セイノーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セイノーホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場するセイノーホールディングスは、路線トラック輸送を中核とする輸送事業や自動車販売事業などを展開する総合物流企業です。直近の業績では、長距離・高重量帯での適正運賃収受が進展したこと等により、前年比で増収増益を達成し成長を続けています。


※本記事は、セイノーホールディングスの有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セイノーホールディングスってどんな会社?


路線トラック輸送のパイオニアとして、輸送事業を中心に多彩な事業を展開する総合物流企業です。

(1) 会社概要


1930年に岐阜県で田口自動車として創業し、1955年に西濃運輸へ商号変更しました。1972年に東京および名古屋証券取引所の市場第一部へ上場し、2005年には純粋持株会社体制へ移行して現在の社名となっています。近年では、2024年に三菱電機ロジスティクス(現MDロジス)を連結子会社化しています。

現在の従業員数は連結で31,408名、単体で254名です。大株主の状況については、筆頭株主は公益財団法人の田口福寿会で、第2位および第3位は信託業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
公益財団法人 田口福寿会 15.65%
日本マスタートラスト信託銀行 9.83%
日本カストディ銀行 8.56%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は田口義隆氏が務めています。役員全体のうち社外取締役が占める割合は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
田口義隆 代表取締役社長 1985年同社入社。秘書室担当兼総務部長などを経て1998年代表取締役副社長に就任。2003年より現職。
田口隆男 代表取締役 1984年日清製粉入社。岐阜日野自動車などを経て1999年同社入社。2015年より現職。
丸田秀実 取締役 1985年国税庁入庁。外務省在香港総領事館領事などを経て1997年同社入社。2001年より現職。
野津信行 取締役 1985年東海銀行入行。2014年同社入社。西濃運輸の財務部長等を経て、2016年より現職。
髙橋智 取締役 1986年同社入社。西濃運輸で常務取締役等を経て、2024年に同社代表取締役社長に就任。2024年より現職。
伊藤信彦 取締役(監査等委員) 1985年同社入社。西武運輸で常務取締役管理本部長などを歴任。2024年より現職。


社外取締役は、伊地知隆彦(元トヨタ自動車代表取締役副社長)、佐藤真希子(チャレンジパートナーズ代表社員)、増田宏之(増田宏之税理士事務所代表)、小松慶子(弁護士法人三浦法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸送事業」「自動車販売事業」「物品販売事業」「不動産賃貸事業」および「その他」の事業を展開しています。

輸送事業


小口商業貨物を主力とし、宅配、引越、貸切等の運送を行う貨物自動車運送事業や、各種交通機関を利用した貨物利用運送事業を提供しています。また、通関業を含む国際輸送など、ワールドワイドなネットワークで物流サービスを展開しています。

顧客からの運賃や物流関連のサービス料を収益源としています。中核を担う西濃運輸や、セイノースーパーエクスプレス、関東運輸、MDロジスなどの連結子会社が事業を運営し、グループ各社が連携して物流ネットワークを構築しています。

自動車販売事業


乗用車やトラックなどの新車・中古車販売のほか、自動車部品の販売や修理事業、オートリース事業などを展開しています。顧客のニーズに合わせた車両の提案からアフターサービスまでを総合的に提供しています。

顧客からの車両販売代金や修理代金、リース料などを収益源としています。運営は、岐阜日野自動車やトヨタカローラネッツ岐阜、滋賀日野自動車、セイノーオートリースなどの連結子会社が主に担っています。

物品販売事業


燃料販売や紙・紙製品などの物品販売を展開しています。主に物流事業に関連する燃料のほか、介護家庭紙を中心とした介護用品なども幅広く取り扱っています。

顧客への物品販売代金を収益源としています。同事業の運営は、セイノー商事や西濃産業などの連結子会社が主に行っており、グループ全体の収益基盤の安定化に貢献しています。

不動産賃貸事業


代替されたトラックターミナル跡地や店舗跡地などの資産を有効活用し、自社が所有する土地、マンション、駐車場などの賃貸を行っています。地域ごとに利用価値が高い賃貸物件への転換を進めています。

テナントや利用者からの不動産賃貸料を収益源としています。西濃運輸をはじめとする輸送事業や自動車販売事業を担う各グループ会社が保有する不動産を活用して運営しています。

その他


情報関連事業、事務代行業、広告代理店業、タクシー業、建築工事請負業、労働者派遣業、住宅販売業など、多岐にわたるサービスを提供しています。

各種サービスの提供対価を収益源としています。セイノー情報サービスやスイトトラベル、トヨタホーム岐阜などの連結子会社が運営を担い、グループの事業領域拡大を支えています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けています。特に直近2期間での売上拡大が顕著です。経常利益についても、一時的な落ち込みは見られたものの、全体として回復および成長基調にあります。利益率も直近で改善しており、事業規模の拡大と収益性の向上が両立していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,077億円 6,315億円 6,428億円 7,374億円 8,130億円
経常利益 303億円 327億円 245億円 281億円 373億円
利益率(%) 5.0% 5.2% 3.8% 3.8% 4.6%
当期利益 80億円 79億円 102億円 488億円 125億円

(2) 損益計算書


増収に伴って売上総利益および営業利益のいずれも増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに前期間から改善を見せており、コストコントロールの進展や高付加価値なサービス提供等により、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 7,374億円 8,130億円
売上総利益 866億円 978億円
売上総利益率(%) 11.7% 12.0%
営業利益 299億円 376億円
営業利益率(%) 4.1% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が350億円(構成比58%)、減価償却費が30億円(同5%)、のれん償却額が22億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力である輸送事業が大きく売上を伸ばしており、全体の成長を力強く牽引しています。物品販売事業や不動産賃貸事業、その他の事業も堅調に推移して増収を確保しました。一方で、自動車販売事業は新車の供給制限等の外的要因を受けて減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
輸送事業 5,541億円 6,309億円
自動車販売事業 1,153億円 1,103億円
物品販売事業 388億円 409億円
不動産賃貸事業 24億円 25億円
その他 268億円 283億円
連結(合計) 7,374億円 8,130億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなる健全型です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業と言えます。また、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.1%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 527億円 566億円
投資CF -709億円 -334億円
財務CF 200億円 -166億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「会社を発展させ、従業員を幸福にする」を経営理念に掲げています。創業以来、路線トラック輸送のパイオニアとして「輸送立国」の精神を大切にしており、顧客に喜ばれる最高のサービスを常に提供することで、輸送を通じて日本の産業および経済の発展に貢献する物流企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、国民生活の向上とともに、「会社を発展させ、顧客、株主、取引先そして従業員の信頼と期待に応える」という堅実経営を基本方針としています。社会課題の解決を価値創造と捉え、多様なステークホルダーと共創しながら、社会とともに持続的に成長し続けることを重視する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、「中長期の経営の方向性 ~ありたい姿とロードマップ2028~」を策定し、企業価値向上に向けた目標を定めています。売上高の成長や営業利益率の改善、適切な資本政策の実行により、PBR1倍超の早期実現を目指しています。

* ROE 8.0%以上(3年から5年以内)

(4) 成長戦略と重点施策


スローガン「Team Green Logistics ~共に創り、未来に貢献する~」のもと、持続可能な社会の実現と物流業界の効率化を推進しています。同業他社との合弁会社設立や業務提携による共同輸送など、O.P.P.(オープン・パブリック・プラットフォーム)を通じた新たな価値創出を加速させています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人材を最も重要な経営資本と位置づけ、「採用」「育成」「配置」「エンゲージメント」「多様性」「生産性向上」を重点テーマとする人材戦略を推進しています。新卒・中途を問わず多様な人材の確保に努め、DX人材の育成や働き方改革による定着率向上を図り、経営戦略と連動した人材の活躍を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.6歳 17.4年 7,118,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 64.2%
男女賃金差異(正規雇用者) 66.3%
男女賃金差異(非正規雇用者) 74.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員の定着率(93.1%)、一人当たりの年間教育時間(568分)、セイノーマンベーシック研修受講率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保難による事業影響


物流業界における少子高齢化や労働人口の減少に伴い、ドライバー等の人材確保は重要な課題となっています。同社は働き方改革や処遇改善に取り組んでいますが、計画通りに人材が確保できない場合、外注費等の増加によって同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 燃料価格高騰によるコスト上昇


輸送事業において多量の燃料を使用しているため、原油価格の動向によっては燃料費が高騰し、輸送コストが大幅に上昇するリスクがあります。燃油サーチャージの導入やモーダルシフトの推進などで対策を図っていますが、コスト増が収益を圧迫する可能性があります。

(3) 情報関連事業特有のリスク


情報関連事業においては、業務の性格上、顧客の秘匿性の高い情報を扱っています。システムの誤作動や外部からの不正侵入によって顧客情報の漏洩やデータの消失が生じた場合、社会的信用の低下や損害賠償の発生などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。