【財務分析】戦略事業に1400人増員! LINEの「2018年12月期通期決算」を読む

【財務分析】戦略事業に1400人増員! LINEの「2018年12月期通期決算」を読む

LINE株式会社は2019年1月31日、2018年12月期の通期決算を公表した。売上高は2000億円を超えたが、最終損益が赤字となったと報じられている。これを受けて株価は一時急落したが、すぐ反発。今後の経営の見通しはどうなるのか。


LINEの「決算説明会資料」の冒頭には、経営管理上のKPI(Key Performance Indicator)の達成が強調されている。

●売上収益2,000億円超え
●グローバルLINE Pay決済高1兆円超え
●国内決済箇所100万箇所達成
●各種金融サービスの立ち上げ


の4つで、うち3つが新規の「戦略事業」に関するものだ。

プラットフォームとなるメッセンジャーアプリ「LINE」については、日本・台湾・タイ・インドネシア(主要4か国)のMAU(月間アクティブユーザー)が1億6400万人、日本のMAUが7900万人。日本のDAU/MAU比率が85%(平均的なユーザーが月30日のうち25~26日使用している)という達成指標も掲げられている。

しかし、通期業績が分かりやすく示されていない。そこで3月29日に公表された通期の有価証券報告書の内容を補いながら、あらためてLINEの経営状況を検証する。

既存の「コア事業」の営業利益率が低下

LINEの2018年12月期(国際会計基準)の売上収益は2071億8200万円で、前期比24.0%増で過去最高を更新した。

内訳は、コア事業の「広告事業」が前期比42.5%増の1082億3700万円、同「コミュニケーション・コンテンツ・その他事業」が同4.1%減の701億6100万円。新規の「戦略事業」が同59.5%増の287億8400万円となっている。

コア事業の売上収益は1784億円で前期比14.1%増と伸びているが、営業利益率は前期比7ポイント減の14.9%。営業利益額は示されていないので、ここから割り出すと265.8億円となる。

戦略事業の売上収益は288億円で前期比60.0%増と大きく伸びているものの、営業損益はマイナス349億円の赤字となっている。

この結果、通期の業績はどうなったのだろうか。「決算説明会資料」には四半期業績の一部しか掲載されておらず全体像が分かりにくい。そこで編集部が有価証券報告書の「連結損益計算書」(77p)のデータを抜粋して表を作成した。

これによると、通期の営業利益は161億1000万円で前期比35.8%減。売上収益に占める営業利益の割合は7.8%。当期純利益は57億9200万円の赤字となっている。営業費用が前期比で42.2%と大きく伸びたことが影響しているようだ。

「従業員報酬費用」の増加は150億円

営業費用はすべての項目で増えているが、目を引くのは「従業員報酬費用」の150億円増だ。連結従業員数は2017年12月末の5,100人から2018年12月末の6,488人へと、1年間で1,388人(27.2%)も増加している。

LINEは2018年12月期より、コア事業(既存事業)戦略事業(新規事業)で従業員数を分けて表示しているが、戦略事業の従業員数が1,575人であり、この部分を中心に増員しているようだ。

これにより、平均勤続年数は3.4年から2.6年へとやや短縮。ただし平均年齢(34.3歳→34.4歳)と平均年間給与(715万7360円→716万3223円)はほぼ変わっていない。

「従業員報酬費用」の増加には、全体に占める割合は大きくないが「株式給付信託」への追加拠出も影響している。LINEは2017年2月23日の「株式給付信託(J-ESOP)の導入に関するお知らせ」の中で、「従業員の帰属意識の醸成や、株価上昇に対する動機づけ等」を目的とした制度を導入するとしている。

当社は、従業員に対し個人の貢献度等に応じてポイントを付与し、株式給付規程に定める一定の条件により受給権の取得をしたときに当該付与ポイントに相当する当社株式等を給付します。

「販売手数料」も150億円増。有価証券報告書は、理由を「LINEバイトの子会社化やFriendsに係る売上の増加に伴う増加に加え、IFRS第15号の適用による増加額8,892百万円が含まれている」と説明する。

Friendsとは、LINEのキャラクターを使ったビジネス「LINE FRIENDS」を指す。「IFRS第15号の適用」は、広告等に関する会計基準の変更によるもの。

「その他の営業費用」は157億円の増加。主に「ポイント引当金の追加設定、およびデータセンター増設による消耗品費の増加によるもの」という。

ゲームは不調? マンガと音楽の成長が埋める

有価証券報告書(31p)の「主要なサービスからの収益」を表にまとめると次のようになる。コア事業のうち「広告事業」が、売上収益全体の過半数を占めている。

「広告事業」は、主にLINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、LINEポイント等から構成される「アカウント広告」、主にタイムライン面やLINE NEWS面等に掲載される広告から構成される「ディスプレイ広告」、主にlivedoor、NAVERまとめ、LINEバイトの広告から構成される「その他の広告」である。

アカウント広告は従量課金制の「新料金プラン」を開始したことで、公式アカウント数が年129件、前期比20.0%増。LINE@のアカウント数も前期比で36.5%増と好調だ。

【重要】LINE@サービス統合のお知らせ : LINE@公式ブログ | ラインアットの最新情報や成功事例をご紹介Icon outbound

http://blog-at.line.me/archives/52626249.html

いつもLINE@をご利用いただきありがとうございます。2019年春、「LINE@」は「LINE公式アカウント」「LINE ビジネスコネクト」「LINE カスタマーコネクト」とサービス統合し、名称を「LINE公式アカウント」として生まれ変わります。このサービス統合により、管理画面

ディスプレイ広告は、自前の「新広告プラットフォーム」への移行を完了したことで、LAP(LINE Ads Platform)のインプレッション数が前期比で45.5%増加している。

コア事業のうち「コミュニケーション・コンテンツ・その他」は、主にLINEスタンプ及びクリエイターズスタンプの提供から構成される「コミュニケーション」、主にLINE GAMEの仮想アイテムの販売に係る収益から構成される「コンテンツ」である。

有報には明記されていないが、決算説明会資料に掲載されているLINEマンガとLINE MUSICは「コンテンツ」に含まれるとみられる。この2つが大きく伸びているのにセグメントが減っていることを鑑みると、従来のLINE GAMEの売上がそれだけ大きく減少していると見ることもできるだろう。

戦略事業「LINE Pay」に600億円投資

戦略事業は、主にキャラクター商品の販売から構成される「Friends」、主にLINEモバイルやEコマースに係るサービスに係る収益から構成される「その他」である。

「その他」には、Fintech(金融関連サービス)の「LINE Pay」や、スマートスピーカー「Clova」などのAI技術も含まれる。中でもLINE Payのグローバル決済高は1兆円を超えており、「その他」を脱する日も近いだろう。

LINE Payスマホ決済対応箇所は、コンビニやドラッグストア、百貨店にタクシー、レストランなど133万箇所にのぼる。決算説明会で出澤剛社長は「2019年は600億円規模の戦略事業に対する投資」を行い、その大部分が「LINE Payへの投資」と明かしている。

強気のLINE 37億円の最終赤字も、600億円戦略投資へ ── LINE Payなど3年以内の収益化を宣言Icon outbound

https://www.businessinsider.jp/post-184361

LINEは1月31日、2018年12月期の通期決算を公表した。売上高は前年比24%増で過去最高となる2071億8200万円、営業利益は前年比35....

戦略事業の金融サービスとしては、2018年10月に「LINEスマート投資」「LINEほけん」をリリース。2019年に「LINE証券」「LINEスコア」「LINEポケットマネー」をリリース予定のほか、現在、みずほ銀行などと提携した「LINE Bank(仮)」の設立に向けて免許申請を準備中という。

LINEとしては、メッセンジャーアプリ「LINE」をプラットフォームとしつつ、広告やコンテンツなどのONLINE領域のみならず、EコマースやFintechといったOFFLINE領域にビジネスを拡げていきたいようだ。

まとめ:新規の「戦略事業」への期待高まる

上場後、初の最終赤字となったLINEだが、Fintechを中心とした新規の「戦略事業」に対する期待が高まる。出澤社長は「600億円の投資」を明言しており、成長事業に関わりたい人には魅力的な職場となるだろう。

これまで給与は思ったより高くないという評判もあったLINEだが、「株式給付信託(J-ESOP)」の導入により株価上昇の恩恵を社員が受けられるようになっている。戦略事業の伸びによっては、給与以外の報酬が大きくなる可能性もある。

「戦略事業」の成長性が期待されるので、これからでも入社したいと考える人もいるだろう。しかし2018年12月期中にグループ全体で1,400人近い増員をしており、中途採用のハードルは高くなるかもしれない。

LINEのウェブサイトには職種別の求人情報が公開されているので、希望する業務と自分の貢献領域を明確にし、過去の実績やスキルをアピールしていけば、入社できる余地はまだ残されているといえそうだ。

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