な働き方や価値観が求められる中で社員一人ひとりの個性を尊重し、働きがいを感じながら自分らしく働ける環境整備を推進しています。「じっくり育て、活かし、伸ばす」という人材育成を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


目標とする経営指標として、資本投下の効率性の観点から総資産利益率(ROA)、株主資本利益率(ROE)および自己資本比率を重視しています。

* 総資産利益率(ROA): 7.4%
* 株主資本利益率(ROE): 13.9%
* 自己資本比率: 53.5%

(4) 成長戦略と重点施策


個人の不動産オーナーだけでなく企業不動産、公有地活用、都市再開発事業等に取り組むことで、住宅から非住宅、建築・管理から施設運営へと事業領域の拡大を推進しています。首都圏で培った経験を主要都市にも展開し、各事業の収益基盤強化や安定成長基盤の拡大を進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


創業以来変わらない企業理念「人が、心が、すべて。」のもと、「個を活かしながら、全体の調和を重んじる」人事戦略を重視しています。社員自らが希望する会社や職種をアピールできる「キャリアアップシート制度」を設け、グループ横断的なキャリア形成と自己研鑽を支援する環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.5歳 14.6年 6,581,708円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.6%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.9%
男女賃金差異(正規雇用) 69.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 37.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、フルタイム労働者の月間平均残業時間(20.9時間)、男性の平均勤続年数(12.1年)、女性の平均勤続年数(9.4年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不動産価格の動向


有形固定資産や販売用不動産を多数保有しているため、今後の不動産価格の動向や賃貸不動産の収益状況によっては、減損会計の適用や評価損、売却損の計上などにより業績に影響を与える可能性があります。

(2) 有利子負債の影響


設備投資資金などの資金調達を銀行借入によって賄っているため、有利子負債の削減に取り組む一方で、今後の金融情勢や金利の変動によっては、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 建築資材の調達遅延・価格上昇


建設事業等における建築資材の調達において、価格の上昇や供給制約などに伴う納期の遅延が発生した場合、工期の長期化や追加コストの発生が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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