平和堂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 平和堂 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する平和堂は、スーパーマーケットなどの小売事業を中核に、小売周辺事業や外食等のその他事業を展開しています。直近の連結業績は、営業収益が4,560億円と前期比で増収を確保した一方、経常利益は146億円と微減益、親会社株主に帰属する当期純利益も減益となりました。


※本記事は、平和堂 の有価証券報告書(第69期、自 2025年2月21日 至 2026年2月20日、2026年5月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 平和堂ってどんな会社?


スーパーマーケットを中心とした小売事業と、惣菜製造やビル管理などの周辺事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1957年に滋賀県彦根市で設立され、1966年に食料品の販売を開始しました。1981年に株式上場を果たし、1995年には中国に合弁会社を設立して海外進出を行いました。近年は丸善やヤナゲン、エールなどを吸収合併し、事業の効率化とグループ再編を進めています。

現在の従業員数は連結で4,674名、単体で3,611名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は関連会社の夏原商事、第3位は取引先持株会の平和堂共栄会です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.40%
夏原商事 7.08%
平和堂共栄会 6.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは平松正嗣氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平松 正嗣 代表取締役社長執行役員CEO 1981年ソニー入社。スクウェア等を経て2010年平和堂入社。常務取締役経営企画本部長などを歴任し、2024年2月より現職。
夏原 行平 代表取締役副社長執行役員COO管理本部長 2001年平和堂入社。取締役店舗営業本部長、専務取締役管理本部長などを経て、2024年3月より現職。国内外の関連会社代表を兼任。
夏原 陽平 取締役専務執行役員営業統括本部長兼営業戦略本部長 2002年平和堂入社。取締役営業推進室長、常務取締役商品本部長などを経て、2024年2月より現職。平和観光開発代表取締役社長を兼任。
小杉 茂樹 取締役専務執行役員開発本部長 1981年平和堂入社。SC事業部長、取締役上席執行役員開発本部長などを経て、2024年2月より現職。富山フューチャー開発代表取締役社長を兼任。
平塚 善道 取締役上席執行役員店舗営業本部長 1988年平和堂入社。GMS営業部長、執行役員SM営業部長などを経て、2023年5月より現職。
本持 真二 取締役(常勤監査等委員) 1986年平和堂入社。教育人事部長、管理本部長付人権・人材担当部長などを経て、2022年5月より現職。


社外取締役は、上山信一(慶應義塾大学名誉教授)、行木陽子(中央大学商学部特任教授)、髙島志郎(弁護士法人淀屋橋・山上合同の弁護士)、木村惠子(木村惠子公認会計士事務所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「小売事業」「小売周辺事業」および「その他事業」を展開しています。

小売事業


総合スーパーや食品スーパーなどを運営し、食料品、衣料品、日用雑貨品などを一般消費者に提供しています。また、中国湖南省での百貨店運営や、国内での書籍販売、フィットネス事業なども展開し、地域に密着したサービスを提供しています。

主に商品販売代金として消費者から収益を得ています。事業の運営は同社のほか、中国で百貨店を展開する平和堂(中国)有限公司や、書籍・フィットネス事業を手掛けるダイレクト・ショップなどが行っています。

小売周辺事業


小売店舗の運営を支える各種サービスを展開しています。スーパーマーケットで販売する米飯・惣菜等の製造、精肉・鮮魚の加工のほか、ビル管理業務、店舗の賃貸、商業施設の運営管理、店舗駐車場の運営などを手掛けています。

グループ内の製造委託や業務委託、テナントからの賃貸料などが主な収益源です。運営は惣菜等を製造するベストーネ、ビル管理のナショナルメンテナンス、商業施設を管理する加賀コミュニティプラザや福井南部商業開発などが担当しています。

その他事業


外食事業や中国での不動産開発事業などを行っています。ファミリーレストランやファストフード店の運営を通じて飲食サービスを提供し、一般顧客から飲食代金を受け取っています。

運営は外食事業を担うファイブスターやシー・オー・エムが行っており、同社はこれらの企業に店舗用の建物を賃貸しています。また、中国では湖南平和物業発展有限公司が不動産の開発・販売やビルメンテナンス事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、経常利益は第66期に一時的に落ち込んだものの、その後は回復して安定した水準で推移しています。親会社株主に帰属する当期純利益も第67期を底にして回復傾向にあり、堅調な利益水準を維持しています。

項目 第65期 第66期 第67期 第68期 第69期
経常利益 170億円 131億円 145億円 146億円 146億円
当期利益(親会社所有者帰属) 100億円 82億円 55億円 88億円 95億円

(2) 損益計算書


同社の直近2期間の損益構成を分析すると、売上総利益は前期比で増加している一方で、営業利益は横ばいから微減となっています。これは、人件費や物流費などの各種コストの上昇が利益を圧迫していることが背景にあります。

項目 第68期 第69期
売上総利益 1,247億円 1,279億円
営業利益 134億円 133億円


販売費及び一般管理費のうち、給与手当などの給料が436億円(構成比35%)、店舗などの賃借料が132億円(同11%)、配送費が124億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力である小売事業が全体の大部分を占め、前期比で増収となっています。子育て世代のニーズ対応やドミナント戦略による出店拡大が奏功しています。また、小売周辺事業も堅調に推移していますが、その他事業は外食事業などの影響により微減収となりました。

区分 売上(第68期) 売上(第69期)
小売事業 4,213億円 4,323億円
小売周辺事業 66億円 69億円
その他 169億円 168億円
連結(合計) 4,449億円 4,560億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業の営業活動で得た利益から設備投資や借入金の返済等を自己資金で賄う「健全型」の傾向を示しています。新規出店や改装などの投資を継続しながらも、手堅い資金繰りを行っていることがわかります。

項目 第68期 第69期
営業CF 230億円 178億円
投資CF -146億円 -165億円
財務CF -152億円 -51億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念として「全従業員の物心両面の幸福を追求すると共にお客様と地域社会に貢献し続ける企業となる」というグループ憲章を掲げています。従業員が生きがい・働きがいを感じる職場風土を実現するとともに、生活を向上させる商品や売り場の充実を図り、環境保全と地域の健康を目指すまちづくりへの貢献を目指しています。

(2) 企業文化


絶えずお客様の目線で考え、行動することを基本とする文化が根付いています。健全な社会環境の中で多様な価値観が尊重され、誰もが住みやすく、活気のある地域社会と豊かな暮らしを実現することを大切にしており、地域のインフラとして生活全般に関わりながら、地域社会とともに課題解決に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中長期ビジョンである「地域密着ライフスタイル総合(創造)企業」の達成に向け、「第五次中期経営計画(2024年度〜2026年度)」を推進しています。2030年の定量目標として、以下の数値を掲げています。

* 営業収益:5,000億円以上
* 営業利益率:4.5%以上
* ROE:8%
* 女性管理職比率:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


小売事業のさらなる強化に向け、子育て世代のニーズ対応による顧客支持の獲得、ドミナント戦略をベースとしたHOP経済圏の拡大、生産性改善を含むコスト構造改革に注力しています。また、これらの施策を支える基盤として、セルフレジやアプリを活用したデジタル化(DX)の推進、サステナビリティ・ビジョンに基づくESG経営の推進に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「全従業員の物心両面の幸福」を経営理念の根幹に据え、人を付加価値の源泉である資本と捉えた人的資本戦略を推進しています。企業理念の浸透を土台とし、知識やスキルだけでなく人間的な成長を支援する人材育成を行うとともに、ライフステージに応じた働き方の選択や心理的安全性の確保を通じて、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第69期 43.0歳 18.9年 6,042,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 105.4%
男女賃金差異(全労働者) 60.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 74.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 103.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.49%)、定期健康診断受診率(100%)、二次検査受診率(90.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人事・労務に関するリスク


同社の中核であるスーパーマーケット事業は多数の従業員を抱える労働集約型産業です。少子高齢化による労働人口の減少や最低賃金の上昇に伴う人件費・採用コストの増大により、店舗の適正な人員配置が困難になるほか、売上に対する人件費率が上昇し、採算の悪化やサービス品質の低下につながる可能性があります。

(2) 法令・規制に関するリスク


大規模小売店舗立地法や都市計画法、建築基準法などの法改正により、新規出店や増改築の許認可取得に時間とコストを要し、事業計画の遅延や費用超過が生じるリスクがあります。また、各種法的規制の遵守不備や個人情報の漏洩事故が発生した場合、行政処分や損害賠償請求、ブランド価値の毀損を招く恐れがあります。

(3) 食品の安全性に関するリスク


生鮮食品から日配品まで幅広く食品を取り扱っているため、食中毒や異物混入、重大な衛生事故が発生するリスクがあります。また、食品表示に関する各種規制を受けており、不適切な表示が発覚した場合には、行政処分や訴訟問題に発展し、顧客からの信頼喪失や業績の悪化につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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