※本記事は、株式会社キューブシステム の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キューブシステムってどんな会社?
システムインテグレーションやアウトソーシング、プロフェッショナル・サービスを提供する独立系SIerです。
■(1) 会社概要
1972年7月にカストマエンジニアーズとして設立され、1990年10月に現社名のキューブシステムへ商号変更しました。2002年10月にジャスダック市場へ上場を果たし、2014年3月には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、市場区分の見直しに伴い、2022年4月にプライム市場へ移行しています。
連結従業員数は918名、単体では702名です。大株主については、筆頭株主は資本業務提携先であるシステム開発会社の野村総合研究所で、第2位はキューブシステム従業員持株会です。第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 野村総合研究所 | 20.20% |
| キューブシステム従業員持株会 | 9.29% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名、計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役 社長執行役員は中西 雅洋氏です。社外取締役比率は約43%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中西 雅洋 | 代表取締役社長執行役員 | 野村総合研究所を経て2017年同社入社。常務執行役員などを歴任し、2020年4月より現職。 |
| 﨑山 收 | 取締役会長 | 1972年同社設立時に入社。常務取締役などを経て1989年代表取締役社長に就任。2020年4月より代表取締役会長、2025年6月より現職。 |
| 小髙 実 | 取締役常務執行役員 | 1999年同社入社。執行役員、上席執行役員を経て2020年4月常務執行役員就任。2025年6月より現職。 |
| 栃澤 正樹 | 取締役 | 野村総合研究所を経て2008年同社入社。執行役員、常務取締役、専務執行役員などを経て現職。 |
社外取締役は、椎野 孝雄(元野村総合研究所理事)、永田 英恵(株式会社PhileLife代表取締役)、斎藤 毅文(斎藤毅文公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システムソリューション・サービス」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デジタルビジネス
DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて顧客のビジネス変革を支援する企画型ビジネスです。同社のノウハウを結集したコンサルティングサービスや、自社プロダクト、同社発のソリューション、IP(知的財産)化などのアプローチによって新たな事業創出を目指しています。
収益は、顧客企業からのコンサルティングフィーやサービス利用料などから得ています。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
■(2) SIビジネス
システムの企画から設計、開発、導入までを一貫して行うサービスです。マルチクラウドやマイクロサービス案件を軸としたシステムの提供を行っています。レガシー環境からのクラウド移行(Lift)と新たな方法論の確立(Shift)による「Lift&Shiftモデル」の確立を推進しています。
収益は、顧客企業からのシステム開発委託費や導入支援費用などから得ています。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
■(3) エンハンスビジネス
顧客のビジネス環境の変化や技術の進化に合わせて、システムの性能や品質を向上させ、システムの価値を高めるサービスです。同社が最も強みとしてきたビジネスモデルであり、長期的な顧客関係に基づき、高生産性・高収益性の実現に向けた取り組みを進めています。
収益は、顧客企業からのシステム保守・運用費や機能追加などの改修費用から得ています。運営は主に同社および連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は緩やかな増加傾向にあり、直近では184億円に達しています。経常利益は13億円から16億円の間で推移しており、直近では減益となりましたが、当期純利益は過去5期間で最も高い13億円を記録しました。利益率は7〜9%台で安定的に推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 148億円 | 161億円 | 163億円 | 180億円 | 184億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 14億円 | 15億円 | 16億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 8.9% | 9.1% | 8.8% | 7.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 9億円 | 10億円 | 11億円 | 13億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は横ばいにとどまりました。販売費及び一般管理費が増加した影響で、営業利益は前期の15億円から14億円へと減少しており、営業利益率も8.5%から7.5%へ低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 180億円 | 184億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 39億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.8% | 21.5% |
| 営業利益 | 15億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 7.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が6億円(構成比25%)、支払手数料が5億円(同19%)を占めています。売上原価においては、外注費が89億円(売上原価比66%)、労務費が39億円(同28%)を占めており、外部リソースの活用比率が高い構造となっています。
■(3) セグメント収益
デジタルビジネスはコンサルティング等の受注拡大により大幅な増収となりました。SIビジネスは一部顧客向け案件の縮小により減収となりましたが、エンハンスビジネスは既存領域での派生開発案件の受注が進み増収を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| デジタルビジネス | 6億円 | 8億円 |
| SIビジネス | 67億円 | 62億円 |
| エンハンスビジネス | 108億円 | 113億円 |
| 連結(合計) | 180億円 | 184億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資および財務活動はマイナスとなっているため、本業で稼いだ現金を投資や借入返済・株主還元に充てている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 3億円 |
| 投資CF | -3億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | -7億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「顧客第一主義」「重点主義」「総員営業主義」を基本方針として掲げています。全ての判断基準を顧客にとっての価値とし、経営資源を最重要事項に集約すること、そして全社員が自立したビジネスパーソンとしてサービスを提供することを目指しています。顧客の競争力強化と情報社会の発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は「Communication & Mutual Respect」をミッション・ステートメントの一部とし、社員一人ひとりが多様性を尊重し合い、自ら考え行動することを重視しています。また、社員の健康を最重視した「ウェルビーイング経営」を推進し、働きがいのある職場づくりやエンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営ビジョン「VISION 2026」および第2次中期経営計画(2024〜2026年度)を推進しています。最終年度である2026年度に向けて、エンハンスビジネスを収益基盤としつつ、SIビジネスやデジタルビジネスを拡大し、売上高構成比を「6:3:1」とすることを目指しています。
- ROE:14%以上
- 連結営業利益率:10.5%
- 従業員一人当たり連結売上高:2,500万円
■(4) 成長戦略と重点施策
「デジタルビジネス」「SIビジネス」「エンハンスビジネス」の3つを軸に事業成長を目指しています。特に、SIer向け事業での協業推進やワンストップサービスの確立、プライム向け事業での受注拡大、および自社発の人的資本サービス等の企画ビジネス確立に取り組んでいます。これらを支えるため、品質強化、生産体制の拡充、協業推進、研究投資を重点施策として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本の充実」を経営課題とし、「量的充実」「質的充実」「意欲の向上」の3本柱で推進しています。採用チャネルの多様化による人材確保、若手リーダー育成やスキルアップ支援、新人事制度やウェルビーイング経営によるエンゲージメント向上に取り組んでいます。自立したビジネスパーソンの育成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 33.7歳 | 8.5年 | 5,259,516円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.8% |
| 男性育児休業取得率 | 90.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 73.9% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定取引先への依存
同社グループの販売実績において、野村総合研究所グループおよび富士通グループへの依存度が高くなっています(当期実績でそれぞれ約49%、約24%)。これらの主要顧客の受注動向や経営方針の変更等は、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、新規領域の獲得やエンドユーザーとの直接的な関係強化によりリスク分散を図っています。
■(2) プロジェクト管理リスク
システム開発において、不採算案件や赤字が見込まれるプロジェクトであっても技術蓄積等の目的で受託する場合があります。また、開発中の仕様変更や追加作業により収益性が低下するリスクや、品質不良による修補責任や損害賠償請求のリスクがあります。これに対し、システム開発会議でのレビュー徹底やモニタリング強化により管理を行っています。
■(3) 人材確保に関するリスク
IT業界における慢性的な技術者不足の中、計画通りの人材確保が困難な場合や人材流出が発生した場合、プロジェクト遂行や受注機会に影響を及ぼす可能性があります。同社はリファラル採用の導入やウェルビーイング向上施策などを通じて人材の確保・定着に努めていますが、競争激化による影響を受ける可能性があります。
■(4) 情報セキュリティリスク
顧客の機密情報や個人情報を取り扱う業務特性上、情報漏洩やサイバー攻撃によるリスクが存在します。万が一、情報の漏洩や不正アクセス等が発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の失墜により、業績に多大な影響を与える可能性があります。これに対し、情報セキュリティマネジメントシステムの強化や従業員教育を実施しています。



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