※本記事は、日鉄ソリューションズ株式会社 の有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 日鉄ソリューションズってどんな会社?
日本製鉄のシステム部門を母体とするシステムインテグレーター(SIer)で、製造業等の業務知見に強みを持つ企業です。
■(1) 会社概要
同社は2001年、新日本製鐵のエレクトロニクス・情報通信事業部の事業を譲り受けて発足し、2002年に東京証券取引所第一部に上場しました。2012年に新日铁住金ソリューションズへ商号変更後、2019年に現社名の日鉄ソリューションズへ変更しました。2022年には東証の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。
現在の従業員数は、連結で8,647名、単体で3,938名です。筆頭株主は親会社の日本製鉄で、発行済株式の6割超を保有しています。第2位は投資ファンドが運用する3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本製鉄 | 63.43% |
| 3D WH OPPORTUNITY MASTER OFC - 3D WH OPPORTUNITY HOLDINGS | 10.10% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は玉置和彦氏です。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉置 和彦 | 代表取締役社長 | 1985年新日本製鐵入社。同社人事本部長、取締役常務執行役員などを経て、2023年4月より現職。 |
| 黒木 益尚 | 取締役常務執行役員 | 1989年新日本製鐵入社。同社金融ソリューション事業本部長、上席執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 遠藤 竜也 | 取締役常務執行役員 | 1991年新日本製鐵入社。同社ITインフラソリューション事業本部長、上席執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 東條 晃己 | 取締役上席執行役員 | 1989年新日本製鐵入社。同社企画部長、流通・サービスソリューション事業本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 鎌田 三保 | 取締役執行役員 | 1991年新日本製鐵入社。同社技術本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 松村 篤樹 | 取締役社長付 | 1986年新日本製鐵入社。日本製鉄常務執行役員、同社取締役専務執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 内藤 寛人 | 取締役 | 1991年新日本製鐵入社。同社執行役員(経営企画部長委嘱)を経て、2023年6月より現職。 |
| 高原 正之 | 取締役常勤監査等委員 | 1984年新日本製鐵入社。同社総務部長、監査役会事務局長を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、石井一郎(元東京海上日動火災保険入社・東京海上HD取締役副社長)、堀井利江(元花王グループカスタマーマーケティング執行役員)、藤原雅俊(一橋大学大学院経営管理研究科教授)、星周一郎(東京都立大学法学部教授)、藤田和弘(公認会計士・元デロイトトーマツコンサルティング入社)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビジネスソリューション」、「コンサルティング&デジタルサービス」事業を展開しています。
■(1) ビジネスソリューション
産業・鉄鋼、流通・プラットフォーマー、金融分野等の顧客に対し、業務知識とデータ・デジタル技術を駆使して、経営課題解決やDX推進を支援するシステムを企画・構築します。特に日本製鉄向けには、製鉄所の生産管理システム等の企画から運用管理までをトータルで提供しています。
収益は、顧客からのシステム開発・構築、運用・保守サービスの対価として得ています。運営は主に同社が担うほか、日鉄ソリューションズ北海道などの地域子会社や、関連子会社等が分担して行っています。
■(2) コンサルティング&デジタルサービス
ITインフラソリューションやITアウトソーシングに加え、DXコンサルティングに基づくデジタルソリューションを提供しています。クラウドプラットフォームの導入、AI活用、データマネジメントなど、業種横断的な高付加価値サービスを展開しています。
収益は、コンサルティング料、ITサービス利用料、インフラ構築・運用の対価として得ています。運営は主に同社が担い、運用・保守サービスについては日鉄ソリューションズサービスアンドテクノロジー(旧NSSLCサービス)等が提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年3月期から2025年3月期までの業績は、売上収益、利益ともに右肩上がりの成長を続けています。特に直近の2025年3月期は増収増益となり、親会社の所有者に帰属する当期利益も順調に拡大しています。利益率も安定して11%台を維持しており、堅調な推移を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2,703億円 | 2,917億円 | 3,106億円 | 3,383億円 |
| 税引前利益 | 307億円 | 321億円 | 354億円 | 391億円 |
| 利益率(%) | 11.4% | 11.0% | 11.4% | 11.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 205億円 | 220億円 | 242億円 | 270億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上収益が増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約24%へ向上しました。営業利益も増加していますが、営業利益率は前期とほぼ同水準を維持しています。全体として収益性が保たれつつ事業規模が拡大していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,106億円 | 3,383億円 |
| 売上総利益 | 718億円 | 817億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 24.2% |
| 営業利益 | 350億円 | 385億円 |
| 営業利益率(%) | 11.3% | 11.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が175億円(構成比43%)、その他経費が96億円(同23%)、業務委託費が68億円(同16%)を占めています。売上原価においては、外注費が1,160億円(構成比48%)、材料費が492億円(同20%)となっています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに前期比で増収となりました。「ビジネスソリューション」は金融分野や産業・鉄鋼分野が牽引し、大幅な増収を達成しています。「コンサルティング&デジタルサービス」もクラウドソリューション分野等が好調で売上を伸ばしました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| ビジネスソリューション | 2,281億円 | 2,507億円 |
| コンサルティング&デジタルサービス | 825億円 | 876億円 |
| 連結(合計) | 3,106億円 | 3,383億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 262億円 | 372億円 |
| 投資CF | -86億円 | 702億円 |
| 財務CF | -151億円 | -188億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「創造 信頼 成長」を企業理念として掲げています。情報技術のプロフェッショナルとして、真の価値の創造により顧客との信頼関係を築き、ともに成長を続け、社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社会的な存在意義(パーパス)として「ともに未来を考え 社会の新たな可能性を テクノロジーと情熱で切り拓く」を定めています。顧客のパートナーから、自ら新しい価値を提案・創造する「プロデューサー」への変革を目指し、重要課題(マテリアリティ)の解決に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「NSSOL 2030ビジョン」実現に向けた「2025-2027 中期経営計画」において、以下の目標を掲げています。
* 売上収益:4,500億円
* 営業利益:600億円(営業利益率13%)
* ROE:13%程度
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、従来の個別受託型SI事業から、TAM型(SI Transformation、Asset Driven、Multi Company Platform)を主軸とした高収益モデルへのシフトを掲げています。また、顧客アプローチの変革、技術獲得・適用プロセスの変革、社内業務・マネジメントの変革を推進します。さらに、グローバル事業の拡大や積極的なM&Aによる外部成長にも注力します。
* M&A投資枠:3カ年で1,500億円
* TAM型売上収益比率:75%程度
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「多様な人材が活躍できる場の創出」をサステナビリティ経営の根幹とし、高度ITプロフェッショナル人材の採用・育成・創出に注力しています。また、ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、女性活躍や健康経営、エンゲージメント向上等の施策を通じて、誰もが活き活きと働ける組織づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.9歳 | 12.6年 | 9,056,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 61.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性新卒採用比率(34.0%)、平均年間有給休暇取得日数(達成)、ITサービス案件における重大障害発生件数(0件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティに関するリスク
SaaS型ITサービスの提供拡大に伴い、顧客情報や個人情報の取り扱いが増加しています。サイバー攻撃等による情報流出が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜を招く可能性があります。同社は情報セキュリティ委員会や専門組織を設置し、セキュリティ対策や開発プロセスでの要件取り込みを強化しています。
■(2) 情報システム構築に関するリスク
システム構築は請負契約が一般的であり、完成責任を負います。システム要件の高度化・複雑化や短工期化が進む中、予期せぬ阻害要因によりコストが増加したり、納期遅延が発生したりする可能性があります。また、協力会社との連携における法規制違反等のリスクもあります。同社はプロジェクトリスク管理機構による審査やレビューを徹底しています。
■(3) ITサービス提供に関するリスク
データセンターやクラウドサービス等のITサービスにおいて、障害や機器故障、人為的ミス等によるサービス停止が発生した場合、顧客からの損害賠償請求や信用低下のリスクがあります。同社は設備や体制の強化に加え、サービス提案段階からのリスク管理と実行段階でのレビューを実施し、安定稼働に努めています。



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