SI業界6位。売上高は過去最高を更新
野村総研の2019年3月期決算は、増収増益でした。売上高は5012億4300万円で過去最高。前期比6.3%増でした。営業利益は714億4200万円で同9.7%増えています。
事業セグメントは「コンサルティング」「金融ITソリューション」「産業ITソリューション」「IT基盤サービス」の4つ。外部売上高の構成比は、金融ITソリューションが50.3%と過半数を占めています。
なお、野村総研の最大の顧客(売上高の約1割)で最大の株主(3割超)は、野村ホールディングスとそのグループ会社です。しかし野村総研は、野村ホールディングスの子会社ではありません。
2018年度国内企業のITサービス売上ランキング(日経コンピュータ調べ)では第6位。特にコンサルティング&SI部門は前期比11.3%増と、アクセンチュア、NTTコミュニケーションに次ぐ伸び率となっています。
大手安定志向もあいまって、ここ最近、野村総研は就職先・転職先の上位にのぼっています。企業口コミサイト「キャリコネ」には、現役社員やOBOGから会社の内情に関する書き込みが集まっています。
派遣社員の40代女性は、職場について「非常に素晴らしい環境」と高く評価しています。いろんな職場を見てきた派遣社員だからこそ、その良さがよく分かるのかもしれませんね。
社員の方々は非常に優秀な方が多く、仕事をしっかりこなしている印象です。やりたいことをどんどん発言できる自由な雰囲気もあり、色々とチャレンジできる環境です。
フランクな風潮のためか、風通しもよく、先輩・上司などともコミュニケーションをとりやすく、話しやすいです。疑問点や不安があったり、技術のことで質問をしたりも日常的にできます。(2019.7.17)
大手町の新オフィスは「カフェもおしゃれ」
この女性は「産休・育休・時短・テレワーク・有給の取得など、社内制度をフル活用できる環境」「産休・育休を取得した後でも出世も可能」と、女性が働く職場としても申し分ないとしています。
コンサルタント部門に勤務する20代男性も「自由な社風」を強調しています。
社風は、かなり自由。若手でも上の者に対して意見を言える(むしろ、コンサルなのでそれが求められる)。
入社3年目から裁量労働制、コアタイムなし。アウトプットさえ出していれば何時に出社しても良いし、何時に帰っても良い。席もフリーアドレスなので、上司は自分の部下がどこで何をしているかは分からない。(2018.11.15)
勤務する職場は、2016年竣工の「大手町フィナンシャルシティグランキューブ」。真新しいオフィスはかなりきれいで、カフェもおしゃれ。社内にはマッサージルームがあり、「眠いときはそこで寝る」こともできるようです。
コンサルタントの30代女性は、年収1000万円。「労働時間の満足度」と「ストレス度の高さ」は最低評価の星1つとしながらも、「とにかく年収はいいし、男性ならモテる」といいます。
社会的な対面がよく、会社名を言えばどこでも信用される。結婚相手の親に喜ばれる。企業買収などで業績も好調なので、今後も給与はいいのでは。(2018.10.24)
「企業買収」とは、2017年に買収した豪州のSMSマネジメント・アンド・テクノロジーのことでしょう。すでにコンサルティング事業や産業ITの売上・利益増に貢献している有望分野です。
退職者「決断したことは正解」
一方で、レベルの高い仕事が求められる職場は、イメージほど甘くないのが実態。30代の女性コンサルタントは「子供を産んだ女性はやめることが多い」と実態を明かします。
続けている人も中にはいるが、実家が近くにあるなど特殊な事情がある人がほとんどなので注意が必要。
優秀な女性が子育てなどで辞める一方で、時間だけはある中年男性が長時間残業で高い評価を得ている姿を目の当たりにする。独身のままバリバリやりたい女性は差別されることはない。(2018.10.24)
20代の男性システムエンジニアも「タフで前向きに働ける人には向いている」といいます。ということは、その逆の人では苦しいということでしょう。
多少の残業や、パワープレイを苦にしない社員が多い。諦めない、粘り強い姿勢が浸透している。そのため、難易度の高いプロジェクトではプライベートがある程度は犠牲になることもある。(2017.10.12)
入社後に思い描いていた仕事環境とのギャップを埋められず、挫折してしまう話も。プロジェクトリーダーを務めていた30代男性は、「システムインテグレーション事業の未来」と「顧客への高い提供価格を維持する方向性」に失望したと明かします。
新たなチャレンジを取りづらい運用アウトソーシングモデルの中で、これ以上の自己成長が望めないと感じて退職を決意した。
コンサルテーションとシステムインテグレーションのシナジーも一向に創出されないため、企業の戦略の実行力に疑問を覚えた。退職を決断したことは正解であったと感じる。(2017.6.24)
「ご用聞きの人月商売」はいつまで続く
2019年6月24日付け日経XTECHの「就活生が「大好き」なSIer、なのに若手がボロボロ辞めていく理由」によると、筆者の木村岳史氏は最近、SIerの経営幹部から「優秀な若手が相次いで辞めてしまう」とぼやきを聞かされるそうです。
若手の転職先はGAFAや外資系コンサル、ITベンチャーなど。共通しているのは「プロジェクトマネジメントという人月商売の元締の仕事」からの脱出です。木村氏はSI業界の問題を鋭く指摘します。
客の要望通りのシステムを作る従来型のご用聞き商売、人月商売だけに明け暮れているようでは、SIerは先が無い。
日本企業は今後、グローバルで磨かれたベストプラクティスに業務を合わせていくのか、それとも自社の特殊なやり方に合わせた高額のシステムづくりを続けるのか。就職や転職にはそんな「SI業界のパラダイム転換」の見極めが必要になるのかもしれません。