サイバーエージェント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイバーエージェント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイバーエージェントは東京証券取引所プライム市場に上場し、新しい未来のテレビ「ABEMA」を運営するメディア&IP事業、インターネット広告事業、ゲーム事業などを展開しています。直近の連結業績では売上高、営業利益ともに増加し、創業以来28期連続の増収を達成するなど好調なトレンドを維持しています。


※本記事は、株式会社サイバーエージェント の有価証券報告書(第28期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイバーエージェントってどんな会社?


新しい未来のテレビ「ABEMA」の運営やインターネット広告、ゲームなど多角的なIT事業を展開しています。

(1) 会社概要


1998年に設立され、2000年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場しました。2004年に「Ameba」を開始し、2014年には市場第一部へ市場変更しています。2016年に新しい未来のテレビ「ABEMA」を開局し、2022年にプライム市場へ移行しました。近年はアニメ制作会社の設立なども行っています。

従業員数は連結で8,150名、単体で2,588名です。筆頭株主は創業者の藤田晋氏で、第2位および第3位は資産管理業務等を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
藤田 晋 16.63%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.55%
日本カストディ銀行(信託口) 6.62%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は藤田晋氏、代表取締役社長は山内隆裕氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤田 晋 代表取締役 会長 1998年3月同社設立、代表取締役社長就任。2015年4月AbemaTV代表取締役などを経て、2025年12月より現職。
山内 隆裕 代表取締役 社長 2006年4月同社入社。2018年10月同社常務取締役、2020年12月専務執行役員などを経て、2025年12月より現職。
日高 裕介 取締役執行役員 副社長 1998年3月同社設立、常務取締役就任。2010年10月同社取締役副社長などを経て、2020年10月より現職。
中山 豪 取締役専務執行役員 1999年8月同社入社。2006年4月常務取締役などを経て、2020年10月より現職。マクアケ取締役なども務める。
石田 裕子 取締役専務執行役員 2004年4月同社入社。Woman&Crowd代表取締役などを経て、2025年12月より現職。
塩月 燈子 取締役(常勤監査等委員) 2000年7月同社監査役就任。2017年12月より現職。


社外取締役は、中村恒一(元リクルート取締役副社長)、高岡浩三(元ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)、中村知己(永石一郎法律事務所所属弁護士)、神先孝裕(ケップルグループ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア&IP事業」「インターネット広告事業」「ゲーム事業」「投資育成事業」の各報告セグメントを展開しています。

(1) メディア&IP事業


同事業は、「ABEMA」や「WINTICKET」などのメディアサービスと、親和性の高いアニメ等のオリジナルIPコンテンツをユーザーに提供しています。いつでもどこでも繋がる社会インフラとして「ABEMA」の規模拡大を進めています。

収益源は主に、自社メディア等への広告出稿に伴う広告収入や、有料会員向けのサービス提供による課金収入などであり、広告配信期間や契約期間にわたって収益を認識しています。運営は同社およびAbemaTV、WinTicketなどが担当しています。

(2) インターネット広告事業


同事業は、顧客の広告効果最大化を目的としたインターネット広告の出稿サービスや、AI・DXを活用した広告事業等を提供しています。広告主のマーケティング活動を総合的に支援しています。

収益源は、顧客と合意した契約条件に基づき広告をメディアに出稿することによる広告収入であり、広告配信期間にわたって収益を認識しています。運営は主に同社およびCyberZなどが担当しています。

(3) ゲーム事業


同事業は、スマートフォン向けゲームなどの企画・開発・運営を行い、幅広いユーザーに対して魅力的で長寿命なエンターテインメントコンテンツを提供しています。継続的な新規タイトルの開発と海外展開にも注力しています。

収益源は、ユーザーがゲーム内通貨を使用して獲得するアイテム等を利用することに伴う課金収入であり、利用の見積もり期間に基づき収益を認識しています。運営はCygames、Colorful Palette、QualiArts、サムザップ、アプリボットなどが担当しています。

(4) 投資育成事業


同事業は、コーポレートベンチャーキャピタル事業やファンドの設立・運営を通じ、将来性のあるインターネット関連ベンチャー企業等への投資や経営支援を行っています。

収益源は、投資先企業の企業価値向上に伴う株式の売却益や、ファンドの運営等に伴う収益です。運営は同社およびサイバーエージェント・キャピタルが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、直近5年間で着実なトップラインの成長を実現しています。一方、経常利益や利益率は年度によって変動があり、事業の成長フェーズや先行投資等の影響を受けていることが伺えます。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 6,661億円 7,099億円 7,195億円 8,012億円 8,740億円
経常利益 1,044億円 679億円 227億円 397億円 717億円
利益率(%) 15.7% 9.6% 3.2% 5.0% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -690億円 100億円 73億円 105億円 89億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益はともに増加しており、収益基盤の順調な拡大が確認できます。営業利益も大幅に増加し、営業利益率の確実な改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 8,012億円 8,740億円
売上総利益 2,188億円 2,641億円
売上総利益率(%) 27.3% 30.2%
営業利益 401億円 717億円
営業利益率(%) 5.0% 8.2%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が682億円(構成比35%)、給与手当が384億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディア&IP事業は売上成長とともに黒字転換を果たしました。インターネット広告事業は堅調な増収を維持していますが、先行投資等により減益となっています。ゲーム事業は複数の新規タイトルのヒットなどにより増収とともに大幅な増益を達成し、全体の利益成長を強く牽引しています。

区分 売上(2024年9月期) 売上(2025年9月期) 利益(2024年9月期) 利益(2025年9月期) 利益率
メディア&IP事業 1,862億円 2,172億円 -14億円 73億円 3.4%
インターネット広告事業 4,130億円 4,388億円 205億円 176億円 4.0%
ゲーム事業 1,956億円 2,164億円 306億円 601億円 27.8%
投資育成事業 63億円 17億円 4億円 -15億円 -91.1%
連結(合計) 8,012億円 8,740億円 401億円 717億円 8.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フローの状況です。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 532億円 795億円
投資CF -383億円 -308億円
財務CF -5億円 -339億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンを掲げ、インターネット分野に軸足をおいて事業を拡大していくことを経営の基本方針としています。また、企業活動による持続的な成長を実現するとともに日本社会のさらなる発展に貢献するため、「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」というパーパスを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、「挑戦と安心はセット」という方針のもと、従業員が自身のキャリアや働く環境に安心感を持ち、心身ともに健康で長く働き続けられる労働環境の整備を重視しています。また、課題の先送りを撲滅し変革を怠らない文化の継承が不可欠と考え、新規事業や課題解決の方法を提案する「あした会議」を定期的に開催し、イノベーションを生み出す組織風土を構築しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、重視する経営指標として売上高と営業利益を掲げており、高収益事業の開発・展開により利益率の向上を図っています。さらに、中長期の柱に育てるべく「ABEMA」への先行投資を行っており、投資期においても株主の中長期的支援を得られるよう、「DOE(自己資本配当率)5%以上」を経営指標の目安として設定しています。

* 売上高
* 営業利益
* DOE(自己資本配当率)5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中長期においてメディア&IP事業と広告事業で利益を積み上げ、ゲーム事業でヒットタイトルを生み出すことで高収益なビジネスモデルへの転換を目指しています。「ABEMA」の規模拡大やオリジナルIPの創出・マネタイズ強化、広告事業におけるAI・DX分野の事業推進とシェア拡大、ゲーム事業での継続的な新規タイトルの提供と長寿命化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「採用・育成・活性化・適材適所」を軸に、主体性をもって決断し自走できる人材を育成することを戦略としています。幅広い事業現場の従業員が関わる採用活動や合同入社研修等を通じて優秀な人材を早期に確保・育成しています。また、社内異動公募制度などの適材適所施策を活用し、人材が長期にわたり活躍できる環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 33.8歳 6.5年 9,138,000円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.5%
男性育児休業取得率 87.2%
男女賃金差異(全労働者) 75.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 79.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(34%)、離職率(9.1%)、働きがいがあると回答した従業員の割合(88.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット関連市場の動向への依存


同社グループが展開するメディア、インターネット広告、ゲームなどの事業は、インターネット関連市場の動向やスマートデバイスの普及状況に大きく依存しています。インターネットメディアやゲーム市場の成長阻害、または景気変動に伴う広告市場の悪化が生じた場合、同社の業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 法的規制とガイドライン変更への対応


同社の事業領域は、「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」や「個人情報の保護に関する法律」など多岐にわたる法令やガイドラインの規制を受けています。これら法令の制定・改正や自主規制ルールの改定により新たな制約が課された場合、今後の事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報セキュリティとシステム障害の発生


同社グループは各種インターネットサービスを提供しており、サイバー攻撃やマルウェア感染、システム障害などによる重要データの漏洩やサービス停止のリスクを抱えています。万が一これらの事象が発生した場合、第三者からの損害賠償請求や信用の低下、収益機会の損失を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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