「連帯感が希薄」と不満抱く社員
KDDIの源流は、NTTに対する競争相手として1984年に設立された「第二電電企画」です。国際通信のKDD(旧国際電信電話)やモバイル通信のDDIなどさまざまな会社が合併していまに至っています。
したがって、ライバルのNTTグループのような組織の一体感はないようです。営業アシスタントの30代女性契約社員は、社内の雰囲気をこう表現しています。
合併してできた会社だからか、個人間・部門間での風通しが悪く、連帯感が希薄です。上層部もそれは問題点として把握しているらしく、いろいろなイベントを行ったりして、改善しようとはしているようでしたが、他の部署は他の会社かのような扱いで、積極的に協力するような雰囲気ではありませんでした。(2017.5.6)
2018年4月に就任した高橋誠社長は、主力事業の通信と、金融・ECなどの「ライフデザイン事業」の融合を図り、「KDDIを"ワクワクを提案し続ける会社"にしたい」と抱負を語っています。
しかしKDDIの業務の多くは、インフラの維持や管理に関するもの。そうワクワクする仕事ばかりではありません。コーポレート部門に勤務する20代の男性社員は「部署ごとのワクワクが欲しい」と愚痴をこぼしています。
部署によってワクワクには大きな差があり、特にコーポレート系では仕事のジブンゴト化が全くできていない。ソフトバンク、楽天に対しての危機感を露にしており、docomoに追いつこうという気概は二の次になってしまっている。仕方ないのかもしれないが、社員の意識の差があることは否めない(2019.1.9)
「仕事している感」が大事な部署も
KDDIといえば、モバイル通信で得た豊富なキャッシュを用いた積極的な投資や買収でも知られます。2012年のジモティ(情報掲示板)とTOLOT(フォトブック)に始まり、ゲームや英会話、ECやアドテク、バイオや不動産など多彩です。
特にネットメディアの買収には積極的で、2014~15年には「nanapi」や「ナターシャ」「ルクサ」などを買収し、他社メディアとも連携して「シンドットアライアンス」を華々しく打ち出したものの、目立った成果を出せないまま、2018年には取り組みを終了しました。
マーケティング担当の20代男性もこのような取り組みに不満を抱いています。
新規事業の投資も、買えるものをありったけ買ってみました的な感覚で、戦略はすべて後付け。所属するコマース領域は最たるもの。顧客視点はどこにもなく、「とりあえずやれる事をやって仕事している感を出すこと」と「社内の人間とすり寄ってくる社外の人間の評価を得ること」に全力を尽くしていると、中途社員の間ではいつも話題になる(2018.11.21)
特に「シンドットアライアンス」の構想は当初から酷評する人が多く、ネットには、無駄遣いをするならモバイル料金を値下げしろ、という声もあったほどですが、実は社員も白けていたというのは貴重な証言といえるでしょう。
技術職の32歳男性「年収960万円」
KDDIの従業員の平均年間給与は953万円で、高給を誇っています。企業口コミサイト「キャリコネ」に投稿された給与明細によると、技術職の32歳男性(大学院卒)は年収960万円。基本給は月55万円で、定期賞与が年2回で300万円支給されるそうです。
残業は月30時間程度。勤務時間等についても「特に問題を感じていない」とのこと。
全社的に20時退社の決まりがあり、帰りやすい雰囲気はある。逆にグループリーダー以上は朝早い人が多い(2019.6.11)
ただし同じ年齢でも、職種などによって給与は大きく異なるようです。広告宣伝部門の32歳男性も大学院卒ですが年収636万円。基本給は諸手当を入れて月43万円で、定期賞与が年2回で120万円だそうです。
この男性は「自分の年収は妥当に感じているが、700万円貰えると満足できる」と、現状にやや不満を感じています。もっとも、KDDIの従業員の平均年齢は42.5歳なので、あと10年以内には平均年間給与はクリアできるのでしょう。