※本記事は、ルネサスエレクトロニクス株式会社 の有価証券報告書(2025年12月期、2025年1月1日 ~ 2025年12月31日、2026年3月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 企業概要:どんな会社?
ルネサスエレクトロニクスは半導体専業メーカーとして、各種半導体に関する研究、開発、設計、製造、販売およびサービスを行っています。同社グループは、自動車向け事業と産業・インフラ・IoT向け事業を主軸にグローバルに事業を展開しています。
ルネサスエレクトロニクスの単体従業員数は6,025名、連結従業員数は21,629名です。事業セグメントは自動車向け事業と産業・インフラ・IoT向け事業の2つです。
主な国内グループ会社は、ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング(半導体製品の製造(前工程))、ルネサス デザイン・チューリッヒ社(半導体製品の設計および開発)などです。
同社グループは、2024年7月24日にAltium社の買収を実行し、PCB設計などのソフトウェアツール事業を強化しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
ルネサスエレクトロニクスは、半導体という専門性の高い分野でグローバルに事業を展開しています。そのため、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境を重視し、インクルージョンカルチャーの強化に努めていることが特徴です。従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、イノベーションと持続可能な成長を促進する働き方を推進しています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、平均勤続年数が長く、平均年齢も高めであることから、従業員が長期的にキャリアを築いている傾向が見られます。安定した環境で専門性を深めたいと考える方にとって、魅力的な職場であると考えられます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 7,495,552円 |
| 平均勤続年数 | 23.4年 |
| 平均年齢 | 48.5歳 |
| 単体従業員数 | 6,025人 |
| 連結従業員数 | 21,629人 |
| 単体のグループ内比率 | 27.9% |
同社グループでは、一部の在外連結子会社を除き、確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)および確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職後給付制度を採用しています。退職一時金制度があり、各社の就業規則等の退職金規程に基づき給与と勤務期間に基づいた金額が支払われます。なお、積立不足額は578億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、多様な人材一人ひとりが自分の強みを持ち、能力・スキルを最大限に発揮することのできるよう、インクルージョンカルチャーを強化しています。地域や分野を超えたコラボレーションを強化するグローバルな枠組みを構築し、イノベーションと持続可能な成長を促進しています。
従業員の貢献度を反映した、マーケットに即した競争力のある報酬の提供に取り組んでいます。事業を展開する各国における賃金水準の包括的な分析を実施し、ベンチマークに沿った運用を実現できるよう戦略的な計画を策定しています。
「Renesas Culture」(Transparent、Agile、Global、Innovative、Entrepreneurial)の推進を通じて、グローバルに活躍できるリーダー人材の育成に注力しています。従業員が主体的に学習できる仕組みとして、日本では100以上のスキルアップコース、専門技術セミナー、プロジェクトマネジメントクラスから選択できる自己啓発支援プログラムを提供しています。多くの研修プログラムをオンライン化し、遠隔地の従業員も受講できる環境を整備しています。
また、海外リモートワーク(RWA)制度を導入しており、従業員が勤務国以外の国で最大30営業日まで働くことが可能です。グローバル規模でのインクルーシブを促進するため、従業員リソースグループ(ERGs)およびダイバーシティ推進グループ(DPGs)を支援しています。半導体業界における女性の活躍推進や次世代の女性人材育成にも取り組んでおり、大学や高等教育機関との戦略的な連携を通じて、将来のエンジニアとの早期接点確保と人材パイプラインの強化を図っています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データを示します。男女の賃金差異は、基本的に処遇は男女同一であり、現在生じている格差は労務構成が異なることによるものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.9% |
| 男性育児休業取得率 | 39.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 69.8% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ ルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
グループ全体(連結)
算出基準は法定の算出方法と異なります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 課長職に占める女性労働者の割合 | 16.0% |
| 部長職に占める女性労働者の割合 | 13.0% |
| 幹部に占める女性労働者の割合 | 25.0% |
多様性・登用
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 取締役会の女性比率 | 33.3% |
| 新卒採用に占める女性比率(日本) | 22.0% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
ルネサスエレクトロニクスは半導体専業メーカーとして、幅広い半導体製品の研究、開発、設計、製造、販売、サービスを手掛けています。同社グループの事業は主に「自動車向け事業」と「産業・インフラ・IoT向け事業」の二つのセグメントで構成されています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、半導体製品の販売を通じて収益を上げており、製品の支配が顧客に移転した時点で収益を認識するモデルを採用しています。売上収益は中国が最大の地域であり、アジア、欧州、北米など海外地域からの比率が高い傾向にあります。特定の外部顧客への売上収益が全体の10%以上を占める傾向も見られます。
自動車
自動車向け事業では、自動車のエンジンや車体などを制御する半導体、および車載情報機器向けの半導体を提供しています。主力製品はマイクロコントローラ、SoC(System-on-Chip)、アナログ半導体、パワー半導体などです。
収益は、これらの半導体製品の販売から得ています。研究、開発、設計は同社および海外子会社が、製造は国内外の生産子会社が、販売は国内では販売特約店、海外では海外販売子会社やディストリビューターが主に担当しています。当連結会計年度においては、市場の軟化により売上収益は減少傾向を示しています。
産業・インフラ・IoT
産業・インフラ・IoT向け事業では、スマート社会を支える産業、インフラストラクチャー、IoT分野向けの半導体を提供しています。主力製品はマイクロコントローラ、SoC、アナログ半導体、パワー半導体などです。
収益は、これらの半導体製品の販売から得ています。研究、開発、設計は同社および海外子会社が、製造は国内外の生産子会社が、販売は国内では販売特約店、海外では海外販売子会社やディストリビューターが主に担当しています。当連結会計年度においては、インフラ事業の需要増加により売上収益は増加傾向にあります。
その他の事業セグメント
その他の事業セグメントには、同社の設計および生産子会社が行っている半導体の受託開発や受託生産などが含まれます。
収益は、これらの受託サービスから得ています。
| セグメント | セグメント利益(2024年12月期) | セグメント利益(2025年12月期) |
|---|---|---|
| 自動車 | 2,225億円 | 1,966億円 |
| 産業・インフラ・IoT | 1,734億円 | 1,694億円 |
| その他の事業セグメント | 14.2億円 | 6.0億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの業績は、直近の連結会計年度において売上収益が減少傾向にあります。税引前利益および親会社の所有者に帰属する当期利益は、当連結会計年度で損失を計上しました。
この損失は、主に過去の買収に伴う無形資産の償却や、特定の金融資産の評価損失といった非資金項目が影響しています。一方で、営業活動によるキャッシュ・フローは堅調な収入を確保しており、本業によるキャッシュ創出力は維持されている状況です。
| 項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 9,939億円 | 1兆5,009億円 | 1兆4,694億円 | 1兆3,485億円 | 1兆3,212億円 |
| 税引前利益 | 1,427億円 | 3,623億円 | 4,222億円 | 2,638億円 | △303億円 |
| 税引前利益率 | 14.4% | 24.1% | 28.7% | 19.6% | △2.3% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 1,195億円 | 2,566億円 | 3,371億円 | 2,191億円 | △518億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 64.77 | 137.66 | 189.77 | 122.51 | △28.65 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上収益は、当連結会計年度において前期から増加しています。一方で、従業員1人あたり営業利益は前期から減少する傾向が見られます。
これらの数値は、同社グループの事業活動における生産性の変化を示しており、組織全体の効率性や収益体質を把握する上で重要な指標となります。
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上収益(連結) | 59.4百万円 | 61.1百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 9.8百万円 | 9.3百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
ルネサスエレクトロニクスグループの財務状況は、事業活動で安定的に資金を生み出し、将来への投資も着実に進めていることを示しています。これらの資金の流れから、同社グループの経営の安定性と成長に向けた姿勢を読み解きます。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
ルネサスエレクトロニクスグループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を上回る水準で推移しており、安定した経営基盤を維持していることが示されています。当期はROEがマイナスとなっていますが、手元資金は増加傾向にあります。これらの状況は、事業環境の変化に対応できる財務的な体力があることを示しており、長期的な視点での雇用や給与の安定性にもつながる要素です。
| 指標 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 自己資本 | 2兆5,374億円 | 2兆4,430億円 |
| 自己資本比率 | 56.5% | 58.5% |
| ROE(自己資本利益率) | 9.7% | -2.1% |
| 現金及び現金同等物 | 2,292億円 | 2,959億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは4,529億円の収入となり、前期から増加しています。これは、税引前損失を計上したものの、減価償却費やWolfspeedのその他金融資産の評価損失などの非資金項目を調整したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは1,247億円の支出となり、前期と比較して大幅に減少しました。これは主に有形固定資産や無形資産の取得による支出などによるものです。この結果、フリー・キャッシュ・フローは前期のマイナスから3,282億円の収入へと転換しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは2,697億円の支出となっており、主に借入金の返済や配当金の支払いが要因です。これらの資金の流れは、同社グループが本業で安定的に資金を創出し、投資活動を継続しつつも、財務体質の改善を進めている状況を示しています。
| 項目 | 2024年12月期(前期) | 2025年12月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 3,405億円 | 4,529億円 |
| 投資CF | △1兆2,841億円 | △1,247億円 |
| 財務CF | 6,773億円 | △2,697億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △9,436億円 | 3,282億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、半導体市場の市況変動の影響を受けており、製品需要の縮小や販売価格の低下により、売上減少や売上総利益率の悪化につながる可能性があります。また、半導体市場は熾烈な競争状態にあり、国内外の多くの同業他社との競争激化により、製品のマーケットシェア低下や販売価格の下方圧力に晒されるリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、事業展開において優秀な人材の確保に努めていますが、人材獲得競争が熾烈であるため、必要な人材を確保できない可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
同社グループは、事業構造改善引当金を23.7億円計上しています。この費用は事業再構築および整理統合に伴い今後支出が見込まれる損失に備えるものであり、転職先を検討する際に留意すべき情報です。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ルネサスエレクトロニクスは、「To Make Our Lives Easier」というパーパスを掲げ、持続可能な社会の実現に貢献しながら、長期的な成長を目指す企業です。
「Back to Basics」という方針のもと、事業環境の変化に柔軟に対応し、企業価値の向上を図っています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「To Make Our Lives Easier」というパーパス(存在意義)を掲げています。
「2035 Aspiration」の達成と長期的な成長を実現するため、「Back to Basics」(事業戦略の基本に立ち返る)の方針を強力に推進しています。
また、環境基本理念として「持続可能な社会の実現に向け、地球環境の保全と人々の健やかな暮らしの調和を考えた企業活動を推進する」を掲げています。
国連のSDGsへの貢献も目指しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、変化の激しいビジネス環境に対応するため、「Renesas Culture」という行動指針を策定し、その定着に取り組んでいます。
この「Renesas Culture」は、「Transparent(透明性)」「Agile(俊敏性)」「Global(グローバル)」「Innovative(革新性)」「Entrepreneurial(起業家精神)」という5つの価値観を体現する人材の育成を目指しています。
多様な人材が能力を最大限に発揮できるよう、インクルージョンカルチャーの強化を推進しており、地域や分野を超えたグローバルなコラボレーションを重視しています。
従業員一人ひとりがインクルーシブカルチャーを推進する責任を共有することを重要視しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、事業環境の変化に対応するため、「Back to Basics」に基づく施策を軸として、以下の課題に取り組んでいます。
具体的には、事業運営の効率化やアカウンタビリティの向上による生産性の向上、UXおよびデジタライゼーション戦略の加速を進めています。
また、サステナビリティ・ESG活動と情報開示の推進、地政学リスクへの対応、強靭かつ効率的な生産構造の最適化にも取り組んでいます。
さらに、グローバルなタレント採用チームのもとでのタレント構成の最適化、そして「Renesas Culture」の浸透を通じた従業員エンゲージメントの向上も重点テーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
ルネサスエレクトロニクスグループは、社会からの信頼を維持するため、コーポレート・ガバナンスの充実と強化に継続的に取り組んでいます。すべてのステークホルダーとの良好な関係を保ち、企業としての社会的責任を果たすことを重視しています。透明・公正かつ迅速な意思決定を可能とするガバナンス体制の構築を目指しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
ルネサスエレクトロニクスは、複数の信託銀行が上位株主として名を連ねる企業です。事業会社であるトヨタ自動車も主要な株主の一つとなっています。同社グループは、幅広い機関投資家や事業会社に支えられた資本構成となっています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.82% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.02% |
| トヨタ自動車 | 4.13% |
| JP MORGAN CHASE BANK 385864 | 3.37% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 3.35% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は6名(男性4名・女性2名)で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表執行役社長兼CEOは柴田英利氏が務めています。社外取締役比率は83.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 柴田 英利 | 取締役 代表執行役社長兼CEO | 東海旅客鉄道入社後、MKSパートナーズ、メリルリンチ日本証券、産業革新機構を経て、2013年10月に同社取締役就任。2019年7月より代表取締役社長兼CEO、2024年3月より現職。 |
社外取締役は、岩﨑二郎氏(元TDK取締役専務執行役員・指名委員会委員長・監査・サステナビリティ委員会委員)、Selena Loh Lacroix氏(Korn Ferryテクノロジープラクティスヴァイスチェア・報酬委員会委員長・指名委員会委員)、山本昇氏(XIBキャピタルパートナーズ代表取締役・報酬委員会委員・監査・サステナビリティ委員会委員)、平野拓也氏(元日本マイクロソフト代表取締役社長・指名委員会委員)、水野朝子氏(日本オートマチックマシン取締役・監査・サステナビリティ委員会委員長・報酬委員会委員)です。
同社は指名委員会等設置会社です。社外取締役は、独立した立場から経営全般の監督およびチェック機能を発揮しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
ルネサスエレクトロニクスの役員報酬は、固定報酬としての基本報酬、短期インセンティブとしての業績連動報酬、そして長期インセンティブとしての株価連動報酬で構成されています。同社グループは、業績および企業価値の向上に対する責任を負わせる観点から、報酬総額の大部分を業績連動報酬と株価連動報酬として支給しています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 社外取締役 | 5名 | 1.0億円 | 20.4百万円 |
| 執行役 | 1名 | 8.7億円 | 8.73億円 |
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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