※本記事は、株式会社 平和堂 の有価証券報告書(第63期、自 2019年2月21日 至 2020年2月20日、2020年5月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 平和堂ってどんな会社?
滋賀県を地盤とする総合スーパーチェーンです。地域密着型の店舗運営と中国での事業展開が特徴です。
■(1) 会社概要
1957年に滋賀県彦根市で設立され、1990年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。1995年には中国湖南省に合弁会社を設立し、海外進出を果たしています。国内では、2009年に平和堂東海と合併するなど、M&Aや組織再編を通じて近畿・北陸・東海地方での事業基盤を拡大してきました。
連結従業員数は5,542名、単体では3,508名です。筆頭株主は会長の夏原平和氏、第2位は公益財団法人平和堂財団であり、創業家および関連団体が安定的に株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 夏原平和 | 9.01% |
| 公益財団法人平和堂財団 | 5.72% |
| 平和堂共栄会 | 5.44% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は平松正嗣氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 平松 正 嗣 | 代表取締役社長執行役員営業統括本部長 | ソニー、スクウェア(現スクウェア・エニックス)を経て2010年平和堂入社。営業統括本部長等を歴任し、2017年より現職。 |
| 夏 原 平 和 | 代表取締役会長執行役員 | 1968年平和堂入社。1989年代表取締役社長に就任。2017年より現職。 |
| 夏 原 行 平 | 取締役専務執行役員管理本部長兼中国室長 | 2001年平和堂入社。SM営業部長、店舗営業本部長、経営企画本部長を経て2020年より現職。 |
| 夏 原 陽 平 | 取締役常務執行役員商品本部長 | 2002年平和堂入社。営業推進室長、経営戦略室統括等を経て2020年より現職。 |
| 田 淵 寿 | 取締役常務執行役員開発本部長 | 1979年平和堂入社。SC事業部長、開発部長、商品本部長を経て2020年より現職。 |
| 福 嶋 繁 | 取締役上席執行役員店舗営業本部長 | 1983年平和堂入社。一般食品事業部長、食品統括等を経て2020年より現職。 |
| 小 杉 茂 樹 | 取締役上席執行役員SC事業部長 | 1981年平和堂入社。SC事業部長を経て2020年より現職。 |
| 竹 中 昭 敏 | 取締役(常勤監査等委員) | 2010年平和堂入社。財務部長を経て2018年より現職。 |
社外取締役は、田中浩子(立命館大学教授)、山川晋(税理士法人中央総研代表)、髙島志郎(弁護士法人淀屋橋・山上合同弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「小売事業」「小売周辺事業」「その他事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 小売事業
総合スーパーおよびスーパーマーケットの運営を行っており、一般消費者を対象に食料品、衣料品、住居関連品などを販売しています。また、書籍やCD・DVDの販売およびレンタル業も含まれます。
収益は消費者への商品販売代金です。運営は、総合スーパーを平和堂、エール、平和堂(中国)有限公司が、スーパーマーケットを丸善が担当しています。また、ダイレクト・ショップが書籍・レンタル事業を行っています。
■(2) 小売周辺事業
小売事業をサポートする業務を行っており、惣菜・米飯の製造加工、ビル清掃・警備、店舗および商業基盤施設の運営管理などを提供しています。
収益は、グループ会社やテナントからの業務受託料や賃貸料などが中心です。運営は、ベストーネ(食品加工)、ナショナルメンテナンス(ビルメンテナンス)、加賀コミュニティプラザ、舞鶴流通産業、福井南部商業開発、富山フューチャー開発などが担当しています。
■(3) その他事業
主に外食事業を展開しており、郊外型レストランや店舗内ファミリーレストランの運営を行っています。その他、ホテル業や不動産業も含まれます。
収益は、レストラン等の利用客からの飲食代金やホテルの宿泊料などです。運営は、ファイブスター(郊外型レストラン)、シー・オー・エム(郊外型レストラン)、ユーイング(店舗内レストラン・アミューズメント)、グランドデュークホテル(ホテル業)などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高(営業収益)は4,300億円台で横ばい傾向が続いています。一方、利益面では経常利益が第59期の167億円から第63期の114億円へと減少傾向にあり、利益率も低下しています。当期利益についても減少が見られ、厳しい経営環境が継続していることが読み取れます。
| 項目 | 2016年2月期 | 2017年2月期 | 2018年2月期 | 2019年2月期 | 2020年2月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,371億円 | 4,376億円 | 4,381億円 | 4,376億円 | 4,336億円 |
| 経常利益 | 167億円 | 156億円 | 148億円 | 145億円 | 114億円 |
| 利益率(%) | 3.8% | 3.6% | 3.4% | 3.3% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 96億円 | 92億円 | 94億円 | 86億円 | 61億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高および売上総利益はわずかに減少しました。一方で、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は前期比で大きく減少しており、利益率の低下を招いています。コストコントロールが課題となっている状況です。
| 項目 | 2019年2月期 | 2020年2月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,376億円 | 4,336億円 |
| 売上総利益 | 1,212億円 | 1,203億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.7% | 27.7% |
| 営業利益 | 136億円 | 105億円 |
| 営業利益率(%) | 3.1% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が599億円(構成比44%)、販売諸経費が227億円(同16%)を占めています。売上原価については、商品売上原価が大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の小売事業は売上が微減となり、人件費増や競合激化の影響で利益も減少しました。小売周辺事業は、施設の改装等により減収減益となりました。その他事業(外食等)は売上が横ばいでしたが、競合環境の厳しさから利益は微減となりました。
| 区分 | 売上(2019年2月期) | 売上(2020年2月期) | 利益(2019年2月期) | 利益(2020年2月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小売事業 | 4,163億円 | 4,127億円 | 133億円 | 120億円 | 2.9% |
| 小売周辺事業 | 61億円 | 57億円 | 19億円 | 2億円 | 3.2% |
| その他事業 | 153億円 | 153億円 | 4億円 | 4億円 | 2.6% |
| 調整額 | - | - | -11億円 | -12億円 | - |
| 連結(合計) | 4,376億円 | 4,336億円 | 145億円 | 114億円 | 2.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得たキャッシュと新たな借入等の資金調達を組み合わせて、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2019年2月期 | 2020年2月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 210億円 | 172億円 |
| 投資CF | -91億円 | -217億円 |
| 財務CF | -114億円 | 37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.9%で市場平均を大幅に下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客様満足度の高い会社」「社員満足度の高い会社の実現」「地域社会や環境との共生をはかる会社の実現」の3点を経営の基本方針としています。お客様目線での商品開発や売場づくり、社員の働きがい向上、環境保全や地域社会への貢献を通じ、持続的な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
「絶えずお客様の目線で考え、行動する」ことを基本姿勢としています。この考えを徹底するため、全従業員に重要ポイントをまとめた「平和堂マニュアル」を配布し、コンプライアンスや接客教育を行っています。また、「平和堂クリーンライン」を設置し、現場の声を迅速に吸い上げる風通しの良い組織風土の実現を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中長期的な経営戦略として、スーパーマーケット(フレンドマート)タイプを中心とした出店や統廃合、関連施設の充実を進めています。また、キャッシュ・フロー経営を重視した投資・財務戦略を推進することを掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
収益拡大に向け、エリア特性を重視した店づくりと個店の競争優位性の発揮に取り組みます。商品開発・管理レベルの向上に加え、発注精度の改善や物流システムの整備により生産性向上を図ります。また、顧客ロイヤリティ向上のため、HOPカードとIT技術を活用した「ONE TO ONEマーケティング」を推進していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「社員満足度の高い会社の実現」を掲げ、一人ひとりの社員の個性や創造性が発揮でき、生きがい・働きがいを感じる職場風土を目指しています。人材育成においては、経営方針を徹底するための社員集会を年2回実施するなど、グループ全体での意識統一を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2020年2月期 | 41.4歳 | 17.6年 | 5,302,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 異常気象・災害等
一般消費者を対象とする営業のため、冷夏・暖冬等の天候不順が経営成績に影響を与える可能性があります。また、大規模な地震や風水害等の自然災害が発生した場合、営業活動に著しい支障が生じ、財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制等
大規模小売店舗立地法や独占禁止法、食品の安全管理、環境・リサイクル等の法令を遵守していますが、万一違反が生じた場合、企業活動が制限される可能性があります。また、法令規制への対応コストが増加することで、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 個人情報の保護
小売業やレストラン業、HOPカード会員など多くの個人情報を保有しており、情報管理責任者の選任や従業員教育を徹底しています。しかし、万一個人情報の流出が発生した場合、社会的信用の低下を招き、経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業
中国湖南省を中心に海外事業を展開しています。相手国の政策変更や政治・経済・社会情勢の変化などが生じた場合、現地の事業運営に支障をきたし、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。



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