※本記事は、霞ヶ関キャピタル株式会社 の有価証券報告書(第14期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 霞ヶ関キャピタルってどんな会社?
東日本大震災の被災SC(ショッピングセンター)再生事業から出発し、現在はホテル・物流・ヘルスケア等の開発型不動産コンサルティングを展開する成長企業です。
■(1) 会社概要
2011年に被災したSC再生を目的に合同会社フォルテとして設立し、2014年に不動産コンサルティング事業を開始しました。2015年に株式会社へ改組し現社名へ変更、2018年に東証マザーズへ上場しました。その後、ホテル・物流施設開発や海外進出を加速させ、2023年には東証プライム市場へ区分変更しています。
連結従業員数は727名(単体349名)です。筆頭株主は創業時からの取締役会長である小川潤之氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には代表取締役社長の河本幸士郎氏が名を連ねており、経営陣が主要株主として強いコミットメントを持っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小川 潤之 | 23.28% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.47% |
| 河本 幸士郎 | 8.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は河本幸士郎氏が務めています。社外取締役比率は約64.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川 潤之 | 取締役会長 | 三井不動産販売などを経て2012年同社入社。CFO、COOを歴任し2019年より現職。 |
| 河本 幸士郎 | 代表取締役社長 | 明豊ファシリティワークスなどを経て2014年同社入社。2015年より現職。 |
| 杉本 亮 | 取締役副社長インフライノベーション事業本部長(インフライノベーション戦略本部管掌) | ソニーマーケティング、三菱地所投資顧問などを経て2020年同社入社。物流事業を牽引し2025年10月より現職。 |
| 廣瀬 一成 | 取締役(管理本部・財務本部管掌) | 和光証券、メリルリンチ日本証券などを経て2016年同社入社。CFOなどを歴任し2025年10月より現職。 |
| 緒方 秀和 | 取締役Hospitality and Culture 本部長(Real Estate andDevelopment 管掌) | ゼファー、PAGインベストメント・マネジメントなどを経て2017年同社入社。2021年より現職。 |
社外取締役は、森一雄(元みずほ証券執行役員)、原雅彦(元財務省大臣官房審議官)、早川尚吾(CoeFont代表取締役)、佐々木敏夫(元エマルシェ社長)、戸田千史(元品川インターシティマネジメント社長)、青山大樹(森・濱田松本法律事務所パートナー)、福原あゆみ(長島・大野・常松法律事務所パートナー)、宗像雄一郎(元EY新日本有限責任監査法人パートナー)、小林雅之(元ケネディクス監査役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産コンサルティング事業」を展開しています。
■(1) ホテル事業
観光立国の実現や地域創生を目的として、多人数向けホテルの開発を行っています。『fav』『FAV LUX』『seven x seven』等の自社ブランドを全国展開し、インバウンド需要や多様化するニーズに対応しています。
用地取得・企画開発を行い、開発投資家へ売却することで収益を得るとともに、ホテル運営やアセットマネジメント業務も受託しています。運営は主に同社グループのfav hospitality group株式会社が担っています。
■(2) 物流事業
冷凍冷蔵倉庫を中心とした物流施設の開発を行っています。「2024年問題」やフロン規制、冷凍食品需要の増加を背景に、冷凍自動倉庫の開発も積極的に進め、物流業界の課題解決に貢献しています。
開発した物流施設を投資家へ売却する際の収益のほか、プロジェクト管理報酬やアセットマネジメント報酬を得ています。また、マレーシア等のASEAN諸国への進出も開始し、同社グループが主体となって事業を拡大しています。
■(3) ヘルスケア事業
超高齢社会におけるニーズに応えるため、ホスピス住宅の開発に注力しています。「病院が持つ安心感」と「自宅が持つ快適さ」を兼ね備えた施設を、駅近の好立地等に展開しています。
開発・企画から運営までを一貫して行うビジネスモデルを構築しています。施設の開発による売却益に加え、運営フェーズにおける収益獲得を目指しており、運営面でも差別化を図っています。
■(4) 海外事業
アラブ首長国連邦(ドバイ)を中心に、不動産投資および開発事業を展開しています。現地法人を設立し、レジデンス物件の取得・売却によるキャピタルゲイン獲得や、自社主導の開発型ビジネスを推進しています。
日本の投資家がドバイへ投資できる環境を構築するとともに、現地での不動産開発プラットフォームの確立を目指しています。運営は現地のKME INVESTMENT & MANAGEMENT L.L.C等が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに急激な右肩上がりの成長を続けています。特に直近の2025年8月期は売上高が965億円に達し、経常利益も171億円と前期比で倍増以上の伸びを示しました。利益率も高い水準で推移しており、収益性を伴った規模拡大が実現できています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 208億円 | 373億円 | 657億円 | 965億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 17億円 | 41億円 | 79億円 | 171億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 8.3% | 11.0% | 12.0% | 17.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 10億円 | 21億円 | 50億円 | 103億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も倍増しています。売上総利益率は前期の28.3%から37.8%へと大きく改善しており、収益性の高い案件の積み上げが進んでいることがわかります。営業利益も売上の伸びを上回るペースで成長しており、高い収益構造が確立されています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 657億円 | 965億円 |
| 売上総利益 | 186億円 | 364億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.3% | 37.8% |
| 営業利益 | 85億円 | 189億円 |
| 営業利益率(%) | 13.0% | 19.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比21%)、賞与引当金繰入額が7億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は不動産コンサルティング事業の単一セグメントのため、事業分野ごとの収益は開示されていません。ホテル、物流、ヘルスケア等の各事業分野において開発・売却が進み、全体として大幅な増収となりました。特に大型案件の売却や運用報酬の増加が寄与しています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCFパターンは「積極型」です。本業で得た資金に加え、資金調達も活用しながら、将来の成長に向けた投資活動を積極的に行っている状態です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません(前連結会計年度は営業CFがマイナス)。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -84億円 | 69億円 |
| 投資CF | -48億円 | -186億円 |
| 財務CF | 184億円 | 247億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は32.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は29.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「その課題を、価値へ。」という経営理念のもと、「成長性のある事業分野」と「社会的意義のある事業」にて事業を展開しています。不動産投資に関連するコンサルティングや開発を通じ、社会課題の解決に資する事業に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
事業を遂行するにあたっては、行動指針である「速く。手堅く。力強く。」に基づいて経営活動を行っています。不動産業界・金融業界に関する広い知見と深い経験を活かし、スピード感を持って着実に成果を上げ、力強く成長していくことを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、さらなる事業拡大に向けて事業基盤の確立、経営管理体制の構築、内部統制強化を目指しています。具体的には、不動産コンサルティング案件の組織的な開拓、資金調達能力の向上、多様性のある人材の確保と育成、およびリスクを適切に把握・コントロールするための内部管理体制の強化を課題として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ホテル、物流、ヘルスケア、海外の4事業を柱とし、各分野での開発加速と高付加価値化を推進します。ホテル事業ではブランド多角化やREIT活用による運用フェーズへの移行、物流事業では冷凍自動倉庫やASEAN進出、ヘルスケアではホスピス住宅の開発・運営強化、海外ではドバイでの開発型ビジネスへの本格参入に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社会課題を解決し価値を創出するために、「疑問を持つ力」と「信頼される人間性(いいやつ)」を兼ね備えた人材の育成を掲げています。独自の育成プログラム「虎門塾」やマネジメント層向け研修等を通じ、専門性と人間的魅力を高めることに注力しています。また、変化に対応できる機動的な組織体制の構築と、多様な働き方を促すオフィス環境や健康支援体制の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 37.5歳 | 2.2年 | 16,832,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金等を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 10.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 85.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 59.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 58.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 87.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外注・業務委託に関するリスク
不動産コンサルティング事業において、市場調査や建築プラン、物件仲介等の業務を外部へ委託しています。適時適切に協力会社を確保できない場合や、外注先管理が不十分な場合に、サービスの質に影響が生じ、事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、定期的な与信確認や新規委託先の開拓を行っています。
■(2) 販売用不動産に関するリスク
取得または開発した販売用不動産について、経済情勢や市況の悪化により売却が進まない場合や、不動産価値が帳簿価額を下回った場合に、評価損が発生する可能性があります。これに対応するため、コンサルティング型ビジネスを増やし、棚卸資産の回転率を高める方針をとっています。
■(3) 海外事業の展開に伴うリスク
ドバイやASEAN諸国等での事業展開において、現地のインフレ、為替変動、政治経済情勢の変化、法制度の変更等が事業収益に影響を与える可能性があります。また、経済情勢による工事の縮小・延期のリスクもあります。現地法人と連携し、各国・地域の動向情報の収集に努めています。
■(4) 大型案件に関するリスク
不動産コンサルティング事業では、取り扱う案件規模によって売上高が大きく変動したり、特定の取引先への依存度が高まる傾向があります。大型案件の売上計上タイミングにより業績が四半期ごとに偏る可能性や、計画通りに進捗しない場合に業績への影響が生じる可能性があります。



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