日鉄ソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日鉄ソリューションズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日鉄ソリューションズは、東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所メイン市場、福岡証券取引所本則市場に上場する情報サービス企業です。基幹業務システムの企画・構築等を行うビジネスソリューションと、ITインフラやDXコンサルティング等を提供し、直近の業績は売上収益3813億円と増収増益の傾向です。


※本記事は、日鉄ソリューションズ株式会社の有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日鉄ソリューションズってどんな会社?


同社は、製造業や金融、流通など幅広い業界の顧客に向けて、情報システムの構築や運用、DX支援を提供しています。

(1) 会社概要


1980年に日鐵コンピュータシステムとして設立。1988年に新日鉄情報通信システムへ改称し、2001年に新日鉄ソリューションズへ社名変更しました。2002年に東証一部へ上場後、2019年に現在の日鉄ソリューションズへ社名変更し、2025年にはインフォコムを子会社化するなど事業拡大を続けています。

従業員数は連結で10276名、単体で4102名です。筆頭株主は事業会社の日本製鉄で、63.43%の株式を保有しています。第2位は投資ファンドの3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC、第3位は資産管理業務等を行うSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYです。

氏名 持株比率
日本製鉄 63.43%
3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC - 3D WH OPPORTUNITY HOLDINGS(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 10.10%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 510312(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 2.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は玉置和彦が務めています。社外取締役は6名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
玉置和彦 代表取締役社長 新日本製鐵入社後、出向を経て同社人事部長等を歴任。2023年より現職。
東條晃己 取締役 新日本製鐵入社後、同社産業ソリューション事業部や企画部長等を歴任。2026年より現職。
鎌田三保 取締役 新日本製鐵入社後、同社技術本部長、働き方変革・ダイバーシティ推進担当等を歴任。2026年より現職。
内藤寛人 取締役 新日本製鐵入社後、総務部長、経営企画部長等を歴任。日本製鉄常務執行役員も務め、2023年より現職。
松村篤樹 取締役常勤監査等委員 新日本製鐵入社後、日本製鉄常務執行役員等を経て、2020年入社。2025年より現職。


社外取締役は、石井一郎(元東京海上ホールディングス取締役副社長)、堀井利江(元花王グループカスタマーマーケティング執行役員)、藤原雅俊(一橋大学大学院教授)、山畑聡(元ヤマハ取締役)、星周一郎(東京都立大学教授)、藤田和弘(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報サービス」事業を展開しています。

(1) ビジネスソリューション


産業・鉄鋼、流通・サービス、金融分野等の顧客に対し、業種・業務に関する知見とデジタル技術を活用し、基幹業務システム等の企画、設計、構築、運用・保守を含むソリューションを提供しています。製造業向け生産管理システムやネット・メディア向け大規模Webサイトなどを展開しています。

顧客からのシステム開発や運用・保守の受託が主な収益源です。運営は同社および日鉄ソリューションズ東日本などの子会社が共同で行っています。

(2) コンサルティング&デジタルサービス


さまざまな業種・業務の顧客に対し、ミッションクリティカルな要求に応えるITインフラソリューションやITアウトソーシングを提供しています。また、マルチクラウド等のプラットフォームやDXコンサルティング、電子契約などのデジタルソリューションも展開しています。

顧客からのITサービス利用料やコンサルティング料、アウトソーシング料が主な収益源です。運営は同社やインフォコムなどの子会社が行っています。

(3) その他


障害者雇用促進法に基づく特例子会社において、福利厚生の一部業務やオフィスサービス、農業分野を通じた地域サービス、ITを利用した各種サービス等を提供しています。多様な人材が活躍できる場の創出に貢献しています。

グループ内の福利厚生やオフィスサービス業務等の受託が主な収益源です。運営は子会社のAct.が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けており、税引前利益も一貫して増加傾向にあります。特に直近では利益率も向上しており、安定した収益基盤と高い成長性を両立させていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2703億円 2917億円 3106億円 3383億円 3813億円
税引前利益 307億円 321億円 354億円 391億円 453億円
利益率(%) 11.4% 11.0% 11.4% 11.6% 11.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 205億円 220億円 242億円 270億円 308億円

(2) 損益計算書


売上収益と売上総利益はともに増加しており、堅調な事業拡大が確認できます。販売費及び一般管理費は増加したものの、増収と売上総利益率の改善により、営業利益、営業利益率ともに向上し、収益性の高まりを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3383億円 3813億円
売上総利益 597億円 660億円
売上総利益率(%) 17.7% 17.3%
営業利益 385億円 442億円
営業利益率(%) 11.4% 11.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が115億円(構成比20%)、業務委託費が98億円(同17%)を占めています。売上原価については、労務費や外注費などのコストが含まれています。

(3) セグメント収益


同社は情報サービス事業の単一セグメントですが、各種サービスの拡大や子会社化の影響により、売上収益、営業利益ともに増加しています。特にビジネスソリューション分野が業績を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
連結(合計) 3383億円 3813億円 385億円 442億円 11.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなる「末期型」のパターンを示しています。本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な状態と分類されますが、営業CFのマイナスは前期の有価証券売却益に伴う税金支払等の一時的要因によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 372億円 -34億円
投資CF 702億円 -594億円
財務CF -19億円 -216億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.4%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「創造 信頼 成長」を企業理念に掲げ、「情報技術のプロフェッショナルとして、真の価値の創造により、お客様との信頼関係を築き、ともに成長を続け、社会の発展に貢献していくこと」を目指しています。日本の情報サービス産業において主導的立場を確立し、豊かな社会づくりに貢献することをミッションとしています。

(2) 企業文化


技術力と顧客からの信頼を競争力の源泉と位置づけ、真の価値を創造する「プロデューサー」へと生まれ変わることを志向しています。顧客の事業展開に合わせた最適なサービスを全社横断的に提供する体制を構築し、先進的な技術力を武器に、多様な人材が活き活きと働けるダイバーシティ&インクルージョンを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年に向けた「NSSOL 2030ビジョン」および「2025-2027 中期経営計画」を推進しています。

* 売上収益:2027年度 4500億円、2030年 5000億円
* 営業利益:2027年度 600億円、2030年 1000億円
* ROE:2027年度 13%程度、2030年 15%程度
* 株主還元:配当性向50%

(4) 成長戦略と重点施策


従来の個別受託型SI事業から「TAM型」と呼ばれる新しいビジネスモデルへの変革を推進し、その売上比率を2027年度に75%まで拡大することを目指しています。保有キャッシュを活用した積極的な成長投資やM&Aによる外部成長、社内業務の標準化によるマネジメント変革に取り組み、高収益企業への転換を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業環境の変化に対応し、新たな価値創出を担う人材へのシフトを進めるため、「人的資本の高度化」と「基盤要素の強化」に取り組んでいます。多様な人材の確保、自律的キャリア形成の支援、リスキリングの推進、評価制度の見直しなどを実行し、社員一人ひとりの人材価値を高めることで中長期的な企業価値向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.8歳 12.6年 9,357,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.2%
男性育児休業取得率 110.0%
男女の賃金の差異(全労働者) 74.9%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 74.9%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 61.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(40.6%)、女性管理職数(115名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティに関するリスク


SaaS型ITサービスの推進により顧客情報や個人情報の取り扱いが増加しており、情報流出や不正アクセスが発生した場合、損害賠償請求や信用失墜を招く可能性があります。対策として情報セキュリティ本部を新たに設置し、体制の整備やサイバー攻撃への対応力向上、監視体制の高度化を図っています。

(2) 情報システム構築に関するリスク


システム構築は個別性が強く納期までの完成責任を負うため、プロジェクト進捗の阻害要因により想定以上の費用が発生するリスクや、契約不履行による損害賠償リスクがあります。提案段階からのリスク洗い出しや継続的なレビューによる早期課題検知を通じて、リスクの回避に努めています。

(3) ITサービス提供に関するリスク


データセンターやクラウドサービスにおいて、電力・通信障害、設備故障、人的ミス等によるサービス障害が発生した場合、損害賠償や信用失墜を招くリスクがあります。これに対し、事業継続計画(BCP)の策定や設備面の冗長化、クラウド基盤の活用等を通じて事業継続性の確保を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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