花王 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

花王 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のコンシューマープロダクツおよびケミカルメーカー。洗剤、化粧品、産業用油脂などを展開しています。2024年12月期の連結業績は、売上収益が1兆6284億円、税引前利益が1510億円となり、増収増益を達成しました。構造改革の効果もあり、利益面でV字回復を果たしています。


※本記事は、花王株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 花王ってどんな会社?


日用品大手として洗剤や化粧品などの「コンシューマープロダクツ」と、産業用製品の「ケミカル」事業をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1887年に長瀬商店として創業し、1940年に日本有機を設立、1949年に花王石鹸と改称して上場しました。1985年に現在の花王へ商号変更し、2006年にはカネボウ化粧品を子会社化しました。洗剤やサニタリー製品等の日用品から化粧品、産業用化学品まで幅広い事業を展開しています。

2024年12月31日現在、グループ全体の従業員数は32,566人、単体では7,861人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行(信託口)で、上位株主は主にカストディ銀行や信託銀行等の金融機関が占めています。安定した株主構成のもと、グローバルでの事業拡大を推進しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 18.90%
日本カストディ銀行(信託口) 6.91%
ステート ストリート バンクウェスト クライアント トリーティー 505234(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 2.26%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性5名の計14名で構成され、女性役員比率は35.7%です。代表者は代表取締役 社長執行役員の長谷部 佳宏氏です。社外取締役比率は約55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷部 佳宏 代表取締役 社長執行役員 1990年入社。研究開発部門にて基盤研究セクター長などを歴任。研究開発部門統括、DX戦略部門担当などを経て、2021年1月より現職。
根来 昌一 代表取締役 専務執行役員経営財務ユニット総括 1983年入社。ケミカル事業ユニット長、購買部門統括、会計財務担当などを歴任。2025年1月より現職。
西口 徹 代表取締役 専務執行役員グローバルコンシューマーケアビジネス総括、グローバルコンシューマーケア部門 アジアリージョン統括 1985年入社。アジア事業統括部門統括、コンシューマープロダクツ事業統括部門総括などを歴任。2025年1月より現職。
リサ・マッカラン 取締役エグゼクティブ・フェロー(コーポレートブランディング担当) 元Nike Foundation Managing Director、元NIKE, Inc. Vice President。2025年3月より現職。


社外取締役は、篠辺 修(元ANAホールディングス副会長)、桜井 恵理子(元ダウ・ケミカル日本社長)、西井 孝明(元味の素社長)、髙島 誠(三井住友銀行会長)、サラ・カサノバ(元日本マクドナルド会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ハイジーン&リビングケア事業」、「ヘルス&ビューティケア事業」、「ライフケア事業」、「化粧品事業」、「ケミカル事業」および「その他」事業を展開しています。

ハイジーン&リビングケア事業


衣料用洗剤「アタック」等のファブリックケア製品、台所用洗剤「キュキュット」等のホームケア製品、生理用品「ロリエ」や紙おむつ「メリーズ」等のサニタリー製品を提供しています。一般消費者を最終顧客とし、主に小売業を通じて販売しています。

収益は、製品の販売対価として小売業者等から得ています。運営は、主に花王や花王グループカスタマーマーケティング、海外ではKao (Taiwan) CorporationやPT Kao Indonesia等の現地法人が行っています。

ヘルス&ビューティケア事業


洗顔料「ビオレ」等のスキンケア製品、シャンプー「エッセンシャル」等のヘアケア製品、入浴剤「バブ」等のパーソナルヘルス製品を提供しています。一般消費者を対象とし、ドラッグストアやスーパーマーケットなどで販売されています。

収益は、製品の販売により得ています。運営は、花王や花王グループカスタマーマーケティングに加え、ヘアケアサロン向け製品ではKao USA Inc.やKao Germany GmbH等の海外子会社も担当しています。

ライフケア事業


飲食店や宿泊施設向けの業務用衛生製品等を提供しています。プロフェッショナルな現場の衛生管理ニーズに応える製品・サービスを展開しています。

収益は、製品販売やソリューション提供により得ています。運営は、花王プロフェッショナル・サービスや海外のWashing Systems, LLC等が担っています。

化粧品事業


「KANEBO」「ソフィーナ」「キュレル」「KATE」等のカウンセリング化粧品およびセルフ化粧品を提供しています。幅広い価格帯とブランドポートフォリオで多様な顧客ニーズに対応しています。

収益は、製品の販売により得ています。運営は、花王、カネボウ化粧品、エキップ、花王グループカスタマーマーケティング等が連携して行っています。

ケミカル事業


油脂製品、機能材料製品、情報材料製品等を産業界向けに提供しています。紙パルプ、食品、医薬品、土木建築、情報電子材料など、多岐にわたる産業分野の顧客に対して素材やソリューションを供給しています。

収益は、製品の販売により得ています。運営は、花王および花王(上海)化工有限公司、Pilipinas Kao, Inc.、Kao Chemicals GmbH等の国内外のグループ会社が行っています。

その他


物流受託業務などを展開しています。

収益は、物流サービスの提供に伴う受託収益等です。運営は、花王ロジスティクス等が主に行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は2020年12月期以降、緩やかな増加傾向にありますが、利益面では原材料価格高騰などの影響を受け、2023年12月期にかけて減少傾向にありました。しかし、2024年12月期には構造改革や値上げ効果等により利益が急回復し、V字回復を達成しています。

項目 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期
売上収益(または売上高) 13,820億円 14,188億円 15,511億円 15,326億円 16,284億円
税引前利益 1,740億円 1,500億円 1,158億円 638億円 1,510億円
利益率(%) 12.6% 10.6% 7.5% 4.2% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,261億円 1,096億円 860億円 439億円 1,078億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加し、売上総利益率も改善しました。営業利益は前期の約2.4倍に拡大しており、収益性が大幅に向上しています。構造改革によるコスト適正化や高付加価値製品の販売が寄与していることが伺えます。

項目 2023年12月期 2024年12月期
売上高 15,326億円 16,284億円
売上総利益 5,604億円 6,384億円
売上総利益率(%) 36.6% 39.2%
営業利益 600億円 1,466億円
営業利益率(%) 3.9% 9.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が1,770億円(構成比36%)、広告宣伝費が883億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで売上高は概ね堅調に推移しました。特にケミカル事業やヘルス&ビューティケア事業が増収となりました。利益面では、ハイジーン&リビングケア事業やコンシューマープロダクツ事業全体で大幅な増益となりましたが、化粧品事業は赤字となりました。

区分 売上(2023年12月期) 売上(2024年12月期) 利益(2023年12月期) 利益(2024年12月期) 利益率
ハイジーン&リビングケア事業 5,225億円 5,443億円 201億円 758億円 13.9%
ヘルス&ビューティケア事業 3,929億円 4,240億円 405億円 344億円 8.1%
ライフケア事業 563億円 559億円 -53億円 63億円 11.3%
化粧品事業 2,386億円 2,441億円 -54億円 -37億円 -1.5%
コンシューマープロダクツ事業 12,103億円 12,682億円 499億円 1,128億円 8.9%
ケミカル事業 3,661億円 4,059億円 236億円 346億円 8.5%
調整額 -439億円 -457億円 -134億円 -8億円 -
連結(合計) 15,326億円 16,284億円 600億円 1,466億円 9.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2023年12月期 2024年12月期
営業CF 2,025億円 2,016億円
投資CF -1,093億円 -459億円
財務CF -800億円 -1,046億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「豊かな共生世界の実現」をパーパスに掲げ、生活者・顧客の立場にたって心をこめた「ESG視点でのよきモノづくり」を行っています。世界中の人々のこころ豊かな未来と、人と地球が共に生きる持続可能な共生世界の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


企業理念である「花王ウェイ」をグループ全員で共有し、行動の拠り所としています。「正道を歩む」を基盤とし、絶えざる革新により変化に対応しながら、「よきモノづくり」を実践する文化があります。清潔・美・健康の領域を中心に、社会課題に対しても真摯に取り組む姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「K27」を推進中で、2027年に向けて「グローバル・シャープトップ」事業の構築を目指しています。EVA(経済的付加価値)およびROIC(投下資本利益率)を経営の主指標とし、事業規模の拡大と資本効率の向上を追求しています。

* 2027年にスキンプロテクション事業売上高740億円

(4) 成長戦略と重点施策


「グローバル・シャープトップ」事業を擁立する企業を目指し、構造改革と成長戦略を推進しています。高付加価値化による価格改定やTCR(トータル・コスト・リダクション)強化、ROIC経営の深化を進めるとともに、成長ドライバー領域への投資やM&A、事業再編をスピード感をもって実行していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員活力の最大化」を掲げ、「グローバル・シャープトップ」戦略を支える人材への投資を強化しています。「意欲ある人財をとがらせる」「脱マトリックス型組織運営」「挑戦・成果重視の環境創り」「公平な機会の提供」を重点アクションとし、OKRの活用や対話の徹底を通じて、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2024年12月期 40.8歳 17.0年 8,108,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 27.7%
男性育児休業取得率 98.2%
男女賃金差異(全労働者) 90.5%
男女賃金差異(正規雇用) 89.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率に対する女性管理職比率(78.1%)、社員エンゲージメント(KES総合スコア)(61)、社内公募による異動者実績(2020年比)(16倍)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料調達リスク


天然油脂や石油関連原料の市場価格変動、地政学リスク、需給バランス、異常気象等の影響を受けます。特にパーム油などの自然資本に依存しているため、調達の安定性や価格変動が業績に影響を与える可能性があります。また、サプライチェーン上の人権や環境配慮が不十分とみなされた場合、ブランドイメージの低下につながる恐れがあります。

(2) 大地震・自然災害・事故リスク


大規模な化学プラントを有しているため、地震、台風、洪水等の自然災害や火災・爆発事故等が発生した場合、生産設備やサプライチェーンに被害が及び、製品供給に支障をきたす可能性があります。これにより経営成績への悪影響や社会的信用の低下を招くリスクがあります。

(3) 地政学リスク


欧州や東アジアなど事業展開している地域や原材料調達先において、政治的・社会的情勢の不安定化や紛争等が生じた場合、サプライチェーンの寸断や操業停止、消費者の購買行動の変化などが起こり、業績に悪影響を与える可能性があります。これに対し、リスクシナリオの作成やサプライチェーンネットワークの強化等の対策を進めています。

(4) 情報セキュリティリスク


事業や業務におけるIT・AI活用やデータ利用が進む中、サイバー攻撃や過失等により、機密情報や個人情報が流出するリスクがあります。これにより、社会的信用の低下や事業活動の中断、業績への悪影響が生じる可能性があります。CSIRTやSOCの整備など、セキュリティ対策の強化に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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