※本記事は、コーセル株式会社の有価証券報告書(第57期、自 2025年5月21日 至 2026年5月20日、2026年8月10日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コーセルってどんな会社?
直流安定化電源の製造および販売を主力事業とし、グローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1969年に電子部品販売等を目的に設立され、1971年に標準電源の製造販売を開始しました。1992年にコーセルに社名変更し、1999年に東京証券取引所市場第二部に上場、翌2000年に同市場第一部に指定されました。2005年のノイズフィルタ事業参入や2018年のスウェーデン電源メーカーの子会社化などで事業を拡大し、2024年にはLITE-ON TECHNOLOGY CORPORATIONと資本業務提携を締結しています。
現在の同社グループは、連結従業員数717名、単体従業員数466名の体制で事業を推進しています。筆頭株主は事業会社のLITE-ON TECHNOLOGY CORPORATION(光寶科技股份有限公司)で、第2位は創業者の飴久晴氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| LITE-ON TECHNOLOGY CORPORATION(光寶科技股份有限公司) | 19.99% |
| 飴久晴 | 9.66% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は斉藤盛雄氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 斉藤盛雄 | 代表取締役社長アジアエリア営業統括兼コーセルアジア社長 | 1982年同社入社。ユニット生産部長や無錫科索電子有限公司董事長などを経て、2013年に取締役に就任。常務取締役、生産統括やSCM統括などを歴任し、2022年より現職。 |
| 清澤聡 | 取締役TQM推進兼総務・人事労務担当 | 1983年同社入社。総務部長や東日本営業部長などを経て、2011年に取締役に就任。国内営業統括や営業統括、人事労務担当、TQM推進室長などを歴任し、2023年より現職。 |
| 安田勲 | 取締役海外営業統括兼LITE-ON連携推進担当 | 1985年同社入社。AS開発部長などを経て、2013年に取締役に就任。開発統括、営業統括、グローバル営業統括や欧米エリア事業統括責任者などを歴任し、2025年より現職。 |
| 真野達也 | 取締役品質保証担当兼新ビジネス推進担当兼無錫科索電子有限公司董事長 | 1995年同社入社。IPS開発部長などを経て、2016年に取締役に就任。開発・技術統括新ビジネス推進担当などを経て2020年品質保証担当。2023年無錫科索電子有限公司董事長就任。 |
| 朴木範博 | 取締役開発統括兼生産技術担当兼DX推進担当 | 2003年同社入社。生産技術部長や生産技術統括などを経て、2023年に取締役に就任。ベトナム事業担当や開発統括などを歴任し、2026年より現職。 |
| 廣川芳通 | 取締役国内営業統括 | 1996年同社入社。OS開発部長やUS開発部長、新製品開発一部長などを歴任し、2025年に取締役に就任し、現職。 |
| 徐建中 | 取締役 | 1992年LITE-ON TECHNOLOGY CORPORATION入社。パワーモジュールソリューションズ事業部長などを経て、2023年同社事業本部長。2025年同社取締役に就任。 |
| 萩野勝彦 | 取締役(常勤監査等委員) | 1986年同社入社。監査室長や監査室を経て、2025年に取締役に就任し、現職。 |
社外取締役は、日下部俊彰(ConecTAr合同会社代表社員)、横田響子(コラボラボ代表取締役)、渡辺絢(雨宮眞也法律事務所パートナー弁護士)、西川浩夫(西川法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本生産販売事業」、「北米販売事業」、「ヨーロッパ生産販売事業」、「アジア販売事業」、「中国生産事業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本生産販売事業
日本国内を主要拠点として、ユニット電源、オンボード電源およびノイズフィルタの開発、製造、販売を展開しています。汎用性のあるカタログ品を主軸とし、制御機器や半導体製造装置、通信機器、医療機器などの幅広い市場へ高品質な製品を供給しています。
運営は主にコーセルが担うほか、ベトナムにおいて電源に使用する部品であるトランスの製造を行うCOSEL VIETNAM CO.,LTD.が事業活動を支えています。
■(2) 北米販売事業
北米市場を対象として、ユニット電源、オンボード電源およびノイズフィルタの販売を展開しています。日本などで開発・製造された製品を現地の顧客ニーズに合わせて提案し、さまざまな産業機器向けに販売活動を行っています。
運営は米国に拠点を置く子会社のCOSEL USA INC.が行っており、現地セールスレップとの連携やプロモーション活動を通じて、販売網の拡大と収益の獲得を図っています。
■(3) ヨーロッパ生産販売事業
ヨーロッパ市場を中心に、ユニット電源やオンボード電源、ノイズフィルタの販売に加え、顧客仕様に合わせたカスタム品を含むPRBX製品の開発、製造、販売を展開しています。主に制御機器や医療機器、輸送関連市場へ製品を供給しています。
運営は、ドイツを拠点とするCOSEL EUROPE GmbHと、スウェーデンを主要拠点としてPRBX製品を扱うPowerbox International ABおよびその子会社が行っています。
■(4) アジア販売事業
香港および中国の上海を拠点として、アジア市場向けにユニット電源、オンボード電源およびノイズフィルタの販売を展開しています。汎用カタログ品を中心に、成長著しい現地市場の制御機器や半導体関連などの顧客へ製品を提供しています。
運営は、香港に拠点を置くCOSEL ASIA LTD.と、中国に拠点を置く科索(上海)電子有限公司が行っており、ウェブマーケティング等を活用した新規開拓で収益を獲得しています。
■(5) 中国生産事業
中国の無錫を生産拠点として、主にユニット電源の製造を行っています。グローバルな供給体制の一翼を担い、製造された製品は上海の拠点を経由して各販売事業会社へ輸出され、世界中の市場へと供給される仕組みとなっています。
運営は、中国江蘇省において製造を担う無錫科索電子有限公司と、中国で生産された製品の輸出業務を担当する上海科素商貿有限公司が連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、数年前までは半導体需要の拡大などを背景に大幅な増収増益を記録し、利益率も大きく向上していました。しかし直近2期間においては、半導体製造装置市場やFA市場における在庫調整の長期化、中国景気の低迷などの影響を受け、売上高・利益ともに減少傾向に転じています。さらに当期は、子会社の株式譲渡に伴う関係会社整理損の計上等により、最終赤字となっています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 281億円 | 353億円 | 414億円 | 271億円 | 250億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 53億円 | 79億円 | 7億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 10.6% | 15.0% | 18.9% | 2.7% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 24億円 | 41億円 | 8億円 | -34億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、売上高の減少に加えて、工場操業度の低下や部品・原材料価格の上昇、人件費等の固定費負担の増加により、売上総利益および営業利益が圧迫されています。継続的なコスト削減や高付加価値製品の市場投入を進めているものの、当期は営業損失を計上する結果となりました。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 271億円 | 250億円 |
| 売上総利益 | 72億円 | 60億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.6% | 24.1% |
| 営業利益 | 6億円 | -7億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | -2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が21億円(構成比32%)と最も大きく、次いで荷造運搬費が3億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である日本生産販売事業は、半導体製造装置関連などで在庫消化が進むものの売上寄与には至らず、大幅な減収となりました。一方、北米販売事業は期中以降の受注回復により増収を確保し、ヨーロッパやアジアの販売事業も大口案件の受注増などによりわずかながら増収となっています。地域ごとの市場動向が業績に影響を与えています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| 日本生産販売事業 | 165億円 | 140億円 |
| 北米販売事業 | 16億円 | 19億円 |
| ヨーロッパ生産販売事業 | 63億円 | 64億円 |
| アジア販売事業 | 27億円 | 27億円 |
| 連結(合計) | 271億円 | 250億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.1%で市場平均を上回っています。
キャッシュ・フローの状況を見ると、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 39億円 | 30億円 |
| 投資CF | -16億円 | -14億円 |
| 財務CF | 92億円 | -24億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「品質至上を核に社会の信頼に応える」を経営理念として掲げています。直流安定化電源装置の設計開発、生産、販売を通して、ますます高度化するエレクトロニクス社会の進化に寄与し、「持続可能な社会の実現」に貢献する企業であることを社会的意義として、事業活動を推進しています。
■(2) 企業文化
同社は、誠意ある企業文化の基盤醸成とともに、グローバル化の進展や価値観の多様化を受けて「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)」を重視しています。「誰もが安全安心で、いきいき・ワクワク・やりがいをもって働ける会社」を目指し、多様な社員の能力を引き出す組織風土づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、第11次中期経営計画(2026年度〜2028年度)において、「収益基盤の再構築」を最重要課題と位置付けています。最終年度である2028年度には以下の数値目標の達成を目指しています。
・連結売上高 400億円
・連結営業利益 34億円
・連結営業利益率 8.5%
・連結ROE 5.2%
■(4) 成長戦略と重点施策
目標達成のため、標準電源事業で培った技術力を活かし、半導体製造装置や再生可能エネルギーなどの成長市場への資源配分を加速させる「事業ポートフォリオの再編」を進めています。また、提携先との共同開発ブランドによる海外市場の拡大や、製品価格の適正化およびDX推進による「収益構造改革」を重点施策として実行しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長の実現に向け、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。技術力と品質を支える専門性を高め続ける人材や、自ら挑戦する人材の育成を人的資本戦略の中核に据え、次世代リーダーの育成や専門性の向上を目的とした階層別教育など、人材育成体制の充実と働きやすい環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 41.3歳 | 17.7年 | 5,649,941円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.6% |
| 男性育児休業取得率 | 107.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 56.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍従業員数(13人)、自己申告サーベイ「この会社でずっと働きたい」「よく感じる・時々感じる」項目の比率(61.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境および地政学リスクに関する影響
同社グループはグローバルに事業展開しており、世界的なインフレの長期化や中国経済の成長鈍化、さらには米中関係や中東情勢の緊張といった地政学リスクにより、部品の調達難や顧客の設備投資計画見直しなどが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サプライチェーンおよび災害リスク
製品を構成する部品材料の多くをグローバルに調達しているため、気候変動に伴う大規模な自然災害や取引先での火災等によりサプライチェーンが寸断された場合、生産稼働の減少を通じて経営成績や財務状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 価格競争および棚卸資産のリスク
電源市場では技術進歩や調達部品の低価格化により価格競争が激化しています。また、一部原材料の入手難対応等で在庫を高水準で保有しており、市場動向の変化で収益性が低下した場合、棚卸資産の評価損が発生して業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報システムおよび人材確保のリスク
DX推進や事業活動において基幹システムに依存しており、サイバー攻撃等によるシステム障害が事業停滞を招く恐れがあります。さらに、少子高齢化による専門人材の確保が計画通りに進まない場合、研究開発力や生産性の低下に繋がる可能性があります。



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