※本記事は、株式会社ナックの有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ナックってどんな会社?
暮らしのお役立ち企業として、多様なサービスと事業を展開する同社の概要を紹介します。
■(1) 会社概要
同社は1971年に清掃用具のレンタル及び販売を目的にダスキン鶴川として設立され、1977年にナックへ商号変更しました。1999年に東証一部に上場し、2001年に現在の主力であるボトルウォーター事業を開始しています。2018年にはダスキンと資本業務提携を結ぶなど、多角的に事業を拡大してきました。
現在の従業員数は連結で1,699名、単体で1,154名体制です。筆頭株主は資本業務提携先でありフランチャイズ契約を結ぶダスキンで、第2位はヤマダホールディングス、第3位は建設関連業を営むキャピタルとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダスキン | 27.88% |
| ヤマダホールディングス | 10.63% |
| キャピタル | 7.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長の吉村寛氏をはじめとする経営陣を紹介します。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉村寛 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。レンタル事業部支社長、住宅事業本部長などを経て、2014年取締役副社長、2015年より現職。 |
| 川上裕也 | 取締役 | 2012年同社入社。管理本部長や各事業カンパニー代表を経て、2021年専務執行役員。2024年よりクリクラビジネスカンパニー代表を務め現職。 |
| 脇本和好 | 取締役 | 1984年同社入社。クリクラ事業本部やレンタル事業本部の要職を経て、2016年取締役、2019年常務執行役員に就任し現職。 |
| 大場直樹 | 取締役建築コンサルティングカンパニー代表 | 2002年同社入社。東日本営業本部長などを経て、2020年上席執行役員建築コンサルティングカンパニー代表。2021年より現職。 |
| 嶋内穣 | 取締役レンタルビジネスカンパニー代表 | 1983年同社入社。ダスキン事業部事業部長などを経て、2024年取締役、2026年上席執行役員レンタルビジネスカンパニー代表に就任し現職。 |
| 大月修司 | 取締役クリクラビジネスカンパニー代表 | 2001年同社入社。クリクラ事業部の各部門長を経て、2025年クリクラ事業本部長。2026年上席執行役員に就任し現職。 |
| 安藤二郎 | 取締役コーポレート統括兼経営管理本部長 | 2014年同社入社。総務人事部長やJIMOS代表取締役社長を経て、2026年上席執行役員コーポレート統括兼経営管理本部長に就任し現職。 |
社外取締役は、中畑裕子(サスティナシード代表取締役社長)、山下真実(ここるく代表取締役社長)、吉田隆司(元ダスキン常勤監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クリクラ事業」「レンタル事業」「建築コンサルティング事業」「住宅事業」「美容・健康事業」および「その他」を展開しています。
■(1) クリクラ事業
宅配水「クリクラ」や浄水型ウォーターサーバー、次亜塩素酸水溶液の製造・販売を一般家庭や法人向けに行っています。
宅配水等の利用料やサーバーのレンタル料、加盟店からの機器購入費を主な収益源としています。直営と加盟店網を活用し、同社が運営しています。
■(2) レンタル事業
ダストコントロール商品や介護用品のレンタル・販売、害虫駆除器の提供、定期清掃や原状回復工事を行っています。
顧客から受け取るレンタル料や販売代金、清掃サービスの利用料が主な収益源です。同社のほか、アーネストやキャンズなどが運営しています。
■(3) 建築コンサルティング事業
全国の地場工務店を対象に、建築関連のノウハウ商品や建築部資材の販売・施工、コンサルティングやフランチャイズ支援を行っています。
工務店からの商品購入費やコンサルティング料、加盟金などが主な収益源です。同社のほか、ナックハウスパートナーなどが運営しています。
■(4) 住宅事業
個人顧客を対象に、戸建注文住宅の建築請負や分譲住宅の販売事業を展開しています。
住宅の建築代金や分譲住宅の販売代金が収益源です。ケイディアイ、ジェイウッド、秀和住研などが運営しています。
■(5) 美容・健康事業
一般消費者向けに、化粧品や健康食品の製造・販売、美容材料や医薬品などの販売を行っています。
商品の販売代金が主な収益源です。JIMOSやトレミーなどが運営しています。
■(6) その他
洋酒の輸入販売や中古品の買取販売、韓国食品スーパーの運営、住宅販売に付随する金融・保険業務などを提供しています。
商品の販売代金や買取販売による差益が収益源です。ナックライフパートナーズやTOMOEワインアンドスピリッツなどが運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は500億円台後半で堅調に推移していましたが、当期は住宅事業の着工遅れなどの影響により減収となりました。経常利益率も4〜5%台で推移しており、当期は新規出店や販売促進費の増加などで利益が圧迫されています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 549億円 | 571億円 | 544億円 | 598億円 | 589億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 32億円 | 24億円 | 30億円 | 25億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 5.7% | 4.4% | 5.0% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 13億円 | 14億円 | 16億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少する中で売上総利益率は改善しましたが、積極的な広告投資や新規出店に伴う費用の増加により、営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 598億円 | 589億円 |
| 売上総利益 | 281億円 | 284億円 |
| 売上総利益率(%) | 47.0% | 48.2% |
| 営業利益 | 30億円 | 25億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が76億円(構成比29%)、広告宣伝費及び販売促進費が31億円(同12%)を占めています。また、売上原価は305億円となり、売上高に対する構成比は52%となっています。
■(3) セグメント収益
クリクラ事業や美容・健康事業が堅調に売上を伸ばした一方で、建築コンサルティング事業や住宅事業は市場環境の悪化や着工の遅れなどの影響を強く受け、減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| クリクラ事業 | 156億円 | 160億円 |
| レンタル事業 | 178億円 | 179億円 |
| 建築コンサルティング事業 | 53億円 | 47億円 |
| 住宅事業 | 134億円 | 117億円 |
| 美容・健康事業 | 65億円 | 66億円 |
| その他 | 12億円 | 19億円 |
| 連結(合計) | 598億円 | 589億円 |
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を設備投資に充てつつ、借入金の返済にも回している健全な状態と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 13億円 |
| 投資CF | -6億円 | -4億円 |
| 財務CF | -31億円 | -10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「住まい」と「暮らし」の2つを軸に、「暮らしのお役立ち企業」として事業を展開しています。環境に対する意識や健康志向が高まる中、顧客の幅広いニーズに応え生活やオフィスのより良い環境を実現するサービスを提供することが使命であり社会貢献であるとしています。
■(2) 企業文化
企業理念と「Nac Way」のもと、「感謝心」「規律性」「具体的」「精一杯」「即実行」の5つを共通の価値観として定めています。社会や環境の変化を事業成長の機会と捉え、ステークホルダーと共に持続可能な社会の実現と事業成長を目指す文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「長期ビジョン2035」を軸に、顧客基盤とラストワンマイルを最大限に活用してLTV(ライフタイムバリュー)を最大化することを目標としています。連結売上高の拡大とともに、株主資本利益率を高水準に維持していくことを重要な経営目標に掲げています。
* 連結売上高の拡大
* 株主資本利益率(ROE)の高水準維持
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2028」のもと、定期顧客を保有するクリクラ・レンタル・美容健康事業を中心に積極投資を行います。市場環境が厳しい建築コンサル・住宅事業は現状を維持しつつ、既存事業の枠にとらわれない新規事業開発やM&Aを含むアライアンス戦略を推進し、企業価値向上に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「暮らしのお役立ち企業」の実現に向け、顧客に対して継続的に価値を提供し、信頼を獲得できる人材の育成を基本方針としています。オンライン研修やeラーニングの活用、現場でのOJTや社内公募制度を通じてキャリア開発を支援するとともに、DX人材の育成や多様な働き方の推進を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 10.5年 | 5,419,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.3% |
| 男性育児休業取得率 | 37.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 85.9% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(20.6%)、中途採用比率(74%)、育児短時間勤務利用率(50.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存リスク
ダスキンとフランチャイズ契約を締結し、同社が開発した商品の借受け・買取りを行っています。レンタル事業の売上原価の約42%を占めており、資本業務提携を含めた関係性に変化が生じた場合、事業運営や業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 法的規制の変更リスク
住宅事業の建設業法、クリクラ事業の食品衛生法、美容・健康事業の薬機法など、各事業がそれぞれ法規制を受けています。法規制の新設や改廃が行われた場合、対応コストの増加等により業績に影響を与える懸念があります。
■(3) 原材料価格や事業環境の変動リスク
住宅事業における建築資材の価格高騰や、事業環境の悪化による個人消費・住宅購入意欲の低下リスクがあります。また、クリクラ事業での輸入価格変動(為替リスク)や品質問題の発生も事業に悪影響を与える可能性があります。



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