※本記事は、京王電鉄株式会社 の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 京王電鉄ってどんな会社?
新宿と東京西部を結ぶ鉄道・バスなどの運輸業を基盤に、沿線での不動産、流通、レジャー事業を展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
1910年に前身となる京王電気軌道が設立され、1913年に電車とバスの営業を開始しました。1948年に京王帝都電鉄として設立され、翌1949年に東京証券取引所に上場しています。1998年に現在の京王電鉄へ商号変更しました。2024年には商業施設運営事業を子会社の京王SCクリエイションに承継させるなど、グループ経営の効率化を進めています。
同グループの従業員数は連結13,003名、単体2,411名です。大株主は、信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主であり、次いで日本カストディ銀行、第3位に日本生命保険が名を連ねています。金融機関や機関投資家が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 15.17% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 5.47% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性1名の計15名で構成され、女性役員比率は6.7%です。代表者は代表取締役社長 社長執行役員の都村 智史氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 紅村 康 | 代表取締役会長 | 1980年同社入社。総合企画本部長、京王観光社長などを経て2016年同社社長。2022年6月より現職。 |
| 都村 智史 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1988年同社入社。リビタ社長、経営統括本部長などを歴任し、中期経営計画の推進に従事。2022年6月より現職。 |
| 山岸 真也 | 取締役常務執行役員経営統括本部長 | 1987年同社入社。レストラン京王社長、京王ストア社長、人事部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 井上 晋一 | 取締役常務執行役員鉄道事業本部長 | 1989年同社入社。鉄道営業部長、計画管理部長、西東京バス社長などを経て2022年6月より現職。 |
| 番 睦 | 取締役常務執行役員 | 1990年同社入社。鉄道事業本部工務部長などを経て2024年6月より現職。 |
| 中瀨 正春 | 取締役常務執行役員開発事業本部長 | 1991年同社入社。新宿再開発推進室長などを務め、開発事業を牽引。2024年6月より現職。 |
| 南 佳孝 | 取締役 | 1986年同社入社。戦略推進本部長、開発事業本部長などを歴任。2024年6月より京王百貨店社長および同社取締役。 |
| 若林 克昌 | 取締役 | 1987年同社入社。京王プラザホテル経営企画部長、京王自動車社長などを経て2020年6月より京王プラザホテル社長および同社取締役。 |
| 宮坂 周治 | 取締役 | 1986年同社入社。西東京バス社長、同社人事部長などを経て2022年6月より京王電鉄バス社長および同社取締役。 |
| 小野 正浩 | 取締役監査等委員(常勤)監査等委員会委員長 | 1989年同社入社。開発企画部長などを経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、古市 健(元日本生命保険代表取締役副会長)、常陰 均(元三井住友信託銀行社長)、竹川 浩史(元三菱東京UFJ銀行執行役員)、金子 正志(弁護士)、山内 暁(早稲田大学商学部教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「運輸業」「流通業」「不動産業」「レジャー・サービス業」「その他業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 運輸業
鉄道事業、バス事業、タクシー業などを展開し、新宿を起点とする京王線・井の頭線の運行や、多摩地域を中心としたバス輸送など、地域の移動インフラを提供しています。また、貨物輸送や引越し業も行っています。
主な収益源は、鉄道やバス、タクシーの利用者から受け取る運賃収入です。運営は、鉄道事業を同社が担い、バス事業は京王電鉄バスグループや西東京バス、タクシー業は京王自動車グループが主に行っています。
■(2) 流通業
百貨店業、ストア業、書籍販売、ショッピングセンター運営などを展開し、沿線住民の生活を支える物販・サービスを提供しています。京王百貨店や京王ストアなどが中核となり、駅ナカや駅周辺での小売事業を行っています。
主な収益源は、一般顧客への商品販売による売上やテナント収入です。運営は、株式会社京王百貨店、株式会社京王ストア、株式会社京王アートマンなどがそれぞれの業態で行っています。
■(3) 不動産業
沿線における不動産賃貸業と不動産販売業を展開しています。オフィスビルや商業施設の賃貸、マンション分譲、リノベーション事業などを手がけ、沿線の価値向上に取り組んでいます。
主な収益源は、賃貸物件のテナントからの賃料収入や、マンション等の販売収入です。運営は、同社および京王不動産株式会社、株式会社リビタ、株式会社サンウッドなどが行っています。
■(4) レジャー・サービス業
ホテル業、旅行業、広告代理業などを展開しています。「京王プラザホテル」等のホテル運営や、旅行代理店業務を通じて、沿線内外の顧客にサービスを提供しています。
主な収益源は、ホテルの宿泊料・料飲売上や、旅行商品の販売手数料、広告収入などです。運営は、株式会社京王プラザホテル等のホテル各社や京王観光株式会社、株式会社京王エージェンシーなどが行っています。
■(5) その他業
ビル総合管理業、車両整備業、建設・土木業、情報システム業など、グループ各社の事業を支える多様なサービスを展開しています。また、子育て支援や高齢者住宅事業など、沿線生活に密着したサービスも提供しています。
主な収益源は、ビル管理や工事、システム開発等の業務受託料やサービス利用料です。運営は、株式会社京王設備サービス、京王建設株式会社、株式会社京王ITソリューションズなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、コロナ禍の影響を受けた2021年3月期は赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。特に直近の2025年3月期は、人流の回復やインバウンド需要の取り込み、不動産販売の拡大などにより、売上収益、各利益ともに大きく伸長し、コロナ禍前を上回る水準まで業績を伸ばしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 3,154億円 | 2,999億円 | 3,471億円 | 4,087億円 | 4,529億円 |
| 経常利益 | -180億円 | 54億円 | 218億円 | 435億円 | 533億円 |
| 利益率(%) | -5.7% | 1.8% | 6.3% | 10.6% | 11.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -275億円 | 56億円 | 131億円 | 292億円 | 429億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、増収効果により利益率が改善しています。売上高の増加に対してコストの増加率が低く抑えられており、営業利益率は10.7%から12.0%へと上昇しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,087億円 | 4,529億円 |
| 売上総利益 | 970億円 | 1,131億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 25.0% |
| 営業利益 | 438億円 | 541億円 |
| 営業利益率(%) | 10.7% | 12.0% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が208億円(構成比35%)、経費が191億円(同32%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収増益となりました。特に不動産業はマンション販売の好調等により大幅な増益を達成しました。運輸業は運賃改定効果等で増益、レジャー・サービス業もホテル需要の回復により利益を大きく伸ばしました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 運輸業 | 1,224億円 | 1,307億円 | 132億円 | 158億円 | 12.1% |
| 流通業 | 999億円 | 1,057億円 | 41億円 | 43億円 | 4.1% |
| 不動産業 | 714億円 | 882億円 | 135億円 | 182億円 | 20.6% |
| レジャー・サービス業 | 695億円 | 775億円 | 83億円 | 112億円 | 14.5% |
| その他業 | 455億円 | 509億円 | 56億円 | 56億円 | 11.0% |
| 調整額 | - | - | -10億円 | -10億円 | - |
| 連結(合計) | 4,087億円 | 4,529億円 | 438億円 | 541億円 | 12.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
京王電鉄のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加などにより、前連結会計年度に比べ減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少などにより、前連結会計年度に比べ流出額が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出などにより、流出額となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は〇〇円となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 523億円 | 286億円 |
| 投資CF | -425億円 | -381億円 |
| 財務CF | -78億円 | -154億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、つながりあうすべての人に誠実であり、環境にやさしく、「信頼のトップブランド」になることを目指しています。そして、幸せな暮らしの実現に向かって、生活に溶け込むサービスの充実に日々チャレンジすることを理念としています。
■(2) 企業文化
「信頼のトップブランド」確立のため、安全を最優先課題とする企業文化を重視しています。また、グループ内外へ理念を発信し、価値観の共有化を図っています。誠実さと環境への配慮を基本としつつ、変化するライフスタイルに対応するため、新しいサービスの充実に挑戦し続ける姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度をターゲットとした長期的な「ありたい姿」の実現に向け、2025年度から2030年度までの中期経営計画『HIRAKU 2030』を策定しています。2030年代の大規模投資に備えた盤石な体制構築を目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 2030年度 連結営業利益:620億円
* 2030年度 連結EBITDA:1,061億円
* 2030年度 連結ROE:9.0%以上
* 2030年度 連結経常利益ROA:4.5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期的な「ありたい姿」として、「国内で最も活気とポテンシャルがあるエリア」「日本一安全でサービスの良い持続可能な交通」の実現を目指しています。そのために、新宿駅西南口地区や橋本駅周辺など、沿線でのまちづくりを面的・同時並行的に推進します。また、交通事業ではDX活用による安全性と生産性の両立を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「信頼のトップブランド」を目指し、多様な個性を活かして新たな価値を創造できる人材の育成を方針としています。「安全・安心」を最優先の価値観として定着させつつ、自律的なキャリア形成を支援します。また、挑戦を認め失敗を許容する組織風土の醸成や、エンゲージメント向上、DE&I推進に取り組み、変化に強い組織づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 17.6年 | 7,607,625円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.2% |
| 男性育児休業取得率 | 114.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 82.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 56.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用比率(総合職)(51.9%)、年次有給休暇取得率(84.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動・自然災害等
大規模地震や、気候変動による大型台風・集中豪雨等の自然災害が発生した場合、鉄道等のインフラに被害が及び、事業運営に支障をきたす可能性があります。これにより、営業休止による売上減少や復旧費用の発生など、業績に悪影響を与えるリスクがあります。
■(2) 事故等の発生
鉄道事業等において、人為的ミスや機器の故障、第三者要因による事故、テロ等の不測の事態が発生した場合、施設の損害やお客様への被害が生じる可能性があります。これらは社会的信用の失墜や損害賠償費用の発生につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 経営環境の変化
沿線人口の減少や少子高齢化、価値観の多様化などが進む中、同社グループが提供するサービスへの需要が減退する可能性があります。これにより、鉄道・バスの輸送人員減少や不動産需要の変化などが生じ、長期的に業績や財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(4) 大規模投資期における財務負担
新宿駅西南口地区開発や京王線連続立体交差事業など、今後大規模なプロジェクトが進行します。これに伴う設備投資資金の増加により、有利子負債や減価償却費が増加し、財務負担が大きくなる可能性があります。金利上昇などの金融環境の変化も業績に影響を与える可能性があります。



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