システナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

システナ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はプライム市場に上場し、ソリューションデザインやITサービス事業を展開する企業です。主力のIT課題解決支援や車載システム開発が堅調に推移しています。2025年3月期の業績は、売上高836億円(前期比8.7%増)、営業利益121億円(同24.2%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社システナ の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. システナってどんな会社?


モバイル端末や車載システムの開発支援、IT運用保守などを手掛ける独立系IT企業です。

(1) 会社概要


1983年にヘンミエンジニアリングとして設立され、モバイル端末開発等で成長しました。2002年にナスダック・ジャパンへ上場、2004年に東証二部、2005年に東証一部へ指定替えを行いました。2010年にはカテナを吸収合併し、現在のシステナへ商号変更しています。近年では米国やベトナムにも拠点を展開し、グローバルな事業体制を構築しています。

同社グループの従業員数は連結で5,252名、単体で3,955名です。筆頭株主は創業者の親族が関与するSMSホールディングス有限会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
SMSホールディングス有限会社 28.98%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.87%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 6.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役会長は逸見愛親氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
逸見 愛親 代表取締役会長 1983年ヘンミエンジニアリング(現同社)設立、代表取締役社長。2024年6月より現職。
三浦 賢治 取締役社長代表執行役員 1995年同社入社。取締役副社長等を経て、2024年6月より現職。
逸見 真吾 専務取締役 2012年同社入社。取締役DXデザイン本部長兼管理本部長等を経て、2024年6月より現職。
小谷 寛 常務取締役 2001年同社入社。取締役財務経理本部長を経て、2024年6月より現職。
田口 誠 取締役 2010年同社ソリューション営業本部長。ビジネスソリューション事業本部長を経て、2024年6月より現職。
藤井 宏幸 取締役 2010年同社ITマネジメント事業部長。ITマネジメント事業本部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小河耕一(元みずほスタッフ常務取締役)、伊藤麻里(アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー)、逸見圭朗(元株式会社ぴえろ専務取締役)、黒﨑力蔵(元みずほキャピタル常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューションデザイン事業」「次世代モビリティ事業」「フレームワークデザイン事業」「IT&DXサービス事業」「ビジネスソリューション事業」「DX&ストック型ビジネス事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) ソリューションデザイン事業

AI、IoT、ロボット関連などのプロダクト製品やネットビジネス、社会インフラ関連システムの企画・設計・開発・検証支援を行っています。通信事業者や各種メーカーが主な顧客です。

収益は、顧客からのシステム開発や検証支援にかかる対価として得ています。運営は主にシステナおよび関連会社のHISホールディングスが行っています。

(2) 次世代モビリティ事業

完成車メーカーやサプライヤー向けに、自動車業界へのエンジニアリングサービスやMaaSなどの自社サービスを提供しています。

収益は、自動車関連システムの開発支援やサービス提供の対価として得ています。運営は主にシステナが行っています。

(3) フレームワークデザイン事業

金融機関(生損保、銀行)や公共・法人向けに基幹システムの開発を行っています。また、DXソリューションの導入、インフラ構築、システム運用、コンサルティングサービスも提供しています。

収益は、システム開発やインフラ構築、コンサルティング業務の対価として得ています。運営は主にシステナが行っています。

(4) IT&DXサービス事業

システムやネットワークの運用・保守・監視、ヘルプデスク、データ入力などのITアウトソーシングサービスを提供しています。

収益は、ITアウトソーシングサービスの提供対価として得ています。運営はシステナ、株式会社ProVision、東京都ビジネスサービス株式会社などが行っています。

(5) ビジネスソリューション事業

企業向けにサーバー、パソコン、ソフトウェアなどのIT関連商品を販売しています。また、IT機器の基盤構築やRPA導入などのサービスも提供しています。

収益は、IT関連商品の販売代金や導入サービスの対価として得ています。運営は主にシステナが行っています。

(6) DX&ストック型ビジネス事業

自社サービス「Canbus.」や「Cloudstep」などの提供に加え、Google Workspace等のクラウド型サービスの導入支援を行っています。

収益は、クラウドサービスの利用料やライセンス料、導入支援の対価として得ています。運営はシステナおよび株式会社ミンガルが行っています。

(7) その他事業

モバイル通信関連の技術支援、開発・検証支援、ソリューション提供などを行っています。

収益は、技術支援や開発業務の対価として得ています。運営は株式会社GaYa、株式会社IDY、Systena America Inc.などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。2021年3月期の609億円から2025年3月期には836億円へと成長しました。利益面でも、経常利益は75億円から119億円へと順調に拡大しており、高い利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 609億円 653億円 745億円 769億円 836億円
経常利益 75億円 86億円 100億円 99億円 119億円
利益率(%) 12.3% 13.1% 13.4% 12.9% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 45億円 56億円 66億円 65億円 81億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も増加しています。売上総利益率は23.5%から25.1%へ、営業利益率も12.6%から14.4%へと改善しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 769億円 836億円
売上総利益 181億円 210億円
売上総利益率(%) 23.5% 25.1%
営業利益 97億円 121億円
営業利益率(%) 12.6% 14.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が30億円(構成比33%)、賃借料が11億円(同12%)を占めています。売上原価においては、労務費や外注費などが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


全セグメントで黒字を確保しています。特に次世代モビリティ事業は売上高が倍増し、利益も大幅に伸長しました。主力のビジネスソリューション事業やIT&DXサービス事業も増収を維持しています。一方、ソリューションデザイン事業は減収となりましたが、利益率は向上しており、収益性の改善が進んでいます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ソリューションデザイン事業 186億円 176億円 22億円 30億円 17.4%
次世代モビリティ事業 25億円 50億円 6億円 18億円 35.3%
フレームワークデザイン事業 69億円 85億円 16億円 19億円 22.2%
IT&DXサービス事業 181億円 194億円 29億円 27億円 13.6%
ビジネスソリューション事業 275億円 297億円 19億円 23億円 7.6%
DX&ストック型ビジネス事業 22億円 27億円 2億円 5億円 16.9%
その他事業 12億円 7億円 1億円 -0億円 -2.8%
連結(合計) 769億円 836億円 97億円 121億円 14.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で約80億円という大きなお金を稼ぎましたが、当期はそれを上回る「株主への還元(配当や株の買い戻し)」と「投資」を行いました。特におよそ100億円を投じて行った「自社株の買い戻し」が大きなトピックです。

稼いだ分以上にお金を使ったため、最終的な現金の残高は減りましたが、これは「手元に現金を眠らせておくのではなく、有効に活用して企業の価値を高める」という前向きな戦略によるものです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 90.4億円 79.8億円
投資CF -2.5億円 -25.8億円
財務CF -35.0億円 -140.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、日本経済の発展に貢献することで心豊かな社会作りに尽力することを経営理念としています。この理念のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の増大の両立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「お客様に愛され、社会に必要とされ、自分が頑張ることで自分以外の誰かを幸せにすること」を理想の社員像として掲げています。コロナ禍で希薄化した社員間の繋がりを取り戻し、創業当時の原点に立ち返って理念経営に邁進する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、高インフレに対応するため賃金の大幅な引き上げを目標としています。過去2年で17%引き上げた賃金を、今後3年でさらに23%引き上げる計画を掲げています。また、離職率の低減や、ソリューションデザイン事業の再構築なども重要な経営課題として設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、新卒採用中心から即戦力人材確保への転換や、透明性の高い人事評価制度の導入により組織力の強化を図ります。事業面では、ソリューションデザイン事業のノウハウを自動車やAI等の分野へ展開し専門性を高めるほか、自社商材によるストック型ビジネスの拡大を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続可能な開発目標(SDGs)に関連し、健康経営の推進、独自のキャリアパス・研修制度によるスキルアップ支援、ダイバーシティ推進による多様な人材の登用を方針としています。特に、資格取得支援や女性活躍推進、従業員のエンパワーメント向上に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.7歳 6.0年 4,736,988円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 84.4%
男女賃金差異(正規) 84.3%
男女賃金差異(非正規) 97.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受診率(96.0%)、有給休暇取得率(81.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 機密情報の管理について

同社の業務は技術的・営業的に高い秘匿性が求められるものが多く、情報セキュリティ対策を徹底しています。しかし、万が一情報漏洩が発生した場合、損害賠償や信用の低下により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制について(下請法)

同社グループの情報成果物作成等の取引は下請法の対象となります。法令遵守体制を構築していますが、何らかの違反が発生した場合、事業活動に制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制について(労働者派遣法)

同社グループは労働者派遣事業の許可を受けており、労働者派遣法に基づき運営しています。許可の取り消しや事業停止命令を受けるような事態が発生した場合、事業運営に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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