「盆踊り」に「運動会」イベント大好き
ダイキン工業の海外売上比率は7割を占め、従業員の8割が海外で働いています。このように説明されると、ピカピカのグローバル企業をイメージしますが、国内で働く人の現場には意外とローカルな面もあるようです。
本社は大阪市で、淀川製作所(大阪府)や堺製作所(同)、滋賀製作所(滋賀県)や草加事業所(埼玉県)では、毎年大規模な「盆踊り」が行われます。
ダイキンの盆踊り大会 | ダイキンについて | ダイキン工業株式会社
https://www.daikin.co.jp/corporate/overview/bon_dance/ダイキン工業のダイキン盆踊り大会をお伝えするページです。ダイキン工業はグローバル空調総合メーカーです。
企業口コミサイト「キャリコネ」には、現役社員・OBOGが会社の内情が垣間見られる書き込みを残しています。マーケティング担当の30代男性社員は、自ら目の当たりにした盆踊りの様子を明かしています。
地域住民を工場内に呼んで、出店などを出す本格的なお祭りなのですが、社員が一か月前から準備に駆り出され仕事を半分休んでいるような状態です。新入社員は最初から盆踊りの練習のみで職場に来ないこともあります。非常に大変なイベントですが、なんだかんだで今年も行われるのでしょう。(2017.3.23)
技術職の20代女性は、このような会社の雰囲気をやや苦々しく説明します。
会社全体として、イベントが大好きである。盆踊りと運動会が代表的なもので、特に盆踊りに対する熱の入りようは半端ではない。勤務時間外や休日に会社のことに関わることが嫌な人にとってはしんどいと思う。(2019.8.29)
ライバルは三菱電機か中国企業か
世間ではトップメーカーと評されているダイキン工業ですが、社員はどんな会社をライバルと見ているのでしょうか。研究開発職の20代男性はこんな3社をあげています。
1位 三菱電機:ダイキンはビジネスに走りすぎている。三菱電機は売れなくても新しいモノを市場に投下してくる体力がある。ダイキンにはそれをやろうとすると、待ったをかけられる。
2位 パナソニック:圧倒的にコストで負けている。同じ性能なら、安い方を買うのは消費者として普通の行動だと思う。安売り合戦を仕掛けたら敗北は必至。
3位 日立製作所:凍結洗浄にはやられた。ドレン水を凍らせるパフォーマンスは、消費者にわかりやすい形で洗浄をアピールできている。エレベーターなどビルに必要な製品も作っているため、(コスト削減、環境負荷の低減、BCP対策などの)エネルギーソリューション事業にアドバンテージを持っているのも脅威。(2018.9.16)
ライバル企業の強みを冷静に認めており、こういうところがダイキン工業の強みになっているのかもしれません。別の研究開発職の20代男性も、三菱電機の名前をあげました。
総合電機メーカーであるので、トータルサービスを提供できる点が当社より勝っている。優秀な人材が集まるような大企業であることも要因ではないであろうか。(2019.6.21)
生産技術担当の20代男性は、中国の大手家電メーカーで世界最大級の住宅空調メーカーでもある格力電機(グリー・エレクトリック)の名前をあげました。
技術提携先ということもあり技術力が向上している。製造コストで優位な上、中国経済の勢いもあり非常に厳しい。中国の勢いには日本は追いつかないと感じている。(2019.7.27)
「巨大な町工場」の強みと弱み
自社の技術力に危機感を抱く声もあります。指摘されているのは、特にソフトウェアの部分です。研究開発職の20代男性は「インテリジェントシステムをもっと大々的にやるべき」と主張します。これは各種センサーでさまざまな状況をチェックし、それに応じた動作をするしくみということでしょう。
製品のハードは良いが、制御や通信、センシングが弱い。社会の流行に乗っかって一応やっている感じ。部門のトップクラスが目的を持ってやっていない。(2018.10.31)
20代の男性システムエンジニアも、自社の先進技術の力について「他社と比較しても高くない」と厳しく評しています。
他社はAIを導入した商品を早期から導入していたが、この会社が導入したのは他社よりも遅かった。そのような面にも、他社と比較したときの、この会社の技術力の差が表れていると思われる。(2019.1.7)
「盆踊り」と「AI(人工知能)」――。なかなかイメージがつながりませんが、研究開発職の20代男性は自社の雰囲気を「巨大な町工場」という独特な言葉で表現しています。
大企業ながら大企業然としておらず、良く言えば自由、悪く言えば雑な雰囲気である。新卒採用パンフレットや公式サイトのスマートな雰囲気は、別世界のようである。(2018.10.31)
その一方で、「海外出張が多く、家族と過ごす時間がほとんどなかった」(2019.7.27)ために退職を決意した生産技術担当の20代男性もいます。
グローバルとドメスティック、ローカルが混沌となった社風が、この会社の特徴であり強みであり、ときには弱みにもなっているのかもしれません。