東海カーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東海カーボン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東海カーボンは東京証券取引所プライム市場に上場し、カーボンブラックやファインカーボン、黒鉛電極などの炭素関連製品をグローバルに展開する総合炭素メーカーです。直近の業績は、売上高が減少したものの、コスト削減や構造改革の推進、特別利益の計上などにより、減収ながら大幅な最終増益を達成しています。


※本記事は、東海カーボン株式会社の有価証券報告書(自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東海カーボンってどんな会社?


同社は各種産業に欠かせない炭素素材をグローバルに供給する、国内最大手クラスの総合炭素メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1918年に東海電極製造の商号で創立され、1949年に東京証券取引所などに上場しました。1975年に現在の東海カーボンへと商号を変更しています。2014年以降はカナダ、米国、ドイツ、フランスなどで関連企業を次々と買収し、グローバルな事業展開を加速させてきました。

現在の同社グループは、連結従業員数4,436名、単体従業員数727名の体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主および第2位株主には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、機関投資家による保有割合が高い構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 20.03%
日本カストディ銀行(信託口) 8.03%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223 2.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は長坂一氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
長坂 一 代表取締役社長 1972年入社。カーボンブラック事業部長、電極事業部長などを経て、2015年2月より現職。
辻 雅史 取締役 1986年入社。電極事業部長、経営企画部長などを経て、2024年3月より現職。
山口 勝之 取締役 1988年入社。技術本部長などを経て、2021年3月より現職。
山本 俊二 取締役 1985年入社。タイの現地法人社長などを経て、2023年3月より現職。
山崎 辰彦 取締役 1985年入社。カーボンブラック関連の役職を経て、2025年9月より現職。
真先 隆史 取締役 1985年入社。カーボンブラック事業部長などを経て、2026年1月より現職。


社外取締役は、神林伸光(元川崎造船社長)、浅田眞弓(丸ビルあおい法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「カーボンブラック事業」「ファインカーボン事業」「スメルティング&ライニング事業」「黒鉛電極事業」「工業炉及び関連製品事業」および「その他」事業を展開しています。

カーボンブラック事業


ゴム製品用、黒色顔料用、導電用のカーボンブラックを製造し、主にタイヤメーカーなどに向けて提供しています。

同事業は製品の販売による収益を主な収入源としています。運営は同社のほか、東海運輸やタイ、米国、カナダに所在する複数の海外子会社が行っています。

ファインカーボン事業


特殊炭素製品やソリッドSiC、SiCコートなどを製造し、半導体やエレクトロニクス関連企業などに提供しています。

同事業は製品販売による収益を得ています。運営は同社のほか、東海ファインカーボンや米国、韓国、欧州などに展開する海外子会社が行っています。

スメルティング&ライニング事業


アルミ電解用カソードや高炉用ブロック、炭素電極などを製造し、アルミニウム製錬や鉄鋼業界に向けて提供しています。

同事業は製品販売による収益を得ています。運営は主にドイツ、ポーランド、フランスなどにある海外子会社が行っています。

黒鉛電極事業


鉄鋼をリサイクルする電気製鋼炉で使用される黒鉛電極を製造し、鉄鋼メーカーなどに提供しています。

同事業は製品販売による収益を得ています。運営は同社および米国の子会社が行っています。

工業炉及び関連製品事業


工業用電気炉や炭化けい素発熱体を製造し、電子部品やエネルギー関連業界などに提供しています。

同事業は製品の引渡や顧客検収完了時に収益を得ています。運営は東海高熱工業および中国の子会社が行っています。

その他事業


摩擦材やリチウムイオン二次電池用負極材の製造販売、不動産賃貸などを展開しています。

同事業は製品販売や賃貸収入を得ています。運営は同社のほか、東海マテリアルや三友ブレーキなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は増加傾向から直近でやや減少に転じています。経常利益は増減を繰り返しており、直近では原価率の改善などにより黒字転換を果たしています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2589億円 3404億円 3639億円 3501億円 3230億円
経常利益 25億円 425億円 416億円 226億円 263億円
利益率(%) 9.6% 12.5% 11.4% 6.4% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 186億円 125億円 -305億円 188億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少したものの、原価率の改善により売上総利益率は上昇しました。さらに販売費及び一般管理費が減少したことで、営業利益は増益となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 3501億円 3230億円
売上総利益 806億円 797億円
売上総利益率(%) 23.0% 24.7%
営業利益 194億円 259億円
営業利益率(%) 5.5% 8.0%


販売費及び一般管理費のうち、保管発送費が127億円(構成比24%)、給与諸手当が117億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、ファインカーボン事業やその他事業は堅調に推移していますが、主力のカーボンブラック事業や黒鉛電極事業などの減少により、全体として減収となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
カーボンブラック事業 1568億円 1471億円
ファインカーボン事業 539億円 560億円
スメルティング&ライニング事業 645億円 618億円
黒鉛電極事業 488億円 376億円
工業炉及び関連製品事業 163億円 107億円
その他事業 98億円 98億円
連結(合計) 3501億円 3230億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東海カーボンは、事業活動から得た資金で設備投資や借入金の返済等を行い、財務基盤の安定化を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により、収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還や配当金の支払い等により、支出となりました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 645億円 559億円
投資CF -708億円 -511億円
財務CF 94億円 -77億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「信頼の絆」を基本理念に掲げています。お客様や株主をはじめとするステークホルダーの期待に応え、良好な関係を構築していくことが中長期的な企業価値の向上につながると考えており、事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、基本理念に共鳴する人材の育成を重視し、「誠実」「変革」「挑戦」「共創」「スピード」を行動指針として定めています。多様な価値観を持つ仲間たちと協働し、スピード感を持って果敢に挑戦する自由闊達で風通しのよい組織カルチャーの醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年のありたい姿として長期ビジョン「Vision 2030」を掲げています。先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献することを目指し、以下の具体的な数値目標を設定しています。

* 売上高:5,000億円
* EBITDA:20%
* ROIC:12%

(4) 成長戦略と重点施策


目標達成に向けて「抜本的な構造改革」「成長市場へのコミット」「サステナブルな価値創出」の3つを推進します。黒鉛電極やスメルティング&ライニング事業の構造改革を進めつつ、半導体市場とともに成長が見込まれるファインカーボン事業などへの設備投資を継続します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は長期ビジョン達成に向け、多様な価値観やバックグラウンドを持つ社員が切磋琢磨して成長できる環境整備を推進しています。働き方改革による柔軟な職場環境の提供や人事制度の見直し、社員の特性や希望に応じた各種研修プログラムの導入などを通じて、有能な人材の確保と育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 43.1歳 16.3年 7,702,271円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.5%
男性育児休業取得率 84.2%
男女賃金差異(全労働者) 63.8%
男女賃金差異(正規雇用) 73.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 43.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職新卒女性社員の採用比率(25.0%)、労働災害度数率(0.70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 気候変動とカーボンニュートラル対応


炭素税等の温室効果ガス排出量削減策が世界的に導入される中、同社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みが不十分な場合、コスト増などにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


各事業分野において厳しい競争環境下にあり、製品の価格低下圧力に晒されています。技術力や品質の向上、コスト削減が十分に成果を上げない場合、市場シェアの低下や利益率の悪化が生じる可能性があります。

(3) 原材料調達の不安定化と価格高騰


良質な原材料の安定的確保が不可欠ですが、不測の事態による供給中断や需給逼迫による価格高騰が発生し、それを製品価格へ転嫁できない場合には、生産や収益に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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