コーセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーセル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のコーセルは、産業機器向け直流安定化電源の専業メーカーです。半導体製造装置等の在庫調整長期化により、当期は売上高271億円、営業利益6億円と大幅な減収減益となり、最終赤字を計上しました。LITE-ON社との資本業務提携により、グローバル展開と収益性改善を目指しています。


※本記事は、コーセル株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年5月21日 至 2025年5月20日、2025年8月7日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コーセルってどんな会社?


直流安定化電源装置の専業メーカーとして、産業機器市場を中心に高信頼性の電源製品をグローバルに提供しています。

(1) 会社概要


1969年にエルコーとして設立され、1971年に標準電源第1号の製造販売を開始しました。1992年にコーセルへ商号変更し、2000年には東証一部(現プライム)へ指定されています。2024年4月に台湾のLITE-ON TECHNOLOGY CORPORATIONと資本業務提携契約を締結し、グローバル体制を強化しています。

連結従業員数は729名、単体では467名体制です。筆頭株主は資本業務提携先のLITE-ON TECHNOLOGY CORPORATIONで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
LITE-ON TECHNOLOGY CORPORATION 19.99%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.85%
飴 久晴 9.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は斉藤盛雄氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
斉藤 盛雄 代表取締役社長 1982年入社。生産部門やグローバル調達・生産担当を歴任し、生産統括やSCM統括を経て、2022年8月より現職。
清澤 聡 取締役TQM推進 兼総務・人事労務担当 1983年入社。総務部長、国内営業統括などを経て、2023年5月よりTQM推進兼総務・人事労務担当として現職。
安田 勲 取締役グローバル営業統括 兼LITE-ON連携推進担当 1985年入社。開発統括や営業統括を歴任し、2023年8月にグローバル営業統括、2024年6月よりLITE-ON連携推進担当を兼務。
真野 達也 取締役品質保証担当 兼新ビジネス推進担当 兼無錫科索電子有限公司董事長 1995年入社。要素技術開発部長などを経て、2020年5月より品質保証担当兼新ビジネス推進担当。2023年4月より無錫科索電子有限公司董事長を兼務。
朴木 範博 取締役生産技術担当 兼IT戦略担当 兼ベトナム事業担当 兼生産技術部長 2003年入社。生産技術部長を経て、2023年8月より取締役生産技術担当兼ベトナム事業担当として現職。IT戦略担当も兼務。
廣川 芳通 取締役開発統括 兼新製品開発一部長 1996年入社。OS開発部長などを経て、2022年11月より開発統括兼新製品開発一部長。2025年8月より現職。
徐 建中 取締役 1992年LITE-ON TECHNOLOGY CORPORATION入社。同社事業本部長を務め、2025年8月より現職。
萩野 勝彦 取締役(常勤監査等委員) 1986年入社。監査室長を経て、2025年8月より現職。


社外取締役は、日下部俊彰(ConecTAr合同会社代表社員)、横田響子(株式会社コラボラボ代表取締役)、渡辺絢(雨宮眞也法律事務所パートナー弁護士)、西川浩夫(西川法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本生産販売事業」、「北米販売事業」、「ヨーロッパ生産販売事業」、「アジア販売事業」、「中国生産事業」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

**日本生産販売事業**
国内市場向けにユニット電源、オンボード電源、ノイズフィルタの製造・販売を行っています。また、ベトナムの子会社で電源用部品(トランス)の製造も行っています。主要顧客は国内の産業機器メーカー等です。
収益は、顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主にコーセルおよびCOSEL VIETNAM CO.,LTD.が行っています。

**北米販売事業**
米国およびカナダ市場において、ユニット電源、オンボード電源、ノイズフィルタの販売を行っています。
収益は、北米地域の顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主にCOSEL USA INC.が行っています。

**ヨーロッパ生産販売事業**
欧州市場において、同社製品およびPRBX製品の製造・販売を行っています。ドイツ、スウェーデン等を拠点とし、鉄道・航空等の輸送関連市場へも供給しています。
収益は、欧州地域の顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主にCOSEL EUROPE GmbHおよびPowerbox International ABが行っています。

**アジア販売事業**
アジア市場(中国、香港等)において、ユニット電源、オンボード電源、ノイズフィルタの販売を行っています。
収益は、アジア地域の顧客への製品販売による対価を得ています。運営は主にCOSEL ASIA LTD.および科索(上海)電子有限公司が行っています。

**中国生産事業**
中国においてユニット電源の製造を行っています。主にグループ内の販売会社へ製品を供給する生産拠点としての役割を担っています。
収益は、グループ内販売会社への製品供給(輸出)による対価を得ています。運営は主に無錫科索電子有限公司および上海科素商貿有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2024年5月期までは売上高・利益ともに増加傾向にあり、特に2024年5月期は大幅な増収増益を達成しました。しかし、直近の2025年5月期は一転して大幅な減収減益となり、当期純損益は赤字に転落しました。利益率も大きく低下しています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 270億円 281億円 353億円 414億円 271億円
経常利益 34億円 30億円 53億円 79億円 7億円
利益率(%) 12.7% 10.6% 15.0% 18.9% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 19億円 24億円 41億円 8億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、当期は前期に対し売上高が約35%減少し、売上総利益率は約6ポイント低下しました。売上高の減少幅が大きく、営業利益は前期の約10分の1以下の水準まで落ち込んでいます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 414億円 271億円
売上総利益 137億円 72億円
売上総利益率(%) 33.2% 26.6%
営業利益 69億円 6億円
営業利益率(%) 16.7% 2.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料が20億円(構成比30%)、荷造運搬費が4億円(同6%)を占めています。売上原価については、変動費比率と固定費比率の上昇により原価率が悪化しました。

(3) セグメント収益


半導体製造装置業界等の在庫調整長期化により、全地域で売上が減少しました。特に主力の日本生産販売事業と北米販売事業での減少が顕著です。中国生産事業はグループ内取引のため外部売上はありません。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期)
日本生産販売事業 260億円 165億円
北米販売事業 38億円 16億円
ヨーロッパ生産販売事業 79億円 63億円
アジア販売事業 37億円 27億円
中国生産事業 - -
連結(合計) 414億円 271億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 55億円 39億円
投資CF -18億円 -16億円
財務CF -16億円 92億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は93.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「品質至上を核に社会の信頼に応える」を経営理念として掲げています。直流安定化電源装置の設計開発・生産・販売を通じ、高度化するエレクトロニクス社会の進化に寄与し、「持続可能な社会の実現」に貢献する企業であることを目指しています。

(2) 企業文化


創業以来受け継がれてきた文化と価値観を「COSELMind」として定義し、浸透を図っています。誠意ある企業文化の醸成とともに、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を重視し、誰もが安全安心で、いきいきとやりがいを持って働ける会社を目指しています。

(3) 経営計画・目標


第10次中期経営計画において、継続的かつ安定的な高利益体質の実現を目指し、以下の数値目標を掲げています。
* 連結営業利益率:15%以上
* 連結ROE(自己資本利益率):10%

(4) 成長戦略と重点施策


競争優位性の高いビジネスモデルへの変革を目指し、LITE-ON社との資本業務提携によるシナジー創出を新たな重点戦略としています。具体的には以下の施策を推進します。

* LITE-ONとの連携による調達コストダウン、販路拡大、共同開発の推進
* 新製品の拡販に向けたソリューション営業の強化
* 後継モデルへの切り替え促進と新規案件獲得への注力
* 欧州ビジネスの強化(PRBX、C-EU)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材の能力を引き出し活かすため、「採用人材の多様化と女性活躍推進」「役割明確化による公正な処遇」を柱としています。グローバル人材の採用強化や女性経営職の登用、次世代リーダー育成、専門性向上などの教育体制充実に注力し、エンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 40.8歳 17.3年 6,225,490円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.6%
男性育児休業取得率 109.1%
男女賃金差異(全労働者) 65.4%
男女賃金差異(正規) 71.3%
男女賃金差異(非正規) 58.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍在職者数(11人)、自己申告サーベイ「充実感」比率(27.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境に関するリスク

グローバルに事業展開しているため、インフレ長期化や欧米の政策金利上昇、中国経済の鈍化、為替変動等の影響を受けます。これらの経済環境の変化により、経営成績や財政状態に顕著な影響が及ぶ可能性があります。

(2) 感染症の拡大リスク

国内外で事業を展開しており、新たな感染症の拡大や予期せぬ再拡大が発生した場合、従業員や拠点の事業活動が阻害される可能性があります。これにより、生産・販売活動に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 製品の品質に関するリスク

ISO9001に基づく品質管理を行っていますが、万が一、製品やサービスに起因する事故や市場回収、顧客の生産停止等が生じた場合、多額の回収コストや賠償費用の発生、信用の低下により、経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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