【社員の声】コピー機の将来に不安抱くリコーの若手エンジニア 「新しい技術開発」の場を求め転職

【社員の声】コピー機の将来に不安抱くリコーの若手エンジニア 「新しい技術開発」の場を求め転職

【社員の声】コピー機の将来に不安抱くリコーの若手エンジニア 「新しい技術開発」の場を求め転職

事業環境の変化により、盤石の経営基盤を誇っていた大企業に存続の危機が訪れる――。そんな時代になっている。就職や転職も、投資のように先を見越した成長性重視の判断が求められるだろう。2019年3月期に最終黒字転換に成功したリコーだが、将来性はあるのだろうか。


事務機器大手のリコーが、2017年度に数千人規模の人員削減を行うと報じられている。2018年3月23日には、2018年3月期の「最終赤字転落」を発表。背景には言うまでもなく、オフィスのデジタル化・ペーパーレス化がある。

かつて仕事の主役だった、手書きの書類やコピー、ファクスは影を潜めた。二度と復活することのない「紙ベースの業務」に関わる企業たちは、これからどうなるのか。特に成熟産業に携わるエンジニアたちは、敏感に危機を察知していることだろう。

のんびり仕事ができる「ホワイト企業」

企業口コミサイトの「キャリコネ」には、リコーの現役社員およびOBOGからの書き込みが数多く見られる。他社の書き込みと比べると、文章は理知的で、穏やかな性格の社員が多いのではないかという印象を受ける。

サービス残業やハラスメントに関する書き込みもなく、ホワイトな労働環境が伺える。20代の財務・会計職の男性社員は、こんな書き込みを残している。

お互い波を立てないように仲良く仕事をしている印象です。のんびり仕事をして、仲良く皆で(社員)食堂でご飯をたべ、午後5時30分になれば帰宅し、雇用も安定している。ホワイト企業だと思います。

その一方でこの男性は、優しくのんびり仕事ができる職場で、自分が「成長できるのか」と不安を漏らす。同じころ、海外営業担当の20代男性は「危機感はないわけではないが、結局内向きの議論に終始する」会社に見切りをつけ、退職したと書き込んでいる。

ぬるま湯という意味では従業員に優しいが、個人の自己実現・成長という意味では従業員を軽視しており、忠誠心も持てなかった。

リコーの売上高は2兆円を超え、平均年間給与は800万円超。社会的な知名度も高く、社員であることに満足している人は多いだろう。その裏で収益状況は徐々に悪化し、2014年3月期以降は営業利益が右肩下がり。2018年3月期の決算は「創業以来最大の赤字」に陥った。

30代研究開発「完全に沈みゆく船に乗っている状態」

そんな中、このままでは危ないと他社に転職する人もいる。研究開発を担当していた20代の男性社員は「職場環境はとても良好で、上司にも気軽に相談しやすい環境、残業もほとんどなかった」と振り返りながらも、退職を決めた。

従事した仕事内容が成熟技術であり、新しい技術開発をすることが将来的に難しい。既存技術のマイナーチェンジでしか、エンジニアとしてのスキル、アイデアを活かせないと感じたことから、自分で仕事を創り出したい意欲が高まり、転職を決めた。

ただしこの男性は、給与や待遇、福利厚生には「全く不満がなく」、いわゆるホワイト企業なのに「本当にやめてしまっていいのかという葛藤」が大いにあったという。

それでも背中を押したのは、自分がこの会社で中堅社員やベテラン社員になったときの不安だ。この会社には将来居場所がなくなるおそれがあるし、今の中高年社員のような「逃げ切り」が図れないと思ったのだろう。

危機感から退職を決意したエンジニアの書き込みは少なくない。ソフトウェア関連職の40代男性は「業界は衰退しており、研究開発、戦略の見直しが必要だと思っていた」が、管理職を含めて「その危機感は薄い」と感じて退職を決めた。

会社を何とかしたいという気持ちも当初はあったが、このような雰囲気の中で熱意も保てなくなり、会社を去ることにしました。

研究開発を担当する30代女性も「モチベーションの維持は難しい」という。複合機という分野は「成熟分野」であり、全く新しい機能開発の案件は年々少なくなっている。30代男性の研究開発担当の現状認識も、かなり厳しい。

コピーで利益を出してきたが、そのビジネスモデルは終わりを迎えている。大構造改革とか言っているが、結局ほとんどは今の事業を継続せざるを得ないので、完全に沈みゆく船に乗っている状態。

定年再雇用の高齢者が「会社に遊びに来ている」

営業企画を担当する40代男性は、売上の8割を占める複写機事業が傾くと、会社も傾くと危機感を募らせるが、会社は成長戦略が描けずに「コスト削減策ばかりが目立つ」と嘆く。

このままではジリ貧の状態で、それを察して若手の人材流出が始まっている。

流出する若手がいる一方で、中高年社員の中には緊張感なく会社にぶら下がっている人もいるようだ。50代の男性社員は年収850万円を得ながら「給料はいまいちですが、残業なし、休日出勤なし。サービス残業なし」と書き込んでいる。

きつい仕事はありません。労働組合はありませんが、チョーホワイト企業です。業績不振でリストラも行っていますが、「割り増し退職金をあげるから辞めたい人はいませんか?」程度です。

仕事に追われる若手社員が目をむきそうな、のんびりしたサラリーマン生活だが、50代だけでなく退職した高年齢者たちまでもが会社にぶら下がっているというから、行き過ぎたホワイト企業も考えものだなと思えてしまう。働かない高齢者を雇う原資は、働き盛りの報酬に振り向けるべきだ。

人員過剰で仕事少なめ。仕事は会議だらけですが、会議が雑談になったりします。会議室の予約が大変です。定年再雇用の高齢者が多いですが、会社に遊びに来ているような人も見受けられます。

最終黒字転換に成功したが

リコーは2019年3月期の業績見通しについて、米国子会社の減損損失や早期対象者に支払う割増退職金などの一時的な費用がなくなるので採算改善が図られるとしていた。

実際、2019年5月9日に発表した2019年3月期決算では最終黒字転換に成功。売上高は前期比2%減の2兆132億円にとどまったが、営業利益は868億円(前期は1156億円の赤字)。最終損益は495億円の黒字となった。

しかし事業構造を転換し、企業文化を変えなければ、将来性には期待できないのではないだろうか。

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