江崎グリコ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、江崎グリコの有価証券報告書(第121期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026-03-19 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 江崎グリコってどんな会社?
菓子や冷菓、食品原料などの製造販売を国内外で幅広く手がける老舗の総合食品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1921年に創業者である江崎利一氏が栄養菓子「グリコ」の製造販売を目的に創立した合名会社江崎商店を起源とします。1954年に大阪証券取引所、1961年に東京証券取引所へ上場を果たしました。その後、アイスクリームやレトルト食品へと事業を拡大し、近年では海外事業やD2C領域にも注力しています。
現在の従業員数はグループ全体で5,588名、単体で1,456名です。筆頭株主は信託業務を担う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は資産管理会社とみられる掬泉商事、第3位は大株主であり保険事業を展開する大同生命保険となっています。強固な事業基盤を背景に安定した株主構成を維持しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.09% |
| 掬泉商事 | 6.49% |
| 大同生命保険 | 5.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役会長は江崎勝久氏、代表取締役社長は江崎悦朗氏が務めています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体の約30.8%を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 江崎勝久 | 取締役会長(代表取締役) | 1966年入社。1973年代表取締役副社長、1982年代表取締役社長を経て、2022年より現職。 |
| 江崎悦朗 | 取締役社長(代表取締役) | 2004年入社。マーケティング本部長や経営企画本部長などを歴任し、2022年より現職。 |
| 栗木隆 | 取締役 | 1981年入社。健康科学研究所長などを経て、2021年より現職。 |
| 本澤豊 | 取締役 | 1986年ソニー入社。同社米国統括会社CFO等を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、大石佳能子(メディヴァ代表取締役)、原丈人(デフタパートナーズグループ会長)、滝口広子(北浜法律事務所パートナー)、武藤華子(FPG社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「健康・食品事業」「乳業事業」「栄養菓子事業」「食品原料事業」「国内その他事業」および「海外事業」を展開しています。
■健康・食品事業
同セグメントでは、消費者の健康志向に応える商品や日常の食卓を彩る製品を展開しています。具体的には、アーモンド効果などの健康関連商品、カレーなどのレトルト食品、パピコやアイスの実といったアイスクリームの製造と販売を行っています。
収益は、これらの食品をスーパーやコンビニエンスストアなどの小売店を通じて一般消費者に販売することで得ています。事業の運営と製品の製造は、主に同社および連結子会社であるグリコマニュファクチャリングジャパンが担っています。
■乳業事業
同セグメントでは、日常的に消費される乳製品やデザートを中心とした製品ラインナップを提供しています。具体的には、プッチンプリンやカフェオーレなどの乳製品、洋生菓子、および一部のアイスクリームの製造と販売を手がけています。
収益は、小売チャネルを通じた一般消費者への製品販売によって生み出されます。事業の運営と製品の製造は、主に同社および連結子会社であるグリコマニュファクチャリングジャパンが担当しています。
■栄養菓子事業
同セグメントでは、長年親しまれている主力菓子ブランドの製品を展開しています。ポッキーやプリッツ、ビスコといったチョコレート菓子やビスケットなどの製造および販売を国内外の消費者向けに行っています。
収益は、小売店等を通じた菓子製品の販売代金から得ています。事業の運営と製品の製造は、主に同社および連結子会社であるグリコマニュファクチャリングジャパンが担っています。
■食品原料事業
同セグメントでは、法人顧客向けに食品の基礎となる原料を提供しています。具体的には、小麦たん白、加工デンプン、着色料、ファインケミカル素材などを製造し、食品メーカー等に販売しています。
収益は、法人顧客への食品原料の販売代金から得ています。事業の運営と製造は、連結子会社であるグリコ栄養食品および中部グリコ栄食が中心となって行っています。
■国内その他事業
同セグメントでは、新たな販売チャネルの開拓やシステム開発など、多角的な事業を展開しています。直営店舗事業、オフィスグリコ事業、卸売販売事業のほか、D2Cブランドを展開するGreenspoonによる食料品等の製造販売、情報システムの保守・開発が含まれます。
収益は、商品販売代金やシステム開発・保守手数料など多岐にわたります。運営はグリコチャネルクリエイト、江栄情報システム、Greenspoonなどの連結子会社が担っています。
■海外事業
同セグメントでは、アジアや北米を中心としたグローバル市場向けに製品を提供しています。中国、台湾、韓国、東南アジア、米国、カナダ、フランスなどで、チョコレートやビスケット、アイスクリームなどの製造販売を行っています。
収益は、各国の小売チャネルを通じた製品の販売代金によって生み出されます。運営は、上海江崎格力高食品有限公司やEzaki Glico USA Corporationをはじめとする多数の海外子会社および関連会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は3,000億円台で安定して推移し、直近では価格改定の効果などもあり増収傾向にあります。一方で経常利益は原材料高やシステム障害などの影響を受けて変動しており、利益率は低下傾向にあります。今後は海外展開や高付加価値商品の拡販による収益性の改善が課題となります。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,386億円 | 3,039億円 | 3,326億円 | 3,311億円 | 3,614億円 |
| 経常利益 | 217億円 | 136億円 | 213億円 | 133億円 | 116億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 4.5% | 6.4% | 4.0% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 103億円 | 126億円 | 99億円 | 18億円 | -12億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は9.1%の増収となりましたが、売上原価の増加ペースが売上の伸びを上回ったため、売上総利益率は低下しています。また、運送費等の増加により販売費及び一般管理費も膨らみ、結果として営業利益は前期比で減益となりました。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,311億円 | 3,614億円 |
| 売上総利益 | 1,277億円 | 1,351億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.6% | 37.4% |
| 営業利益 | 111億円 | 87億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が296億円(構成比23%)、給料及び手当が236億円(同19%)を占めています。売上原価は2,263億円であり、売上高合計に対して約63%を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメントごとの業績を見ると、乳業事業や国内その他事業、海外事業が増収を牽引し、全社的な売上成長に貢献しています。一方で、健康・食品事業や乳業事業は原価率の上昇等により営業赤字を計上しており、海外事業は増収ながらも減益となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 健康・食品事業 | 467億円 | 479億円 | -2億円 | -15億円 | -3.2% |
| 乳業事業 | 561億円 | 665億円 | -64億円 | -71億円 | -10.7% |
| 栄養菓子事業 | 647億円 | 660億円 | 52億円 | 44億円 | 6.6% |
| 食品原料事業 | 139億円 | 132億円 | 21億円 | 23億円 | 17.1% |
| 国内その他事業 | 674億円 | 772億円 | -0.0億円 | 7億円 | 0.9% |
| 海外事業 | 823億円 | 907億円 | 84億円 | 82億円 | 9.1% |
| 連結(合計) | 3,311億円 | 3,614億円 | 111億円 | 87億円 | 2.4% |
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 273億円 |
| 投資CF | -103億円 | -139億円 |
| 財務CF | -392億円 | -70億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「事業を通じて社会に貢献し、より多くの人々の健康な毎日を実現することを追求し続ける」ことを創業の精神として掲げています。さらに、企業の存在意義(パーパス)を「すこやかな毎日、ゆたかな人生」とし、ありたい会社の姿(ビジョン)として高品質な素材を創意工夫し「おいしさと健康」を提供し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業者である江崎利一氏の「食品による国民の体位向上」という強い願いを起源とし、この想いに共感する社員が集まる文化を持っています。行動指針として「Glico七訓」を基盤に据え、全社員が「顧客起点で価値を共創するイノベーターズ」となることを目指し、自律的な思考と相互尊重を重んじる組織風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、利益と資金を継続的に増加させながら成長加速に向けた投資を実行し、国内外での売上高と営業利益の継続的な向上を目標としています。
・売上高:年率+5~10%
・営業利益:年率+10~15%
・ROE(自己資本利益率):6~8%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画において、事業戦略、研究戦略、人的資本戦略の3本柱を掲げています。お客様起点での価値創造とデジタル・AIを活用したビジネスモデルの進化を進めるほか、既存進出国でのブランド成長や北米での事業基盤構築を図ります。研究面では「発育・栄養の最適化」など5つの注力領域へ投資を集中し、オープンイノベーションによる開発を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業発展の源泉を「人」と位置づけ、意欲あふれる人材が変革を推進する風土の醸成に取り組んでいます。「研究部門」への投資を集中するとともに、次世代リーダーの育成やキャリア自律を支援する制度(個人別育成計画等)を整備し、ダイバーシティ&インクルージョンを通じて多様な人材が活躍できる環境を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 43.7歳 | 13.4年 | 8,600,121円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.9% |
| 男性育児休業取得率 | 105.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 40.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(48.0%)、年次有給休暇の平均取得率(78.8%)、一人当たり研修費(91千円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 情報セキュリティのリスク
サイバー攻撃(ランサムウェアやDDoS攻撃等)により、重要データの漏えいや改ざん、システム障害が発生し、事業が停止するリスクがあります。同社は情報セキュリティポリシーの整備やインシデント対応手順の構築、全役職員向け教育を通じて被害の最小化と早期復旧の確保に努めています。
■(2) 品質安全のリスク
製品の品質問題による回収が発生した場合、多額のコスト負担やGlicoブランドの毀損、顧客流出による売上低迷のリスクがあります。同社は国際的な食品安全システムの導入やサプライチェーン全体での品質保証体制の構築、適切な情報開示を実施し、安全性の確保に取り組んでいます。
■(3) サプライチェーンのリスク
国際情勢の不安定化や気候変動により、原油価格や原材料費、物流費等が高騰するリスクがあります。同社は調達先の多重化や長期の需要予測に基づく調達計画の策定、デジタル技術を活用したサプライチェーンマネジメントの強化により、需給変動に対するレジリエンスを高めています。
■(4) 事業・研究戦略のリスク
新製品の開発や基礎研究が成功しない、あるいは市場のニーズと乖離して受け入れられないリスクがあります。同社は注力領域への資源集中やデジタル技術の活用による開発効率化、外部機関とのオープンイノベーションを推進し、顧客の健康に寄与する価値創造を加速させています。



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