今回取り上げるのは、売上高初の3兆円越えを達成した1都16県にまたがる日本最大の鉄道会社、東日本旅客鉄道(JR東日本)です。
JR東日本の平均年収はどれくらい高いのか
まずはじめにJR東日本の平均年収を見ていきましょう。
JR東日本の平均年収は719.1万円です(2020年3月期有価証券報告書)。
キャリコネに投稿された給与明細を参考にJR東日本の年代別年収レンジを算出したところ、20歳代で480〜530万円、30歳代で630〜680万円、40歳代で720〜770万円という結果がでました。男女あわせた民間の正規雇用者の平均年収は503.5万円(国税庁・令和元年分民間給与実態統計調査結果)ですから、それと比較しておよそ1.43倍の額です。
JR東日本の平均年収と平均年齢の推移
■業績好調で年収額も増加
決算月 | 平均年収 | 平均年齢 |
---|---|---|
2016年3月期 | 710.1万円 | 40.9歳 |
2017年3月期 | 710.9万円 | 40.5歳 |
2018年3月期 | 714万円 | 40.1歳 |
2019年3月期 | 715.4万円 | 39.4歳 |
2020年3月期 | 719.1万円 | 38.8歳 |
出典:東日本旅客鉄道・有価証券報告書
JR東日本の平均年収はこの5年で約9万円増額しています。昨年からは3.7万円増額しています。
安定した推移の背景には、好調な業績があります。2019年3月期の実績では、運輸事業だけでなく非運輸の流通・ホテルなど全事業で増収増益。過去最高の売上高を記録したほか、純利益も過去最高を更新しました。
特筆すべきは平均年齢です。毎年平均年齢が下がっているということは、若い世代の社員が増え組織全体の若返りが進んでいるということです。
JR東日本の年代別平均年収と中央値
■JR東日本の年収中央値は30代で579.4万円
JR東日本と競合他社の平均年収を比較
続いて年収実態により近い年収中央値を見てみます。20代から50代までの平均年収・平均月収・平均ボーナス・年収中央値を表にまとめました。
JR東日本の年収実態
年代 | 平均月収 | 平均ボーナス | 年収中央値 |
---|---|---|---|
20代 | 33.7万円 | 81万円 | 413.1万円 |
30代 | 47.3万円 | 113.6万円 | 579.4万円 |
40代 | 60万円 | 144万円 | 734.6万円 |
50代 | 69.3万円 | 166.4万円 | 848.7万円 |
※キャリコネの口コミ、有価証券報告書、厚労省・経産省・国税庁発表の調査資料を元に、編集部で独自に算出
■JRグループ3社 利益率の差が年収にも影響
社名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) | 決算期 |
---|---|---|---|---|---|
JR東日本 | 719.1万円 | 38.8歳 | 16年 | 44830人 | 2020年3月期 |
JR東海 | 736.3万円 | 36.7歳 | 15.5年 | 18282人 | 2020年3月期 |
JR西日本 | 662万円 | 39歳 | 15.4年 | 24439人 | 2020年3月期 |
JR九州 | 558万円 | 38.3歳 | 13.8年 | 7131人 | 2020年3月期 |
東急 | 771万円 | 42.3歳 | 15.5年 | 1417人 | 2020年3月期 |
南海電気鉄道 | 623万円 | 43歳 | 21.5年 | 2639人 | 2020年3月期 |
名古屋鉄道 | 608万円 | 44歳 | 23.6年 | 5122人 | 2020年3月期 |
東日本旅客鉄道の競合や同業界である鉄道の東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、九州旅客鉄道、東急、南海電気鉄道、名古屋鉄道の7社で平均年収を比較します。
各社の最新有価証券報告書に記載されている額は、東海旅客鉄道が736.3万円、西日本旅客鉄道が662万円、九州旅客鉄道が558万円、東急が771万円、南海電気鉄道が623万円、名古屋鉄道が608万円です。
この7社の中で最高額は東急の771万円で、最低額が九州旅客鉄道の558万円。その差はおよそ213万円で、かなりの差があります。
この比較企業の中では東日本旅客鉄道は3番目に位置します。
JR3社に絞ってみると、JR東日本は719.1万円、JR東海は736.3万円、JR西日本は662万円です。比較の結果、JR東日本の平均年収はJR東海より低く、JR西日本より高いことがわかりました。
この差の要因の1つとして挙げられるのが、営業利益率の差です。稼ぎの効率を示すこの数字は、赤字路線が多い在来線の割合が高いJR東日本の16.2%に対して、新幹線中心のJR東海は37.8%。この差が年収にも影響しているようです。
競合他社の給与明細(キャリコネ)
競合他社も20代で500万円超の年収
JR東海・20代・技術職(非管理職)の 給与明細
JR西日本・20代・技術職(非管理職)の 給与明細
JR北海道・20代・技術職(非管理職)の 給与明細
東急・20代・技術職(非管理職)の 給与明細
JR東日本で給与が高い職種・部署は
■主任になれば年収650万円
JR東日本の給与体系においては、役職が重要な指標となります。
係職・指導職・主任職・主務職・主幹職A・主幹職Bへと上がる6段階で、給与が可算されていくシステムです。昇格時には、7000~2万1000円程の昇給があり、役職が上がるにつれて、昇給額も上がっていきます。これらの点から、在籍年数も給与を上げるための重要なポイントといえそうです。
さらに、4段階目の主務職からは3万~6万円程の管理職手当が支給されます。一例として、都内勤務で毎月15時間の残業がある場合を比べてみましょう。新卒5年目一般社員の年収は、500万円程度。新卒10年目の主任職で650万円程、15年目の主務職では850万円程になります。
JR東日本の給与明細(キャリコネ)
年齢があがると賞与は倍に?
30代物流部門(非管理職)の 給与明細
20代物流部門(非管理職)の 給与明細
同年代でも職種によって差が出る?
30代管理部門(非管理職)の 給与明細
30代技術職(非管理職)の 給与明細
JR東日本の年収の内訳
■ボーナスは手当込みの月給で計算
JR東日本の年収構成の特徴として、充実した手当を挙げることができます。月5000円程の巡回旅費手当、1回当たり6000円程の夜勤手当、月2000~4500円の資格手当など多種あります。
ボーナスは基礎賃金の倍率で決まります。この基礎賃金には上で述べた管理職手当のほか、勤務地によって金額が異なる都市手当そして管理職を除く社員へ支払われる扶養手当も含まれます。そのため、この手当の額によっても賞与に差が生まれると言えるでしょう。この他ボーナス額の算出は、査定にも基づきます。評価によっては、標準額に対して0%そしてプラスマイナス各5%・10%・15%と7段階に分かれた可算または減算があります。
企業名社員の口コミ(キャリコネ)
手当が年収額を左右する?
「月給の基本給は低めだが、手当と残業代で稼ぐと考えていい。ボーナスは6ヶ月と高め。 より高みを目指すのであればいつまでも現業にはいられない。ゆえに、… 」
年功序列の色が濃いのか?
「地域毎に支給される地域手当、住宅手当などを考慮すると年収は平均並み。昇給額は毎年5000円程度。数年単位で昇進の機会がある。昇進試験に、サクサク受かる人と…」
出典・参考
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」「2019年国民生活基礎調査」
経済産業省「2019年企業活動基本調査速報-2018年度実績-」
国税庁「平成30年分民間給与実態統計調査」
マイナビ「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」