#記事タイトル:ウェザーニューズ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ウェザーニューズ の有価証券報告書(第39期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウェザーニューズってどんな会社?
世界約50カ国でサービスを展開する気象情報会社です。海運・航空向けのBtoB事業と、アプリを通じたBtoS事業を両輪としています。
■(1) 会社概要
1986年に設立され、1993年には米国のOCEANROUTES INC.を買収してグローバル展開を加速させました。2000年にナスダック・ジャパンへ上場し、2003年には東証一部へ指定替えを行っています。2009年にはスマートフォン用アプリの提供を開始し、2013年には超小型衛星を打ち上げるなど技術革新を推進。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
2025年5月31日現在、連結従業員数は1,120名、単体では988名です。筆頭株主および第2位株主は、気象文化の創造を目的とする財団法人と関連事業会社であり、両者で発行済株式の約3割を保有しています。第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般財団法人WNI気象文化創造センター | 15.34% |
| ダブリュー・エヌ・アイ・インスティテュート | 15.34% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.22% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名(社外監査役含む)の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は石橋知博氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 草開 千仁 | 代表取締役会長 | 1987年入社。航空事業部長などを経て2006年より社長、2016年よりCEOを務める。2024年6月より現職。 |
| 石橋 知博 | 代表取締役社長 | 1998年日本HP入社。2000年同社入社。モバイル事業や米国販売責任者などを歴任し、2024年6月より現職(最高経営責任者)。 |
| 吉武 正憲 | 取締役 | 1996年入社。管理部門を歴任し、最高財務責任者(CFO)として財務戦略を統括。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、村木茂(元東京ガス副社長)、秋元征紘(ワイ・エイ・パートナーズ代表取締役)、林いづみ(弁護士・桜坂法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「Sea Domain」「Sky Domain」「Land Domain」「Internet Domain」の4つの事業領域を展開しています。
■(1) Sea Domain
世界の海運業界に対し、安全運航や燃料消費の効率化を支援するサービスを提供しています。大型船舶向けには最適航路推奨サービス(OSR)などを展開し、港湾・海上作業向けには波や風などの詳細な気象・海象情報による支援を行っています。
収益は、海運会社や船舶管理会社等の顧客から、船隻数や航海日数に応じたサービス利用料を受け取るストック型ビジネスが中心です。運営は主にウェザーニューズおよび各国の連結子会社が行っています。
■(2) Sky Domain
航空業界に対し、安全で効率的な運航を支援する気象サービスを提供しています。エアライン向けにはフライトプラン作成支援や飛行中の気象リスク監視を行い、ヘリコプター向けにはドクターヘリ等の緊急運航判断を支援しています。
収益は、航空会社や運航事業者等の顧客から、契約に基づく継続的なサービス利用料を受け取ります。運営は主にウェザーニューズが行っています。
■(3) Land Domain
道路、鉄道、流通、エネルギーなどの陸上産業に対し、気象リスクへの対策情報を提供しています。高速道路や鉄道の安全運行支援、電力需要予測、店舗の販売促進支援など、業界ごとの課題解決型サービスを展開しています。
収益は、インフラ企業や自治体等の顧客から、月額固定のサービス利用料を受け取るストック型ビジネスが主体です。運営は主にウェザーニューズが行っています。
■(4) Internet Domain
個人向けに、アプリや動画番組を通じて気象情報を配信しています。サポーター(利用者)からの投稿データを活用した高精度な予報や、防災・減災情報を24時間体制で提供しています。
収益は、アプリ「ウェザーニュース」の利用者からのサブスクリプション収入や、メディアプラットフォームを通じた広告収入等からなります。運営は主にウェザーニューズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに増加傾向にあります。特に売上高は毎期着実に伸長しており、当期は235億円に達しました。利益面でも、経常利益率は15%前後から当期は19.0%へと向上しており、収益性の改善が見られます。当期利益も30億円を超え、過去最高益水準となっています。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 197億円 | 211億円 | 222億円 | 235億円 |
| 経常利益 | 26億円 | 31億円 | 33億円 | 33億円 | 45億円 |
| 利益率(%) | 13.6% | 15.6% | 15.6% | 15.0% | 19.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 23億円 | 23億円 | 24億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は前年の42.3%から当期は46.3%へと改善しました。営業利益についても大幅な増益となっており、営業利益率は19.2%と高い水準を記録しています。AI活用による運営効率化や外注費の抑制などが寄与しました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 222億円 | 235億円 |
| 売上総利益 | 94億円 | 109億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.3% | 46.3% |
| 営業利益 | 33億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 14.7% | 19.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が20億円(構成比32%)、広告宣伝費が17億円(同26%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全ての事業領域で増収となりました。Sea Domainは為替影響やアップセルにより伸長し、Sky Domainは航空市場の回復を取り込みました。Land DomainはSaaS型サービスの拡販が寄与し、Internet Domainは広告投資やコンテンツ強化によりサブスクリプション・広告収入が増加しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) |
|---|---|---|
| Sea Domain | 58億円 | 61億円 |
| Sky Domain | 13億円 | 14億円 |
| Land Domain | 70億円 | 75億円 |
| Internet Domain | 82億円 | 85億円 |
| 連結(合計) | 222億円 | 235億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 34億円 | 44億円 |
| 投資CF | -4億円 | -3億円 |
| 財務CF | -13億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢を掲げ、気象・環境に関する社会的リスクに対応する「気象コンテンツ・メーカー」になることを基本コンセプトとしています。「いざというときに人の役に立ちたい」という理念のもと、サポーター(顧客・利用者)と共に価値を創造し、持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「Transparency(透明性)」を理念とし、情報は社内外にオープンにする「情報民主主義」の文化を持っています。また、常に変化する市場環境に対応するため「AAC(Aggressively Adaptable Company)」を志向し、社員一人ひとりが起業家精神を持つことを重視。「自立なきところに自律なし」を掲げ、自律分散型の組織運営を行っています。
■(3) 経営計画・目標
売上高、営業利益率、ROEを主要経営指標とし、ストック型ビジネスの拡大による成長を目指しています。2024年5月期からの3か年の中期経営計画を策定しており、最終年度となる2026年5月期の数値目標を掲げています。
* 売上高:250億円
* 営業利益:50億円
* 経常利益:50億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:35億円
■(4) 成長戦略と重点施策
各ドメインでの成長に加え、SaaS型ビジネスの拡大やグローバル展開を推進します。Sea Domainでは新プロダクト展開、Sky Domainではアジア市場での拡販、Land DomainではWxTechサービスの強化、Internet Domainではメディアとしての地位確立を図ります。また、AIやデータ・クラウドへの投資も強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Weather HR」をコンセプトに、人と組織が柔軟に変化・成長し続けることを目指しています。社員の自律的なキャリア形成を支援する「Pit in Career」や、個人の志と会社の成長を連動させる「My Dream My Job」制度などを導入。また、多様な人材が活躍できるよう、ハイブリッドワークや特別有給休暇の拡充など環境整備にも投資しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 40.0歳 | 11.9年 | 6,413,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.1% |
| 男性育児休業取得率 | 82.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 78.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍の人数割合(26.7%)、採用者における中途採用者の割合(49.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動リスク
気候変動に伴う極端気象の深刻化は、同社の事業機会となる一方で、リスクの変化に適切に対応できない場合、顧客の信頼を失う可能性があります。また、ESGへの取り組みが不十分と判断された場合の企業価値低下リスクも認識しており、TCFD提言への賛同などを通じて対応を進めています。
■(2) 自然災害による事業継続リスク
巨大地震や台風などの自然災害により、本社や主要拠点が被災し、オペレーション機能が麻痺するリスクがあります。社会インフラに密接したサービスを提供しているため、BCP(事業継続計画)を策定し、遠隔運営体制の構築や訓練を実施していますが、影響を完全に排除できるものではありません。
■(3) 情報セキュリティ
事業を通じて保有する個人情報や機密情報の漏洩、サイバー攻撃によるシステム停止等のリスクがあります。これらが発生した場合、業務効率の低下や損害賠償、社会的信用の失墜を招く可能性があります。同社は情報管理体制の強化や教育を行っていますが、不測の事態による影響の可能性は残ります。



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