※本記事は、富士製薬工業株式会社 の有価証券報告書(2025年9月期、2024年10月1日 ~ 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
富士製薬工業は、医薬品の開発・製造・販売を主要な事業としています。産婦人科領域のホルモン剤や放射線科領域の尿路・血管造影剤などの注射剤を軸とした商品構成を持ち、全国5ヶ所のオフィスを拠点に活動しています。
単体従業員数は969名、連結従業員数は1,760名です。同社グループは医薬品事業の単一セグメントで構成されています。
国内においては富士製薬工業が生産・販売を一手に担い、海外1社の連結子会社を通じてグローバルに事業を展開しています。
当連結会計年度より、同社グループは生産実績および販売実績の報告区分を領域別に変更しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
富士製薬工業は、医薬品事業を通じて人々の健やかな生活に貢献することを目指し、社員の成長を重視する企業です。社員一人ひとりの成長が会社の成長に直結するという考えのもと、多様な挑戦を促し、人間的な成長も支援する環境が特徴です。特に女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境整備や福利厚生の充実に積極的に取り組んでいます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
富士製薬工業では、比較的落ち着いた年齢構成で、一定の勤続年数を経た社員が多い傾向が見られます。社員の定着を促し、長期的なキャリア形成を支援する環境が整っていることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,941,194円 |
| 平均勤続年数 | 11.0年 |
| 平均年齢 | 43.1歳 |
| 単体従業員数 | 969人 |
| 連結従業員数 | 1,760人 |
| 単体のグループ内比率 | 54.9% |
同社グループは、社内規程に基づく退職一時金制度を採用しており、同社は退職一時金制度および確定拠出年金制度(前払退職金制度との選択制)を設けています。確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の両方の制度があります。
退職給付債務は22.2億円となっています。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
富士製薬工業は、経営理念に掲げる「会社の成長は、社員の成長に正比例する」を実践するため、社員の成長機会を重視しています。社員が様々な挑戦を通じて自己成長に努めることが、企業価値の向上に繋がると考えています。スキルだけでなく人間的な成長も必要と捉え、人事制度にも取り入れている「徳目」の実践を通じて、一人ひとりの人間的な魅力を高めることを期待しています。
国籍やジェンダー、個々の特長にとらわれず多様性を認め、社員が失敗を恐れずに挑戦できる環境を整備しています。経営理念や徳目の実践を通じて、社員一人ひとりが自発的に成長し、質の高い仕事に取り組むことで社会への貢献を高めることを目指しています。
女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境を積極的に整備し、女性の健康課題解決に対する福利厚生を充実させる取り組みを進めています。具体的には、不妊治療への特別休暇付与制度の導入、低用量ピルや更年期障害治療薬の費用補助、婦人科検診項目の拡大、大腸内視鏡検査費用の補助などを実施しています。
well-beingな職場環境の実現にも注力しており、経営者が社員の声を直接聞く機会を設け、組織と社員の信頼関係を高める組織風土改革に努めています。心理的安全性を高めるために「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子について調査を実施し、エンゲージメント調査も継続して行っています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。連結子会社は公表義務の対象外のため記載を省略しています。男性育児休業取得率は、対象年度中に育児休業を取得開始した人と子が産まれた人の割合を計上しているため、年度により100%を超える場合があります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 18.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 104.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 67.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 69.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 45.9% |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 組織風土が変わってきていると感じている | 34.7% |
| 現在の職場で働くことを、親しい友人や知人に勧めたいと考える | 31.9% |
| 当社で働くことに誇りを持っている | 51.9% |
| 離職率(定年退職除く) | 3.2% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
富士製薬工業は、医薬品の開発、製造、販売を主要な事業とする同社グループです。産婦人科領域のホルモン剤や放射線科領域の尿路・血管造影剤といった注射剤を軸に、全国の拠点で事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、医薬品事業の単一セグメントで構成されています。主に医薬品の製商品の販売と医薬品受託製造から収益を得ています。
女性医療分野では、月経困難症治療薬や天然型黄体ホルモン製剤、経口避妊剤などの新薬や既存製品が順調に推移しています。バイオシミラー事業では、乾癬治療薬に注力し、新たな製品の製造販売承認を取得するなど事業拡大を進めています。グローバルCMO事業も計画通りに進捗しており、その他の領域では、他社から承継した製品やジェネリック製品が売上を伸ばしています。
収益は、製商品の販売と医薬品受託製造が主な源泉です。特に製商品の販売が収益の大部分を占めています。主要な販売先として、株式会社メディセオ、アルフレッサ株式会社、株式会社スズケンといった特定の顧客への売上高が一定の割合を占める傾向があります。また、売上高の大部分は日本国内の外部顧客によるものであり、国内市場への集中度が高いことがうかがえます。
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの売上高は、過去5年間で一貫して増加傾向にあります。当連結会計年度においても、前年同期と比較して売上高は増加しました。
経常利益は、過去5年間で増減を繰り返しながらも、当連結会計年度は前年同期とほぼ同水準で推移しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に一過性の利益があった反動により、当連結会計年度は減少しました。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 340億円 | 354億円 | 409億円 | 461億円 | 517億円 |
| 経常利益 | 32.5億円 | 37.2億円 | 45.2億円 | 44.5億円 | 44.6億円 |
| 経常利益率 | 9.6% | 10.5% | 11.1% | 9.6% | 8.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 24.3億円 | 27.0億円 | 34.4億円 | 61.5億円 | 30.0億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 90.54 | 111.01 | 141.37 | 252.85 | 122.94 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、前期と比較して増加しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期から増加しており、従業員一人ひとりの生産性が向上している傾向が見られます。これらの指標の改善は、同社グループの収益体質の強化と組織効率化の進展を示しています。
| 指標 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 27.8百万円 | 29.4百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 2.3百万円 | 2.8百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
富士製薬工業グループの財務状況は、安定した基盤を維持しながら事業活動を進めていることを示しています。本業で得た資金を投資に回しつつも、手元資金を確保している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を上回っており、安定性が高い状態です。ROE(自己資本利益率)は前期と比較して低下していますが、依然として一定の水準を保っています。手元資金である現金及び預金も増加傾向にあり、不測の事態への耐性も備えていることがうかがえます。これらの財務状況は、同社グループが安定した事業運営を継続し、従業員の雇用や給与の安定性にも寄与する基盤を持っていることを示しています。
| 指標 | 2024年9月期(前期) | 2025年9月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 456億円 | 469億円 |
| 自己資本比率 | 50.6% | 50.2% |
| ROE(自己資本利益率) | 14.2% | 6.5% |
| 現金及び預金 | 45.9億円 | 72.5億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や減価償却費の増加などにより、前期に比べて増加しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が増加したため、支出超過となっています。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入があった一方で、長期借入金の返済や配当金の支払いがあった結果、収入超過に転じています。
これらの資金の流れを見ると、同社グループは本業で安定的に資金を生み出し、将来に向けた投資を積極的に行っていることがわかります。営業活動で得た資金が投資活動の支出を上回っており、フリーキャッシュ・フローもプラスを維持していることから、事業の成長と安定性の両立を図っている状況です。この資金状況は、同社グループが持続的な成長を目指し、従業員の雇用や給与の安定性にもつながる健全な財務運営を行っていることを示しています。
| 項目 | 2024年9月期(前期) | 2025年9月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 41.5億円 | 58.0億円 |
| 投資CF | △16.6億円 | △42.2億円 |
| 財務CF | △4.4億円 | 9.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 24.9億円 | 15.8億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、同業他社との競合により市場価格が著しく低下する可能性や、国内新薬メーカーの市場シェア確保のための施策により、計画する予算を達成できないリスクを認識しています。また、医療用医薬品業界では、社会保障費の増加に伴う薬価抑制が続き、毎年薬価改定が実施されるなど、事業環境が厳しくなっていることもリスクとして挙げています。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、今後の業務拡大に伴う適切な人材確保が必要であると考えており、人材の確保が困難となる場合や、人材の育成が順調に進まない場合、業績及び財務状況等に影響を与える可能性があると認識しています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
富士製薬工業は、人々の健やかな生活への貢献と、従業員の成長を重視する経営理念を掲げています。女性医療を重点領域とし、社会課題の解決と企業価値向上を目指す企業です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する」、「富士製薬工業の成長はわたしたちの成長に正比例する」ことを経営理念としています。この理念に基づき、良質な医薬品の開発・製造・販売を通じて、各ステークホルダーへの責任を果たし、貢献と成長の好循環を発展させることを目指しています。
また、2035年の長期ビジョンとして「女性医療で新たな価値を創出し続け、誰もがwell-beingを実感できる社会へ貢献する」を掲げています。ウィメンズヘルスにおける医療格差をなくし、女性が健康な生活を送れる社会の創造に貢献することを使命としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、経営理念の実践を通じて世の中に貢献し、たゆまぬ成長を続けることをサステナビリティ活動の基本としています。社員一人ひとりが自己成長に努め、会社の成長と連動することを人的資本経営の根源と捉えています。
人事制度にも取り入れられている「徳目」の実践を通じて、人間的な魅力を高めることを重視しています。多様性を認め、社員が失敗を恐れず挑戦できる環境を整備し、自発的な成長と社会への貢献を促しています。
また、心理的安全性を高めるため、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子を重視しています。真面目で仲間を想う組織を源泉とし、よりフラットでオープンな一体感のある組織を目指しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、中期経営計画の成長戦略を支える施策として、「人財の強化」「組織機能の高度化」「デジタルの推進」を重点テーマとしています。
人財の強化では、女性が働きやすい環境整備を積極的に進め、女性の健康課題解決に対する福利厚生の充実や女性管理職比率の引き上げに取り組んでいます。また、徳目の浸透を通じて、フラットでオープンな一体感のある組織を目指しています。
組織機能の高度化では、研究開発基盤の強化、安定供給のためのサプライチェーン維持、効率的な生産体制の強化を推進しています。デジタル推進では、デジタル専門組織体制を整備し、デジタル人財の育成と風土改革、デジタル基盤の構築とデータ利活用を進めています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
富士製薬工業は、監査役会設置会社として、経営の透明性と公正性を重視したガバナンス体制を構築しています。社外役員を多く登用することで、客観的な視点を取り入れた経営を目指しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
富士製薬工業の株主構成を見ると、筆頭株主は有限会社FJPです。上位株主には個人名や関連する法人、信託銀行などが名を連ねており、特定の株主グループが同社の経営に一定の影響力を持つ資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社FJP | 17.58% |
| 今井 博文 | 12.46% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.81% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は12名(男性9名・女性3名)で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役会長は岩井孝之氏、代表取締役社長は森田周平氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩井 孝之 | 代表取締役会長 | 1986年三井物産入社後、イタリア三井物産やドイツ三井物産で要職を歴任。三井物産でメディカル・ヘルスケア事業部長などを務め、2019年同社入社。副社長、社長を経て、2024年10月より代表取締役会長。 |
| 森田 周平 | 代表取締役社長 | 1998年藤沢ファイソンズ(現サノフィ)入社後、グラクソ・スミスクラインなどを経て、2010年同社入社。執行役員営業部長、営業本部長、常務執行役員SCM部長などを歴任し、2024年10月より代表取締役社長。 |
| 上出 豊幸 | 取締役副社長経営管理本部長 | 1987年野村貿易入社後、2000年同社入社。経営企画室マネージャー、管理部長、OLIC(Thailand)Limited Managing Directorなどを経て、2017年12月より取締役。2025年10月より副社長経営管理本部長。 |
| 鈴木 聡 | 取締役副社長経営戦略本部長 | 1989年エーザイ入社後、Eisai Europeや衛材(中国)薬業で要職を歴任。アイロム製薬(現ネオクリティケア製薬)代表取締役、参天製薬常務執行役員企画本部長などを経て、2022年8月同社入社。副社長兼経営戦略本部長、2022年12月より取締役。 |
社外取締役は、平井敬二氏(元杏林製薬代表取締役社長・指名・報酬委員会委員長)、三宅峰三郎氏(元キユーピー代表取締役社長・指名・報酬委員会委員)、木山啓子氏(特定非営利活動法人ジェン理事・事務局長)、荒木由季子氏(元山形県副知事)、小澤実氏(行政書士小澤法務事務所所長)です。
同社は監査役会設置会社であり、社外取締役が取締役会に対して的確な提言と監視機能を果たす体制を構築しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
富士製薬工業の役員報酬は、固定報酬のほか、取締役(社外取締役を除く)に対して株式報酬を導入しています。これにより、役員と株主の利益を連動させ、中長期的な企業価値向上へのインセンティブを高める仕組みとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 5名 | 1.6億円 | 31.2百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 14百万円 | 14.0百万円 |
| 社外役員 | 7名 | 32百万円 | 4.6百万円 |
同社の役員報酬の総額は2.02億円であり、報酬の支給対象となった役員は合計13名です。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。
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