※本記事は、ライオン株式会社 の有価証券報告書(第164期、自 2024年1月1日 至 2024年12月31日、2025年3月31日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ライオンってどんな会社?
ハミガキ、洗剤、医薬品などを手掛ける大手生活用品メーカーです。アジアを中心とした海外展開や産業用品事業も強化しています。
■(1) 会社概要
1891年に小林富次郎商店として創業し、1980年にライオン歯磨とライオン油脂が対等合併して現在のライオンが発足しました。2007年には中外製薬より一般用医薬品事業を取得し、ヘルスケア分野を強化しています。2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
2024年12月31日時点の従業員数は連結で7,654名、単体で3,068名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位は投資ファンドが運営する組合です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 13.99% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 9.50% |
| JAPAN ACTIVATION CAPITAL I L.P. | 4.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表者は代表取締役兼社長執行役員の竹森征之氏です。取締役11名のうち社外取締役は5名で、比率は約45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹森 征之 | 代表取締役 兼社長執行役員最高経営責任者 | 1993年同社入社。ヘルス&ホームケア事業本部長などを経て2023年社長執行役員。2024年3月より現職。 |
| 福田 健吾 | 代表取締役 兼副社長執行役員 | 1987年同社入社。経営戦略本部長、ライオンハイジーン社長などを経て2025年3月より現職。リスク統括管理等を担当。 |
| 鈴木 均 | 代表取締役 兼副社長執行役員 | 1985年同社入社。国際事業本部長などを経て2025年3月より現職。海外事業全般を担当。 |
| 乘竹 史智 | 取締役 兼上席執行役員 | 1988年同社入社。研究開発本部長、生産本部分担などを経て2023年3月より現職。化学品事業全般等を担当。 |
| 鈴木 彩子 | 取締役 兼上席執行役員 | 1997年同社入社。日本コカ・コーラを経て2010年再入社。研究開発本部長などを経て2025年3月より現職。 |
| 川西 敬之 | 取締役 兼執行役員 | 1989年同社入社。ヘルス&ホームケア事業本部事業統括部長などを経て2025年3月より現職。 |
| 松﨑 正年 | 取締役取締役会議長 | 1976年小西六写真工業(現コニカミノルタ)入社。同社社長、取締役会議長などを経て2025年3月より現職。 |
社外取締役は、内田和成(早稲田大学名誉教授)、白石隆(熊本県立大学特別栄誉教授)、菅谷貴子(弁護士)、安江令子(JSR上席執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「一般用消費財事業」「産業用品事業」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 一般用消費財事業
ハミガキ、ハブラシなどのオーラルケア製品、ハンドソープ等のビューティケア製品、洗剤等のファブリックケア製品、医薬品などを提供しています。主な顧客は、国内の小売業または卸売業を営む企業および個人です。
製品の販売を通じて、卸売業者や小売業者から対価を受け取ります。運営は主にライオンが行っていますが、歯科材料等はライオン歯科材、ペット用品はライオンペットが販売を担当しています。また、ジャパンリテールイノベーションが店頭管理業務を行っています。
■(2) 産業用品事業
タイヤ用ゴム防着剤や二次電池用導電性カーボンなどの化学品原料、ホテル・レストラン・病院等向けの業務用洗浄剤などを製造・販売しています。顧客は化学品メーカーや業務用のエンドユーザー等です。
製品の販売により、代理店やエンドユーザーから収益を得ています。運営は、ライオンおよびライオン・スペシャリティ・ケミカルズが製造・販売を行うほか、ライオンケミカルが製造の一部を担当しています。業務用洗浄剤等はライオンハイジーンが販売を行っています。
■(3) 海外事業
タイ、マレーシア、韓国、中国などのアジア地域を中心に、ハミガキや洗剤などの一般用消費財を製造・販売しています。現地の小売業や卸売業を営む企業が主な顧客です。
現地での製品販売を通じて収益を得ています。運営は、Lion Corporation (Thailand) Ltd.、Lion Corporation (Korea)、Southern Lion Sdn. Bhd.、獅王日用化工(青島)有限公司などの現地連結子会社が製造・販売を行っています。
■(4) その他
同社グループ各事業に関連する設備の設計・施工、不動産管理、人材派遣などのサービスを提供しています。
サービスの提供対価として収益を得ています。運営は、ライオンエンジニアリングが設備の設計・施工等を、ライオンエキスパートビジネスが不動産・保険関係業務および福利厚生業務を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は3,500億円台から4,100億円台へと着実に増加傾向にあります。利益面では、原材料価格高騰などの影響により一時的な減少が見られましたが、直近の2024年12月期では価格転嫁や構造改革の効果により回復傾向を示しています。
| 項目 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 3,554億円 | 3,662億円 | 3,899億円 | 4,028億円 | 4,129億円 |
| 税引前利益 | 445億円 | 341億円 | 313億円 | 224億円 | 322億円 |
| 利益率(%) | 12.5% | 9.3% | 8.0% | 5.6% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 299億円 | 238億円 | 219億円 | 146億円 | 212億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上原価率は微増していますが、売上総利益率は概ね横ばいを維持しています。一方、営業利益は前期比で大きく改善しており、営業利益率も上昇しました。これは事業譲渡益などのその他の収益が増加したことが寄与しています。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,028億円 | 4,129億円 |
| 売上総利益 | 1,806億円 | 1,888億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.8% | 45.7% |
| 営業利益 | 205億円 | 284億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が444億円(構成比27.3%)、人件費が539億円(同33.2%)を占めています。売上原価の内訳については、原材料及び貯蔵品などが含まれますが、有報上では費用の性質別分類として開示されています。
■(3) セグメント収益
一般用消費財事業は売上が減少しましたが、収益構造改革により利益は大幅に増加しました。産業用品事業は減収減益となりましたが、海外事業は売上・利益ともに2桁成長を達成し、全体の業績を牽引しました。
| 区分 | 売上(2023年12月期) | 売上(2024年12月期) | 利益(2023年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般用消費財事業 | 2,674億円 | 2,618億円 | 48億円 | 126億円 | 4.8% |
| 産業用品事業 | 572億円 | 552億円 | 30億円 | 28億円 | 5.1% |
| 海外事業 | 1,481億円 | 1,649億円 | 86億円 | 102億円 | 6.2% |
| その他 | 209億円 | 168億円 | 14億円 | 3億円 | 1.7% |
| 調整額 | -908億円 | -857億円 | 24億円 | 5億円 | - |
| 連結(合計) | 4,028億円 | 4,129億円 | 201億円 | 263億円 | 6.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業で稼いだ現金を、借入金の返済や株主還元に充てつつ、必要な投資も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2023年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 301億円 | 437億円 |
| 投資CF | -348億円 | -77億円 |
| 財務CF | -118億円 | -212億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、パーパス(存在意義)として「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」を掲げています。人々の健康で快適、清潔・衛生的な暮らしに役立つ優良製品・サービスを提供し、サステナブルな社会に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
創業からの想いである「愛の精神の実践」を受け継いでいます。人々の価値観の変化や社会的な役割を捉え、お客様満足を最優先とする製品開発やサービスの提供に取り組むとともに、環境保全活動やコーポレート・ガバナンス体制の充実を図り、ステークホルダーからの期待に応える企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に向けた経営ビジョンの実現に向け、2025年度からは「収益力の強靭化」をテーマとした3カ年の新中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」をスタートさせました。
* 売上高成長率:年平均成長率2%以上
* EBITDAマージン:12%
* ROIC(投下資本利益率):7.0%
* ROE(自己資本利益率):8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の強靭化」に向けて、事業ポートフォリオマネジメントの強化、経営基盤の強化、ダイナミズムの創出を基本方針としています。特にオーラルヘルスケア領域では、口腔機能へと価値提供範囲を拡張し、全身健康への貢献を目指します。海外では、グローバルR&D体制の役割明確化により、イノベーション創出力の強化や製品開発のスピードアップを図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
戦略推進力の基盤となるダイナミズムの創出に向けて、人的資本の充実に注力しています。戦略に応じた人材開発と重点的な配置を通じて個と組織の力を高めるとともに、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりを進めています。特に、専門性の高い人材の確保・育成を進め、戦略を遂行する組織能力を高める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年12月期 | 44.5歳 | 17.2年 | 6,737,781円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.6% |
| 男性育児休業取得率 | 75.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、歯科健診受診率(92%)、アブセンティーズム(1.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業の成果や投資回収に関わるリスク
市場や流通、顧客の消費・購買行動の変化への対応が遅れ、競合に劣後することで業績が悪化したり、事業投資が回収不能になったりする可能性があります。これに対し、消費行動の多角的分析による新習慣の創出や、効率的なサプライチェーン構築、厳密なデューデリジェンスによる投資判断を行っています。
■(2) 製品品質に関わるリスク
想定外の製品不良や顧客の誤使用によるトラブルが発生するリスクがあります。関連法規の遵守や製品マネジメントシステムに基づく開発、品質保証体制の整備を行っています。また、お客様の声を製品改善に活かし、ISO9001認証を通じた品質意識の醸成や、原材料サプライヤー等の監査機能強化に取り組んでいます。
■(3) 原材料調達に関わるリスク
気候変動や国際的な需要変動による価格高騰、地政学リスク等によるサプライチェーンの停滞・寸断のリスクがあります。これに対し、代替原料の確保や複数購買、グローバル調達による安定化を進めるとともに、サプライヤーCSRガイドラインに基づくリスク回避や、組成合理化等のコストダウン施策を推進しています。



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