※本記事は、江崎グリコ株式会社 の有価証券報告書(第120期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 江崎グリコってどんな会社?
創業の精神「おいしさと健康」を掲げ、菓子、冷菓、乳製品等の食品事業をグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
1921年に江崎利一が栄養菓子「グリコ」の製造販売を目的に江崎商店を創立し、1929年に法人化しました。1933年に「ビスコ」を発売、1961年には東京証券取引所に上場しました。その後、1982年にフランスで合弁会社を設立するなど海外展開を進め、2015年にはグリコ乳業を吸収合併して経営体制を強化しました。
連結従業員数は5,563名、単体では1,452名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業家の資産管理会社である掬泉商事、第3位は金融機関の大同生命保険となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.15% |
| 掬泉商事 | 6.49% |
| 大同生命保険 | 5.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役会長は江崎勝久氏、代表取締役社長は江崎悦朗氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江崎 勝久 | 取締役会長(代表取締役) | 1966年入社。1973年代表取締役副社長を経て、1982年代表取締役社長に就任。2022年3月より現職。 |
| 江崎 悦朗 | 取締役社長(代表取締役) | 2004年入社。マーケティング本部長、経営企画本部長などを歴任。2022年3月より現職。 |
| 栗木 隆 | 取締役 | 1981年入社。生物化学研究所長、研究本部長、健康科学研究所長などを歴任。2021年1月より現職。 |
| 本澤 豊 | 取締役 | 1986年ソニー入社。同社米国統括会社SVP(CFO)などを経て、2020年3月より現職。コーポレートガバナンスを担当。 |
社外取締役は、大石佳能子(メディヴァ代表取締役)、原丈人(デフタ パートナーズ グループ会長)、滝口広子(北浜法律事務所・外国法共同事業パートナー)、武藤華子(コーン・フェリー・ジャパン パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「健康・食品事業」「乳業事業」「栄養菓子事業」「食品原料事業」「国内その他事業」「海外事業」の報告セグメントを展開しています。
■(1) 健康・食品事業
健康関連商品、レトルト食品、アイスクリーム等の製造販売を行っています。主な製品にはアーモンド飲料の「アーモンド効果」や、アイスクリームの「パピコ」「アイスの実」などがあります。
これらの製品を顧客へ販売することで対価を得ています。運営は主にグリコマニュファクチャリングジャパンが行っています。
■(2) 乳業事業
乳製品、洋生菓子、アイスクリーム等の製造販売を行っています。主な製品には「ジャイアントコーン」「牧場しぼり」「BifiXヨーグルト」「カフェオーレ」「プッチンプリン」などがあります。
製品の販売による売上が収益源です。運営は主にグリコマニュファクチャリングジャパンが行っています。
■(3) 栄養菓子事業
チョコレート、ビスケット等の製造販売を行っています。主力ブランドとして「ポッキー」「プリッツ」「ビスコ」などを展開しており、幅広い世代に向けた商品を供給しています。
製品の販売による対価が収益となります。運営は主にグリコマニュファクチャリングジャパンが行っています。
■(4) 食品原料事業
小麦たん白、加工デンプン、着色料やファインケミカル素材等の製造販売を行っています。食品加工メーカー等を主な顧客としています。
製品の販売により収益を得ています。運営は主にグリコ栄養食品、中部グリコ栄食が行っています。
■(5) 国内その他事業
直営店舗事業、オフィスグリコ事業、卸売販売事業、食料品等の製造・販売、情報システムの保守・開発を行っています。また、2024年よりGreenspoonが連結子会社となり、D2C事業も展開しています。
製品・サービスの販売やシステム保守料などが収益源です。運営はグリコチャネルクリエイト、関西フローズン、東北フローズン、江栄情報システム、Greenspoonなどが行っています。
■(6) 海外事業
海外でのチョコレート、ビスケット、アイスクリーム等の製造販売を行っています。中国、ASEAN、米国などを主要な市場とし、各地域のニーズに合わせた商品を展開しています。
海外市場における製品販売が収益源です。運営は上海江崎格力高食品有限公司、Thai Glico、Ezaki Glico USAなどの現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は3,000億円から3,400億円の範囲で推移しており、直近の2024年12月期は前期比で横ばいとなりました。利益面では、2021年12月期をピークに変動が見られ、当期は経常利益、当期純利益ともに大きく減少しています。利益率は低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,440億円 | 3,386億円 | 3,039億円 | 3,326億円 | 3,311億円 |
| 経常利益 | 196億円 | 217億円 | 136億円 | 213億円 | 133億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 6.4% | 4.5% | 6.4% | 4.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 106億円 | 103億円 | 126億円 | 99億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期とほぼ同水準を維持していますが、売上原価率は低下し売上総利益は増加しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は前期に比べて大きく減少しています。営業利益率は3.3%まで低下しました。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,326億円 | 3,311億円 |
| 売上総利益 | 1,239億円 | 1,277億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.2% | 38.6% |
| 営業利益 | 186億円 | 111億円 |
| 営業利益率(%) | 5.6% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が272億円(構成比23%)、給料及び手当が220億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
海外事業や国内その他事業、栄養菓子事業などが増収となった一方、乳業事業と健康・食品事業は減収となりました。特に乳業事業はシステム障害の影響を受け大きく売上を落としました。海外事業は中国やASEAN等での伸長により増収となりました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) |
|---|---|---|
| 健康・食品事業 | 505億円 | 467億円 |
| 乳業事業 | 697億円 | 561億円 |
| 栄養菓子事業 | 619億円 | 647億円 |
| 食品原料事業 | 133億円 | 139億円 |
| 国内その他事業 | 660億円 | 674億円 |
| 海外事業 | 712億円 | 823億円 |
| その他 | - | - |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 3,326億円 | 3,311億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で得た資金を投資や借入返済に充てているものの、当期は営業キャッシュ・フローが大きく減少した「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 281億円 | 18億円 |
| 投資CF | -86億円 | -103億円 |
| 財務CF | -62億円 | -392億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、企業の存在意義(パーパス)を「すこやかな毎日、ゆたかな人生」と定め、ありたい会社の姿(ビジョン)として「Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより、『おいしさと健康』を価値として提供し続けます」と掲げています。
■(2) 企業文化
創業の精神として「事業を通じて社会に貢献し、より多くの人々の健康な毎日を実現することを追求し続ける」を掲げています。また、行動指針として「七訓」を定めており、創業時から変わらない健康への想いを進化させながら、全社員が「イノベーター」として顧客起点の価値創造に取り組む風土を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画として、2025年から2027年度を「加速フェーズ」と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:年率+5~10%
* 営業利益:年率+10~15%
* ROE:6~8%
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業戦略」「研究戦略」「人財戦略」を柱とし、組織・人財の実行力向上やデジタル・AI技術の活用を進めます。事業面では、顧客起点の価値創造とビジネスモデルの進化を図るとともに、中国・東南アジアでのブランド成長や北米での基盤強化、新規成長国への参入に取り組みます。
また、2024年4月の基幹システム移行時に発生した障害への対応として、原因究明と再発防止策を講じ、信頼回復と安定供給体制の再構築に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財戦略」を主要戦略の一つと位置づけ、多様なバックグラウンドを持つ人材が互いに認め合い、適材適所で活躍できる組織文化の形成を目指しています。社員の「内発的動機」を重視し、自律的なキャリア形成や学びの機会を拡充するとともに、必要な人材を外部採用も含めて獲得し、価値創造を加速させる方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 43.9歳 | 13.5年 | 8,445,877円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育児休業取得率 | 107.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 47.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 36.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、研修費用総額(172百万円)、一人あたり研修費用(48千円)、障がい者雇用率(3.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全に関するリスク
製品回収によるコスト発生やブランド毀損のリスクがあります。これに対し、国際的な食品安全システム(FSSC22000等)の導入や、サプライチェーン全体での品質保証体制の構築、アレルゲンの適切な表示などに取り組んでいます。
■(2) 原材料の調達のリスク
原材料の需給動向や価格変動、地政学的要因による調達難のリスクがあります。これに対し、デジタル技術を活用したサプライチェーンマネジメントの強化や、調達先・調達地の多様化によるレジリエンスの確保を進めています。
■(3) 研究開発のリスク
新製品開発や技術革新が成功しないリスクや、市場ニーズとの乖離が生じるリスクがあります。注力領域への資源集中やオープンイノベーションの推進、デジタル技術や顧客データの活用により、開発の加速と成功確率の向上を図っています。
■(4) 情報システムの障害等に関するリスク
サイバー攻撃やシステム障害による事業中断、データ流出のリスクがあります。2024年には基幹システム切替時の障害により出荷遅延等が発生しました。情報セキュリティ体制の強化とともに、システム障害の原因究明と再発防止策を講じています。



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