クボタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 クボタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クボタは東京証券取引所プライム市場に上場し、農業機械や建設機械を中心とする機械事業、ダクタイル鉄管などの水・環境事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で微増となったものの、米国関税の影響に伴うコスト増加や減販損などにより、営業利益および税引前利益は減益となっています。


※本記事は、株式会社クボタ の有価証券報告書(第136期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. クボタってどんな会社?


同社は農業機械や建設機械などの機械事業と、パイプシステムなどの水・環境事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1890年に創業し、各種鋳物の製造・販売を開始しました。1893年に水道用鋳鉄管、1922年に発動機の製造へと事業を広げ、1949年に上場を果たしました。その後、1960年代には環境事業や住宅建材事業に本格進出し、海外にもトラクタ販売・生産の拠点を設立しました。1990年に現在の社名に変更しています。

同社グループの従業員数は連結で52,503名、単体で15,897名です。筆頭株主および第2位は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位は生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.11%
日本カストディ銀行(信託口) 6.26%
日本生命保険相互会社 5.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性14名、女性3名の計17名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長 CEOは花田晋吾氏です。社外取締役は5名で、取締役11名中の比率は約45%です。

氏名 役職 主な経歴
花田晋吾 代表取締役社長 CEO 1989年入社。欧州や北米の子会社社長、機械統括本部長などを歴任し、2026年1月より現職。
北尾裕一 代表取締役会長 1979年入社。トラクタ事業部長、米国子会社社長、機械事業本部長などを経て、2026年1月より現職。
吉川正人 取締役 社長特命 1981年入社。経営企画部長、米国子会社社長、人事・総務本部長などを歴任し、2025年1月より現職。
渡邉大 取締役 社長特命 1984年入社。欧州子会社社長、機械統括本部長、イノベーションセンター所長などを経て、2025年1月より現職。
吉岡榮司 取締役 社長特命 1981年入社。筑波工場長、素形材事業部長、水環境事業本部長などを経て、2025年1月より現職。
木村浩人 取締役 1984年入社。タイ子会社社長、研究開発本部長、グローバル技術研究所長などを歴任し、2026年1月より現職。


社外取締役は、新宅祐太郎(元テルモ社長)、荒金久美(元コーセー取締役)、川名浩一(元日揮ホールディングス社長)、古澤ゆり(元国土交通省大臣官房審議官)、山下良則(元リコー社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機械」「水・環境」および「その他」事業を展開しています。

機械


トラクタ、コンバイン、田植機などの農業機械、建設機械、各種エンジンの製造・販売を行っており、日本国内および海外のディーラーや最終ユーザーを顧客としています。

製品の販売により対価を受け取ります。運営は主にクボタが行うほか、海外ではクボタノースアメリカCorp.やクボタヨーロッパS.A.S.などの子会社が担っています。

水・環境


ダクタイル鉄管などのパイプシステム、反応管などの産業機材、水処理プラントなどの環境製品の製造・販売および工事請負を行い、官公庁や法人を顧客としています。

製品の販売および工事の進捗に応じた請負代金により収益を得ています。運営はクボタのほか、クボタケミックスやクボタ環境エンジニアリングなどの子会社が行っています。

その他


主に物流などの各種サービスの提供や、屋根材、外壁材などの住宅建材関連事業を展開しています。

サービスの提供や製品の販売により対価を受け取ります。物流サービスはクボタロジスティクス、住宅建材事業はケイミューが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあり、3兆円規模で推移しています。一方、税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、外部環境の変化やコスト増などの影響を受け、直近の2期間では減少傾向にあります。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 21968億円 26770億円 30207億円 30163億円 30189億円
税引前利益 2509億円 2312億円 3423億円 3353億円 2821億円
利益率(%) 11.4% 8.6% 11.3% 11.1% 9.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1748億円 1565億円 2385億円 2304億円 1867億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は横ばいで推移し、売上総利益率は改善しているものの、営業利益は減少しています。これは、米国関税の影響に伴うコスト増加や減販損、販売構成の悪化などが影響しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 30163億円 30189億円
売上総利益 2285億円 2444億円
売上総利益率(%) 7.6% 8.1%
営業利益 3156億円 2655億円
営業利益率(%) 10.5% 8.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金諸手当が344億円(構成比5.6%)、製品保証引当金繰入額が323億円(同5.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


機械事業は北米や欧州、アジアの一部での市場低迷や関税の影響を受け減益となりました。一方、水・環境事業は価格改定効果や増販益により増益を達成しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
機械 26369億円 26286億円 3234億円 2536億円 9.6%
水・環境 3626億円 3744億円 243億円 330億円 8.8%
その他 168億円 159億円 10億円 8億円 5.2%
調整額 -30億円 -31億円 -330億円 -220億円 -
連結(合計) 30163億円 30189億円 3156億円 2655億円 8.8%


営業活動で得たキャッシュを投資と借入金の返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 2821億円 3279億円
投資CF -2089億円 -1637億円
財務CF -263億円 -1845億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


企業理念「クボタグローバルアイデンティティ(KGI)」の中で、ブランドステートメントとして「For Earth, For Life」を掲げています。また、将来の目指す姿として「グローバル・メジャー・ブランド(GMB)」、すなわち「最も多くのお客様から信頼されることによって、最も多くの社会貢献をなしうる企業」となることを目標としています。

(2) 企業文化


同社は「現場主義」や「On Your Side」の精神を基盤としています。また、多様な人材が集い、つながることで新たな価値を創出するため「対話」を重視した企業文化の構築に取り組んでいます。個々の能力を引き出し、イノベーションやサステナビリティの源泉とする組織風土の醸成を進めています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた長期ビジョン「GMB2030」の中で、「豊かな社会と自然の循環にコミットする“命を支えるプラットフォーマー”」を掲げています。新中期経営計画(2026年〜2030年)では、収益性や資本効率を重視した経営への質的改善を実行し、持続的な企業価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


両利きの経営として「既存事業の深化」と「新規事業の探索」を両立させます。機械事業では「小さい機械で、大きな仕事を」を掲げ、建設機械やインド発事業などを成長の柱とします。水・環境事業では、製品・技術を核としたソリューションで社会インフラの強靭化に貢献し、AI活用やDXによる業務刷新を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業環境の高度化・グローバル化に対応するため、「組織の強化」「個の強化」「健康経営」を基本方針としています。多様な人材を獲得し、対話を重視した企業文化を構築するとともに、従業員の自律的なキャリア形成を支援し、チャレンジ意欲のある人材への戦略的な育成投資を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.9歳 14.3年 8,609,216円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 92.3%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用) 80.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.5%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(47%)、女性技術系社員比率(12%~13%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際的事業展開に伴うリスク


同社は大規模な海外展開を行っているため、重要な市場における政府の許認可政策や補助金政策の変化、国際貿易政策による予期せぬ関税や輸出入割当量の変化、地政学リスクなどにより、安定的な製品の製造や販売が困難になる可能性があります。

(2) コンプライアンスリスク


法令遵守と倫理に基づいた企業活動を推進していますが、事業遂行において法令や倫理基準から逸脱した行為が発生した場合、監督官庁からの処分や訴訟の提起、社会的信用の失墜を招き、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人権に関するリスク


人権をめぐる社会的関心が高まる中、同社および調達先などのバリューチェーンにおいて人権侵害となる行為が発生した場合、社会的指弾や不買運動の対象となるほか、法令に基づく罰則を課される可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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