記事タイトル:「アミューズ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、アミューズの有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アミューズってどんな会社?
「イベント関連事業」、「音楽・映像事業」、「出演・CM事業」を展開する総合エンターテインメント企業です。
■(1) 会社概要
1978年に設立され、音楽出版事業からスタートしました。2001年に大阪証券取引所ナスダック・ジャパンへ上場し、2006年には東京証券取引所第一部に指定されています。2024年には組織再編に伴い、アミューズクリエイティブスタジオなどの完全子会社を新設し、事業展開をさらに加速させています。
現在の従業員数は連結で601名、単体で253名です。筆頭株主は創業者とその関連法人であるオオサトで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には投資事業有限責任組合が名を連ねており、多様なステークホルダーによって企業基盤が支えられていることがわかります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オオサト | 27.79% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.10% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 5.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役会長 兼 社長は大里洋吉氏が務めており、社外取締役比率は23.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大里洋吉 | 代表取締役会長 兼 社長 | 渡辺プロダクションを経て同社を設立し社長等に就任。関連財団等の理事長・理事を歴任し、2025年より現職。 |
| 柏木伸裕 | 取締役副会長 | シャルレ等を経て同社に入社。執行役員やアミューズクエスト代表取締役社長等を歴任し、2025年より現職。 |
| 荒木宏幸 | 専務取締役 | 同社に入社後、各マネージメント部長や執行役員を歴任。アミューズクリエイティブスタジオ代表等を兼任し現職。 |
| 大野貴広 | 常務取締役 | 同社に入社後、デジタルビジネス事業部長や各事業の執行役員を歴任。取締役常務執行役員を経て2023年より現職。 |
| 大嶋敏史 | 常務取締役 | 公認会計士。監査法人や自身での事務所開設を経て、同社社外監査役に就任。その後同社執行役員等を経て現職。 |
| 清山こずえ | 取締役 | 同社入社後、アーティストプロデューサーや韓国プロジェクトディレクター等を歴任。韓国法人代表を兼務し現職。 |
社外取締役は、安藤隆春(元警察庁長官)、麻生要一(アルファドライブ代表取締役)、平原依文(HI合同会社代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「イベント関連事業」、「音楽・映像事業」、「出演・CM事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) イベント関連事業
アーティストによるコンサートや演劇などの自主制作・主催や他社主催公演からの制作業務を行っています。また、ファンクラブの運営による会報誌の発行やチケットの優先販売、アーティストグッズの企画・制作・販売も行っています。
収益は入場料やファンクラブ会費、グッズ販売代金などから得ています。運営は同社およびアミューズクリエイティブスタジオ、アミューズプロダクトワークス等の子会社が連携して行っています。
■(2) 音楽・映像事業
アーティストの創作した楽曲や映像作品の製作・買付けに伴う事業です。楽曲の印税や音楽・映像パッケージの販売、テレビ番組等の制作受託、さらにはコンサートやイベントのライブ・ビューイング(国内外の映画館への生中継等)を手掛けています。
収益はレコード会社や著作権管理団体からの印税、番組制作の受託料、映像配給からの分配金などで構成されています。運営は同社や極東電視台、ライブ・ビューイング・ジャパン等が行っています。
■(3) 出演・CM事業
所属アーティストがテレビのドラマや音楽・バラエティ番組、映画などに出演することや、新聞・雑誌等での執筆・インタビュー活動を行う事業です。また、各種メディアにおけるCM出演を通じた活動も含まれます。
放送局や広告主からの出演料やCM契約料が主な収益源となっています。運営は主に同社および、企業広告等の制作を担うアミューズコミュニケーションデザインが行っています。
■(4) その他事業
企業および個人向けの人材育成に関する事業などを展開しています。エンターテインメントを通じた人材の才能発掘や育成へのアプローチを行っています。
収益は、人材育成事業等のサービスの提供に対する対価として受け取っています。この事業は主にジェイフィールや茅ヶ崎エフエムといったグループ会社によって運営されています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は堅調に推移しており、特に2023年3月期以降は500億円を超える水準で拡大しています。利益面においては一時的な落ち込みがあったものの、2026年3月期には大型コンサートツアーの開催などが牽引し、利益率も含めて大幅な改善を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 387億円 | 525億円 | 548億円 | 682億円 | 697億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 34億円 | 18億円 | 30億円 | 62億円 |
| 利益率(%) | 7.2% | 6.5% | 3.3% | 4.4% | 8.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 16億円 | 17億円 | 4億円 | 16億円 | 27億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益がともに拡大しています。特に営業利益率は前期間から倍以上に向上しており、大型コンサートツアー関連の制作費増や製造コストの増加があったものの、増収効果と経費コントロールにより大幅な収益力改善を果たしています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 682億円 | 697億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 115億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.6% | 16.5% |
| 営業利益 | 28億円 | 61億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11億円(構成比21%)、役員報酬が7億円(同13%)、支払手数料が5億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
イベント関連事業は大型コンサートツアーの開催やグッズ収入の増加により大幅な増収増益となりました。出演・CM事業も広告制作やCM収入の増加で増収増益です。一方、音楽・映像事業は連結子会社の異動による反動で減収となりましたが、利益面では増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| イベント関連事業 | 421億円 | 438億円 | 8億円 | 32億円 | 7.3% |
| 音楽・映像事業 | 197億円 | 186億円 | 15億円 | 19億円 | 10.2% |
| 出演・CM事業 | 64億円 | 72億円 | 4億円 | 10億円 | 13.9% |
| 連結(合計) | 682億円 | 697億円 | 28億円 | 61億円 | 8.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 68億円 |
| 投資CF | -6億円 | -63億円 |
| 財務CF | -21億円 | -18億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「『創造』と『共創』の両翼で、世界へ羽ばたくプロデュースハウスへ」を経営方針として掲げています。単なるプロダクションの枠組みを超え、文化を創造する総合エンターテインメント集団として、才能から生み出される良質なコンテンツを世界中に届け続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社の価値創造の源泉は「人」であると考え、アーティストや社員一人ひとりの才能や個性を尊重し、互いに高めあうことで企業価値の最大化を図る文化が根付いています。また、エンターテインメント企業としての発信力を活かし、社会課題に対する気づきの機会を提供することでより良い社会を築くことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業環境の変化を好機と捉え、2029年までの3年間でより一層の企業価値向上を目指す中長期の計画を策定しています。各事業を小単位に分けて営業利益管理を行い、全体としての営業利益や営業利益率、株主資本利益率(ROE)の向上を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存コア領域の強化として、アーティストの多角的な活動推進やオリジナルコンテンツの自社開発に注力します。新規成長領域の開拓では、海外アーティストの日本進出を支援する「360°パートナーシップ」や「カルチャーツーリズム」を推進し、さらにソリューション領域においてデジタル起点の新サービス開発を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本を重要な経営資本と位置付け、年齢や性別等の属性、経歴を問わず意欲と能力を有する多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。若年層の即戦力化、マネージメント能力の向上、多様な働き方を選択できる人事制度の構築、ワークライフバランスの実現や健康管理など、従業員と企業が共に成長できる基盤を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.2歳 | 11.4年 | 7,523,505円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 44.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 90.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(54.8%)、外国籍社員比率(1.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要アーティストに関するリスク
主要アーティストの活動休止や専属契約の更新見送りは業績に影響を及ぼす可能性があります。また、アーティストの法令違反や信用失墜行為の発生、さらには取引先や興行関係者における問題が発生した際にも、同社グループのイメージ悪化や収益への影響が生じる懸念があります。
■(2) 興行や作品販売による業績の変動リスク
大規模なコンサートや映画・音楽等のヒットは一時的に収益を急増させますが、これらのビジネスは消費者の嗜好や流行に大きく左右されます。イベントの実施時期や作品の発売時期が変動すること、あるいは計画通りに投資回収ができない場合、短期的・中長期的な業績の変動要因となります。
■(3) 災害や感染症等による事業活動の制限リスク
異常気象に伴う自然災害や感染症の流行等が発生した場合、コンサートやイベントの開催中止、延期を余儀なくされることがあります。チケットの払戻しや製作費の負担、代替措置が不可能な事態の発生は、オンラインライブ等で影響軽減に努めるものの、業績へ直接的な影響を及ぼす可能性があります。



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