セイノーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セイノーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場。「カンガルー便」等の輸送事業を中心に、自動車販売や物品販売を展開する総合物流商社です。当期は、MDロジスの子会社化やトラック販売の回復、適正運賃収受の進展により、売上高7,374億円、経常利益281億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、セイノーホールディングス株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セイノーホールディングスってどんな会社?


路線トラック輸送のパイオニア。「カンガルー便」で知られる総合物流商社として、輸送を核に事業を展開しています。

(1) 会社概要


1930年に田口自動車として創業し、1941年に西濃トラック運輸を設立。1946年に水都産業を創立し、1948年に西濃トラック運輸へ商号変更、1955年に西濃運輸となりました。1971年に名証二部へ上場し、翌年東証一部へ上場。2005年には純粋持株会社体制へ移行し、現社名へ変更しました。2024年には三菱電機ロジスティクス(現・MDロジス)を連結子会社化しています。

連結従業員数は31,432名、単体では261名です。筆頭株主は創業家関連の財団法人である公益財団法人田口福寿会で、第2位、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
公益財団法人 田口福寿会 16.96%
日本カストディ銀行 9.98%
日本マスタートラスト信託銀行 8.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は田口義隆氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田口義隆 代表取締役社長 1985年入社。取締役秘書室担当、常務、専務を経て、1998年に副社長に就任。2003年6月より現職。西濃運輸の代表取締役も務める。
田口隆男 代表取締役 1984年日清製粉入社。1992年岐阜日野自動車入社、同社社長やトヨタカローラネッツ岐阜会長・社長を歴任。2015年6月より現職。
髙橋智 取締役 1986年入社。西濃運輸執行役員、取締役、常務、専務、副社長を経て、2024年4月に同社社長に就任。2024年6月より現職。
丸田秀実 取締役 1985年国税庁入庁。札幌国税局総務課長、外務省在香港総領事館領事を経て、1997年入社。経営企画室長を務め、2001年6月より現職。
野津信行 取締役 1985年東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2014年入社。経営企画室長、経理部・財務IR部統括部長等を歴任し、2016年6月より現職。
伊藤信彦 取締役(監査等委員) 1985年入社。グループ管理部長、西武運輸(現セイノースーパーエクスプレス)常務等を歴任。常勤監査役を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、山田メユミ(株式会社アイスタイル取締役)、一丸陽一郎(元トヨタ自動車代表取締役副社長)、増田宏之(税理士)、小松慶子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸送事業」「自動車販売事業」「物品販売事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 輸送事業


国内では特積み事業(カンガルー便)を主力とし、ロジスティクス、貸切輸送、引越などを展開しています。国際輸送では通関業や相互輸送を行い、ワールドワイドなネットワークを構築しています。

収益は、顧客からの運賃、倉庫保管料、通関手数料、航空運送代理店収入などから得ています。運営は、西濃運輸、セイノースーパーエクスプレス、関東運輸、MDロジスなどのグループ会社が担っています。

(2) 自動車販売事業


トラック(日野自動車製)および乗用車(トヨタ車)の販売に加え、自動車部品の販売や修理事業を行っています。

収益は、顧客への車両販売代金、車検・点検等の整備収入、部品販売収入から得ています。運営は主に岐阜日野自動車、トヨタカローラネッツ岐阜、滋賀日野自動車などが行っています。

(3) 物品販売事業


燃料の販売や、紙類・紙製品の販売を行っています。

収益は、顧客への商品販売代金から得ています。運営は、セイノー商事および西濃産業が行っています。

(4) 不動産賃貸事業


代替されたトラックターミナル跡地等の資産を活用し、賃貸事業を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料収入から得ています。運営は、西濃運輸や岐阜日野自動車など、不動産を保有する各事業会社が行っています。

(5) その他


情報関連事業、事務代行業、広告代理店業、タクシー業、建築工事請負業、保険代理店業、住宅販売業など多岐にわたる事業を行っています。

収益は、システム開発・運用等のサービス料、タクシー運賃、工事請負代金、住宅販売代金などから得ています。運営は、セイノー情報サービス、トヨタホーム岐阜、スイトトラベルなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上高は着実な増加傾向にあります。特に当期は、MDロジスの新規連結化やトラック販売の回復等により大幅な増収となりました。利益面では、燃料価格高騰等の影響を受けつつも、適正運賃収受の取り組み等により、経常利益・当期利益ともに前期から回復し、増益基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,920億円 6,077億円 6,315億円 6,428億円 7,374億円
経常利益 278億円 303億円 327億円 245億円 281億円
利益率(%) 4.7% 5.0% 5.2% 3.8% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 167億円 173億円 190億円 146億円 193億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は約15%増加し、売上総利益も拡大しています。営業利益率は前期から改善しており、コストコントロールと収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 6,428億円 7,374億円
売上総利益 736億円 866億円
売上総利益率(%) 11.4% 11.7%
営業利益 234億円 299億円
営業利益率(%) 3.6% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が324億円(構成比57%)、その他経費が177億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収増益となりました。主力の輸送事業はMDロジスの連結効果や適正運賃収受により大幅な増益を達成しました。自動車販売事業もトラック販売の回復や高価格帯乗用車の販売好調により利益を伸ばしています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
輸送事業 4,702億円 5,541億円 153億円 207億円 3.7%
自動車販売事業 1,087億円 1,153億円 58億円 72億円 6.2%
物品販売事業 357億円 388億円 9億円 12億円 3.0%
不動産賃貸事業 22億円 24億円 16億円 17億円 73.5%
その他 259億円 268億円 14億円 18億円 6.8%
調整額 - - △17億円 △28億円 -
連結(合計) 6,428億円 7,374億円 234億円 299億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、事業拡大に伴う投資や資金調達を積極的に行い、期末の資金残高を増加させています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額減少などにより増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社株式の取得や固定資産への投資増加により大きく使用されました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減額増加などにより増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 484億円 527億円
投資CF △255億円 △709億円
財務CF △486億円 200億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「輸送立国」を掲げ、顧客に喜ばれる最高のサービスを提供し、輸送を通じて日本の産業・経済の発展に貢献することを目指しています。また、「会社を発展させ、社員を幸福にする」という理念のもと、顧客、株主、取引先、従業員の信頼と期待に応える堅実経営を基本方針としています。

(2) 企業文化


労使協調という伝統的な財産を継承しつつ、会社発展に貢献する文化があります。また、業界の垣根を越えた「共創」を重視し、O.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)の推進を通じて「Team Green Logistics」の実現を目指すなど、社会課題解決に向けた協力的な姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


「中長期の経営の方向性 ~ありたい姿とロードマップ2028~」を策定しており、売上高の成長、営業利益率の改善、適切な資本政策により、企業価値および株主価値の向上に取り組んでいます。

* 3年から5年以内にROE8.0%以上
* PBR1倍超の早期実現

(4) 成長戦略と重点施策


輸送事業では「2024年問題」に対応すべくO.P.P.を推進し、業界全体の効率化と持続可能な社会の実現を目指します。成長分野のロジスティクス事業では、MDロジスのノウハウ融合や産業別ロジスティクスの展開により事業を拡大し、貸切事業では「ハコベル」活用等で利便性を向上させます。

* 輸送事業:適正運賃収受の継続、日本郵便等との協業によるO.P.P.推進
* 自動車販売事業:店舗網最適化、整備士の確保・育成、金融商品増販
* 資本政策:自己株式取得や増配などの積極的な株主還元

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「会社を発展させ、社員を幸福にする」理念のもと、多様性の推進を重要戦略と位置づけ、女性や外国人の採用を強化しています。また、定着率98%を目指し、運び方・働き方改革や教育制度の充実、福利厚生の拡充などにより、従業員のエンゲージメント向上と働きやすい環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 17.8年 6,916,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.4%
男女賃金差異(正規雇用) 64.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(92.5%)、セイノーマンベーシック研修受講(100%)、一人当たりの年間教育時間(550分)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制について


輸送事業や自動車販売事業は、「貨物自動車運送事業法」や「道路運送車両法」等の法的規制を受けています。これらの法令改正により、収受運賃、営業エリア、業務内容等に変更が生じた場合や、車検制度等の変更があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 車両事故及び荷物事故について


輸送事業において安全には十分配慮していますが、重大な不慮の事故が発生した場合、損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、安全機能付き車両の導入や安全教育の徹底等により、ハード・ソフト両面からリスク低減に努めています。

(3) 環境規制について


多数の車両を使用する輸送事業において、想定を上回る環境規制が実施された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社グループは低公害車の導入やエコドライブの推進など、自主的な環境対策を進めています。

(4) 人材の確保について


少子高齢化による労働人口減少の中、ドライバーや整備士の確保は重要課題です。人材確保が計画通り進まない場合、採用コスト増や外注費の増加により業績に影響が出る可能性があります。これに対し、働き方改革や待遇改善、教育充実による定着率向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。