給料のリコー、バランスよく点数の高いキヤノン。働きやすさは互角の評価。
まずは「働きやすさ評価チャート」を見てみましょう。
このチャートは、キャリコネの口コミ投稿者に、労働時間、仕事のやりがい、仕事のストレス度、休日数、給料、ホワイト度の各項目についての満足度を5点満点で評価したものの平均を表しています(総合評価は6項目の平均値)。点数のつけ方には基準を設けておらず、主観的な判断で採点してもらっています。
総合評価では両社共に3.5ポイントと差がありませんが内訳をみると少々違いがあることがわかります。
リコーでは給与の満足度が3.3と満足している社員が多いようですが、キヤノンは2.9と、やや不満があることがうかがえます。
一方で、その他の項目はほぼ同じ水準ですが、キヤノンの方がやや高くなっています。両社共に休日数への満足度が4.1と非常に高く、労働時間の満足度も3.7~3.8と高いため、余暇はしっかり取れる2社といえます。
口コミ分析では、キヤノンがやや優勢
続いて、実際に投稿された口コミを分析していきます。
同じく投稿者の主観的な目線での情報ですが、アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグが提唱した二要因理論を応用し口コミを分析、数値化しました。
二要因理論にならい、動機づけ要因に「達成」「承認」「仕事」「責任」「昇進と成長」、不満誘発要因に「経営方針」「監督」「人間関係」「作業環境」「賃金と雇用の安定」を設定し、1つの口コミに対し、プラス評価なのかマイナス評価なのかを判断してポイントを加算していきます。そうして算出された結果が【図2】のグラフで、各項目が獲得した数値は左の表に記載しました。
2社を比較したところ、動機づけ要因(モチベーション)ではリコーが-10.9ポイント、キヤノンが-8.6ポイントと、両社共にマイナスという結果になっています。
一方、満足度要因ではリコーが4.3ポイント、キヤノンは7.1ポイントと共にポジティブな口コミが多くなっています。
具体的にどの様な理由で加点・原点されているのでしょうか。動機づけ要因、満足度要因それぞれのポジティブ/ネガティブ意見をみていきましょう。
■動機付け要因
ここではモチベーションを高めた要因を分析していきます。グラフを一目見て分かることは、キヤノンの方がモチベーションをあげる要因が多いということです。
もっとも顕著な「仕事」ですが、これは仕事内容への興味や、やりがいを示しています。両社に寄せられた実際の口コミを見ていきましょう。
リコーでは「新しいアイデアの提案、業務改革の提案などは非常にやりやすい環境」
キヤノンでは「比較的年数が少ない社員でも大きな仕事を任されることがあります。」「自分が担当して、苦労して開発した製品が市場に出て、店頭に並んでいるのを見たときは感動する。」「特許を出願し、その効果が認められれば、表彰されお金がもらえることができる。」という口コミが見られました。両社を比較するとキヤノンの方がポジティブな口コミの数が多くなっています。
次に目立つ項目は「承認」です。この項目は評価基準の正当性やそれによる報酬などについての口コミを集計しています。キヤノンはリコーの約2倍のポイントを獲得しています。
リコーでは「評価は上司次第だが評価がまともな人は多いと思う。」「基本的に年功序列。しかし、同じ世代・年代の中では実力や業務達成度に基づいて評価して頂けるので、不公正感はない。」
キヤノンでは「中途社員で本部長クラスまで上り詰めた方もおり、学閥などもない実力主義の会社である。」「人事評価は適切に感じられる。また理論的で物事を良く考える人が出世している」という口コミが見られました。
キヤノンの方が適切な人事評価だと感じている社員が多いようです。リコーは年功序列気味ではありますが、人事評価制度は機能していると読み取れました。
キヤノン社員の口コミ(キャリコネ)
出世について
「入社四年目で受験する試験に合格できるか否かが出世を分ける。しかし、十分に対策すれば、 大学院ならば誰しも合格できる内容と思われる。年収700万以降は……」
両社共にネガティブな口コミが多く目立つのは「承認」の項目です。
リコーでは「忙しい部署ほどメンバーが多いため、年功序列による人事制度によって昇格にかかる年数が遅れがちな傾向にあり、基本給のアップがあまり見込めない。」「半期ごとの面談によって目標設定および成果のレビュー、フィードバックが行われ、その評価により昇給や賞与のランクが決定される。評価の内容やそれに対する金額面は全くもって不透明。」
キヤノンでは「昇格試験に受かることが大前提であり、この試験に受からない限り、どんなに仕事ができても昇進はない。上が詰まっている場合は、どんなに優秀であっても昇進することはできない。」「昇進試験は論文試験と面談がある。暇な人が論文試験対策に時間を割けて、忙しい人が、論文試験対策に時間を割けなくて出世が逆転する問題が起きている。」という口コミがみられました。
リコーでは評価の年功序列や評価の不透明性への不満が多く、キヤノンでは昇格試験と管理職のポストの少なさに関する不満が多いようです。キヤノンの昇格試験はとても難しいという口コミが多数見受けられますので、入社する際は覚悟が必要だと思います。
次に特筆すべきは「仕事」の項目です。
リコーでは「複合機は技術領域としては完成してしまっているため、業務上の面白みはない。」
キヤノンでは「部署に依るが、全体的に行き詰まり感を感じる。旧来の事業は何れも右肩下がり。」という、成熟した業界だからこその仕事のマンネリについての口コミが両社共に見られました。
部署や職種によっても違いはあると思いますが、旧来の事業の部署に配属になる場合には仕事を楽しむ工夫が必要だと感じます。
リコー社員の口コミ(キャリコネ)
出世しやすい人について
「大抵の場合、技術職より品質管理や企画のスタッフ職の方が早く出世します。 技術職はポストに空きがなく、スタッフ職と比較して出世は遅れます。技術職の中では……」
■満足度要因
これは満足度をあげる要因を示すグラフです。
満足度についてはリコーとキヤノンでさほど大きな差はついていません。
両社共に「作業環境」への満足度が高くなっています。これは残業時間や休日出勤、福利厚生などを表しています。
リコーでは「残業は部署によるが法律で決められた制限をしないよう会社としても非常に気を使っている。」「毎週月・水がノー残業デー。忙しい時は50hを超えるが、80hは絶対超えてはいけないというルールは徹底している。」「転勤になった場合は、会社の借り上げ社宅として10年間の家賃補助が受けられる。」
キヤノンでは「5日間連続で平日に休暇かとれる制度がある。」「残業は少ないと思う。休日出勤も基本的にはない」「産休、育休、時短勤務など、基本的には給料が減る方向の制度はいくらでも活用できる。」という口コミが見られました。
両社を比較すると、リコーの方が残業は発生しているように思えますが、大きな不満はないようです。キヤノンはほぼ残業がない印象でした。
リコー社員の口コミ(キャリコネ)
残業について
「残業は実施し勤怠記録をきちんと付けた分は全て出る。ただ部署によって残業が一切禁止していたり、 10時間程度しか許容されていないなど、部署による差が激しく……」
リコーでは「環境負荷低減のためにペーパーレス化が世界的に進められており、当然のことながら複写機業界も業績が落ちてきています。」「複写機事業が売り上げの8割を占めており、この事業が傾くと会社も傾くような構造。」
キヤノンでも「業界の成熟化を受けて、主力事業のカメラやプリンターの業績が悪化している。新規事業を立ち上げたり買収を積極的に進めているが、どれも今の所はパッとしていない。」「現行のカメラや複写機事業も成熟し、これ以上の成長は見込めない。」「利益重視なので財務基盤は安定しているが、時には一時的に利益が出なくても、研究開発に投資すべきタイミングはあるのでは。」という口コミがみられました。
どちらの会社も既存の事業が成熟しきっており、新規事業の必要性があるが芽が出ていないと感じる状況のようです。この状況に会社の将来性に危機感を感じ、退職を考える方も多く見られましたので、入社を考えている場合は一考する必要がありそうです。
キヤノン社員の口コミ(キャリコネ)
経営者について
「キヤノンがここまで大きくなったのは、御手洗会長の手腕によるものである。 御手洗会長のリーダシップについて悪く言う人は社内でも皆無であり、誰もが力を認めている。しかし……」
働きやすさの総合評価はキヤノンに軍配だが・・・
働きやすさや今後の先行きなど、似通った部分が多いリコーとキヤノンですが、口コミを紐解くとキヤノンの方がやや働きやすいという結論に至りました。
しかし、キヤノンには難易度の高い昇進試験があり、突破するにはかなりの労力が予想されます。
ぜひ口コミを参考にして頂き、転職希望者自身がどちらの企業タイプで自分の能力を活かせるのか見極めて転職活動をすることをオススメします。