ナブテスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナブテスコ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナブテスコは東京証券取引所プライム市場に上場し、産業用ロボット部品や鉄道・航空機器、自動ドアなどのソリューションを展開するメーカーです。直近の業績は、主要事業での需要増と収益性改善により、売上高3079億円(前期比9.8%増)、税引前利益217億円(同57.1%増)の大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、ナブテスコ株式会社の有価証券報告書(第23期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. ナブテスコってどんな会社?


産業用ロボット部品から鉄道・航空機器、自動ドアまで幅広いモーションコントロール技術を展開する企業です。

(1) 会社概要


2003年にティーエスコーポレーションとナブコの株式移転により設立され、東京証券取引所に上場しました。翌年に完全子会社2社を吸収合併し、事業基盤を確立しています。その後もスイス企業からの自動ドア部門買収などグローバル展開を推進し、直近の2025年には油圧機器事業の再編などを行っています。

同社グループは連結で8,472名、単体で2,186名の従業員を擁しています。筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第3位にはトランスポートソリューション事業における販売先でもある東海旅客鉄道が名を連ね、安定した事業基盤と資本関係を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 16.88%
日本カストディ銀行(信託口) 9.53%
東海旅客鉄道 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役最高経営責任者(CEO)は木村和正氏が務めており、取締役9名中5名が社外取締役で過半数を占めています。

氏名 役職 主な経歴
木村 和正 代表取締役最高経営責任者(CEO) 2011年同社精機カンパニー津工場製造部長。2017年執行役員。2019年取締役。2021年常務執行役員。2022年3月より現職。
高橋 誠司 代表取締役総務、人事、法務・コンプライアンス管掌 2010年同社人事部長。2018年執行役員。2023年常務執行役員、取締役。2025年3月より現職。
安藤 清 取締役コムテスコ代表取締役CEO 2008年同社精機カンパニー開発部長。2015年執行役員。2024年3月取締役。2025年8月コムテスコ代表取締役CEOに就任し現職。
碓井 浩 取締役企画、経理、情報システム、コーポレート・コミュニケーション管掌 2009年同社航空宇宙カンパニー技術部長。2020年執行役員。2025年3月取締役。2026年1月より現職。


社外取締役は、飯塚まり(同志社大学大学院教授)、水越尚子(レフトライト国際法律事務所パートナー)、日髙直輝(ブラザー工業社外取締役)、髙畑俊哉(セイコーエプソン元経営戦略本部長)、白幡清一郎(リンテック社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンポーネントソリューション事業」「トランスポートソリューション事業」「アクセシビリティソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

コンポーネントソリューション事業


産業用ロボット部品などの設計、製造、販売、保守、修理を行っています。主要製品である精密減速機などを国内外の産業用ロボットメーカーや産業機械メーカーに向けて提供しています。

産業用ロボットなどの部品販売や継続的な保守・修理サービスから収益を得ています。運営は同社のほか、コムテスコや中国・欧州・東南アジアの各種海外子会社が展開しています。

トランスポートソリューション事業


鉄道車両用ブレーキ装置や自動扉装置、航空機用部品、自動車用ブレーキ装置、舶用制御装置などの設計、製造、販売、保守を行っています。国内外の鉄道会社や各種輸送機器メーカーが主な顧客です。

各輸送機器向け製品の販売および修理・保守(MRO)サービスから収益を得ています。運営は同社を中心に、ナブテスコオートモーティブ、ナブテスコサービスなどの子会社が担っています。

アクセシビリティソリューション事業


建物および一般産業用の自動扉装置、プラットホーム安全設備、福祉・介護用機器などの設計、製造、販売、据付、保守を行っています。建設業界や鉄道会社、一般施設などが対象顧客です。

自動扉などの製品販売、据付工事、および継続的な保守・修理サービスから収益を得ています。運営は同社やナブコドア、ナブコシステム、およびスイスのGilgen Door Systems AGなどの海外子会社が行っています。

その他


包装機械、立体モデル作成装置(3Dプリンター)、繊維機械などの設計、製造、販売、保守を行っています。食品・飲料メーカーをはじめとする包装関連業界や製造業全般に向けた設備を提供しています。

各種機械装置の販売およびそれに付随する保守・修理サービスから収益を得ています。運営は主にPACRAFTやシーメットなどの子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は概ね3000億円前後で推移しており、堅調な事業基盤を維持しています。税引前利益は事業環境の変化等により変動が見られますが、直近の2025年12月期は各セグメントでの需要増加や収益性改善策が奏功し、大幅な増収増益を達成しました。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2998億円 3087億円 3336億円 2805億円 3079億円
税引前利益 1020億円 16億円 256億円 138億円 217億円
利益率(%) 34.0% 5.1% 7.7% 4.9% 7.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 648億円 95億円 146億円 101億円 157億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い売上総利益が増加しており、収益力の向上が見られます。また、固定費抑制をはじめとする収益性改善活動の成果により、営業利益および営業利益率ともに前年から改善し、稼ぐ力が着実に高まっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 2805億円 3079億円
売上総利益 225億円 291億円
売上総利益率(%) 8.0% 9.4%
営業利益 129億円 207億円
営業利益率(%) 4.6% 6.7%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が71億円(構成比10%)、給料及び賃金が37億円(同5%)を占めています。また売上原価においては、原材料等の払出原価が1422億円(構成比66%)、従業員給付費用が766億円(同36%)となっています。

(3) セグメント収益


主要3セグメント全てで増収増益を記録しました。コンポーネントは産業用ロボット向け需要が堅調に推移し、トランスポートは鉄道や航空向け等の回復が寄与しました。アクセシビリティも国内の自動ドアやホームドアの需要に支えられ、全体的な収益拡大を牽引しています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
コンポーネントソリューション事業 676億円 793億円 27億円 54億円 6.8%
トランスポートソリューション事業 887億円 1005億円 125億円 136億円 13.5%
アクセシビリティソリューション事業 1068億円 1107億円 90億円 91億円 8.2%
その他 173億円 174億円 10億円 22億円 12.6%
調整額 - - -123億円 -96億円 -
連結(合計) 2805億円 3079億円 129億円 207億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で稼いだ資金をもとに、設備投資などの成長投資を行いつつ、借入金の返済や株主還元を自己資金で賄えている優良な状態を示しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 267億円 328億円
投資CF -287億円 -157億円
財務CF -41億円 -136億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「独創的なモーションコントロール技術で、移動・生活空間に安全・安心・快適を提供」することを企業理念としています。また、これを体現する姿勢として「ナブテスコ ウェイ」を掲げ、2030年のありたい姿である「長期ビジョン」の実現を目指し、社会と自社の双方の持続的成長を追求しています。

(2) 企業文化


「人と地球の視点」で顧客や社会のニーズを捉え、「オープン・フェア・オネスト」の精神を大切にする文化です。好奇心と探求心を持ち、挑戦を楽しみながら多様性を共創力へとつなげ、自律的な個の成長を促進することで、期待を超える満足を届ける組織風土を築いています。

(3) 経営計画・目標


2025年度からの3カ年の中期経営計画において、以下の数値を目標として掲げています。

* ROIC:10%以上
* 株主還元:DOE(親会社所有者帰属持分配当率)3.5%を目安とした安定配当および機動的な自社株買い
* 環境目標:2027年にCO2排出量を2015年比で50%削減

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョンである「未来の“欲しい”に挑戦し続けるイノベーションリーダー」の実現に向け、「再興と進化」を方針としています。事業成長や原価低減などによる収益性改善を図る一方、従来のモーションコントロール技術を電動化やデータ活用を伴う「スマートモーションコントロール」へと進化させ、新たな価値創造に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「イノベーションリーダー」の実現に向け、人的資本の最適化を図ることを方針としています。既存事業の深化に必要なニーズに応える人材と、期待を超える価値を生み出す新規事業創出人材の両面を拡充します。また、従業員のエンゲージメント向上や自律的なキャリア形成、多様な働き方の促進に向けた支援を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 42.6歳 16.9年 7,153,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 91.9%
男女賃金差異(全労働者) 80.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グローバル市場と為替変動リスク


国内外の幅広い産業分野(自動車、鉄道、建築、産業機械等)に事業を展開しているため、各国の景気変動や設備投資動向、および為替相場の変動によって業績や財務状況が影響を受ける可能性があります。同社は市場の分散化や為替予約等によりリスクの軽減を図っています。

(2) サプライチェーンと調達リスク


多数のサプライヤーから金属部品や電子電装部品等を調達しており、自然災害やサイバー攻撃、調達先の倒産などで部品供給が滞った場合、製品の利益率悪化や機会損失が生じる可能性があります。主要部品の複数購買化や調達先のレジリエンス認証取得支援などで対策しています。

(3) 技術競争と新製品開発リスク


独自のモーションコントロール技術で高い市場シェアを維持していますが、新製品開発の遅れや競合他社による画期的な技術開発により市場占有率が低下するリスクがあります。これに対し、電動化やデータ活用を伴う最先端のスマートモーションコントロールへの進化を急いでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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