※本記事は、株式会社キッツの有価証券報告書(第112期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キッツってどんな会社?
同社はバルブ事業や伸銅品事業など、流体制御技術を活かした製品をグローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
1951年に各種バルブの製造販売を目的として設立され、1961年に株式を上場しました。1992年に現社名へ変更し、2004年の分社化を経て、2022年に東京証券取引所プライム市場へ移行しました。近年は国内工場の集約や海外子会社の設立など、グローバル展開を加速させています。
従業員数は連結で5,469名、単体で1,510名です。大株主の筆頭は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は持株会の北沢会持株会、第3位は保険会社の日本生命保険相互会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 11.11% |
| 北沢会持株会 | 6.31% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表執行役社長は河野誠氏が務めています。社外取締役は7名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河野誠 | 取締役代表執行役社長 | 1988年同社入社。バルブ事業統括本部長等を経て2021年に代表取締役社長に就任。2024年3月より現職。 |
| 堀田康之 | 取締役会長 | 1978年同社入社。2008年に代表取締役社長に就任し、2021年3月に代表取締役会長。2024年3月より現職。 |
| 村澤俊之 | 取締役 | 1981年同社入社。経営企画本部長や管理本部長等を経て2016年6月取締役に就任。2024年3月より現職。 |
社外取締役は、天羽稔(元デュポン社長・指名委員長)、藤原裕(元オムロン常務・報酬委員長)、菊間千乃(弁護士・リスク委員長)、作野周平(元横河電機常務・監査委員長)、小林彩子(弁護士・慶應義塾大学教授)、前田東一(元荏原製作所社長)、鈴木康信(元三菱マテリアル副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「バルブ事業」「伸銅品事業」および「その他」事業を展開しています。
■バルブ事業
青銅、鉄鋼、ステンレス鋼などの多彩な材質や形状のバルブおよび濾過関連製品を製造・販売しています。水やエネルギーなどの社会インフラから、データセンターや半導体製造装置といった産業分野まで、幅広い顧客に流体制御機器を提供しています。
製品の販売やアフターサービス等を通じて収益を獲得しています。事業の運営は同社のほか、キッツエスジーエス、キッツエスシーティー、キッツマイクロフィルターなどの国内子会社や、海外の多数のグループ会社が担っています。
■伸銅品事業
各種機械や建築資材などに幅広く使用される黄銅棒や、黄銅加工品(切削品および鍛造品)の製造・販売を行っています。また、新材質への挑戦やリサイクル技術の開発により、環境負荷低減と資源循環の推進にも取り組んでいます。
黄銅棒およびその加工品を顧客に販売することで収益を獲得しています。この事業の運営は、主に子会社であるキッツメタルワークスおよび北東技研工業が担っています。(なお、2026年より「メタルソリューション事業」へ名称変更予定です。)
■その他
長野県諏訪市において、一般消費者向けにホテルおよびレストランの運営を行っています。宿泊客や宴会利用客、観光客に対してサービスを提供しています。
宿泊料や飲食代金などを顧客から受け取ることで収益を獲得しています。運営は同社および子会社のホテル紅やが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は継続的な成長を維持しており、着実に規模を拡大しています。また、経常利益や当期利益も毎期連続して増加傾向にあり、利益率も改善を続けていることから、安定した収益力の向上がうかがえます。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,358億円 | 1,599億円 | 1,669億円 | 1,720億円 | 1,767億円 |
| 経常利益 | 90億円 | 120億円 | 145億円 | 153億円 | 161億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 7.5% | 8.7% | 8.9% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 41億円 | 70億円 | 76億円 | 90億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しており、それに伴い売上総利益や営業利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善を見せており、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,720億円 | 1,767億円 |
| 売上総利益 | 450億円 | 470億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.1% | 26.6% |
| 営業利益 | 142億円 | 155億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が94億円(構成比30%)、研究開発費が30億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
バルブ事業は、海外市場での販売量増加や価格改定効果により増収となりました。伸銅品事業は販売量の増加等により増収となり、その他事業もホテル事業が堅調に推移し増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年12月期) | 売上(2025年12月期) |
|---|---|---|
| バルブ事業 | 1,396億円 | 1,414億円 |
| 伸銅品事業 | 298億円 | 325億円 |
| その他 | 26億円 | 28億円 |
| 連結(合計) | 1,720億円 | 1,767億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 186億円 | 136億円 |
| 投資CF | -78億円 | -103億円 |
| 財務CF | -99億円 | -61億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も64.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ゆたかな地球環境と持続可能な未来を創造することが、社会に対して果たすべき使命」であると考え、企業理念「キッツ宣言」を掲げています。創業以来培ってきた流体制御技術と材料開発をさらに磨き上げることで、社会インフラを支え続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、行動指針「Do it KITZ Way」として、「Do it True(誠実・真実)」「Do it Now(スピード・タイムリー)」「Do it New(創造力・チャレンジ)」を定めています。全社員が誠実に行動し、変革を恐れず挑戦し続けることで、持続可能な未来の創造に貢献する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
長期経営ビジョン『Beyond New Heights 2030 「流れ」を変える』において、2030年にROE13%以上を達成する目標を掲げています。また、第2期中期経営計画「SHIN Global 2027」では、2027年度の定量目標として以下を目指しています。
・売上高:2,000億円
・営業利益:200億円
・ROE:11%以上
・連結配当性向:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
コア事業を基盤としつつ、デジタル化や脱炭素化を背景とした成長領域(半導体、水素・環境ソリューション等)へビジネスを拡張させる両利き経営を推進します。アメリカやASEAN、インド等での事業拡大を進めるほか、市場別ビジネスユニット制のもとで顧客志向の機動的な組織へと転換し、資本収益性を重視した事業展開を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期経営ビジョンの達成に向け、多様な社員全員が個の力を最大限に発揮できる環境づくりを推進しています。「人が育ち、つながり、活躍できるキッツグループへ」をスローガンに、フィードバック文化の醸成やDE&Iの推進、エンゲージメント向上を図ります。また、高度専門職制度など自律型社員を育成する基盤整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月期 | 40.1歳 | 14.0年 | 6,534,525円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.4% |
| 男性育児休業取得率 | 88.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 83.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 62.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員全体比率(24.6%)、障がい者雇用率(2.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況の変動
同社のバルブ製品は建築設備や工場、半導体製造装置など幅広い市場に向けられており、国内外の建設動向や設備投資、半導体市況の影響を受けます。また伸銅品事業も国内の住宅関連投資や銅相場に連動するため、景気変動等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 自然災害・感染症・地政学リスク
主要な製造拠点が一部地域に集中しており、大規模地震等の自然災害が発生した場合、操業停止等の影響が生じる可能性があります。また、グローバルな事業展開に伴う戦争やテロ、感染症拡大によるサプライチェーンの停滞も、財政状態に影響を与えるリスクとなります。
■(3) 情報セキュリティ・個人情報保護
事業活動は情報システムに依存しており、サイバー攻撃やウイルス感染によりシステム障害やデータ改ざん、情報漏洩が発生した場合、業務の停滞や社会的信用の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。対策として情報セキュリティ教育やシステム管理を強化しています。
■(4) 原材料価格の変動と調達リスク
主要原材料である銅、ステンレスなどの金属材料は市況により価格が急激に変動する可能性があり、販売価格への転嫁が不十分な場合は収益を圧迫します。また、サプライヤーに不測の事態が生じた場合、部品調達が滞り生産体制に影響を及ぼすリスクがあります。



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