※本記事は、JFEシステムズ株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. JFEシステムズってどんな会社?
JFEスチールグループの情報システム会社として、鉄鋼業のシステム構築で培った技術力を強みに、製造・流通・金融など幅広い業界へITソリューションを提供しています。
■(1) 会社概要
1983年に川鉄システム開発として設立され、1986年より川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム業務を移管されました。2001年に東証二部に上場し、2004年に現社名へ変更しています。2011年にはエクサよりJFEスチール向け事業を承継し、グループのIT中核機能を強化。2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日現在の連結従業員数は1,901名(単体1,554名)です。筆頭株主は親会社のJFEスチール(65.16%)で、第2位はJFEシステムズ社員持株会(7.11%)、第3位はJFEグループのエンジニアリング会社であるJFEプラントエンジ(1.27%)となっており、強固な資本関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| JFEスチール | 65.16% |
| JFEシステムズ社員持株会 | 7.11% |
| JFEプラントエンジ | 1.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は大木哲夫氏です。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大木哲夫 | 代表取締役社長 | 1984年川崎製鉄入社。JFEホールディングス常務執行役員、JFEスチール専務執行役員などを経て、2021年6月より現職。 |
| 國安誠 | 取締役 | 1984年入社。金融ソリューション事業部副事業部長、常務執行役員などを経て、2016年6月より現職。JFEコムサービス代表取締役社長を兼任。 |
| 下田純 | 取締役 | 1984年入社。ERP・BIソリューション部長、常務執行役員などを経て、2018年6月より現職。 |
| 笹井一志 | 取締役 | 1982年川崎製鉄入社。JFEスチールIT改革推進部主任部員、同社常務執行役員などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、竹田年朗(元マーサージャパン パートナー)、保々雅世(元日本オラクル 常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報サービス」事業を展開しており、以下の分野でサービスを提供しています。
■(1) DX事業
鉄鋼事業をはじめとする各事業分野と連携し、オフィスソリューション、製造現場ソリューション、プラットフォーム構築サポートなどを提供しています。企業のデジタルトランスフォーメーションを推進する事業です。
収益は、顧客企業からのシステム構築費用やソリューション提供対価として受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■(2) ソリューション・プロダクト事業
自社開発および他社製ソフトウェア商品の開発・販売、およびそれらを活用したシステムインテグレーションを行っています。ERP、SCM、BI、電子帳票システム、食品業界向け品質情報管理システムなどを対象としています。
収益は、ソフトウェアのライセンス販売、導入支援、保守サービス料として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■(3) 基盤サービス事業
情報通信基盤の構築・運用や、それらを利用したITインフラソリューションを提供しています。クラウドサービス、ITインフラ構築、サーバ仮想化、情報セキュリティ支援などが主な対象分野です。
収益は、インフラ構築費用やクラウドサービスの利用料、運用保守料として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■(4) ビジネスシステム事業
製造・流通・金融業界などの顧客に対し、業務システムの企画・設計・開発・保守を行っています。販売、生産・物流、会計等の業務システムや、金融機関向けの勘定系・年金システムなどを手がけています。
収益は、システム開発の請負代金や保守運用料として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■(5) 鉄鋼事業
主にJFEスチールおよび同グループ会社向けに、販売・生産・物流・会計等の業務システムの企画立案から開発、保守までを一貫して行っています。
収益は、親会社およびグループ会社からのシステム開発・保守費用として受け取ります。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、売上高は右肩上がりの増収基調を維持しており、465億円から640億円へと拡大しています。経常利益も順調に推移し、直近では77億円に達しました。利益率は10%台から12%前後へと改善傾向にあり、高収益体質を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 465億円 | 504億円 | 565億円 | 620億円 | 640億円 |
| 経常利益 | 47億円 | 56億円 | 63億円 | 75億円 | 77億円 |
| 利益率(%) | 10.1% | 11.2% | 11.1% | 12.0% | 12.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 30億円 | 35億円 | 41億円 | 47億円 | 51億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比3.1%増の640億円となり、売上総利益率は23.6%と高い水準を維持しています。営業利益は76億円で、営業利益率は11.9%と前期並みを確保しました。コストコントロールと売上拡大のバランスが取れた収益構造となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 620億円 | 640億円 |
| 売上総利益 | 148億円 | 151億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 23.6% |
| 営業利益 | 74億円 | 76億円 |
| 営業利益率(%) | 11.9% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が21億円(構成比28%)、従業員賞与が10億円(同13%)を占めています。売上原価には受注損失引当金繰入額は計上されていません。
■(3) セグメント収益
同社は「情報サービス」の単一セグメントですが、基盤サービス事業および製造業向け業務システム開発事業の拡大により、全体の売上高は増加しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 情報サービス | 620億円 | 640億円 |
| 連結(合計) | 620億円 | 640億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動はマイナス、財務活動はマイナスとなっており、本業で稼いだ現金を投資と借入返済・配当に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 74億円 | 87億円 |
| 投資CF | -13億円 | -32億円 |
| 財務CF | -27億円 | -28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も62.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はパーパスとして「はたらくをスマートに。はたらく人にスマイルを。」を掲げています。企業中心から人間中心の時代への変化を捉え、業務の効率化だけでなく、働く人を創造的にするITを「スマートフル(Smart+Heartful)IT」と定義し、その実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「スマートフルIT」の体現に向け、5つのバリュー「Smart(理にかなった思考)」「Collaborate(ナレッジ共有)」「Empower(創造的な働き方)」「Challenge(考え抜いた挑戦)」「Speed(圧倒的な価値)」を共有しています。また、行動指針として「人と人とのGOOD RELATION」を最優先事項としています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度の目指す姿として「スマートフルIT」の実現を掲げ、具体的な数値目標を設定しています。2025~2027年度の中期経営計画は、その実現に向けた事業ポートフォリオ再構築の準備期間と位置付けられています。
* 連結売上高:850億円以上(2030年度目標)
* 連結営業利益:120億円以上(2030年度目標)
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業ポートフォリオ転換」「企業文化の変革」「投資・財務戦略の強化」を基本戦略としています。特にDX、ERP、基盤サービスを重点成長領域と定め、人材や投資資金をシフトします。また、事業本部制への再編や役員ローテーションなどを通じ、組織の柔軟性とシナジー創出を加速させる方針です。
* 研究開発費:15億円(3年間累計)
* 人的資本投資:65億円(3年間累計)
* 戦略投資(M&A):50~100億円(3年間累計)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」を最大の財産と位置づけ、人的資本経営に取り組んでいます。「事業計画の達成に必要な専門人材の採用・育成」と「自律的な学習の支援」を基本方針とし、階層別・職種別研修やe-learningの充実を図っています。また、DEI推進グループを設置し、多様な人材が活躍できる組織風土の醸成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.5歳 | 19.3年 | 8,380,382円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、特定保健指導実施率(41.3%)、喫煙率(17.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内景気と顧客のIT投資動向
顧客は製造、流通、金融、サービス等広範囲にわたりますが、経済状況による顧客のIT投資・需要動向が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、受注獲得における競合他社との競争もリスク要因です。同社は需要動向を予測し、適切な要員配置を行うなどの対策を講じています。
■(2) 情報システム構築に関するリスク
請負契約によるシステム構築において、技術面・品質面のリスクが顕在化した場合、開発遅延やコスト増加により経営成績が悪化する可能性があります。同社はプロジェクト評価の会議体を通じたリスク評価・管理体制を整備し、未然防止に努めています。
■(3) 情報セキュリティに関するリスク
個人情報や機密情報の流出、サイバー攻撃、知的財産権侵害等が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社はJFEグループのセキュリティ体制(JFE-SIRT)への参画等を通じて対策を強化しています。



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