京浜急行電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京浜急行電鉄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京浜急行電鉄は東京証券取引所プライム市場に上場し、鉄道やバスなどの交通事業を中心に、不動産、レジャー、流通事業などを幅広く展開する企業グループです。直近の業績では、国内の移動需要や宿泊需要の拡大により売上を伸ばした一方、前期の不動産事業用地の売却の反動や人件費増加等の影響で増収減益となっています。


※本記事は、京浜急行電鉄株式会社の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京浜急行電鉄ってどんな会社?


都心から品川、羽田空港、横浜、三浦半島を結ぶ鉄道事業を中核に、多角的な事業を展開しています。

(1) 会社概要


1898年2月に大師電気鉄道として創立し、1899年4月に京浜電気鉄道へ商号変更しました。1948年6月に東京急行電鉄から分離して京浜急行電鉄を創立し、1949年5月に東京証券取引所に株式上場しました。その後、1968年に都心乗り入れを開始し、1998年には羽田空港への乗り入れを開始しています。

従業員数は連結8,177名、単体2,921名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位はATRA、第3位は横浜銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.82%
ATRA 6.08%
横浜銀行 3.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役は原田一之、川俣幸宏の2名が務め、社外取締役比率は46.2%となっています。

氏名 役職 主な経歴
原田一之 取締役会長(代表取締役) 1976年4月同社入社。取締役社長等を経て、2022年4月より現職。
川俣幸宏 取締役社長(代表取締役)社長執行役員グループ業務監査部担当 1986年4月同社入社。取締役常務執行役員等を経て、2022年4月より現職。
金子雄一 取締役専務執行役員生活事業創造本部長 1988年4月同社入社。常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。
竹谷英樹 取締役専務執行役員鉄道本部長生活事業創造本部品川開発推進部担当 1988年4月同社入社。鉄道本部長等を経て、2026年4月より現職。
杉山勲 取締役常務執行役員新しい価値共創室長 1990年4月同社入社。執行役員等を経て、2024年6月より現職。
櫻井和秀 取締役 1988年4月同社入社。常務執行役員等を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、寺島剛紀(元日本生命保険副社長)、柿﨑環(明治大学法学部教授)、野原佐和子(イプシ・マーケティング研究所社長)、原田修(元みずほ銀行常務)、末綱隆(元宮内庁東宮侍従長)、須藤修(須藤綜合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業およびその他の事業を展開しています。

交通事業

鉄道事業を中心に、バス事業およびタクシー事業を展開し、旅客運輸サービスを提供しています。都心と羽田空港や三浦半島を結ぶ交通ネットワークを構築し、通勤・通学客から空港利用者まで幅広い顧客に利用されています。
収益源は利用客からの運賃収入です。運営は鉄道事業を同社が担い、バス事業を京浜急行バスや川崎鶴見臨港バスなどが担当しています。

不動産事業

分譲マンションなどの不動産販売業と、オフィスビルや商業施設などの不動産賃貸業を展開しています。沿線地域を中心に、住宅購入者やテナント企業を顧客としてまちづくりを推進しています。
収益源は住宅購入者からの販売代金や、テナント企業からの賃貸収入です。運営は同社や京急不動産、京急開発などが担当しています。

レジャー・サービス事業

ビジネスホテル業、レジャー関連施設業などを展開しています。観光客やビジネス客を対象に、宿泊施設やゴルフ場、ボートレース場などの施設利用サービスを提供しています。
収益源は宿泊客や施設利用者からの宿泊料や利用料です。運営は同社をはじめ、京急イーエックスインや京急開発などが担当しています。

流通事業

百貨店業、ショッピングセンター業、スーパーマーケット業などのストア業を展開しています。沿線の住民や来街者を顧客として、日用品や衣料品、食品などを提供しています。
収益源は顧客からの商品販売代金です。運営は京急百貨店や京急ストアなどが担当しています。

その他

建設・土木・電気設備の工事、輸送用機器の修理・改造、ビル管理業務などを展開しています。主にグループ内の設備投資や維持管理に伴う業務を受託しています。
収益源は発注元からの工事代金や業務委託料です。運営は京急建設、京急ファインテック、京急電機、京急サービスなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高にあたる営業収益は緩やかな回復基調にあり、増加傾向で推移しています。利益面では、2024年3月期まで経常利益や当期利益が大きく改善しましたが、2026年3月期にかけては不動産事業の売却反動などにより利益がやや減少しています。全体としてはコロナ禍からの回復と事業構造変革が進展している状況がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,652億円 2,530億円 2,806億円 2,939億円 3,042億円
経常利益 51億円 122億円 284億円 350億円 289億円
利益率(%) 1.9% 4.8% 10.1% 11.9% 9.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 140億円 79億円 759億円 183億円 200億円

(2) 損益計算書


営業収益は増加傾向にあり、順調なトップラインの拡大が確認できます。一方で、営業利益は人件費の増加などの影響により微減となり、営業利益率もやや低下しています。移動需要や宿泊需要が回復するなかで、コストコントロールが今後の課題といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,939億円 3,042億円
売上総利益 - -
売上総利益率(%) - -
営業利益 356億円 336億円
営業利益率(%) 12.1% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が215億円(構成比46.3%)、経費が190億円(同41.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


交通事業は鉄道・バスの需要拡大により増収となりました。不動産事業は前期の事業用地売却の反動で減収となっています。レジャー・サービス事業はホテル稼働率の上昇で、流通事業は既存店舗の好調などにより、それぞれ増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
交通事業 1,171億円 1,206億円
不動産事業 483億円 451億円
レジャー・サービス事業 285億円 309億円
流通事業 798億円 837億円
その他 202億円 238億円
連結(合計) 2,939億円 3,042億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 148億円 479億円
投資CF -692億円 -687億円
財務CF -209億円 139億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「都市生活を支える事業を通して、新しい価値を創造し、社会の発展に貢献する」ことをグループ理念として掲げています。また、「伝統のもとに、創意あふれる清新な気風をもって、総合力を発揮し、社業の躍進をめざす」「グループの繁栄と全員の幸福との一致を追求する」ことも理念として明記しています。

(2) 企業文化


同社は、グループ理念を持続的に実現することが、社会と同社グループの持続可能性を高めることにつながるという考えのもと、「サステナビリティ基本方針」を策定しています。「社会の持続的発展への貢献」と「京急グループの持続的発展」のよりよい循環を目指す文化を重視し、多様な視点・顧客視点で物事を捉える組織風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は、2040年度を長期ビジョンの実現年度とし、2024年度から2026年度までを中期経営計画期間とする「第20次総合経営計画」を推進しています。2026年度の目標経営指標として、以下の数値を掲げています。

* 営業利益:450億円
* 純有利子負債/EBITDA倍率:7倍台以下
* ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策


移動とまち創造の両プラットフォームの「相互価値共創」による新しい価値創出を目指す「沿線価値共創戦略」を推進しています。沿線の各地域に「移動」と「住・働・楽・学」が揃う多極型まちづくりを進めるほか、不動産事業では長期保有前提から回転型事業への転換を図ります。品川・羽田・横浜を結んだ「成長トライアングルゾーン」の活性化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な視点や顧客視点で物事を捉え、価値創造・共創ができる「個」の成長の後押しと、信頼と協力を大切にして、異なる「個」の創発を促す組織・カルチャー醸成の両輪により、長期ビジョンの実現と企業価値の向上を目指しています。エンゲージメントサーベイを継続的に実施し、人的資本経営に関わる取り組みの仮説検証を実行できる体制を確立しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 17.9年 7,227,495円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 90.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 78.7%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用者) 78.1%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用者) 50.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用比率(2.8%)、年次有給休暇取得率(95.6%)、従業員健康診断受診率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子高齢化や品川駅周辺開発等の社会的・経済的な影響

少子高齢化の進行による地域人口の減少や、在宅勤務の増加をはじめとした生活様式の変化により、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。また、品川駅西口基盤整備事業の推進に伴う施設の一部閉鎖や、羽田空港への新たなアクセス路線の検討による競争激化などが懸念されています。

(2) 交通事業における法的規制や環境規制の影響

基幹事業である交通事業は公共輸送機関としての性格上、厳格な法規制の下に事業を行っており、規制の強化や社会情勢の変化が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、バス事業における規制緩和による新規参入や、今後の環境に対する規制強化などにより、事業環境が厳しさを増すリスクが想定されます。

(3) 交通事業等の安全を阻害する事故等の影響

同社グループは鉄道、バス、ホテル、百貨店などの営業施設を多数運営しており、安全の確保を最重要課題としています。万が一、不慮の火災や事故・障害など安全に対する信頼を損なう事態が発生した場合、グループ全体の根幹を揺るがす重大な影響を及ぼす可能性があります。また、食品等に関する一般的な品質問題の発生もリスクとして認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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