※本記事は、住友ゴム工業株式会社の有価証券報告書(第134期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. 住友ゴム工業ってどんな会社?
同社はタイヤを主力とし、スポーツ用品や産業品等をグローバルに展開するゴム製品メーカーです。
■(1) 会社概要
1909年に英国ダンロップ社の日本支店として創業し、1917年に設立されました。1960年に住友電気工業等と資本提携し、1963年に現社名に変更しました。1975年に株式を上場し、1984年にダンロップ商標権を譲受、1999年に米国グッドイヤー社と提携(後に解消)するなど、グローバルに事業を拡大しています。
連結従業員数は37,671名、単体では7,675名です。筆頭株主は事業会社の住友電気工業で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は日本カストディ銀行(信託口)となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 住友電気工業 | 28.87% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.98% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は山本悟氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役は5名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本悟 | 代表取締役社長(社長) | 1982年入社。タイヤ営業本部販売部長、ダンロップタイヤ営業本部長等を経て、2019年より現職。 |
| 西口豪一 | 代表取締役(専務執行役員) | 1983年入社。日本グッドイヤー代表取締役社長、タイヤ海外営業本部長、経営企画部長等を経て、2023年より現職。 |
| 大川直記 | 取締役(常務執行役員) | 1987年住友電気工業入社。同社経理部ハーネス経理部長を経て2019年に同社入社。経理部長等を経て、2022年より現職。 |
| 國安恭彰 | 取締役(常務執行役員) | 1992年入社。タイヤ技術本部第四技術部長、タイヤ品質保証部長、タイヤ技術本部長、経営企画部長等を経て、2023年より現職。 |
| 川松英明 | 取締役(常務執行役員) | 1986年入社。常熟史力勝体育用品貿易董事長、スポーツ事業本部長等を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、其田真理(元個人情報保護委員会事務局事務局長)、谷所敬(元日立造船代表取締役会長)、札場操(元ダイセル代表取締役社長)、本島なおみ(元MS&ADインシュアランスグループホールディングス常務執行役員)、上田善久(元パラグアイ共和国駐箚特命全権大使)です。
2. 事業内容
同社グループは、「タイヤ」「スポーツ」「産業品他」の各報告セグメントを展開しています。
■タイヤ
乗用車用、トラック・バス用、モーターサイクル用などの各種タイヤおよびパンク応急修理剤などの関連用品を国内外の顧客に提供しています。
販売した製品の代金を顧客から受け取ることで収益を得ています。運営は同社のほか、ダンロップタイヤやファルケンタイヤヨーロッパなどの国内外のグループ各社が行っています。
■スポーツ
ゴルフクラブやテニス用品などのスポーツ用品を国内外に販売するほか、ゴルフトーナメントの運営、ゴルフスクールやテニススクールのサービスを提供しています。
顧客からの製品購入代金やスクール会員からのレッスン利用料等から収益を得ています。運営はダンロップスポーツマーケティングや海外子会社などが担っています。
■産業品他
制振ダンパーや医療用ゴムなどの高機能ゴム製品、作業用手袋などの生活用品、防舷材やスポーツ施設用床材などのインフラ系商材を顧客に提供しています。
製品を国内外の顧客に販売することで対価を得るモデルです。運営は同社を中心に、住ゴム産業やダンロップホームプロダクツなどが事業を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は過去5年間で安定した規模を維持していますが、直近は為替や販売構成の変化等の影響で微減となりました。一方、利益面では原材料価格やコストの変動による増減が見られましたが、直近では価格改定やコスト削減の取り組みが寄与し、税引前利益および当期利益ともに大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 9360億円 | 10987億円 | 11774億円 | 12119億円 | 12071億円 |
| 税引前利益 | 448億円 | 225億円 | 627億円 | 163億円 | 778億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 2.1% | 5.3% | 1.3% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 295億円 | 94億円 | 370億円 | 99億円 | 504億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益は前期から微減となったものの、売上総利益および営業利益は大きく増加し、収益性が大幅に改善しています。利益率も向上し、力強い回復傾向を示しています。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 12119億円 | 12071億円 |
| 売上総利益 | 1174億円 | 1352億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.7% | 11.2% |
| 営業利益 | 112億円 | 826億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 6.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費及び梱包費が159億円(構成比16.1%)、広告宣伝費及び拡販対策費が133億円(同13.4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のタイヤセグメントは、価格改定の浸透や高付加価値商品の販売を推進したものの、海外市販市場の競争激化等により売上は微減となりました。スポーツセグメントはゴルフ用品等が好調に推移し前年並みを維持しています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| タイヤ | 10477億円 | 10451億円 |
| スポーツ | 1258億円 | 1257億円 |
| 産業品他 | 412億円 | 392億円 |
| 調整額 | -28億円 | -29億円 |
| 連結(合計) | 12119億円 | 12071億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は積極型です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1043億円 | 1504億円 |
| 投資CF | -647億円 | -1866億円 |
| 財務CF | -356億円 | 309億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」というPurpose(存在意義)に基づき、サステナビリティ経営を推進し、事業を通じた社会課題の解決に向けて価値創造につながる活動を展開しています。「ゴムから生み出す新たな体験価値をすべての人に提供し続ける」ことを目指す姿として掲げています。
■(2) 企業文化
「多様な個性をもつ仲間とともに成長する企業」の実現に向けて、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進を重要な要素と位置づけています。多様性を尊重し、それを組織の力に変えるインクルージョンの実践を重視し、個人の能力や強みを存分に発揮できる組織風土を育む文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2035年に向けた長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」のもと、「ブランド経営強化」「ゴム起点のイノベーション創出」「変化に強い経営基盤構築」の3つの成長ドライバーで目標達成を図ります。また、中期計画(2023年〜2027年)のターニングポイントとして2025年を位置づけ、既存事業の選択と集中を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
タイヤ事業では、新技術「アクティブトレッド」搭載商品の拡販や、センサーレス技術「センシングコア」の事業化を進めます。スポーツ事業では、北米市場でのマーケティング強化や日米の拠点連携によりシェア拡大を図ります。産業品他事業では、海外展開の拡大と新商品の継続的な市場投入により持続的な成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期経営戦略を支えるため、「ゴム起点のイノベーション創出」「ブランド経営の強化」「変化に強い経営基盤の構築」を担う人材の確保・育成を経営課題としています。グローバル経営人材、イノベーション人材、デジタル革新人材の育成を推進し、多様な価値観を尊重して挑戦を後押しする制度や風土づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.2歳 | 14.4年 | 6,678,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 65.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 74.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 76.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 66.3% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Our Philosophyについての従業員共感率(80.0%)、従業員エンゲージメントスコア(58.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品の品質管理リスク
所定の品質基準に基づき製品の品質確保に努めていますが、欠陥やクレームが発生する可能性があります。製品回収や損害賠償による多額の費用が発生した場合、ブランドイメージの低下や業績への悪影響が生じるリスクがあります。
■(2) 人権侵害に係るリスク
グローバルに事業を展開する中で、サプライチェーン上で強制労働などの人権問題が発生する可能性があります。これらの事象が判明した場合、法令に基づく処罰や訴訟の提起、社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす恐れがあります。
■(3) 人材獲得に係るリスク
事業の優位性を確保するためにはデジタル革新人材やグローバル経営人材等の確保が重要ですが、労働人口の減少や採用競争の激化により必要な人材を確保できない可能性があります。中核人材が流出した場合、事業運営の停滞を招くリスクがあります。



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