※本記事は、タマホーム株式会社 の有価証券報告書(第27期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. タマホームってどんな会社?
高品質・低価格な注文住宅「大安心の家」を主力に、全国で住宅・不動産事業を展開するハウスメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1998年、福岡県筑後市にて注文住宅建設会社として設立されました。低価格かつ高品質な住宅提供を掲げて急成長し、2013年3月に東証一部および福証本則市場へ上場を果たしました。2015年にはメガソーラー発電所の商業運転を開始しエネルギー事業へ参入。2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場へ移行しています。
2025年5月31日現在の従業員数は、連結で3,272名、単体で3,092名です。大株主構成は、筆頭株主が資産管理会社と見られる株式会社TAMAX、第2位が資産管理業務を行う信託銀行、第3位が同社代表取締役会長(創業者)の玉木康裕氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| TAMAX | 39.29% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.15% |
| 玉木 康裕 | 3.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は玉木伸弥氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は2名で、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 玉木 伸弥 | 代表取締役社長 | 2001年同社入社。広告宣伝部長、工務本部次長などを経て、2014年代表取締役副社長兼COO。2018年より現職。 |
| 玉木 康裕 | 代表取締役会長 | 1973年筑後興産入社。1998年同社設立に伴い代表取締役社長に就任。2011年代表取締役会長兼社長を経て、2018年より現職。 |
| 加賀山 健次 | 専務取締役事業統括兼リフォーム担当 | 2008年同社入社。注文住宅事業部長、営業部長、リフォーム部長などを歴任。2024年専務取締役事業統括に就任し、同年12月より現職。 |
| 山元 啓介 | 取締役工務本部長兼工務資材部長 | 1988年大和ハウス工業入社。2003年同社入社。資材部長、工務部長などを経て、2024年より現職。 |
| 米田 彰宏 | 取締役管理本部長兼総務部長 | 2005年同社入社。総務部総務課長、総務部長、執行役員総務部長を経て、2024年より現職。 |
| 小野 達郎 | 取締役人事本部長兼人事部長 | 2006年同社入社。人づくり部課長、人事部長、執行役員人事部長を経て、2024年より現職。 |
| 西堀 祐介 | 取締役戦略本部長兼経理部長 | 2006年同社入社。経理部課長、経理部長、執行役員経理部長を経て、2024年より現職。 |
| 竹下 俊一 | 取締役 | 1984年積水ハウス入社。2003年同社入社。工務本部長、購買部長、常務取締役などを経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、金重凱之(元国際危機管理機構代表取締役社長)、近本晃喜(近本税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「住宅事業」「不動産事業」「金融事業」「エネルギー事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 住宅事業
注文住宅の建築請負を中心に、リフォーム工事、外構工事等の紹介、設計支援事業などを展開しています。「大安心の家」シリーズを主力に、ロードサイド型独立店舗や住宅展示場を通じて全国で営業を行っています。
収益は、顧客からの工事請負代金やリフォーム工事代金、提携業者への紹介手数料などから得ています。運営は主にタマホームが行っているほか、ベトナムの子会社も事業を担当しています。
■(2) 不動産事業
分譲宅地や戸建分譲の販売、マンションの企画・開発・販売、オフィスビルのサブリース(転貸)事業、オフィス区分所有権販売事業、不動産仲介などを行っています。戸建分譲では10区画以下の小規模案件を強化しています。
収益は、顧客への不動産販売代金、テナントからの賃料収入などから得ています。運営はタマホームが行っています。
■(3) 金融事業
火災保険や生命保険などの保険代理業務および、注文住宅購入者向けのつなぎ融資の取次業務を行っています。
収益は、保険会社からの手数料や融資取次による手数料などから得ています。運営はタマホームおよびタマファイナンスが行っています。
■(4) エネルギー事業
メガソーラー発電施設の運営および経営を行っています。福岡県大牟田市などで大規模太陽光発電所を稼働させています。
収益は、発電した電力の売電収入から得ています。運営は九州新エネルギー機構およびタマホーム有明メガソーラー合同会社が行っています。
■(5) その他事業
広告代理業、家具販売・インテリア工事請負、地盤保証、農業、海外投資、車両リースなど多岐にわたる事業を展開しています。
収益は、広告制作費、家具販売代金、地盤調査・保証料、農産物販売代金などから得ています。運営はタマ・アド、タマリビング、在住ビジネス、タマアグリ、THオートリースなどが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2024年5月期までは売上高2400億円〜2500億円台で推移し、利益面でも安定していましたが、2025年5月期に大きく落ち込んでいます。特に利益面の減少が顕著で、利益率は1%台まで低下しました。
| 項目 | 2021年5月期 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,181億円 | 2,408億円 | 2,561億円 | 2,477億円 | 2,008億円 |
| 経常利益 | 111億円 | 123億円 | 135億円 | 129億円 | 38億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 5.1% | 5.3% | 5.2% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 68億円 | 76億円 | 79億円 | 82億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく縮小しています。原価率は前期の76.2%から当期は74.6%へと改善傾向にありますが、販管費の負担が重くなり、営業利益率は前期の5.1%から2.0%へと低下しました。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,477億円 | 2,008億円 |
| 売上総利益 | 589億円 | 511億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 25.4% |
| 営業利益 | 126億円 | 41億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が139億円(構成比30%)、従業員給料手当が135億円(同29%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが主な構成要素です。
■(3) セグメント収益
主力の住宅事業において、注文住宅の受注・引渡棟数が減少したことが響き、大幅な減収減益となりました。不動産事業も減収減益となっています。一方、エネルギー事業は増収増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年5月期) | 売上(2025年5月期) | 利益(2024年5月期) | 利益(2025年5月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 住宅事業 | 1,851億円 | 1,461億円 | 78億円 | 3億円 | 0.2% |
| 不動産事業 | 548億円 | 478億円 | 33億円 | 24億円 | 5.1% |
| 金融事業 | 10億円 | 9億円 | 2億円 | 2億円 | 16.7% |
| エネルギー事業 | 8億円 | 8億円 | 2億円 | 3億円 | 31.9% |
| その他 | 60億円 | 51億円 | 10億円 | 9億円 | 17.8% |
| 調整額 | 181億円 | 169億円 | 1億円 | 0億円 | 0.2% |
| 連結(合計) | 2,477億円 | 2,008億円 | 126億円 | 41億円 | 2.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**積極型**:営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持していますが、前期と比較して大幅に縮小しています。一方で財務活動によるキャッシュ・フローがプラスに転じており、借入による資金調達を行っていることがうかがえます。投資活動は継続して行っています。
| 項目 | 2024年5月期 | 2025年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 83億円 | 22億円 |
| 投資CF | -20億円 | -17億円 |
| 財務CF | -146億円 | 44億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「より良いものをより安く 提供することにより 社会に奉仕する」という経営方針を掲げています。この理念のもと、創業以来、高品質な住宅を適正価格で提供することに注力し、住まいづくりを通じて社会貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社はCSR基本方針として「5つのHappy」(Happy Life、Happy Home、Happy Earth、Happy Staff、Happy Town)を掲げています。お客様だけでなく、従業員や地域社会、地球環境に対しても幸福を追求する姿勢を重視しており、特に従業員が心身ともに健康であることが事業の基盤であると考えています。
■(3) 経営計画・目標
2022年5月期より5カ年の中期経営計画「タマステップ2026」を推進しています。最終年度となる2026年5月期においては、以下の目標数値を設定しています。
* 受注棟数:10,500棟(修正予想)
* 販売棟数:8,700棟(修正予想)
* 売上高:2,350億円(修正予想)
* 営業利益:93億円(修正予想)
* 営業利益率:4.0%(修正予想)
* 当期純利益:60億円(修正予想)
■(4) 成長戦略と重点施策
「新築住宅着工棟数No.1」を目指し、注文住宅、戸建分譲、リフォーム、不動産の4つの事業を柱として成長を図る戦略です。地域特性に合わせた販売戦略や、高付加価値商品の展開によるシェア拡大、非住宅事業の収益性向上に注力します。
* 注文住宅事業:都道府県別シェアNo.1を目指す。
* 戸建分譲事業:販売棟数1,700棟を目指しシェア拡大を図る。
* リフォーム事業:売上高120億円を目指し事業成長を図る。
* 不動産事業:売上高500億円を目指し事業成長を図る。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「タマステップ2026」の実行に向け、社員を最も大切な財産「人財」と位置づけ、教育・研修制度の充実を図っています。また、従業員の健康が事業の基盤であるとの考えから、休日数の拡充(年間130日へ)や多様な休暇制度の導入など、ワークライフバランスの実現と働きやすい環境整備に積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月期 | 41.2歳 | 8.6年 | 6,998,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.3% |
| 男性育児休業取得率 | 26.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 52.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休業からの復職率(89.9%)、女性従業員比率(26.1%)、再雇用人財数(83人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業績の季節性に関するリスク
戸建住宅の建築請負を主事業としているため、引渡しが3月から5月に集中し、第4四半期に収益が偏重する傾向があります。自然災害等でこの時期の引渡しに支障が生じると、通期の業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策として着工時期の平準化を図っています。
■(2) 個人消費動向等の住宅受注への影響
主な顧客が個人の一次取得者であるため、景気、金利、税制などの変化による個人消費動向の影響を受けやすい特性があります。住宅業界に不利な変化が生じた場合、受注・売上の減少につながる可能性があります。市場環境の変化に対応した商品開発等で影響低減に努めています。
■(3) 資材価格・人件費等の高騰
木造注文住宅を扱っているため、木材等の主要部材の価格高騰や、労働力不足による工事原価の上昇リスクがあります。これらは利益を圧迫する要因となり得ます。原価変動のモニタリングや事前の調達対応により、悪影響を最小限に抑える取り組みを行っています。
■(4) 不動産等の保有資産の評価損
不動産事業における用地やオフィスビルの仕入において、価格変動や開発計画の遅れ、土壌汚染等の瑕疵により事業計画に支障が生じ、評価損が発生する可能性があります。また、保有する固定資産等の減損リスクもあります。十分な調査に基づいた仕入を行っています。



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