キューブシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キューブシステム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キューブシステムは東証プライム市場に上場し、受託開発やクラウドサービス等のシステムソリューション・サービスを主力とするIT企業です。最新の有価証券報告書によれば、コンサルティングやモダナイゼーション案件の拡大により、直近の業績は増収増益のトレンドを維持しており、着実な事業成長を遂げています。


※本記事は、キューブシステムの有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. キューブシステムってどんな会社?


企業システムの受託開発からクラウド移行まで、ITによるビジネス変革を支援するシステムインテグレーターです。

(1) 会社概要


キューブシステムは1972年にカストマエンジニアーズとして設立され、1990年に現在の商号へ変更しました。1988年の野村総合研究所との基本契約を機にシステムインテグレーション事業を本格化させ、2002年にジャスダック上場、2014年には東証一部へ指定されました。近年はクラウド基盤構築やAI関連事業を強化しています。

現在の同社グループは、連結従業員数938人、単体704人体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業提携先である野村総合研究所で、第2位は従業員の資産形成を目的としたキューブシステム従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
野村総合研究所 20.21%
キューブシステム従業員持株会 9.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は中西雅洋氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中西雅洋 代表取締役社長執行役員 1982年野村コンピュータシステム入社。同社業務管理室長や中部支社副支社長を経て2017年同社執行役員。2020年より現職。
小髙実 取締役常務執行役員 1999年同社入社。2007年執行役員、2018年上席執行役員、2020年常務執行役員を経て、2025年より現職。
栃澤正樹 取締役 1975年野村コンピュータシステム入社。同社執行役員関西支社長等を経て、2008年同社取締役就任。2020年より現職。


社外取締役は、椎野孝雄(元野村総合研究所取締役)、永田英恵(PhileLife代表取締役)、斎藤毅文(セットザディレクション代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムソリューション・サービス」の単一セグメントで事業を展開しており、主に3つのビジネスモデルに区分されています。

(1) Sier向け事業


大手システムインテグレーターとの協業を基軸に、システムソリューションをオーダーメイドで開発する受託型ビジネスです。大規模案件の獲得やレガシーシステムのモダナイゼーション対応、生成AIを活用したエンジニアリングを通じて、顧客のシステム基盤構築と運用を幅広く支援しています。

収益源は、システム開発や保守運用に伴う受託開発費です。運営はキューブシステムおよびグループ子会社が行っています。

(2) プライム向け事業


エンドユーザーである既存プライム顧客企業と直接契約を結び、経営課題の解決に直結するシステムを企画・開発する受託型ビジネスです。コンサルティング視点を取り入れた提案活動により、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション推進を上流工程からワンストップで支援しています。

収益源は、コンサルティング費用およびシステムの受託開発費です。運営はキューブシステムが中心となって行っています。

(3) サービス提供事業


クラウド基盤の構築や独自開発のソフトウェアを活用し、国内企業のIT基盤変革を支援する企画型ビジネスです。マルチクラウド移行や仮想基盤リフトなどのプロフェッショナルサービスに加え、人的資本経営を支援する独自サービスなどを展開しています。

収益源は、自社開発ソフトウェアやサービスの販売収入、およびクラウドサービス等を通じた継続的な利用料です。運営はキューブシステムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は161億円から185億円へと着実に成長を続けています。経常利益も14億円から16億円へと増加傾向にあり、利益率は概ね8%から9%の安定した水準で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 161億円 163億円 180億円 184億円 185億円
経常利益 14億円 15億円 16億円 14億円 16億円
利益率(%) 8.9% 9.1% 8.8% 7.6% 8.5%
当期利益 9億円 10億円 11億円 13億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増ながら売上総利益は9%増加し、売上総利益率も21.5%から23.2%へと改善しました。これにより営業利益も増益となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 184億円 185億円
売上総利益 39億円 43億円
売上総利益率(%) 21.5% 23.2%
営業利益 14億円 16億円
営業利益率(%) 7.5% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.6億円(構成比28%)、賃借料が3.8億円(同14%)を占めています。また、売上原価は142億円で、売上高に対する構成比は77%となっています。

(3) セグメント収益


同社は「システムソリューション・サービス」の単一セグメントであるため、事業全体の売上高推移を示します。直近ではデジタルビジネスやシステムインテグレーション領域での受注が拡大し、増収に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
システムソリューション・サービス 184億円 185億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却によって得た資金で借入の返済等を進める改善型の局面といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.6億円 7.7億円
投資CF -0.7億円 3.7億円
財務CF -7.8億円 -5.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営の基本方針として「顧客第一主義」「重点主義」「総員営業主義」を掲げています。全ての判断基準をお客様にとっての価値とし、最重要事項に経営資源を集約した上で、全社員が自立したビジネスパーソンとして社業発展に邁進することを使命としています。

(2) 企業文化


社員一人ひとりが多様性を尊重し合い、自律的に考え行動する精神を重んじています。また、社員の健康を最重視したウェルビーイング経営を実践し、働きがいと機会の創出を通じてエンゲージメントの向上を図る企業風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


第2次中期経営計画において、事業成長と企業価値の向上を目指しています。最終年度に向けては、既存の保守運用ビジネスで創出した利益を源泉に、システム開発やデジタル領域を拡大する方針です。

・ROE:14%以上
・連結営業利益率:10.5%
・従業員一人当たりの連結売上高:2,500万円

(4) 成長戦略と重点施策


「事業の成長」「事業基盤の強化」「経営基盤の強化」の3本柱を重点施策として掲げています。主要なシステムインテグレーターとの協業やプライム顧客との関係強化を進めるとともに、AIを中心とした先進技術への研究投資や生産体制の拡充を通じて、付加価値の高いサービス提供と収益性の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「成果と期待価値に溢れ、組織とともに成長していく人材」を求め、自立したビジネスパーソンの育成を方針としています。プロフェッショナルIT、コーポレートスタッフ、組織マネジメントの3つのキャリアフィールドを設定し、現場での育成や階層別研修を通じた計画的な能力開発を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.0歳 8.7年 5,458,555円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.8%
男性育児休業取得率 93.4%
男女賃金差異(全労働者) 82.7%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.4%)、離職率(4.3%)、エンゲージメント指標(71.4)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


同社の売上高のうち、野村総合研究所や富士通グループに対する販売実績が大きな割合を占めています。そのため、これらの主要顧客の事業方針の変更やIT投資動向の変動が、同社グループの受注や業績に影響を与える可能性があります。

(2) プロジェクトの品質・損益管理


デジタルトランスフォーメーション需要の高まりにより、顧客から要求されるシステムが高難度化しています。仕様変更や想定外の追加作業によるコスト増や、品質不良に伴う修補責任の発生が、プロジェクトの不採算化を招くリスクがあります。

(3) 情報管理・情報漏洩


システム開発や運用保守の業務において、顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱う機会があります。サイバー攻撃や人為的ミスによって万一情報漏洩事故が発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の失墜により、事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 慢性的な人材不足と獲得競争


IT業界全体でシステムエンジニアの不足が続いています。事業拡大に必要な優秀なデジタル人材を計画通りに確保できない場合や、人材流出による生産性の低下が起きた場合、案件獲得の機会損失を招き、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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