※本記事は、株式会社ナック の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナックってどんな会社?
宅配水「クリクラ」の製造・販売や、ダスキンの加盟店事業、注文住宅、化粧品通販などを幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1971年にダスキン鶴川を設立し創業。1995年に株式を店頭登録、1999年に東証一部へ上場しました。2002年にボトルウォーター事業(現クリクラ事業)へ進出し、多角化を推進。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。近年はM&Aにより住宅事業や酒類販売事業等を拡大しています。
同グループの連結従業員数は1,717名、同社単体では1,167名です。大株主は、フランチャイズ契約を通じて長年の取引関係にある株式会社ダスキンが筆頭株主です。第2位は資本業務提携先の株式会社ヤマダホールディングス、第3位は建設関連事業を行う株式会社キャピタルとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダスキン | 27.93% |
| ヤマダホールディングス | 10.65% |
| キャピタル | 8.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長は吉村寛氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉村 寛 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。レンタル事業部支社長、取締役、常務取締役住宅事業本部長、専務取締役などを経て、2015年6月より現職。グループ企業の取締役も兼任。 |
| 川上 裕也 | 取締役クリクラビジネスカンパニー代表 | 2012年同社入社。常務執行役員、美容・健康や住宅のビジネスカンパニー代表を経て、2021年7月より専務執行役員。2024年4月より現職。 |
| 脇本 和好 | 取締役レンタルビジネスカンパニー代表 | 1984年同社入社。クリクラ事業本部室長、レンタル事業本部副本部長などを経て、2016年6月取締役就任。2019年7月より常務執行役員として現職。 |
| 大場 直樹 | 取締役建築コンサルティングカンパニー代表 | 2002年同社入社。レオハウス取締役などを経て、2020年5月より建築コンサルティングカンパニー代表。2021年6月より取締役。 |
| 嶋内 穣 | 取締役レンタルビジネスカンパニーダスキン事業部 | 1983年同社入社。ダスキン事業部事業部長、執行役員などを経て、2021年4月より上席執行役員。2024年6月より取締役。 |
社外取締役は、宮島賢一(元ダスキン取締役副社長)、中畑裕子(サスティナシード代表取締役社長)、山下真実(ここるく代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クリクラ事業」「レンタル事業」「建築コンサルティング事業」「住宅事業」「美容・健康事業」および「その他」事業を展開しています。
**クリクラ事業**
宅配水「クリクラ」や浄水型ウォーターサーバー、次亜塩素酸水溶液「ZiACO」の製造・販売を全国で展開しています。一般家庭やオフィスを顧客とし、安心・安全な水と関連製品を提供しています。
収益は、顧客からのウォーターサーバーのレンタル料やボトル水の販売代金、加盟店へのサーバー・ボトル等の卸売により得ています。運営は主にナックが行い、一部子会社も担っています。
**レンタル事業**
ダスキンフランチャイズチェーン加盟店として、清掃用具や介護用品のレンタル・販売、清掃サービスを提供しています。また、害虫駆除器等のレンタルも行っています。一般家庭から法人まで幅広い顧客基盤を持ちます。
収益は、レンタル商品やサービスの利用料、商品の販売代金からなります。運営はナックのほか、株式会社アーネスト、株式会社キャンズ等が担っています。
**建築コンサルティング事業**
全国の地場工務店を対象に、建築関連のノウハウ商品や部資材の販売、施工、コンサルティングを提供しています。また、住宅フランチャイズ事業も展開し、工務店の経営支援を行っています。
収益は、工務店へのノウハウ商品や部資材の販売代金、コンサルティングフィー、FC加盟金等からなります。運営はナックおよびナックハウスパートナー株式会社が行っています。
**住宅事業**
戸建注文住宅の建築請負、分譲住宅の販売を行っています。主な顧客は住宅購入を検討する個人です。地域密着型の営業を展開し、顧客のニーズに合わせた住まいを提供しています。
収益は、住宅の引き渡し時に発生する建築請負代金や分譲住宅の販売代金です。運営は株式会社ジェイウッド、株式会社ケイディアイ、株式会社秀和住研等の子会社が行っています。
**美容・健康事業**
化粧品、健康食品、医薬品等の製造・販売を行っています。また、洋酒の輸入・販売も手掛けています。通信販売チャネルを中心に、一般消費者へ美容と健康に関する製品を届けています。
収益は、消費者への製品販売代金からなります。運営は株式会社JIMOS、株式会社ベルエアー、株式会社トレミー、TOMOEワインアンドスピリッツ株式会社等が行っています。
**その他**
上記セグメントに含まれない新規事業として、韓国スーパー「Yesmart」の運営や、ブランド品買取「買取大吉」のフランチャイズ加盟店運営などを行っています。
収益は、店舗での商品販売代金や買取再販による利益等です。運営はナックおよび株式会社ナックライフパートナーズ等のグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は540億円から600億円弱の範囲で推移しており、当期は過去最高の598億円を記録しました。経常利益は20億円台から30億円台で推移しており、利益率は概ね5%前後を維持しています。当期は増収に伴い、経常利益も30億円台へ回復しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 555億円 | 549億円 | 571億円 | 544億円 | 598億円 |
| 経常利益 | 27億円 | 28億円 | 32億円 | 24億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 5.1% | 5.7% | 4.4% | 5.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 11億円 | 13億円 | 14億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高は約54億円増加し、売上総利益も約12億円増加しました。営業利益は前期の23億円から30億円へと約31%増加し、営業利益率も改善しています。コストコントロールと売上拡大が利益押し上げに寄与した形です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 544億円 | 598億円 |
| 売上総利益 | 269億円 | 281億円 |
| 売上総利益率(%) | 49.5% | 47.1% |
| 営業利益 | 23億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | 5.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が75億円(構成比30%)、広告宣伝費及び販売促進費が30億円(同12%)を占めています。売上原価に関しては、全体の約53%を占めており、前期の50.5%から上昇しています。
■(3) セグメント収益
当期は住宅事業が大幅な増収増益となり、全社の成長を牽引しました。建築コンサルティング事業は減収となったものの、費用効率化により大幅な増益を達成しました。一方、クリクラ事業とレンタル事業は増収ながらも先行投資やコスト増により減益となりました。美容・健康事業は増収増益と堅調でした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| クリクラ事業 | 152億円 | 157億円 | 17億円 | 17億円 | 10.5% |
| レンタル事業 | 175億円 | 179億円 | 16億円 | 16億円 | 8.7% |
| 建築コンサルティング事業 | 57億円 | 54億円 | 0.3億円 | 4億円 | 7.4% |
| 住宅事業 | 94億円 | 136億円 | 0.3億円 | 4億円 | 3.1% |
| 美容・健康事業 | 67億円 | 74億円 | 3億円 | 3億円 | 4.5% |
| 連結(合計) | 544億円 | 598億円 | 23億円 | 30億円 | 5.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資や借入返済に回す「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.1億円 | 41億円 |
| 投資CF | -11億円 | -6億円 |
| 財務CF | -19億円 | -31億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「住まい」と「暮らし」の2つを軸に、「暮らしのお役立ち企業」として事業を展開しています。環境意識や健康志向の高まりに応え、生活やオフィスのより良い環境を実現するサービスを提供することを社会的使命とし、社会貢献につなげていく方針を掲げています。
■(2) 企業文化
同グループでは、企業理念の根本となる共通の価値観として「NAC WAY」を定めています。これは「感謝心」「規律性」「具体的」「精一杯」「即実行」の5つの要素からなり、グループの役員および従業員への浸透を図ることで、組織全体の一体感と行動指針の共有を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「長期ビジョン2035」および「中期経営計画2028」を策定し、更なる成長を目指しています。株主利益重視の観点から「株主資本利益率(ROE)」を高水準に維持することを重要な経営目標としています。
* 2026年3月期 売上高:620億円
* 2026年3月期 営業利益:29億円
* 2026年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:19億円
* 2026年3月期 ROE:8.1%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「複合企業体」としての強みを活かし、ラストワンマイルを最大限活用してLTV(顧客生涯価値)を最大化することに注力しています。具体的には、クリクラ事業での配送・営業効率化、レンタル事業でのDX推進とクロスセル強化、建築コンサルティング事業での人的資源課題解決ソリューションの展開などを重点施策としています。
* クリクラ事業:動画教育による配送員スキルアップ、システムインフラ「CrePF」の導入
* レンタル事業:DX推進による人時生産性の向上、副商材の拡販
* 住宅事業:都内23区の用地仕入強化、商品ラインアップ拡充
* 美容・健康事業:主要製品の強化・リニューアル、新規顧客獲得
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「暮らしのお役立ち企業」を実現するため、顧客から信頼を得られる人材の育成を重視しています。研修制度の充実や、新入社員と先輩社員がチームを組む「サテライト制度」によるOJT、DX人材の育成などを推進しています。また、女性活躍推進や中途採用者の活用、エンゲージメント向上施策を通じ、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.7歳 | 10.4年 | 4,807,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 41.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 51.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 84.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(19.0%)、中途採用比率(正規雇用)(72%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の取引先への依存
同社は株式会社ダスキンとフランチャイズ契約を締結し、同社開発商品のレンタル・販売を行っています。レンタル事業の売上原価の約41%が同社からの仕入等で占められており、契約関係や同社の方針変更等が業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 法的規制への対応
住宅事業の建設業法や建築基準法、クリクラ事業の食品衛生法、美容・健康事業の薬機法など、多岐にわたる法規制を受けています。これらの規制強化や改廃、あるいは万が一法令に抵触する事態が生じた場合、事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 住宅事業の市況変動
住宅事業は、金利動向、地価、住宅関連税制、個人消費動向などの経済環境の影響を強く受けます。また、主要部材である木材等の価格高騰によるコスト増や、想定を超える契約不適合責任が発生した場合、業績が悪化する可能性があります。



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