富士製薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士製薬工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場。ホルモン剤などの産婦人科領域やバイオシミラーを主力とする医薬品事業を展開。2025年9月期は、女性医療領域の新薬やジェネリック医薬品の販売が伸長し増収増益(経常利益ベース)となったものの、前期に計上した投資有価証券売却益の反動等により当期純利益は減益となりました。


※本記事は、富士製薬工業株式会社 の有価証券報告書(第61期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士製薬工業ってどんな会社?


女性医療領域や急性期医療の注射剤に強みを持つ製薬会社です。ホルモン剤や造影剤、バイオシミラー等の開発・製造・販売を行っています。

(1) 会社概要


1965年に医療用医薬品の製造・販売を目的として設立されました。1996年には非イオン性尿路・血管造影剤を発売し、2008年には月経困難症治療剤の販売を開始するなど、女性医療および急性期医療分野での地位を確立しました。1995年の店頭登録を経て、2011年に東証二部、2012年には東証一部へ上場しました。また、2012年にはタイ最大の医薬品製造受託企業であるOLIC (Thailand) Limitedを子会社化し、グローバル展開を推進しています。

2025年9月30日時点で、連結従業員数は1,760名、単体では969名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の有限会社FJPで17.58%を保有し、第2位は創業者の関係者である今井博文氏が12.46%、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)が8.81%を保有しています。

氏名 持株比率
有限会社FJP 17.58%
今井 博文 12.46%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は森田周平氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
岩井 孝之 代表取締役会長 三井物産入社後、ライフサイエンス事業部等を経て、同社へ入社。社長兼研究開発本部長等を経て2024年10月より現職。
森田 周平 代表取締役社長 藤沢ファイソンズ(現サノフィ)、グラクソ・スミスクライン等を経て、同社へ入社。営業本部長、経営企画部長等を経て2024年10月より現職。
上出 豊幸 取締役副社長経営管理本部長 野村貿易を経て同社へ入社。管理部長、OLIC(Thailand)Limited Managing Director等を経て2025年10月より現職。
鈴木 聡 取締役副社長経営戦略本部長 エーザイ、アイロム製薬(現ネオクリティケア製薬)代表取締役、参天製薬常務執行役員等を経て、2022年8月同社入社。同年12月より現職。


社外取締役は、平井敬二(元杏林製薬代表取締役社長)、三宅峰三郎(元キユーピー代表取締役社長)、木山啓子(特定非営利活動法人ジェン理事・事務局長)、荒木由季子(元日立製作所理事)、小澤実(株式会社イメージプラン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医薬品製造販売(女性医療・バイオシミラー・その他)


産婦人科領域のホルモン剤や、放射線科領域の尿路・血管造影剤等の注射剤を中心に、医療用医薬品の研究開発、製造、販売を行っています。特に女性医療領域では、月経困難症治療剤や不妊治療薬など幅広い製品ラインナップを有しています。また、バイオシミラー(バイオ後続品)の普及にも注力しています。

収益は、医療機関や医薬品卸売業者等への製品販売による対価から得ています。国内における製造販売は主に富士製薬工業が行っており、研究開発から製造、営業活動までを一貫して手掛けています。

(2) 医薬品受託製造(CMO)


製薬企業等から医薬品の製造を受託するCMO(Contract Manufacturing Organization)事業を展開しています。製剤開発を加えたCDMO事業も手掛けており、タイと日本の生産拠点を活用して様々な剤形や顧客ニーズに対応しています。

収益は、顧客である製薬企業等からの製造受託料等から得ています。運営は、タイの子会社であるOLIC (Thailand) Limitedと富士製薬工業の富山工場が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、340億円規模から517億円まで拡大しています。経常利益も売上拡大に伴い増加傾向にありますが、利益率は8〜11%程度で推移しています。当期純利益については、第60期に投資有価証券売却益等の一過性の利益計上があったため急増しましたが、第61期はその反動等により減少しています。

項目 2021年9月期 2022年9月期 2023年9月期 2024年9月期 2025年9月期
売上高 340億円 354億円 409億円 461億円 517億円
経常利益 33億円 37億円 45億円 44億円 45億円
利益率(%) 9.6% 10.5% 11.1% 9.6% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 25億円 31億円 58億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しています。売上総利益率は若干改善しました。営業利益については、増収効果が経費増を上回り増益となりましたが、営業利益率は前期と同水準を維持しています。

項目 2024年9月期 2025年9月期
売上高 461億円 517億円
売上総利益 178億円 208億円
売上総利益率(%) 38.7% 40.2%
営業利益 39億円 50億円
営業利益率(%) 8.4% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が33億円(構成比21%)、給料及び賞与が38億円(同24%)を占めています。売上原価では、製品製造原価が267億円(売上原価合計の87%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは医薬品事業の単一セグメントであるため、領域別の販売実績を記載します。女性医療領域は新薬の販売開始等により順調に推移しました。その他領域も承継品やジェネリック医薬品が貢献しました。

区分 売上(2025年9月期)
女性医療 224億円
バイオシミラー 20億円
CMO 83億円
その他 190億円
連結(合計) 517億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と外部からの資金調達を組み合わせて、将来の成長に向けた投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年9月期 2025年9月期
営業CF 42億円 58億円
投資CF -17億円 -42億円
財務CF -4億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する」、「富士製薬工業の成長はわたしたちの成長に正比例する」を経営理念として掲げています。この理念の下、良質な医薬品の開発・製造・販売を通じてステークホルダーへの責任を果たし、貢献と成長の好循環を発展させることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員の成長が会社の成長に直結するという考えのもと、「徳目」の実践を通じて社員一人ひとりの人間的な成長を重視しています。真面目で仲間を想う組織風土を源泉とし、よりフラットでオープンな一体感のある組織を目指しています。多様性を認め、失敗を恐れずに挑戦できる環境整備にも注力しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画の最終年度である2029年9月期に向けて、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:800億円
* 営業利益:100億円
* ROE:10%

(4) 成長戦略と重点施策


「女性医療での貢献拡大」「バイオシミラー事業の成長」「グローバルCMO事業の成長」「次の成長に向けた戦略投資」の4つを成長戦略として掲げています。これらを支えるため、人財の強化、組織機能の高度化、デジタルの推進を進めています。

* 女性医療領域:新薬の販売拡大や、エムスリー社との連携による情報提供活動の強化。
* バイオシミラー:ラインナップの拡充と普及促進。
* グローバルCMO:タイと日本の生産拠点を活かした受託案件の獲得。
* 戦略投資:シーズ探索やコーポレートベンチャーキャピタルの設置によるパイプライン構築。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境整備を積極的に進め、女性管理職比率の向上を目指しています。また、経営理念や徳目の浸透を図り、自発的に成長し挑戦できる組織風土を醸成するとともに、デジタル専門組織の整備によるデジタル人財の育成や、研究開発基盤の強化など、組織機能の高度化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年9月期 43.1歳 11.0年 6,941,194円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 104.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.1%
男女賃金差異(正規雇用) 69.0%
男女賃金差異(非正規) 45.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(3.2%)、エンゲージメントに関する肯定回答率(「誇りを持っている」が51.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


医薬品医療機器等法および関連法規の厳格な規制を受けており、法令違反等により許認可が取り消された場合、製品の回収や製造・販売の中止を求められる可能性があります。また、関連法規の改正により、財政状態や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 医薬品の研究開発について


臨床試験の結果が期待通りでない場合や行政当局の指摘による計画見直し等により、開発期間の延長や中止・中断が発生する可能性があります。また、共同開発先等の問題により計画通りに進まない場合もあり、これらは将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 同業他社との競合について


多数のメーカーとの競合により市場価格が著しく低下する場合や、国内新薬メーカーの施策により市場シェア確保が難しくなる場合があります。これにより、計画していた予算を達成できず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対策として、原材料調達コストの低減等のコスト削減施策を実施しています。

(4) 原材料の調達について


原材料を国内外から調達しており、価格高騰による原価への影響や、需給バランスの変動、規制、品質問題等により入手が困難になるリスクがあります。これにより製品の製造・販売ができなくなり、業績に影響を及ぼす可能性があります。重要製品についてはサプライチェーンの複数化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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