※本記事は、小林製薬株式会社の有価証券報告書(第108期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小林製薬ってどんな会社?
主に医薬品や日用品、芳香・消臭剤などの企画・製造・販売を手掛けるメーカーです。
■(1) 会社概要
1886年に名古屋市で雑貨・化粧品店として創業し、1967年に「アンメルツ」、1969年に「ブルーレット」を発売しました。2000年に東証一部(現プライム)に上場を果たし、2001年には桐灰化学を子会社化してカイロ事業へ参入しています。近年は米国や中国、東南アジアなどで現地法人を設立し、グローバル展開を加速させています。
従業員数は連結で3,731名、単体で1,737名です。筆頭株主は創業家出身で現取締役の小林章浩氏であり、第2位は公益財団法人の小林財団、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小林章浩 | 12.46% |
| (公財)小林財団 | 8.07% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は豊田賀一氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 豊田賀一 | 代表取締役社長 | 1987年入社。国際営業カンパニー欧州社長や国際事業部欧米戦略部長等を歴任し、2025年3月より現職。 |
| 大田嘉仁 | 取締役会長 | 1978年京セラ入社。日本航空会長補佐や専務執行役員などを歴任し、2025年3月より現職。 |
| 松嶋雄司 | 取締役常務執行役員 | 2003年藤沢薬品工業入社。アステラス製薬を経て2020年入社。中央研究所長等を経て2025年3月より現職。 |
| 小林章浩 | 取締役 | 1998年入社。国際営業カンパニープレジデントや代表取締役社長等を歴任後、2026年1月より現職。 |
社外取締役は、片江善郎(元小松製作所常務執行役員)、髙橋昭夫(元大和証券グループ本社取締役)、毛利正人(大学教授)、松本真輔(弁護士)、楠本美砂(マーケティングコンサルタント業)、門川俊明(大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」「国際事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内事業
アンメルツやのどぬ~るなどのヘルスケア製品、ブルーレットや消臭元といった日用品、熱さまシートなどのカイロ・雑貨品を国内の一般消費者向けに企画・製造・販売しています。
主にドラッグストア等の小売店や卸売業者に製品を納入し、製品販売代金を収益としています。事業の運営は主に小林製薬が担い、一部の製造を富山小林製薬や桐灰小林製薬などの国内子会社が行っています。
■国際事業
米国、中国、東南アジアなどの海外市場に向けて、カイロや額用冷却シート、外用消炎鎮痛剤などの日用雑貨品や医薬品を販売しています。
現地の小売店等への製品販売による収益をモデルとしています。米国のKobayashi Healthcareや中国の小林製薬(中国)など、各地域の現地法人が主体となって事業を展開しています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ内における製品の運送業、合成樹脂容器の製造販売、不動産管理、広告企画制作などを手掛けています。
グループ各社に対する各種サービスの提供や資材の納入による対価を収益としています。小林製薬物流や小林製薬プラックスなどの関連会社がそれぞれ独立採算で運営を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は安定して推移しているものの、直近では利益水準の低下が見られます。特に当期は、健康被害への対応や広告宣伝費の増加、工場稼働に伴う減価償却費・減損損失の計上などが影響し、経常利益および当期利益が大きく落ち込む結果となっています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1553億円 | 1663億円 | 1735億円 | 1656億円 | 1657億円 |
| 経常利益 | 280億円 | 283億円 | 273億円 | 269億円 | 170億円 |
| 利益率(%) | 18.0% | 17.0% | 15.8% | 16.2% | 10.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 170億円 | 182億円 | 181億円 | 105億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の売上高は横ばいですが、売上総利益率は微減しています。また、品質関連対応やマーケティング投資の強化に伴い、営業利益は前期から大きく減益となっています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1656億円 | 1657億円 |
| 売上総利益 | 876億円 | 847億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.9% | 51.1% |
| 営業利益 | 249億円 | 149億円 |
| 営業利益率(%) | 15.0% | 9.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が106億円、広告宣伝費が90億円を占めています。
■(3) セグメント収益
国内事業は既存ブランドの伸長やインバウンド需要が寄与したものの、通販事業の縮小等により売上は微減となりました。一方、国際事業は米国や東南アジアでのカイロ・日用品販売が好調に推移し増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 1199億円 | 1181億円 |
| 国際事業 | 452億円 | 470億円 |
| その他 | 5億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 1656億円 | 1657億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 112億円 | 256億円 |
| 投資CF | -184億円 | -2億円 |
| 財務CF | -78億円 | -79億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「人と社会に素晴らしい『快』を提供する」ことを経営理念に掲げています。お客様自身も気づいていないお困りごとを発見し、確かな品質の製品・サービスをお届けすることを使命とし、「あったらいいな」から生まれた製品が新しい習慣となるような価値提供を目指しています。
■(2) 企業文化
新たに「お客様を第一に考える」「攻守両面で挑戦する」「人として何が正しいかを問い続け、行動する」などの6つの「ありたい風土」と12個の「新たな行動規範」を策定しました。「品質・安全ファースト」を徹底し、全員が一丸となって新しい組織風土を創り直すインテグリティ(誠実さ)経営を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年12月期から2028年12月期を対象とする新中期経営計画において、「将来の持続的成長を実現するために、未来につながる土台を築く」ことをテーマに掲げています。信頼再構築と企業変革に注力し、最終年度までに以下の数値目標の達成を目指しています。
* 売上高:1880億円
* 営業利益:220億円
* ROE:10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的成長に向けた戦略として、品質向上と人的資本経営による「経営基盤強化」、誇りを持って挑戦できる風土醸成による「企業変革」を進めます。また、国内事業ではリソース配分を見直して新製品開発と既存ブランドを伸長させ、国際事業では地域最適化によりグローバル展開を加速させます。
* 国内事業売上高:1315億円
* 国際事業売上高:560億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
新たな「人材・組織方針」に基づき、品質最優先を実現するための多様なキャリアの可視化や、新しい組織風土の醸成に取り組んでいます。また、専門性と多様性を重視した人材の確保・配置・育成を推進し、社員一人ひとりが主体的な学びや挑戦を通じてイキイキと活躍できる環境づくりに注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 41.2歳 | 12.8年 | 7,554,189円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.8% |
| 男性育児休業取得率 | 95.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 53.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(3.3%)、新卒採用人数(55人)、キャリア採用人数(63人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品安全性のリスク
医薬品や食品等において品質不良や副作用が発生した場合、補償や信用失墜により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は品質安全保証本部を中心に品質管理のPDCAを回し、製品設計から表示の是正まで全社的な品質・安全体制の強化と再構築に取り組んでいます。
■(2) 法的規制等のリスク
医薬品医療機器等法などの法規制が変更された場合、製品の開発・販売中止等の影響を受ける可能性があります。国内外の規制変更に対しては専門部署が情報収集に努め、先行した対応を行うことで事業への影響を最小限に抑える体制を整えています。
■(3) 積極的に新製品を投入するリスク
成長戦略の柱として新製品の開発と投入を進めていますが、顧客ニーズの変化や競合他社の動向により、販売が想定を下回るリスクがあります。同社はアイデア創出の風土を醸成しつつ、既存ブランドの戦略も強化することで事業基盤の安定化を図っています。



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