ローランド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ローランド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ローランドは東京証券取引所プライム市場に上場しており、電子楽器の開発・製造・販売を主要事業としています。直近の決算では、売上高は1,010億円と前期比で増収となりましたが、営業利益は94億円と減益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も減益となりました。


※本記事は、ローランド株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月5日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ローランドってどんな会社?


ローランドは、電子ピアノやシンセサイザー、電子ドラムなどを手掛ける世界的な電子楽器メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1972年に大阪で設立され、リズムマシンやシンセサイザーなどの電子楽器を発表しました。2014年にはMBO(マネジメント・バイアウト)により一旦上場廃止となりましたが、構造改革を経て2020年に再上場を果たしています。その後、2022年には米国のアコースティックドラムメーカーであるDrum Workshop, Inc.を子会社化するなど事業領域を拡大し、同年に東京証券取引所の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

現在の従業員数は連結で2,897名、単体で891名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は投資ファンド、第3位も信託銀行となっています。

氏名 持株比率
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE 15PCT TREATY ACCOUNT 23.75%
MINERVA GROWTH CAPITAL,LP 16.39%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長CEOは蓑輪雅弘氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
蓑輪 雅弘 代表取締役社長CEO 1996年入社。RPGカンパニー社長、RPG開発部門担当、取締役CIO、代表取締役COO兼CIOを経て、2025年1月より現職。
鈴木 康伸 取締役 1988年入社。ピアノ開発部長、執行役員開発部門担当、生産部門担当、取締役CPOを経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、生沼寿彦(弁護士)、ブライアン・K・ヘイウッド(Taiyo Pacific Partners L.P. Managing Partner)、片山幹雄(元シャープ社長・会長)、山本宏(元日本IBM技術理事)、武井涼子(グロービス経営大学院大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子楽器事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、製品群は多岐にわたります。

(1) 鍵盤楽器


電子ピアノやポータブルキーボードなどの開発・販売を行っています。家庭用からステージ用まで幅広いラインナップを揃え、初心者からプロフェッショナルまで多様な顧客層を対象としています。特に電子ピアノは、アコースティックピアノの演奏感を再現する技術に注力しています。

収益は、楽器販売店やEコマースを通じた製品販売により得ています。運営は主にローランドおよび各国の販売子会社が行っており、製造はマレーシア工場(Roland Manufacturing Malaysia Sdn. Bhd.)などが担っています。

(2) 管打楽器


電子ドラム「V-Drums」シリーズや電子パーカッション、電子管楽器などを展開しています。自宅での練習需要やライブパフォーマンスでの使用など、静粛性と表現力を兼ね備えた製品を提供しています。また、米国の子会社を通じてアコースティックドラムの製造・販売も行っています。

収益は製品販売によるものが主となります。運営はローランドのほか、アコースティックドラムについては米国のDrum Workshop, Inc.が中心となって行っています。

(3) ギター関連機器


「BOSS」ブランドを中心に、ギター用エフェクターやアンプなどを提供しています。ギタリストやベーシストを主要顧客とし、コンパクトエフェクターからマルチエフェクターまで幅広い製品を展開しています。

収益は製品販売から得ています。運営はローランドおよび各国の販売子会社が行っており、開発・製造・販売を一貫してグループ内で手掛けています。

(4) クリエーション関連機器&サービス


シンセサイザー、ダンス&DJ関連製品、音楽制作ソフトウェアなどを提供しています。音楽クリエイターやDJなどを顧客とし、楽曲制作やパフォーマンスを支援するツールを展開しています。また、クラウドサービス「Roland Cloud」を通じたソフトウェア音源の提供も行っています。

収益は製品販売に加え、「Roland Cloud」のサブスクリプション利用料などからも得ています。運営はローランドおよび各国の販売子会社が行っています。

(5) 映像音響機器


ビデオスイッチャーやAVミキサーなどの映像関連機器を展開しています。ライブ配信やイベント演出などを行う映像クリエイターや企業を顧客とし、「音」と「映像」を融合させたソリューションを提供しています。

収益は製品販売から得ています。運営はローランドおよび各国の販売子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、1,000億円規模で推移しています。経常利益は一時的な変動が見られるものの、安定的です。当期純利益については、直近の期で減少しています。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 800億円 958億円 1,024億円 994億円 1,010億円
経常利益 101億円 103億円 112億円 84億円 90億円
利益率(%) 12.6% 10.7% 10.9% 8.5% 8.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 60億円 77億円 51億円 74億円 2亿元

(2) 損益計算書


売上高は微増となりましたが、売上原価や販管費の増加により営業利益は減少しました。売上総利益率は概ね横ばいで推移しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 994億円 1,010億円
売上総利益 426億円 426億円
売上総利益率(%) 42.8% 42.2%
営業利益 100億円 94億円
営業利益率(%) 10.0% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が185億円(構成比56%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての製品カテゴリーにおいて、前期比でおおむね横ばいか微増で推移しました。特に管打楽器とクリエーション関連機器&サービスが増加傾向にあります。一方、映像音響機器は若干の減少となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
鍵盤楽器 269億円 272億円
管打楽器 286億円 294億円
ギター関連機器 250億円 251億円
クリエーション関連機器&サービス 126億円 131億円
映像音響機器 32億円 31億円
その他 32億円 31億円
連結(合計) 994億円 1,010億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている「健全型」と言えます。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 117億円 137億円
投資CF -12億円 -64億円
財務CF -97億円 -74億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造の喜びを世界にひろめよう」「BIGGESTよりBESTになろう」「共感を呼ぶ企業にしよう」という3つのスローガンを経営理念として掲げています。これらは創業時から変わらない考え方であり、世界中の人々が音や映像を楽しむワクワクする世界の実現や、ステークホルダーからの信頼と共感を得ることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「創造」を中核とする企業としてのあり方を重視しています。従業員には「豊かな発想力とチャレンジ精神を備え、あるべき姿に向けて自律的に行動する」ことが求められ、組織としては「互いの個性を尊重し合うことで各人の能力を十分に発揮し、共創により相乗効果を生み出す」文化の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2026年1月から2028年12月までの3年間を対象とした中期経営計画を策定しています。この計画では、電子楽器の需要創造と体験価値(CX)向上に向けた投資を進め、持続的な成長が可能な高収益企業への変革を目指しています。

* 売上高:1,200億円
* 営業利益:144億円
* ROE:20%
* ROIC:18%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Direct Connect」「Innovation」「新興国販売拡大」を重点戦略としています。顧客との直接的な接点を強化し、AIやIoTなどの技術を活用した新しい演奏体験を提供することや、アコースティック楽器の電子化を促進することに注力します。また、インドや中南米などの新興国市場での販売網強化も進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人の成長と組織の活性化」を最重要テーマの一つと位置づけ、人的資本経営に取り組んでいます。従業員一人ひとりが創造性を発揮できるよう、個人の成長を重視した人事考課や、多様な働き方を推進するテレワーク・フレックス制度などを導入しています。また、グローバルでの人材最適化に向けて、公正さとエンゲージメント向上に主眼を置いた人事制度の設計・運用を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 46.7歳 19.9年 7,203,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.5%
男性育児休業取得率 67.0%
男女賃金差異(全労働者) 79.8%
男女賃金差異(正規) 79.6%
男女賃金差異(非正規) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント指数(3.7)、離職率(2.9%)、女性社員比率(25.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格高騰・供給不足


同社製品には半導体や木材などの原材料が使用されており、一部は特定のサプライヤーに依存しています。供給の遅延や中断、価格高騰が発生した場合、製造困難やコスト上昇により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、在庫確保や代替部品による設計変更などの対策を講じています。

(2) 技術革新・トレンド変化対応


製品需要は消費者の嗜好や技術動向に強く影響されます。AIなどの新技術や市場の変化に対応できない場合、競争力が低下するリスクがあります。同社は開発者が自ら演奏を行いニーズを把握する手法や、新技術の研究組織「Roland Future Design Lab」などを通じて対応を進めています。

(3) 競合他社との競争激化


国内外の楽器メーカーや中古製品との競争に加え、近年は低価格帯メーカーの品質向上により競争が激化しています。価格下落圧力などが生じた場合、業績に影響する可能性があります。同社はブランド力の強化や、独自技術による差別化された製品開発により競争優位性の確保に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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