※本記事は、ライオン株式会社の有価証券報告書(第165期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ライオンってどんな会社?
ハミガキや洗剤などの日用品を中心に、人々の健康と快適な暮らしを支える事業をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1891年に小林富次郎商店として石鹸等の製造販売を開始したのが始まりです。1896年に粉ハミガキ「獅子印ライオン歯磨」を発売し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。1980年にライオン歯磨とライオン油脂が対等合併して現在の同社が発足しました。近年は海外事業の拡大やオーラルヘルスケア事業への重点投資を進めています。
同社の従業員数は連結で8,346名、単体で3,059名です。筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位株主には海外の投資ファンドが名を連ねており、機関投資家からの関心を集めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.90% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 10.18% |
| JAPAN ACTIVATION CAPITAL I L.P.(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 4.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性5名の計16名で構成され、女性役員比率は31.3%です。代表取締役兼社長執行役員 最高経営責任者は竹森征之氏が務めており、社外取締役比率は31.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹森征之 | 代表取締役兼社長執行役員 最高経営責任者 | 1993年同社入社。ヘルス&ホームケア事業本部ファブリックケア事業部長などを経て、2024年3月より現職。 |
| 福田健吾 | 代表取締役兼副社長執行役員 | 1987年同社入社。経営企画部長、経営戦略本部長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 鈴木均 | 代表取締役兼副社長執行役員 | 1985年同社入社。国際事業本部長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 乘竹史智 | 取締役兼上席執行役員 | 1988年同社入社。研究開発本部長、化学品事業全般担当などを経て、2026年1月より現職。 |
| 鈴木彩子 | 取締役兼上席執行役員 | 1997年同社入社。日本コカ・コーラを経て再入社後、研究開発本部長などを経て、2026年1月より現職。 |
| 浦尾康弘 | 取締役兼上席執行役員 | 1992年同社入社。ヘルス&ホームケア事業本部オーラルケア事業部長などを経て、2026年3月より現職。 |
社外取締役は、松﨑正年(元コニカミノルタ社長)、白石隆(元政策研究大学院大学長)、菅谷貴子(菅谷パートナーズ法律事務所代表弁護士)、安江令子(元サイバネットシステム社長)、樋口泰行(パナソニックコネクト社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「一般用消費財事業」、「産業用品事業」、「海外事業」および「その他」事業を展開しています。
■一般用消費財事業
ハミガキ、ハブラシ、洗剤、解熱鎮痛薬、ペット用品などの日用品および一般用医薬品の製造販売を行っています。主に国内の小売業や卸売業を営む企業および個人を顧客としています。
収益源は製品の販売による代金です。主に同社およびライオン歯科材、ライオンペットなどの子会社が製品を製造・販売しています。
■産業用品事業
油脂活性剤、導電性カーボンなどの化学品原料や、ホテル、病院、食品工場向けの業務用洗浄剤などの製造販売を行っています。主に国内の化学品メーカーや各種施設を顧客としています。
収益源は化学品原料や業務用洗浄剤の販売代金です。主に同社および子会社のライオン・スペシャリティ・ケミカルズ、ライオンハイジーンが製品を提供しています。
■海外事業
タイ、マレーシア、中国、韓国などのアジア地域を中心に、現地でのニーズに合わせた日用品の製造販売を行っています。現地の小売業や卸売業を営む企業を主な顧客としています。
収益源は製品の販売代金です。タイのLion Corporation (Thailand) Ltd.やマレーシアのSouthern Lion Sdn. Bhd.などの海外子会社が運営を行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ内での設備の設計、施工、保全業務や、グループ間共通機能の業務委託、ビル管理、人材派遣などのサービスを提供しています。
収益源は建設請負や不動産管理、人材派遣等による業務委託料などです。主にライオンエンジニアリングやライオンエキスパートビジネスといった子会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上収益は右肩上がりで推移しており、着実なトップラインの成長を見せています。利益面では2023年12月期に一時的な落ち込みが見られましたが、その後は構造改革や高付加価値品の販売拡大が奏功し、直近では大きく回復して過去最高水準の利益を記録しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,662億円 | 3,899億円 | 4,028億円 | 4,129億円 | 4,221億円 |
| 税引前利益 | 341億円 | 313億円 | 224億円 | 322億円 | 394億円 |
| 利益率(%) | 9.3% | 8.0% | 5.6% | 7.8% | 9.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 238億円 | 219億円 | 146億円 | 212億円 | 276億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が着実に増加する中、高付加価値新製品の導入や価格改定効果により売上総利益も拡大しています。また、事業構造改革の推進によるコスト効率化が進み、営業利益率は前期から大きく改善し収益力が強化されています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,129億円 | 4,221億円 |
| 売上総利益 | 1,063億円 | 1,078億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.8% | 25.5% |
| 営業利益 | 284億円 | 364億円 |
| 営業利益率(%) | 6.9% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、販売促進費が181億円、運送費及び保管費が119億円、広告宣伝費が117億円を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の一般用消費財事業は、高価格帯ハミガキなどの成長により増収増益となりました。海外事業もマレーシア等での好調やベトナム子会社化により売上を伸ばし、利益も大幅に増加しています。その他事業は大型工事の完工により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) | 利益(2024年12月期) | 利益(2025年12月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般用消費財事業 | 2,548億円 | 2,589億円 | 178億円 | 216億円 | 8.3% |
| 産業用品事業 | 552億円 | 583億円 | 28億円 | 29億円 | 5.0% |
| 海外事業 | 1,719億円 | 1,780億円 | 65億円 | 82億円 | 4.6% |
| その他 | 168億円 | 99億円 | 3億円 | -2億円 | -2.0% |
| 調整額 | -857億円 | -830億円 | -11億円 | -18億円 | - |
| 連結(合計) | 4,129億円 | 4,221億円 | 263億円 | 308億円 | 7.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、本業で創出した資金で設備投資を行いながら、借入金の返済や株主還元を適切に進めている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 437億円 | 406億円 |
| 投資CF | -77億円 | -435億円 |
| 財務CF | -212億円 | -124億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均をわずかに下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
『愛の精神の実践』を創業からの想いとして受け継ぎ、パーパス(存在意義)「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign(リ デザイン))」を経営の起点としています。人々の健康で快適、清潔・衛生的な暮らしに役立つ優良製品・サービスを提供することで、サステナブルな社会に貢献することが使命であると掲げています。
■(2) 企業文化
お客様満足を最優先とする製品開発、サービスの提供に取り組むとともに、環境保全活動の推進やコーポレート・ガバナンス体制の充実を図る行動様式を重視しています。株主、お客様、お取引先、地域・社会、従業員等のすべてのステークホルダーからの期待に応えられる信頼性の高い企業として、企業価値の一層の向上に努める価値観を持っています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営戦略フレーム「Vision2030」において、2030年に向けた経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げています。2025年度からの3ヵ年の中期経営計画「Vision2030 2nd STAGE」では、「収益力の強靭化」をテーマに掲げ、以下の財務目標を設定しています。
* 連結売上高に対するEBITDAの割合:12%以上(2030年)、10%以上(2027年)
* ROIC:7~8%水準(2030年)、6.5%水準(2027年)
* 基本的1株当たり当期利益の年平均成長率:2024年比で+8%程度(2027年)
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の強靭化」へ向けて3つの基本方針を設定しています。「事業ポートフォリオマネジメントの強化」では、最重点分野のオーラルヘルスケアに資源を集中し、全身健康への貢献を目指します。「経営基盤の強化」では、グローバルのR&D体制でイノベーション創出力と開発スピードを強化します。「ダイナミズムの創出」では、多様な人材が活躍できる環境づくりを進め、活力ある組織による新たな価値創出につなげます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本の価値向上を経営の重要課題と位置づけ、個人の自律的な成長と組織のダイナミズムの融合を目指しています。戦略に応じた人材開発と重点的な配置を通じて個と組織の力を高めるとともに、多様な知や経験の掛け合わせによるイノベーション創出を推進しています。また、専門性を備えたプロフェッショナル人材の育成や、従業員の自律的で柔軟な働き方を支援する「ワークライフエンリッチメント」を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 44.2歳 | 17.3年 | 7,113,275円 |
※平均年間給与は賞与および基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.3% |
| 男性育児休業取得率 | 90.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 64.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、歯科健診受診率(94%)、アブセンティーズム(1.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業の成果や投資回収に関わるリスク
市場や流通、顧客の消費・購買行動などの変化への対応が遅れ、競合との競争に劣後することで、業績の悪化や事業投資の回収不能が発生するリスクがあります。対策として、顧客の価値に繋がる新しい習慣の創出や効率的なサプライチェーンの構築、厳密なデューデリジェンスの実施に取り組んでいます。
■(2) 製品品質に関わるリスク
想定外の製品不良やお客様の誤使用による製品トラブルが発生するリスクがあります。関連法規の遵守や「製品マネジメントシステム」に則った製品開発を実践し、万が一の際にも健康被害を最小限に食い止めるための品質保証体制を整備しています。また、サプライヤーへの監査機能も強化しています。
■(3) 原材料調達に関わるリスク
気候変動や国際的な需要動向変化による調達競争の激化、地政学リスク等により、購入価格の高騰やサプライチェーンの停滞・寸断が生じるリスクがあります。対策として、互換化や複数購買、グローバル調達を通じて安定的な原材料調達を進めるとともに、組成合理化等のコストダウン施策を推進しています。
■(4) 海外での事業展開に関わるリスク
海外事業の拡大に伴い、進出国における政治経済の動向や法規制の強化により事業活動が制約されるリスクや、模倣品の拡散によるブランド価値毀損のリスクがあります。継続的な情報収集による変化への対応や、事業ポートフォリオの多様化、現地での知的財産権の戦略的取得と摘発強化に努めています。



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